電気工事士の免状だけでは電気工事業は営めません。電気工事業法の登録・通知・届出の区分、第二種の主任電気工事士の要件(免状取得後3年以上)、営業所の備え、建設業許可との関係、一人親方の労災特別加入を、条文と公的資料で整理します。
目次
結論:電気工事士の免状だけでは、電気工事業は営めません。電気工事業を営むには、電気工事業法に基づく登録(自家用電気工事のみの事業は通知、建設業許可を受けている場合は届出)が必要で、登録を受けずに営業すると1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金の対象です(法3条1項・17条の2・34条・36条)。一般用電気工事を行う営業所には、第一種電気工事士、または第二種の免状取得後3年以上の実務経験がある第二種電気工事士を、主任電気工事士として置く必要があります(法19条1項)。
| 区分 | 当てはまる場合 | 必要な手続 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 登録電気工事業者 | 建設業許可なしで、一般用電気工作物等の工事を含む電気工事業を営む | 都道府県知事または経済産業大臣の登録(有効期間5年) | 電気工事業法3条 |
| 通知電気工事業者 | 建設業許可なしで、自家用電気工事のみの電気工事業を営む | 事業開始の10日前までに通知 | 同法17条の2 |
| みなし登録電気工事業者 | 建設業許可を受けた者が電気工事業を営む | 開始後、遅滞なく届出 | 同法34条2項・4項 |
| みなし通知電気工事業者 | 建設業許可を受けた者が自家用電気工事のみを営む | 開始後、遅滞なく通知 | 同法34条3項・5項 |
合格ナビの第二種電気工事士の問題382問のうち、「電気工事業」「主任電気工事士」を問題文か選択肢に含む問題は0問です。第一種電気工事士の問題261問のうち、含む問題は1問です(2026-10-04 集計)。独立・開業の手続きそのものは第二種の試験にほとんど出ませんが、免状でできる作業の範囲は出題されます。
条文の出典は e-Gov 法令検索(2026-10-04 時点の現行条文):電気工事業の業務の適正化に関する法律・同法施行規則・電気工事士法。手続の実際は、大阪府の公式な手引(電気工事業申請の手引(令和8年9月更新))を例にしています。
電気工事士の免状だけでは開業できない理由
電気工事士の免状は、電気工事の作業に従事するための資格です(電気工事士法3条)。これに対して電気工事業法は、電気工事を行う事業を営む者に、登録・通知・届出を義務づけています(同法2条2項・3条1項)。免状を持っていても、事業として工事を請け負うには、別に電気工事業の登録等が要ります。
この法律でいう「電気工事業」は、電気工事を行なう事業です。大阪府の手引は、有償・無償を問わず、反復・継続して他の者から依頼を受けた電気工事を実施する場合をいい、免状を持つ人が自宅の電気工事を行う場合などは該当しない、と説明しています。同じ手引は、請け負った電気工事をすべて他の者に下請けさせ、自らその電気工事を行わない場合も、電気工事業を営む者に当たらないとしています。ただし、電気工事業者は、請け負った電気工事を、電気工事業を営む電気工事業者でない者に請け負わせてはなりません(法22条)。
区分は、扱う電気工作物と建設業許可の有無で決まります。上の表の4区分のうち、自家用電気工事のみを営む場合は、17条の2の通知です(開始の10日前まで)。免状との関係では、自家用電気工事は第一種電気工事士の領域です。第二種電気工事士だけでは従事できません(電気工事士法3条1項。簡易な工事は認定電気工事従事者が従事できる制度が別にあります。詳しくは認定電気工事従事者の記事で整理しています)。
- 免状でできる作業の範囲:電気工事士2種でできること
- 自家用電気工作物の工事が第二種の範囲外であることを問う問題:問50
登録の手続・有効期間・登録先
登録は、営業所の置き方で登録先が決まります。電気工事業法3条1項は、二以上の都道府県の区域内に営業所を設置してその事業を営もうとするときは経済産業大臣、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設置するときは、その営業所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない、と定めています。ここでいう営業所は、電気工事の作業の管理を行わない営業所を除きます。なお、経済産業大臣の登録の権限は、営業所が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある者については、その所在地を管轄する産業保安監督部長が行います(法35条、同法施行令2条1項)。
登録の有効期間は5年で、引き続き営むときは更新の登録を受けます(同条2項・3項)。大阪府の手引は、有効期間を過ぎると廃止とみなされ、新規登録が必要になると案内しています。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 登録先 | 営業所が一の都道府県のみ=都道府県知事。二以上の都道府県=経済産業大臣。ただし営業所が一の産業保安監督部の管轄区域内のみなら、その権限は産業保安監督部長が行う | 法3条1項・35条、同法施行令2条1項 |
| 有効期間 | 5年(更新の登録) | 法3条2項・3項 |
| 登録の拒否 | 罰金以上の刑の執行を終わって2年を経過しない者、登録を取り消されて2年を経過しない者などのほか、営業所について19条の要件(主任電気工事士)を欠く者 | 法6条1項 |
| 登録せずに営業した場合 | 1年以下の拘禁刑若しくは10万円以下の罰金、またはその併科 | 法36条1号 |
電気工事業の登録手数料の例:大阪府の新規登録は22,000円、更新登録は12,000円。最終確認日:2026-10-04。出典:大阪府 産業保安行政事務手数料。手数料は登録先ごとに異なるため、営業所の所在地の案内で確認してください。
大阪府は「窓口の混雑を避けるため、事前に電話で申請窓口にご相談ください。」と案内しています(大阪府 電気に関する申請)。申請書類や窓口は都道府県ごとに異なります。手続の前に、営業所の所在地の都道府県の案内を確認してください。
主任電気工事士の要件(第二種は免状取得後3年以上)
登録電気工事業者は、一般用電気工事の業務を行う営業所(特定営業所)ごとに、主任電気工事士を置かなければなりません。電気工事業法19条1項は、その資格を次のように定めています。
「第一種電気工事士又は電気工事士法による第二種電気工事士免状の交付を受けた後電気工事に関し三年以上の実務の経験を有する第二種電気工事士であつて第六条第一項第一号から第四号までに該当しないものを、主任電気工事士として、置かなければならない。」
| 持っている免状 | 主任電気工事士になれるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 第一種電気工事士 | なれる(実務経験の年数は19条1項に書かれていない) | 法19条1項 |
| 第二種電気工事士(免状の交付後、電気工事の実務3年以上) | なれる | 同上 |
| 第二種電気工事士(免状の交付後3年未満) | 要件を満たさない。要件を満たす人を主任電気工事士として置く必要がある | 同上 |
条文のポイントは3つです。
- 数えるのは「第二種電気工事士免状の交付を受けた後」の実務経験です。免状の交付前の期間の数え方は、実務経験なしで受けられるかで整理しています
- 登録電気工事業者(法人の場合は役員のいずれか)自身が同じ要件を満たし、自ら主として業務に従事する特定営業所には、主任電気工事士を置く規定は適用されません(法19条2項)
- 主任電気工事士が欠けたときなどは、知った日から2週間以内に選任します(法19条3項)。大阪府の手引は、営業所ごとの専任で、他の営業所の主任電気工事士を兼ねることはできない、と案内しています
主任電気工事士は、一般用電気工事による危険及び障害が発生しないように作業の管理の職務を誠実に行い、作業に従事する者は、その指示に従います(法20条)。
- 主任電気工事士の要件を問う問題:第一種電工 法令 問5
営業所に必要な備えと、してはいけないこと
登録後は、電気工事業者として次の義務があります。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 器具の備付け | 一般用電気工事のみの営業所は、絶縁抵抗計、接地抵抗計、抵抗及び交流電圧を測定できる回路計。自家用電気工事を行う営業所は、これに加えて低圧検電器、高圧検電器、継電器試験装置、絶縁耐力試験装置(継電器試験装置・絶縁耐力試験装置は、必要なときに使用し得る措置が講じられているものを含む) | 法24条、施行規則11条 |
| 標識の掲示 | 営業所と施工場所ごとに、氏名又は名称、登録番号などを記載した標識を掲げる | 法25条、施行規則12条 |
| 帳簿の備付け | 営業所ごとに、注文者・工事の種類と施工場所・施工年月日・作業者の氏名・配線図・検査結果を記載し、記載の日から5年間保存 | 法26条、施行規則13条 |
| 作業者の制限 | 登録電気工事業者は、第一種または第二種の電気工事士でない者を一般用電気工事の作業(軽微な作業を除く)に従事させてはならない | 法21条2項 |
| 下請けの制限 | 請け負った電気工事を、電気工事業を営む電気工事業者でない者に請け負わせてはならない | 法22条 |
自家用電気工事の作業には、第一種電気工事士でない者を従事させてはなりません(法21条1項。同条4項で、認定電気工事従事者は簡易電気工事に従事させられます)。作業者を雇うときも、免状の有無が条文で決まっています。
一人親方・個人事業主の扱いと労災保険の特別加入
一人で電気工事を請け負う場合も、法律の入口は同じです。事業を営むなら、電気工事業の登録等が必要で、個人でも登録できます(大阪府の手引には、個人の場合の申請書類が載っています)。
労災保険は、本来は労働者のための制度で、労働者以外でも保護が適当な一定の人に任意加入を認めるのが「特別加入」です(厚生労働省のしおり)。一人親方は、労働者災害補償保険法33条3号の「厚生労働省令で定める種類の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者」に当たる場合に加入できます。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 対象者 | 「労働者を使用しないで次の①~⑫の事業を行うことを常態とする一人親方その他の自営業者およびその事業に従事する人」 | 厚生労働省 特別加入制度のしおり(一人親方等用) |
| 労働者を使用する場合 | 労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときは、一人親方等として特別加入できる | 同上 |
| 建設関係の事業 | 「土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは、解体又はその準備の事業(大工、左官、とび職人など)」 | 同上 |
電気工事が上の事業の区分にどう当たるかは、しおりの例示に電気工事の記載がないため、この記事では断定しません。加入の手続・特別加入団体は、厚生労働省 労災保険への特別加入のページと、所管の労働基準監督署で確認してください。保険料や給付の額は、年度や加入の内容で変わるため、この記事では扱いません。
建設業許可との関係(みなし登録)と自家用電気工事のみの通知
電気工事業法には、建設業許可を受けた人についての特例があります。建設業法の許可を受けて建設業を営む「建設業者」(建設業法2条3項)は、電気工事業を営むときは、登録電気工事業者とみなされ(みなし登録)、開始後に遅滞なく届出をします(電気工事業法34条2項・4項)。登録電気工事業者が建設業者となったときは、それまでの登録は効力を失います(同条6項)。
建設業許可が要るかどうかは、請け負う工事の額で決まります。建設業法3条1項のただし書は、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負う営業には許可を要しないとし、施行令1条の2が、その基準を次のとおり定めています。
軽微な建設工事の基準:工事一件の請負代金の額が500万円(建築一式工事は1,500万円)に満たない工事、または建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事。最終確認日:2026-10-04。出典:建設業法施行令 1条の2。
同一の建設業を営む人が、工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計が基準になります(ただし、正当な理由に基づく分割を除く。同条2項)。
自家用電気工事のみを営む場合は、建設業許可の有無で扱いが分かれます。許可なしなら17条の2の通知(通知電気工事業者)、許可ありならみなし通知です。いずれも第二種電気工事士の免状だけでは自家用電気工事に従事できないため、事業の範囲を決める前に、従事できる免状(第一種)か、認定電気工事従事者の制度かを確認します。
開業前に確認すること
- 営業所の数と所在地:一の都道府県のみか、複数にまたがるか。登録先が変わります(法3条1項)
- 扱う工事:一般用電気工作物等の工事を含むか、自家用電気工事のみか。登録と通知で手続が分かれ、備える器具も変わります(法3条・17条の2、施行規則11条)
- 主任電気工事士:自分が要件を満たすか、満たす人を置けるか(法19条)
- 建設業許可:請負額が軽微な工事の範囲か、許可を受けるか。許可を受けるとみなし登録の届出になります(法34条、建設業法施行令1条の2)
- 営業所の備え:器具・標識・帳簿(法24条〜26条)
- 労災保険:一人親方等として特別加入するか。手続は労働基準監督署・特別加入団体で確認します
- 税務上の開業手続は、この記事では扱いません
登録の申請書類・窓口・手数料は、営業所の所在地の都道府県(または産業保安監督部)の案内で確認します。条文は改正されることがあるため、手続の前に e-Gov 法令検索で現行条文を確認してください。
まとめ
- 免状は作業に従事する資格。電気工事業を営むには、電気工事業法の登録(自家用のみは通知、建設業許可ありは届出)が別に必要
- 登録せずに営業すると、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金(法36条)
- 一般用電気工事の営業所には主任電気工事士が必要。第二種は免状交付後3年以上の実務経験(法19条1項)
- 営業所ごとに器具・標識・帳簿の備えが要る(帳簿は5年保存)
- 一人親方の労災は、特別加入の制度で任意に加入できる。手続は労働基準監督署・特別加入団体へ
- 建設業許可の有無で、登録か届出かが変わる。軽微な建設工事の基準は500万円(建築一式は1,500万円)未満
よくある質問
Q電気工事士の免状があれば、すぐに独立して仕事を請け負えますか?
できません。電気工事業を営むには、電気工事業法3条1項の登録(自家用電気工事のみの場合は17条の2の通知)が必要です。登録せずに電気工事業を営むと、同法36条で1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金(併科あり)に当たります。免状は電気工事の作業に従事するための資格で、事業を営むための登録とは別です。
Q第二種電気工事士の免状を取ったばかりでも、登録はできますか?
登録の要件のひとつに、営業所ごとの主任電気工事士の設置があります(電気工事業法19条1項、6条1項6号)。主任電気工事士になれるのは、第一種電気工事士、または第二種電気工事士免状の交付を受けた後に電気工事に関し3年以上の実務の経験を有する第二種電気工事士です。取得後3年未満の第二種の場合は、要件を満たす人を主任電気工事士として置く必要があります。
Q一人親方になると、ケガをしたときの労災保険はどうなりますか?
労災保険は本来、労働者のための制度です。労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする一人親方などは、労働者災害補償保険法33条3号と厚生労働省の「特別加入」の制度で、任意に加入できます。対象の事業や手続は、厚生労働省のしおりと、労働基準監督署・特別加入団体で確認します。
Q登録の手続きにはいくらかかりますか?
手数料は登録先ごとに定められています。大阪府(知事登録)の例では、新規登録は22,000円、更新登録は12,000円です。ほかの都道府県や、経済産業大臣・産業保安監督部長の登録の額は、それぞれの案内で確認してください。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月4日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

