責任分界点の意味と、単線結線図の見方を、第二種電気工事士の学科の範囲に絞って整理します。引込線・引込口・引込口開閉器までの流れ、電気事業法と電気設備の技術基準の解釈の定義、電気技術者試験センターが公表した過去問5回分の配線図の出題を、回と問番号で確かめます。
目次
結論:責任分界点は、電気を供給する側の設備と、電気を使う側(需要家)の設備の境目となる点のことです(当サイトの整理。解釈・省令に定義はありません)。第二種電気工事士の学科の配線図問題では、境目の周りにある「引込線」「引込線取付点」「引込口」「引込口開閉器」が問いの題材になり、配線図は単線結線図の形で描かれています。この記事は、その範囲に絞って整理します。
「責任分界点」と「単線結線図」は、高圧受電設備(キュービクル)の話で出てくることが多い言葉です。第二種電気工事士の受験者がまず知りたいのは、「自分の試験でどこまで必要なのか」でしょう。この記事では、条文で確かめられる部分と、当サイトの整理にとどまる部分を分けて書きます。
試験センター非提携:本サイトは一般財団法人 電気技術者試験センターと一切関係ありません。試験の出題・資料は、出典を示して内容を紹介しています。製品名やメーカーは扱いません。
解釈の版:電気設備の技術基準の解釈は、令和7年11月20日改正の版が経済産業省のページに掲載されています。条文の番号や数値は改正で変わることがあります。最終確認日:2026-10-08。出典:経済産業省 電気事業法 告示・内規等、電気設備の技術基準の解釈(PDF)。
責任分界点とは:意味と、条文にある言葉
責任分界点は、電気を送ってくる側の設備と、受け取って使う側の設備の境で、設備の保安(維持・管理)の責任の分かれ目になる点を指して使われる言葉です(当サイトの整理)。
ただし、電気設備の技術基準の解釈の第1条(用語の定義)には、この言葉は載っていません。条文にあるのは、次のような「境目まわり」の用語です(出典:電気設備の技術基準の解釈 第1条)。
| 用語 | 解釈第1条の定義(抜粋) |
|---|---|
| 電気使用場所 | 「電気を使用するための電気設備を施設した、1の建物又は1の単位をなす場所」(第四号) |
| 需要場所 | 「電気使用場所を含む1の構内又はこれに準ずる区域であって、発電所、蓄電所、変電所及び開閉所以外のもの」(第五号) |
| 架空引込線 | 「架空電線路の支持物から他の支持物を経ずに需要場所の取付け点に至る架空電線」(第九号) |
| 引込線 | 「架空引込線及び需要場所の造営物の側面等に施設する電線であって、当該需要場所の引込口に至るもの」(第十号) |
引込線は「需要場所の引込口に至る」電線と定められています。つまり、電気を供給する側の電線路から需要場所の引込口まで、という区間の名前が条文にあります。責任分界点は、一般にこの引込線の周辺にあることが多いのですが、具体的にどの位置を責任分界点とするかは、電気を供給する側との取り決めによって設備ごとに決まります(当サイトの整理)。
電気事業法にも、境目を考える手がかりがあります。第57条第1項は、一般用電気工作物と直接に電気的に接続する電線路を維持し、及び運用する者(電線路維持運用者)は、経済産業省令で定める場合を除き、経済産業省令で定めるところにより、その一般用電気工作物が技術基準に適合しているかどうかを調査しなければならないと定めています(ただし、その一般用電気工作物の設置の場所に立ち入ることについて、所有者または占有者の承諾を得ることができないときは、この限りでないとされています)。電線路を維持・運用する側と、電気を使う側の設備とが分かれていることが、この条文から読み取れます(当サイトの整理)。出典:電気事業法(e-Gov)第57条第1項。
第二種電気工事士が扱う範囲:一般用電気工作物
第二種電気工事士の学科が中心に扱うのは、一般用電気工作物の工事です。この記事で押さえるのは、一般用電気工作物が、構外の電気工作物と低圧受電電線路以外の電線路で接続されていないもの、つまり低圧で受電するものだという点です(言い換えは当サイトの整理)。
| 項目 | 条文の内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 一般用電気工作物 | 構内に設置する電気工作物で、電気を使用するためのものであって、「低圧受電電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの」など | 電気事業法第38条第1項 |
| 「低圧」の電圧 | 第38条第1項は「低圧」を経済産業省令で定める電圧以下の電圧とし、その電圧を600ボルトとする | 電気事業法第38条第1項・同法施行規則第48条第1項 |
| 高圧・特別高圧で受電する場所 | 解釈は、需要場所において高圧または特別高圧の電気を受電し、変圧器その他の電気機械器具により電気を変成する場所を「変電所に準ずる場所」と定義する | 解釈第1条第六号 |
つまり、600ボルトを超える電圧で受電する設備は、一般用電気工作物の側には入りません(当サイトの整理)。受電点で高圧の責任分界点を考える設備(キュービクルなど)は、第二種電気工事士の学科が中心に扱う一般用電気工作物とは別の区分にあたり、第一種電気工事士や電験三種の学習範囲で扱われます。高圧の単線結線図の見方は第一種電気工事士 高圧ケーブルの端末処理にまとめています。
低圧の引込みの流れ:引込線から引込口開閉器まで
第二種電気工事士の学科で関わる、低圧の引込みの流れを、条文の用語で順に並べると次のようになります(並べ方は当サイトの整理)。
| 順 | 区間・場所 | 条文・出典 | 詳しい説明 |
|---|---|---|---|
| 1 | 架空電線路の支持物 | 解釈第1条第九号(架空引込線の起点) | - |
| 2 | 架空引込線(取付け点まで) | 解釈第1条第九号・第116条(電線の種類・高さ) | 電線の高さの表は電気設備の技術基準の解釈の第116条(116-1表) |
| 3 | 引込口 | 解釈第1条第十号(引込線は引込口に至る) | - |
| 4 | 引込口に近い箇所の開閉器 | 解釈第147条 | 省略できる場合は遮断器と開閉器の違い |
| 5 | 屋内の電路(分電盤から先) | 解釈の屋内配線の各条 | 第二種電工 工事の方法 |
電線の高さや開閉器の省略条件など、数値を伴う内容は電技解釈の各条に定めがあるので、この記事では繰り返しません。ここで押さえたいのは、「どの用語が、流れのどの位置を指すか」です。
- 引込線取付点:架空引込線が需要場所の造営物などに取り付く点(解釈第1条第九号の「取付け点」)。高さの基準は解釈第116条にあります。
- 引込口:引込線が至る先。引込口に近い箇所で、容易に開閉することができる箇所に、低圧屋内電路の開閉器を施設するのが原則です(解釈第147条。火薬庫に施設する低圧屋内電路は、この条の対象から除かれています。また、条件に当てはまる場合は開閉器を省略できます)。
- 引込線の電源側:引込線よりも電気を供給する側。問題文では、この側に地絡遮断装置が設置されているかどうかが、条件として書かれる場合があります。
単線結線図とは:配線図との関係
単線結線図は、電線の条数(本数)に関係なく、1回路の配線を1本の線で表した図です。電気技術者試験センターの例題ページは、第二種電気工事士の配線図が、この単線結線図の形で示されていると説明しています。
| 図の種類 | 描き方 | 使う場面(当サイトの整理) |
|---|---|---|
| 単線結線図 | 1回路を1本の線で表す。傍記(記号に添える文字)などで条数や電線の種類を示す | 配線図問題を読む。設計図として全体をつかむ |
| 複線図 | 電線1本1本と、機器・器具の端子との接続を描く | 技能試験の施工。実際の結線を考える |
センターの例題は、実際に図示された部分の配線を考えるときは、実際の配線・接続状態をイメージした複線図を作成するのが早道である、とも説明しています。配線図問題で本数を数える問いは、単線結線図を複線図に直して考えるのが基本です。配線図の読み方の全体は配線図問題の読み方に、複線図の描き方は複線図の書き方にあります。出典:電気技術者試験センター 配線図の例題。
試験での使われ方:配線図問題と引込みの周辺
電気技術者試験センターが公表した直近5回の学科試験の配線図問題(問題2)は、次の建物の配線図を題材にしています。
| 回 | 配線図の建物(問題文の記載) |
|---|---|
| 令和6年度上期(2024-05-26) | 鉄骨軽量コンクリート造店舗平屋建 |
| 令和6年度下期(2024-10-27) | 鉄骨軽量コンクリート造一部2階建工場及び倉庫 |
| 令和7年度上期(2025-05-25) | 鉄筋コンクリート造の集合住宅共用部の部分的な配線図 |
| 令和7年度下期(2025-10-26) | 木造2階建住宅 |
| 令和8年度上期(2026-05-24) | 鉄筋コンクリート造集合住宅の1戸部分 |
このうち、引込みの周りに関わる問いは、次のとおりです。
| 回・問番号 | 問いの内容(当サイトの要約・問題文の引用ではありません) |
|---|---|
| 令和6年度上期 問36 | 接地工事の種類と、接地抵抗の許容される最大値の組合せ。引込線の電源側に地絡遮断装置が設置されていない、という条件が付く |
| 令和6年度下期 問32 | 工場と倉庫との間で、引込口開閉器を省略できる場合の電路の長さの最大値 |
| 令和7年度上期 問31 | 引込線取付点の地表上の高さの最低値(道路を横断せず、技術上やむを得ない場合で交通に支障がないとき) |
| 令和7年度上期 問37 | 接地工事の接地抵抗の許容される最大値。引込線の電源側に地絡遮断装置が設置されていない、という条件が付く |
根拠となる基準は、それぞれ電気設備の技術基準の解釈の第116条(引込線取付点の高さ)、遮断器と開閉器の違い(引込口の開閉器)、接地工事の種類と抵抗値(接地抵抗)で確かめられます。いずれも、図の「どこに何が付いているか」を読んだうえで、基準の数値を当てはめる問いです。出典:電気技術者試験センター 公表の学科試験問題(令和6年度上期・下期、令和7年度上期。令和6年度上期、令和6年度下期、令和7年度上期)。
間違えやすいポイント
- 責任分界点は、条文に定義がある言葉ではありません。 解釈・省令の用語として覚えるのではなく、「供給する側と使う側の境目」という意味で理解します。
- 引込線は「引込口に至る」電線です。 引込線取付点は、解釈第1条第九号の「取付け点」にあたる位置で、屋内の配線ではありません。
- 引込口開閉器は、原則として施設します。 省略できるのは条件に当てはまる場合だけです(解釈第147条)。
- 単線結線図の1本の線は、1本の電線ではありません。 1回路を表す線で、実際の電線の本数は、傍記や記号から読み取ります。
- 高圧受電設備の責任分界点は、第二種の学科が中心に扱う範囲とは別の話です。 600ボルトを超える電圧で受電する設備は、一般用電気工作物の側に入りません。
まとめ
- 責任分界点は、電気を供給する側と使う側の設備の境目(当サイトの整理)。解釈・省令に定義はなく、位置は設備ごとに取り決めで決まる
- 条文にある境目まわりの用語は、需要場所・引込線・架空引込線・引込口(解釈第1条)
- 第二種電気工事士が扱う一般用電気工作物は、低圧(600ボルト以下)で受電するもの(電気事業法第38条第1項・同施行規則第48条第1項)
- 単線結線図は、電線の条数に関係なく1回路を1本の線で表した図。複線図は、実際の電線と接続を描いた図
- 直近5回の配線図問題で、引込みの周りは、引込線取付点の高さ、引込口開閉器の省略、引込線の電源側の条件つきの接地の問いなどとして出ている
- 高圧受電設備の単線結線図は、第一種電気工事士・電験三種の側で学ぶ
関連:配線図問題の読み方・複線図の書き方・遮断器と開閉器の違い・第一種電気工事士 高圧ケーブルの端末処理。第二種電気工事士の試験全体は第二種電気工事士の学習ページから確認できます。
よくある質問
Q責任分界点は、条文に定義がありますか?
電気設備の技術基準の解釈の第1条(用語の定義)には、「引込線」「需要場所」などの定義はありますが、「責任分界点」の定義は載っていません。電気事業法の条文にも、「責任分界点」という言葉はありません。このため、この記事の責任分界点の説明は「当サイトの整理」です。出典:電気設備の技術基準の解釈第1条、電気事業法(e-Gov)。
Q単線結線図の1本の線は、電線1本を表していますか?
表していません。電気技術者試験センターの例題は、配線図が「電線の条数に関係なく1回路の配線を1本の線で表す、いわゆる単線結線図」で示されていると説明しています。1本の線は1回路を表すので、実際の電線の本数は、図記号や傍記から読み取るか、複線図に直して考えます。センターの例題も、実際の配線を考えるときは「実際の配線・接続状態をイメージした複線図を作成するのが早道」としています。複線図の書き方は第二種電気工事士の複線図の書き方にまとめています。出典:電気技術者試験センター 配線図の例題。
Q高圧受電設備の単線結線図は、第二種電気工事士の学科で読めるようにする必要がありますか?
電気技術者試験センターの第二種電気工事士「学科試験のポイント」が示す出題範囲は、配線図については「配線図の表示事項及び表示方法」で、配電理論及び配線設計の範囲には「配電方式」「引込線」「配線」が挙げられています。センターが公表した直近5回(令和6年度上期〜令和8年度上期)の配線図問題が示す建物は、店舗・工場及び倉庫・集合住宅の共用部・住宅などです。高圧受電設備の単線結線図は、第一種電気工事士や電験三種の側で扱う内容として、第一種電気工事士 高圧ケーブルの端末処理に整理しています。出典:電気技術者試験センター 学科試験のポイント。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月8日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

