第一種電気工事士の技能試験で複線図はどう扱われるか、第二種と何が違うかを、電気技術者試験センターの受験案内・候補問題・令和8年度上期の公表問題で整理。変圧器代用の端子台、三相200Vの色別、施工条件を複線図に書き込む手順と、欠陥の判断基準との対応までまとめます。
目次
結論:第一種電気工事士の技能試験では、令和8年度 下期の受験案内には複線図の提出の定めがなく、複線図を描く場所として問題用紙の余白や保護板を挙げており、合否は作品の欠陥の有無で決まります。第二種との違いは、高圧側と変圧器代用の端子台が加わることと、施工条件(色別・結線図・指定の配線方法)が複線図の書き込みを決めることです。この記事では、センターの公表資料から、その読み方を整理します。
| 比べる点 | 第一種(令和8年度) | 第二種(令和8年度) |
|---|---|---|
| 試験時間(候補問題の公表文) | 60分の予定 | 40分の予定 |
| 候補問題の数 | No.1〜No.10 | No.1〜No.13 |
| 候補問題の電源の表記 | 単相2線6,600V(No.1・2・4・9)、三相3線6,600V(No.3・5・6・7・8・10) | No.1〜No.4の図は単相2線100V・三相3線200V |
| 変圧器の記号 | No.1〜No.9の図にある(No.10はVT) | No.1〜No.4の図にはない |
| 高圧側の材料(上期の公表問題) | 高圧絶縁電線(KIP)、変圧器などは端子台で代用 | 本記事では扱わない |
| 複線図の提出 | 受験案内に定めなし(余白・保護板に描く) | 受験案内に定めなし(同じ受験案内の共通の注記) |
出典:令和8年度第一種 技能試験候補問題、令和8年度第二種 技能試験候補問題、令和8年度 下期 受験案内(いずれも一般財団法人電気技術者試験センター)。表の第二種の欄は、No.1〜No.4に限っています。
この記事の複線図の描き方(手順)は、センターが示したものではなく、公表資料から当サイトが整理したものです。第一種の技能試験全体(日程・機器・欠陥)は第一種電工 技能試験の完全ガイド、第二種の複線図の5手順は第二種の複線図の書き方で扱っています。
第一種の技能試験で、複線図はどう扱われる?
電気技術者試験センターの令和8年度 下期の受験案内で「複線図」が出てくるのは、持参するものの注記だけです。
複線図を描く場合は、問題用紙の余白を利用してください。技能試験では、当日配布する保護板も利用できます。
出典:令和8年度第一種電気工事士 下期試験 受験案内(一般財団法人電気技術者試験センター)
同じ受験案内は、合否の決め方を次のように書いています。
技能試験については、「欠陥の判断基準」に基づき作品の欠陥の有無を判定し、合否が決められます
出典:令和8年度第一種電気工事士 下期試験 受験案内(一般財団法人電気技術者試験センター)
受験案内の記述から読む限り、複線図は採点の対象として書かれておらず、作品が配線図と施工条件のとおりに組み上がるための手段です。センターの「技能試験の概要と注意すべきポイント」(令和8年3月)も、よくある欠陥の「誤接続,誤結線のもの」の項で次のように述べています。
回路を的確に構成するため,複線図を正しく描く練習や作業では,回路が電気的に誤らないように,電線相互の接続や電線と器具への結線の練習を行ってください。
出典:技能試験の概要と注意すべきポイント(令和8年3月)p.45(一般財団法人電気技術者試験センター)
注意点として、受験案内は使えない物にも触れています。持ち込める工具の一覧には、電動工具や、持ち手を延ばすなどの改造をした工具、配布される保護板以外の下敷きや作業用シートは使用できないものとして挙がっています。複線図を描く場所は、問題用紙の余白か保護板です。
この論点の問題を解く:
令和8年度上期の公表問題10問に出た代用端子台
令和8年度上期の技能試験(2026年7月4日)の公表問題No.1〜No.10(問題PDFの例:No.1)の材料表を、当サイトで突き合わせた結果が次の表です。10問とも材料の1行目は高圧絶縁電線(KIP、8mm²)で、候補問題の注記は「機器・器具においては,端子台で代用するものもある。」としています。
| 問題 | 電源(候補問題の図) | 材料表の代用端子台(当サイト集計) |
|---|---|---|
| No.1 | 単相2線 6,600V | 変圧器の代用 |
| No.2 | 単相2線 6,600V | 変圧器の代用、自動点滅器の代用 |
| No.3 | 三相3線 6,600V | 変圧器の代用(3Pと2Pの2種類) |
| No.4 | 単相2線 6,600V | 変圧器の代用、配線用遮断器及び接地端子の代用 |
| No.5 | 三相3線 6,600V | 変圧器の代用、開閉器の代用(6P) |
| No.6 | 三相3線 6,600V | 変圧器の代用(2Pを3個)、開閉器の代用(3P) |
| No.7 | 三相3線 6,600V | 変圧器の代用、CT・過電流継電器の代用 |
| No.8 | 三相3線 6,600V | 変圧器の代用、電磁開閉器の代用(6P) |
| No.9 | 単相2線 6,600V | 変圧器の代用、タイムスイッチ・自動点滅器の代用 |
| No.10 | 三相3線 6,600V | VTの代用、VCB補助接点の代用、表示灯の代用 |
出典:令和8年度上期 第一種電気工事士 技能試験 公表問題 No.1〜No.10、令和8年度第一種 技能試験候補問題(一般財団法人電気技術者試験センター)。端子の箇所数は、PDFの文字の抽出で数が崩れるため表に入れていません。実際の数は問題PDFの図で確かめてください。
下期は同じ候補問題から出題されますが、受験者にどの番号が当たるか、施工条件の詳細は、試験問題に明記されます。
施工条件が複線図に書き込むことを決める
候補問題の注意書きには、「配線図は,電線の本数にかかわらず単線図で示してある。」とあります。電線の本数や色は、図ではなく施工条件の文から読み取ります。令和8年度上期の公表問題のうち、No.1とNo.6の施工条件を、複線図への書き込みに置き換えて表にします(短い引用のみ。全文は問題PDFで確かめてください)。
| 問題 | 施工条件の文(抜粋) | 複線図に書き込むこと |
|---|---|---|
| No.1 | 「変圧器代用の端子台の結線は,図3に従って行うこと。」 | 端子台の一次側(U・V)、二次側(u・o・v)の線を、図3の結線図どおりに引く |
| No.1 | 「200V回路においては電源からスイッチ(ロ)に至る電源側電線には,2心ケーブル1本を使用すること。」 | その区間の電線の本数を2心ケーブル1本で描く |
| No.1 | 「②接地側電線は,すべて白色」「④200V回路の変圧器u相からコンセントに至る配線は,すべて黒色」 | 線ごとに色を書き込む |
| No.6 | 「①接地線は,変圧器T1のv端子に結線する。」 | 接地線の結線先を図4のT1のvに固定する |
| No.6 | 「電流計は,変圧器二次側のS相に接続すること。」「運転表示灯は,開閉器負荷側のU相とV相間に接続すること。」 | 電流計と表示灯の接続先の相を決める |
| No.6 | 「③変圧器の二次側の配線は,わたり線を除きR相に赤色,S相に白色,T相に黒色」 | 二次側の3相に色を割り当てる |
出典:令和8年度上期 第一種電気工事士 技能試験 公表問題 No.1・No.6(一般財団法人電気技術者試験センター)。
KIPの本数も、図と材料表の突き合わせで読み取れます。当サイトでNo.1とNo.6の2問を確かめたところ、次のように一致しました(他の問題には一般化していません)。
| 問題 | 図のKIP | 材料表のKIP | 変圧器代用の端子台の一次側 |
|---|---|---|---|
| No.1 | 100mmの電線が2本 | 長さ約200mmを1本 | 3P(端子5箇所)を1個。一次側はU・Vの2端子 |
| No.6 | 100mmの電線が6本 | 長さ約600mmを1本 | 2P(端子4箇所)を3個。一次側はU・Vの2端子×3個 |
1つめの確かめは「材料の長さ÷100mm」で、No.1が200÷100=2、No.6が600÷100=6です。2つめの確かめは一次側の端子数を数える方法で、No.1は2端子、No.6は2端子×3個=6端子で、どちらも同じ本数になります。
センターは「施工条件で配線の方法が指定されている場合にはそれに従ってください。」とも述べています。
電気的には複数の配線方法が考えられる場合もあります。ただし,施工条件で配線の方法が指定されている場合にはそれに従ってください。
出典:技能試験の概要と注意すべきポイント(令和8年3月)p.16(一般財団法人電気技術者試験センター)
この論点の問題を解く:
描く手順:第二種の5手順に、第一種で足すもの
第二種の複線図の5手順(器具の位置を決める、電源の線を引く、接続点を決める、など)は、第二種の複線図の書き方にまとめています。ここでは繰り返さず、第一種で足す工程だけを挙げます。以下は当サイトの整理で、センターが示した手順ではありません。
- ① 高圧側と変圧器代用の端子台:配線図の高圧側(KIP)の線を、端子台の一次側につなぐ位置を、結線図の指定どおりに書き込む。
- ② 二次側の端子と相・色:二次側の端子(u・o・v など)から負荷へ引く線に、施工条件で決められた色(赤・白・黒など)と、わたり線の有無を書き込む。
- ③ 三相負荷なら開閉器代用の端子台:電源側の端子(R・S・T)から負荷側の端子(U・V・W)へ、相ごとの色を決めて書き込む(No.6では負荷側を「U相に赤色,V相に白色,W相に黒色」とする条件があります)。
3路スイッチや4路スイッチ、パイロットランプの回路が出たときの結線は、3路・4路・パイロットランプの複線図で扱っています。
三相200Vで間違えやすい色別と結線
センターの「注意すべきポイント」は、電線の色別を施工条件の例として次のように示しています。
ⅴ「200V 回路の電源からの配線には,R相に赤色,S相に白色,T相に黒色を使用する。」
出典:技能試験の概要と注意すべきポイント(令和8年3月)p.15(一般財団法人電気技術者試験センター)
同じ頁には「上記は一例です。必ず,課題の施工条件をよく読んで色別を誤らないように施工してください。」という注があります。例えば令和8年度上期のNo.6は、接地側電線を「電流計の回路及びわたり線を除きすべて白色」とし、わたり線にIV5.5mm²(黒色)を使う条件でした。例の色別と問題の条件が一致するとは限らないので、施工条件の文を優先して書き込みます。
複線図の書き込みの誤りは、欠陥の判断基準の次の項目に直結します。
| 欠陥の項目 | 判断基準の文言 | 複線図で防ぐこと(当サイトの整理) |
|---|---|---|
| 3 | 「誤接続,誤結線のもの」 | 結線図どおりの端子に線を引く |
| 4 | 「電線の色別,配線器具の極性が施工条件に相違したもの」 | 線ごとに色を書き込む |
| 2-4 | 「接続方法が施工条件に相違したもの」 | リングスリーブか差込形コネクタかを書き込む |
| 8-3イ | 「端子台の高圧側の結線にあっては,端子台の端から心線が20mm 以上露出したもの」 | 複線図では防げない(施工の寸法) |
出典:技能試験の概要と注意すべきポイント(令和8年3月)第Ⅱ部 欠陥の判断基準(一般財団法人電気技術者試験センター)。8-3には「ロ」として低圧側の5mm以上の露出も定められています。複線図で防げるのは3・4・2-4で、8-3は作業の寸法の注意です。
また同資料は、結線図が示されている端子台への結線の欠陥について、次のように述べています。
電気回路が正しく構成されていない(例:スイッチを入れてもランプが点灯しない,あるいは短絡など)場合は誤接続となります。
出典:技能試験の概要と注意すべきポイント(令和8年3月)p.17(一般財団法人電気技術者試験センター)
練習のしかたと、次の試験日
練習は、公表された問題No.1〜No.10を1問ずつ、次の順で進めるのが分かりやすいです。以下は当サイトの整理です。
- ① 施工条件を読み、色・本数・指定された結線を、複線図に書き込む。
- ② 結線図と指定された端子の位置を、複線図と1か所ずつ照らし合わせる。
- ③ 実際に作品を作り、施工条件と作品を1項目ずつ確かめる。
令和8年度 下期 技能試験の実施日:2026年11月21日(土曜日)。最終確認日:2026-10-04。出典:電気技術者試験センター 第一種電気工事士 試験日程。
試験は上期と下期の年2回あり、令和8年度の上期の技能試験は2026年7月4日(土曜日)でした。令和9年度の日程は、2026-10-04 時点で電気技術者試験センターのページに掲載されていません。
筆記(学科)試験の問題を続けて解いて、変圧器や配線図の基礎を固めておくと、技能試験の施工条件も読み取りやすくなります。
よくある質問
Q第一種電気工事士の技能試験で、複線図は提出しますか?
提出の定めは、電気技術者試験センターの令和8年度 下期の受験案内にはありません。受験案内にある複線図の記述は「複線図を描く場合は、問題用紙の余白を利用してください。技能試験では、当日配布する保護板も利用できます。」の1か所だけです。合否は「欠陥の判断基準」に基づき作品の欠陥の有無で決められるため、複線図は自分が正しく配線するための道具として使います。
Q第一種の複線図は、第二種と同じ描き方でよいですか?
電線の本数や接続点を線で描き出す考え方は同じです。当サイトでは、第二種の複線図の5手順(第二種の複線図の書き方)を土台に、第一種では「高圧側と変圧器代用の端子台」「二次側の端子と相・色」「三相負荷なら開閉器代用の端子台」の書き込みを足すと整理しています。これは当サイトの整理で、センターが描き方を示しているわけではありません。
Q令和8年度下期の技能試験でも、上期と同じ問題が出ますか?
下期の問題は2026年11月21日の試験で初めて示されます。電気技術者試験センターは候補問題について「令和8年度の技能試験問題は,次の No.1 ~ No.10 の配線図の中から出題します。」とし、「配線図,施工条件等の詳細については,試験問題に明記します。」と書いています。上期に公表された問題No.1〜No.10は、配線図の型をつかむ練習に使えますが、下期の施工条件までは決まっていません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。
