基本情報技術者試験のクリティカルパスとPERT図(アローダイアグラム)を、IPAのシラバスVer.9.2と公開問題で整理。最早結合点時刻・最遅結合点時刻・余裕日数の求め方、クラッシングによる短縮を、自作の例題と検算つきで解説します。
目次
結論:基本情報技術者試験のクリティカルパスは、アローダイアグラムで開始から終了までの経路のうち、所要日数が最長のものです。この経路の長さがプロジェクト全体の最短所要日数になり、経路上の作業は余裕日数が0です。求め方は、左から最早結合点時刻、右から最遅結合点時刻を計算し、作業ごとの余裕日数=(終点の最遅時刻)-(始点の最早時刻)-(作業日数)を出す、という順番です。公開問題には、最短所要日数を求める問題と、費用を考えて工程を短縮する問題があります。
シラバスの版:基本情報技術者試験のシラバスはVer.9.2。最終確認日:2026-10-21。出典:IPA 試験要綱・シラバスについて。
シラバスで、クリティカルパスが載っている場所
シラバスVer.9.2では、次の3か所にあります。
| 場所 | 内容(シラバスの記述) |
|---|---|
| 大分類5 プロジェクトマネジメント/中分類14/6. プロジェクトの時間/(3)ツールと技法 | 用語例に、スケジュールネットワーク分析,PERT,CPM(クリティカルパス法),PDM(プレシデンスダイアグラム法),アローダイアグラム,ガントチャート,マイルストーン,クラッシング,ファストトラッキング,ラグ,リード,EVM(用語例の一部) |
| 大分類9 企業と法務/中分類22 企業活動/2. 業務分析・データ利活用/(1)OR・IE/③ 日程計画 | 「PERT やCPM(Critical Path Method)の基本的な手法を理解する。」用語例 日程計画,アローダイアグラム,クリティカルパス |
| 大分類1 基礎理論/中分類1/2. 応用数学/(7)最適化問題 | 「最適化問題とは何か,線形計画法,PERT,最短経路問題などの考え方を理解する。」 |
出典:IPA 基本情報技術者試験(レベル2)シラバス Ver.9.2(PDFのページ 9・72・104)。1行目の用語例は一部です。ITパスポートのシラバスVer.6.5にも「PERT(アローダイアグラム),クリティカルパス分析」の用語例があります(IPA ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5、PDFのページ 10)。用語解説はクリティカルパス・PERT・ガントチャート・WBSにあります。
アローダイアグラムの読み方:矢印が作業、丸が結合点
アローダイアグラムは、作業を矢印、作業の区切りを丸(結合点)で表す図です。矢印の上や下に、作業名と作業日数を書きます。ある結合点に入る矢印の作業がすべて終わらないと、そこから出る矢印の作業を始められません。破線の矢印はダミー作業で、日数0の順序関係だけを表します。最早時刻の計算では、日数0の作業として扱います。
自作の例題を使います。結合点は①〜⑥、作業と日数は次のとおりです。
| 作業 | 始点→終点 | 日数 |
|---|---|---|
| A | ①→② | 5 |
| B | ①→③ | 6 |
| C | ②→④ | 5 |
| D | ③→④ | 3 |
| E | ②→⑤ | 3 |
| F | ④→⑥ | 3 |
| G | ⑤→⑥ | 4 |
①から⑥までの経路は3本です。
| 経路 | 通る作業 | 合計日数 |
|---|---|---|
| 経路1 | A→C→F | 5+5+3=13 |
| 経路2 | A→E→G | 5+3+4=12 |
| 経路3 | B→D→F | 6+3+3=12 |
最長は経路1の13日です。これがクリティカルパスで、プロジェクト全体は最短で13日かかります。経路が少ないうちは全経路を書き出すのが確実です。作業が増えたら、次の節の時刻の計算を使います。
最早結合点時刻と最遅結合点時刻の求め方
結合点ごとに2つの時刻を求めます(当サイトの用語の整理です。表では、最早結合点時刻・最遅結合点時刻を「最早時刻」「最遅時刻」と略します)。
- 最早結合点時刻:その結合点から出る作業を、最も早く始められる時刻。①を0とし、左から右へ、「入る矢印ごとに(始点の最早時刻+作業日数)を求め、その最大値」とする
- 最遅結合点時刻:全体の所要日数を延ばさずに、その結合点に到達できる最も遅い時刻。⑥の最遅時刻を⑥の最早時刻(=全体の所要日数)に合わせ、右から左へ、「出る矢印ごとに(終点の最遅時刻-作業日数)を求め、その最小値」とする
例題の計算結果です。
| 結合点 | 最早時刻(左から) | 最遅時刻(右から) |
|---|---|---|
| ① | 0 | 0 |
| ② | 5(A) | 5 |
| ③ | 6(B) | 7 |
| ④ | 10(C: 5+5、D: 6+3=9 の最大) | 10 |
| ⑤ | 8(E: 5+3) | 9(G: 13-4) |
| ⑥ | 13(F: 10+3、G: 8+4=12 の最大) | 13 |
次に、作業ごとの余裕日数を求めます。余裕日数=(終点の最遅時刻)-(始点の最早時刻)-(作業日数)です。0なら、その作業が遅れると全体が遅れます。
| 作業 | 計算 | 余裕日数 |
|---|---|---|
| A | 5-0-5 | 0 |
| B | 7-0-6 | 1 |
| C | 10-5-5 | 0 |
| D | 10-6-3 | 1 |
| E | 9-5-3 | 1 |
| F | 13-10-3 | 0 |
| G | 13-8-4 | 1 |
余裕日数が0の作業はA・C・Fで、先に書き出した経路1(A→C→F)と一致します。検算(別の考え方):経路2・3は12日で、13日の経路1より1日短いので、経路1と共有しない作業(経路2のE・G、経路3のB・D)には1日の余裕があるはずです。表のE・G・B・Dの余裕日数が1日になっており、整合します。経路1と共有するA・Fは、余裕日数が0です。Pythonで時刻計算と全経路の列挙を行い、同じ結果になることも確認しました。
クラッシングで工期を縮める:短縮は最長経路を縮めてはじめて効く
シラバスはクラッシングとファストトラッキングを用語例に挙げています。公開問題には、費用をかけて作業日数を縮める問題があります(令和5年度 科目A 問13)。令和8年度 科目A 問13の問題文は、クリティカルパス上の作業への投入工数を増やして所要期間を短縮する手法の名前を問うています。ここでは、この考え方に沿って「費用をかけて作業日数を縮める」ことをクラッシングと呼んで扱います(当サイトの説明で、IPAの定義ではありません)。
例題に、短縮の条件を加えます(自作の条件です)。各作業は最大2日まで縮められ、1日縮めるごとの追加費用は次のとおりです。
| 作業 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1日あたりの追加費用(千円) | 300 | 200 | 500 | 400 | 100 | 250 | 350 |
13日を12日にする:クリティカルパス上のA・C・Fのうち、最も安いFを1日縮めます(250千円)。経路1は12日になりますが、経路2(A→E→G)も12日なので、これ以上は経路1だけを縮めても全体は縮みません。
12日を11日にする:A→C→Fと A→E→G の両方に含まれるAを1日縮めます(300千円)。A、Fを1日ずつ縮めると、3経路の長さは、経路1が11日、経路2が11日、経路3(B→D→F)も11日になり、追加費用は550千円です。
確認のため、各作業を0〜2日縮める全組合せ(3の7乗=2187通り)をPythonで調べました。
| 目標の所要日数 | 追加費用が最小の組合せ | 追加費用(千円) |
|---|---|---|
| 12日 | Fを1日 | 250 |
| 11日 | AとFを1日ずつ | 550 |
別解の確認:CとEを1日ずつ縮める(600千円)と所要日数は12日のままで、11日に届きません。クリティカルパスが複数に増える点が、短縮の問題の落とし穴です。1日縮めるたびに、最長経路が何本になったかを書き直してください。
公開問題で確認できた出題の形
当記事が確認したのは、令和5〜8年度の科目A・B公開問題と、2022年のサンプル問題(科目A・B)です。アローダイアグラムと工程短縮を扱う科目Aの問題は次のとおりです。
| 問題 | 確認できた内容 |
|---|---|
| 2022年サンプル問題 科目A 問44 | アローダイアグラムから最短所要日数を求める |
| 令和5年度 科目A 問13 | 費用を考えて、工程を短縮する作業を選ぶ |
| 令和6年度 科目A 問13 | アローダイアグラムから所要日数を求める |
| 令和7年度 科目A 問14 | アローダイアグラムから所要日数を求める |
| 令和8年度 科目A 問13 | クリティカルパス上の作業への投入工数を増やして所要期間を短縮する手法の名前を問う(選択肢にクラッシングとファストトラッキングを含む) |
出典:2022年サンプル問題 科目A、令和5年度・令和6年度・令和7年度・令和8年度の科目A問題冊子。確認した範囲では、科目Bにアローダイアグラムを扱う問題はありませんでした(2026-10-21 時点)。出題の回数や傾向を述べるものではありません。各年度の問題は、令和7年度・令和6年度・令和5年度・2022年サンプル問題の一覧から解けます。
勉強の進め方(当サイトの提案)
IPAの案内ではなく、当サイトの提案です。
- ① 作業が7つ前後なら、まず全経路を書き出して最長を求める。作業が多いときは、最早時刻を左から計算する
- ② 余裕日数は、最遅時刻まで求めて確かめる。余裕日数が0の作業をたどると、クリティカルパスが分かる
- ③ 短縮の問題は、1日縮めるたびに、全経路の長さを書き直す
- ④ 数の読み取りを間違えないよう、結合点の番号と矢印の向きを、問題の図で先に確認する
得点の取り方は科目Aの免除や点数配点も参考になります。アルゴリズムの流れは流れ図の記事にあります。
まとめ
- クリティカルパスは、アローダイアグラムの開始から終了までで所要日数が最長の経路。その長さが全体の最短所要日数で、経路上の作業は余裕日数が0
- 求め方は、最早結合点時刻(左から、最大値)→最遅結合点時刻(右から、最小値)→余裕日数=終点の最遅-始点の最早-作業日数
- 最長経路は複数になることがある。短縮の問題では、1日縮めるたびに全経路の長さを書き直す
- シラバスVer.9.2では、プロジェクトの時間(PERT・CPM・アローダイアグラム・クラッシング)、日程計画、最適化問題に載っている
- 公開問題では、令和5〜8年度の科目Aとサンプル問題で、アローダイアグラムを扱う問題を確認できた
よくある質問
QPERT図とアローダイアグラムは同じものですか?
ITパスポートのシラバスVer.6.5は「PERT(アローダイアグラム)」と書いており、同じ図を指す言葉として扱っています。基本情報技術者試験のシラバスVer.9.2は、PERT、CPM(クリティカルパス法)、PDM(プレシデンスダイアグラム法)、アローダイアグラム、ガントチャートを別々の用語例に並べています。試験では、矢印が作業、丸が結合点を表す図が出たら、アローダイアグラムとして最早・最遅の計算をします。
Qクリティカルパスは1本しかないのですか?
1本とは限りません。この記事の例題でも、AとFを1日ずつ縮めると、3本の経路すべてが11日で同じ長さになります。最長の経路が複数ある場合は、そのすべてがクリティカルパスです。余裕日数が0の作業をたどって確かめてください。
Q余裕日数が0の作業は、すべてクリティカルパス上にありますか?
この記事の余裕日数の式(終点の最遅時刻-始点の最早時刻-作業日数)で0になる作業は、全体の所要日数を決める最長経路上にあります。例題では、余裕日数が0のA・C・Fが、最長経路A→C→Fです。なお、問題が別の種類の余裕日数を定義している場合は、その定義に従ってください。
Qガントチャートでもクリティカルパスは分かりますか?
ガントチャートは作業を横棒で並べて期間を見る図で、作業同士の先行関係をたどって最長経路を求める道具ではありません。クリティカルパスはアローダイアグラムのように、作業の順序関係を表す図で求めます。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月21日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

