行政書士試験の地方自治法の基本用語を条文の言葉で整理します。条例と規則の違い(14条・15条)、条例の公布・施行(16条)、自治事務と法定受託事務(2条8項・9項)、定例会と臨時会、長(首長)の地位、再議と専決処分、直接請求の請求先と必要署名数を表にしました。
目次
結論:地方自治法の基本用語は、誰が・何を・どの手続でに分けると整理できます。条例は議会が議決して定めるもの(14条・96条1項1号)、規則は長が定めるもの(15条)です。事務は自治事務と法定受託事務(2条8項・9項)、議会は定例会と臨時会(102条)、長の地位は147条・148条、住民の直接請求は74条〜87条に請求先と必要署名数、その後の手続が定められています。
この記事は、e-Govに掲載されている地方自治法と日本国憲法の条文だけをもとに、基本用語を整理したものです。行政書士試験の行政法は、令和8年度の試験案内で「行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする」と書かれています(出典:行政書士試験研究センター 令和8年度行政書士試験のご案内)。第232条の2(寄附・補助)の逐条解説と、住民監査請求・住民訴訟は地方自治法232条の2の記事で扱っています。この記事は、それ以前に押さえておきたい用語の意味を整理します。地方自治法全体の条文の構成と、第96条(議会の議決事件)の逐条の読み方は、地方自治法をわかりやすくにまとめています。
地方公共団体の種類:普通地方公共団体と特別地方公共団体
用語の前提として、地方公共団体の種類を確認します。1条の3は、次のように定めています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 地方公共団体 | 普通地方公共団体及び特別地方公共団体(1項) |
| 普通地方公共団体 | 都道府県及び市町村(2項) |
| 特別地方公共団体 | 特別区、地方公共団体の組合及び財産区(3項) |
憲法も、地方自治の根拠を定めています。憲法92条は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定めると書いています。93条は、法律の定めるところにより議事機関として議会を設置し、長、議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は住民が直接選挙すると定めています。94条は、地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、「法律の範囲内で条例を制定することができる」と書いています。
条例と規則:誰が・何について・どんな罰則を定められるか
条例と規則は、制定する者と根拠が違います。条文で比べます。
| 項目 | 条例 | 規則(長が定めるもの) |
|---|---|---|
| 制定者 | 議会(議決)。条例を設け又は改廃することは議会の議決事件(96条1項1号) | 普通地方公共団体の長(15条1項) |
| 根拠条文 | 14条1項、憲法94条 | 15条1項 |
| 定められる事項 | 法令に違反しない限りにおいて、2条2項の事務に関し(14条1項) | 法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し(15条1項) |
| 義務を課し権利を制限するとき | 法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例による(14条2項) | 14条2項により、義務を課し、又は権利を制限するには、条例による(法令に特別の定めがある場合を除く) |
| 罰則 | 法令に特別の定めがあるものを除くほか、二年以下の拘禁刑、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料(14条3項) | 法令に特別の定めがあるものを除くほか、五万円以下の過料(15条2項) |
条例と規則に設けられる罰則:条例は二年以下の拘禁刑、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料(14条3項)。規則は五万円以下の過料(15条2項)。いずれも法令に特別の定めがあるものを除く。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 地方自治法 第14条・第15条。
規則を定める主体は、長のほかにもあります。
| 規則等 | 制定者 | 条文 |
|---|---|---|
| 委員会の規則その他の規程 | 普通地方公共団体の委員会。法律の定めるところにより、法令又は条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、権限に属する事務に関して定める | 138条の4第2項 |
| 会議規則 | 議会。設けなければならない | 120条 |
条例と規則を比べるときは、まず条文の書き方の違いを確認します。条例は「第二条第二項の事務に関し」、規則は「その権限に属する事務に関し」と、範囲の書き方が違います。14条2項は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならないと書いています。
条例の制定から施行まで
条例は、議会の議決で成立し、長が公布して施行されます。
| 段階 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 議決 | 96条1項1号 | 議会は、条例を設け又は改廃することを議決する |
| 送付 | 16条1項 | 議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があったときは、その日から三日以内に長に送付する |
| 公布 | 16条2項 | 長は、送付を受けた日から二十日以内に公布する。ただし、再議その他の措置を講じた場合は、この限りでない |
| 施行 | 16条3項 | 条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して十日を経過した日から施行する |
| 公布に必要な事項 | 16条4項 | 長の署名、施行期日の特例その他の公布に関し必要な事項は、条例で定める |
| 規則への準用 | 16条5項 | 前二項の規定は、規則並びに機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するものに準用する。ただし、法令又は条例に特別の定があるときは、この限りでない |
「議長が三日以内に送付」「長が二十日以内に公布」「公布の日から起算して十日を経過した日から施行」の3つの数字は、条文に書かれた数字です。公布の期限に、再議その他の措置を講じた場合の例外があることも、ただし書で確認します。
自治事務と法定受託事務
地方公共団体が処理する事務は、2条で定義されています。
| 区分 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 普通地方公共団体の事務 | 地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの | 2条2項 |
| 自治事務 | 地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のもの | 2条8項 |
| 第一号法定受託事務 | 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの | 2条9項1号 |
| 第二号法定受託事務 | 法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであって、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの | 2条9項2号 |
自治事務の定義は、「法定受託事務以外のもの」です。先に法定受託事務を覚えておけば、自治事務は、それ以外、と整理できます。
2条13項は、法律又はこれに基づく政令により地方公共団体が処理することとされる事務が自治事務である場合には、国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならないと定めています。この13項の配慮の規定は、自治事務についての定めです。
2条16項は、地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならず、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならないと定め、17項は、これに違反して行った行為は無効とすると定めています。
議会:定例会・臨時会と招集
議会の用語を整理します。
| 用語 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 定例会 | 毎年、条例で定める回数を招集しなければならない | 102条2項 |
| 臨時会 | 必要がある場合において、その事件に限り招集する。付議すべき事件は、長があらかじめ告示する | 102条3項・4項 |
| 招集権者 | 普通地方公共団体の長 | 101条1項 |
| 臨時会の招集の請求 | 議長(議会運営委員会の議決を経て)、又は議員の定数の四分の一以上の者が、長に対し、会議に付議すべき事件を示して請求できる | 101条2項・3項 |
| 会期 | 会期及びその延長並びにその開閉に関する事項は、議会が定める | 102条7項 |
議長又は議員の請求(101条2項・3項)があったときは、長は、請求のあった日から二十日以内に臨時会を招集しなければなりません(同条4項)。
長(首長)の地位と権限
「首長」は一般的な呼び方で、条文の言葉は「普通地方公共団体の長」です。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 置かれる長 | 都道府県に知事、市町村に市町村長 | 139条 |
| 任期 | 四年 | 140条1項 |
| 兼職の禁止 | 衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。地方公共団体の議会の議員並びに常勤の職員及び短時間勤務職員と兼ねることができない | 141条 |
| 統轄・代表 | 当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する | 147条 |
| 事務の管理・執行 | 当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する | 148条 |
長は、統轄・代表(147条)と、事務の管理・執行(148条)が別の条文に分かれていることを確認します。
長と議会の関係:再議と専決処分
長と議会の意見が食い違うときのしくみとして、再議と専決処分があります。
再議(176条)
| 類型 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 異議がある場合の再議 | 議会の議決について異議があるときは、長は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、議決の日(条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決については、送付を受けた日)から十日以内に理由を示して再議に付すことができる | 176条1項 |
| 再議の結果 | 再議に付された議決と同じ議決であるときは、確定する。条例の制定若しくは改廃又は予算に関するものは、出席議員の三分の二以上の者の同意が必要 | 176条2項・3項 |
| 越権・違法の議決 | 議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、長は、理由を示して再議に付し又は再選挙を行わせなければならない | 176条4項 |
専決処分(179条・180条)
専決処分は、長が議会に代わって処分する仕組みです。条文は2種類あります。
| 区分 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 長による処分(一般に専決処分と呼ばれる) | 議会が成立しないとき、113条ただし書の場合になお会議を開くことができないとき、長が議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会が議決すべき事件を議決しないときに、長は、その議決すべき事件を処分することができる。ただし、副知事又は副市町村長の選任の同意などは除く | 179条1項 |
| 報告・承認 | 長は、次の会議でこれを議会に報告し、承認を求めなければならない。条例の制定若しくは改廃又は予算に関する処置の承認議案が否決されたときは、速やかに必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告する | 179条3項・4項 |
| 議会の委任による専決処分 | 議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、長が専決処分にすることができる。専決処分をしたときは、議会に報告しなければならない | 180条1項・2項 |
179条の専決処分は、長が議会の議決を経ずに処分するもので、次の会議で議会に報告して承認を求めます。180条の専決処分は、議会が議決により特に指定した軽易な事項について、長が処分し、議会に報告します。「承認を求める」か「報告」かが違いです。
住民の直接請求:請求先と必要署名数
直接請求は、選挙権を有する者が、その総数の一定割合以上の連署をもって、代表者から長・監査委員・選挙管理委員会に対して請求する制度です。12条・13条は、これを日本国民たる普通地方公共団体の住民の権利として定めています。
| 請求の内容 | 請求先 | 必要な署名数 | その後の手続 | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| 条例の制定・改廃(地方税の賦課徴収、分担金・使用料・手数料の徴収に関するものを除く) | 長 | 選挙権を有する者の総数の五十分の一以上 | 長は受理した日から二十日以内に議会を招集し、意見を付けて議会に付議し、結果を代表者に通知・公表する | 74条 |
| 事務の監査 | 監査委員 | 総数の五十分の一以上 | 監査委員が監査し、結果の報告を決定して、代表者に送付・公表し、議会・長等に提出する | 75条 |
| 議会の解散 | 選挙管理委員会 | 総数の三分の一以上(総数が四十万を超える場合などは、条文の計算式による) | 選挙人の投票に付す。過半数の同意があったときは解散する | 76条・78条 |
| 議員の解職 | 選挙管理委員会 | 所属の選挙区の総数の三分の一以上(同上) | 選挙人の投票に付す。過半数の同意があったときは職を失う | 80条・83条 |
| 長の解職 | 選挙管理委員会 | 総数の三分の一以上(同上) | 選挙人の投票に付す。過半数の同意があったときは職を失う | 81条・83条 |
| 副知事・副市町村長、選挙管理委員、監査委員などの解職 | 長 | 総数の三分の一以上(同上) | 長が議会に付議する。議員の三分の二以上が出席し、その四分の三以上の同意があったときは職を失う | 86条・87条 |
署名数は、条例の制定・改廃と事務の監査は五十分の一、解散・解職は三分の一と覚えます。三分の一の方には、総数が四十万を超える場合に、条文に書かれた計算式による数になる特例があります(76条1項など)。請求先は、条例と解職(副知事等)が長、議会の解散と議員・長の解職が選挙管理委員会、事務の監査が監査委員です。
試験での問われ方(出題の型)
実際の問題文は引用せず、型として整理します。
- 型1:条例と規則の比較。制定者、定められる事項の範囲(2条2項の事務か、長の権限に属する事務か)、罰則の上限(14条3項と15条2項)
- 型2:条例の公布・施行の数字。三日以内の送付、二十日以内の公布、公布の日から起算して十日を経過した日からの施行(16条)
- 型3:自治事務と法定受託事務の区別。定義(2条8項・9項)、自治事務について国が特に配慮しなければならないこと(2条13項)
- 型4:直接請求の請求先と署名数。五十分の一か三分の一か、請求先は長・監査委員・選挙管理委員会のどれか
- 型5:再議と専決処分。長がとれる措置(176条・179条・180条)、議会への報告・承認の違い
- 型6:議会の用語。定例会・臨時会、招集権者、臨時会の請求
間違えやすいポイント
- 条例は議会の議決(96条1項1号)、規則は長(15条)。委員会の規則は138条の4第2項、議会の会議規則は120条
- 条例の罰則は14条3項、規則の罰則は15条2項(五万円以下の過料のみ)
- 条例の公布は長が二十日以内(ただし書あり)、施行は公布の日から起算して十日を経過した日(特別の定があれば別)
- 自治事務は「法定受託事務以外のもの」。法定受託事務には第一号と第二号がある
- 「首長」は条文の言葉ではなく、条文は「普通地方公共団体の長」
- 直接請求は、署名数(五十分の一・三分の一)と請求先(長・監査委員・選挙管理委員会)が請求の種類ごとに違う
- 179条は議会への「承認を求める」、180条は「報告」
この論点の問題を解く
まとめ
- 条例は議会が議決して定め(14条・96条1項1号)、規則は長が定める(15条)。罰則の上限は条例が14条3項、規則が15条2項
- 条例は、議長が三日以内に送付、長が二十日以内に公布、公布の日から起算して十日を経過した日から施行(16条)
- 自治事務は法定受託事務以外のもの(2条8項)。法定受託事務は第一号・第二号に分かれる(2条9項)
- 議会は定例会と臨時会(102条)。招集は長(101条1項)。長の統轄・代表は147条、管理・執行は148条
- 再議(176条)、専決処分(179条・180条)は、長と議会の関係を定める
- 直接請求は、条例の制定・改廃と事務の監査が五十分の一、議会の解散・議員・長の解職・副知事等の解職が三分の一
本サイトは一般財団法人 行政書士試験研究センターとは関係ありません。掲載している問題は、過去の出題論点をもとに合格ナビが作成した論点別問題で、公式の試験問題ではありません。条文は、必ず e-Gov 法令検索の最新の内容で確認してください。
よくある質問
Q条例で罰則を定めることはできますか?
できます。地方自治法14条3項は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の拘禁刑、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができると定めています。規則(15条2項)で設けられる罰則は、五万円以下の過料です。
Q「首長」という言葉は、地方自治法の条文に出てきますか?
地方自治法の条文には、「首長」という言葉は出てきません。条文の言葉は「普通地方公共団体の長」で、都道府県に知事、市町村に市町村長が置かれます(139条)。「首長」は、これらの長をまとめて指す一般的な呼び方として使われます。
Q定例会と臨時会は、どう違いますか?
地方自治法102条は、普通地方公共団体の議会は、定例会及び臨時会とすると定めています。定例会は、毎年、条例で定める回数を招集しなければならず(同条2項)、臨時会は、必要がある場合において、その事件に限り招集します(同条3項)。議会は、普通地方公共団体の長が招集します(101条1項)。
Q直接請求で、議員の解職請求の請求先と、副知事の解職請求の請求先は同じですか?
同じではありません。議会の解散請求(76条)、議員の解職請求(80条)、長の解職請求(81条)は、選挙管理委員会に対してします。副知事・副市町村長、選挙管理委員、監査委員などの解職請求(86条)は、普通地方公共団体の長に対してします。請求先が違えば、その後の手続も、選挙人の投票(76条〜83条)か、議会の議決(86条・87条)かに分かれます。
Q法定受託事務についても、条例を制定できますか?
地方自治法14条1項は、普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、2条2項の事務に関し、条例を制定することができると定めています。2条2項の事務は、自治事務と法定受託事務の両方を含みます(2条8項・9項)。なお、96条2項は、条例で議会の議決すべき事件を定めることができるとしつつ、法定受託事務に係るものについては、国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除くと書いています。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

