行政書士試験の行政機関の概念を整理します。行政庁・諮問機関・参与機関・執行機関・補助機関は行政法の学問上の分類、国家行政組織法3条の省・委員会・庁と8条の審議会等は条文の定め。両者を分けて、行政委員会や命令の種類まで表で確認できます。
目次
結論:行政機関の話は、2つに分けて読みます。①国家行政組織法に書かれている、国の行政機関の組織の定め(3条の省・委員会・庁、8条の審議会等、8条の2の施設等機関、8条の3の特別の機関、9条の地方支分部局)と、②行政法の学問上の分類(行政庁・諮問機関・参与機関・執行機関・補助機関)です。②は条文に定義が置かれていない整理なので、「行政法の学問上の整理」と分けて覚えるのが安全です。
この記事は、e-Govに掲載されている国家行政組織法・行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・地方自治法の条文だけをもとに、行政機関の概念を整理したものです。行政書士試験の行政法は、令和8年度の試験案内で「行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする」と書かれています(出典:行政書士試験研究センター 令和8年度行政書士試験のご案内)。行政機関の概念は、行政不服審査法や行政事件訴訟法に出てくる「行政庁」を読むときの土台になります。科目全体の学習順序は行政書士の行政法対策、救済法は行政事件訴訟法の準用の覚え方と行政不服審査法の記事で扱っています。
行政機関の概念:条文の定めと学問上の分類を分ける
「行政機関」の説明には、性格の違う2種類の内容が混ざりやすいので、先に分けておきます。
| 種類 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 条文の定め | 国の行政機関の組織の基準、省・委員会・庁、審議会等、施設等機関、特別の機関、地方支分部局 | 国家行政組織法(3条、8条、8条の2、8条の3、9条) |
| 学問上の分類 | 行政庁、諮問機関、参与機関、執行機関、補助機関 | 行政法の学問上の整理(条文に、これらの分類の定義は置かれていません) |
国家行政組織法1条は、この法律の目的を、「内閣の統轄の下における行政機関で内閣府及びデジタル庁以外のもの」(国の行政機関)の組織の基準を定めることだと書いています。内閣府とデジタル庁は、この法律の対象の外にあります。
行政手続法2条5号にも「行政機関」の定義があります。法律の規定に基づき内閣に置かれる機関、国家行政組織法3条2項に規定する機関、地方公共団体の機関(議会を除く)などを挙げています。同じ「行政機関」という言葉でも、法律ごとに定義が置かれている場合があるので、問題文がどの法律の話をしているかを確認します。
学問上の分類:行政庁・諮問機関・参与機関・執行機関・補助機関
次の5つは、行政法の学問上の整理です。機関が行う作用の性質に着目した分類で、国家行政組織法に分類名の定義が置かれているわけではありません。
| 分類 | 学問上の整理 | 条文で確認できる関連の言葉 |
|---|---|---|
| 行政庁 | 行政主体の意思を決定し、外部に表示する権限を持つ機関 | 行政不服審査法4条(処分庁)・9条1項(審査庁)、行政事件訴訟法11条(被告適格)などが「行政庁」を使っている |
| 諮問機関 | 行政庁の諮問に応じて、意見を述べる機関 | 国家行政組織法8条の審議会等、行政不服審査法43条の行政不服審査会への諮問 |
| 参与機関 | 行政庁の意思決定に参与する(議決や同意が必要となる)機関 | 学問上の整理 |
| 執行機関 | 行政目的を、実力を使って実現する機関 | 学問上の整理。地方自治法の「執行機関」は別の意味(後述) |
| 補助機関 | 行政庁その他の機関を補助する機関 | 国家行政組織法16条(副大臣)、17条(大臣政務官)、18条(事務次官) |
ここで、条文を確認します。
- 行政庁:行政不服審査法4条は、審査請求を、法律(条例に基づく処分については条例)に特別の定めがある場合を除くほか、処分庁等に上級行政庁がない場合などの区分に応じて、一定の「行政庁」に対してするものと書いています。行政事件訴訟法11条1項は、処分又は裁決をした「行政庁」が国又は公共団体に所属する場合に、取消訴訟の被告を、処分の取消しの訴えでは処分をした行政庁の所属する国又は公共団体、裁決の取消しの訴えでは裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体とすると書いています。「行政庁」という言葉が使われている条文で、誰を指しているのかを読み取ります
- 補助機関:国家行政組織法16条3項は、副大臣は「その省の長である大臣の命を受け、政策及び企画をつかさどり、政務を処理し、並びにあらかじめその省の長である大臣の命を受けて大臣不在の場合その職務を代行する」と書いています。18条2項は、事務次官が「その省の長である大臣を助け、省務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する」と書いています
国家行政組織法3条:省・委員会・庁
3条は、国の行政機関の組織の基本を定めています。
| 項 | 内容(条文の言葉) |
|---|---|
| 1項 | 国の行政機関の組織は、この法律で定める |
| 2項 | 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる |
| 3項 | 省は、内閣の統轄の下に、各省大臣の分担管理する行政事務などをつかさどる機関として置かれる。委員会及び庁は、省に、その外局として置かれる |
| 4項 | 国の行政機関として置かれるものは、別表第一に掲げる |
別表第一には、省ごとに委員会と庁が並んでいます。委員会の例として、総務省の外局の公害等調整委員会、法務省の外局の公安審査委員会、厚生労働省の外局の中央労働委員会、国土交通省の外局の運輸安全委員会、環境省の外局の原子力規制委員会が掲げられています。庁の例には、消防庁(総務省)、国税庁(財務省)、観光庁・気象庁・海上保安庁(国土交通省)などがあります。
3条3項の「外局」という言葉が試験の根拠になります。委員会及び庁は、省の「外局」として置かれます。長の呼び方は、6条が、委員会の長は委員長、庁の長は長官と書いています。省の長は、5条1項が、各省大臣と書いています。
行政委員会:委員会は省の外局
「行政委員会」という言葉は、国家行政組織法の条文には出てきません。条文にあるのは「委員会」で、3条2項と3項により、省の外局として置かれます。一般に、合議制の機関で、一定の独立性を持つ行政機関を指して「行政委員会」と呼ぶのは、行政法の学問上の整理です。
条文から確認できる委員会に関する定めは、次のとおりです。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 3条2項・3項 | 委員会は、省、庁と並ぶ国の行政機関で、省の外局として置かれる |
| 6条 | 委員会の長は、委員長とする |
| 7条7項・8項 | 委員会には、法律の定めるところにより、事務局を置くことができる。特に必要がある場合には、法律の定めるところにより、事務総局を置くことができる |
| 10条 | 各委員会の委員長は、その機関の事務を統括し、職員の服務を統督する |
| 13条1項 | 各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる |
13条1項に「別に法律の定めるところにより」という条件があることを見落とさないようにします。委員会や庁が規則などを定められるのは、国家行政組織法だけで足りるのではなく、別の法律の定めがあることが前提です。
国家行政組織法8条:審議会等と、8条の2・8条の3・9条
8条から9条までに置かれている機関の種類を、条文の言葉で比べます。
| 条 | 機関 | 条文の内容 |
|---|---|---|
| 8条 | 審議会等 | 法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができる |
| 8条の2 | 施設等機関 | 法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、試験研究機関、検査検定機関、文教研修施設(これらに類する機関及び施設を含む)、医療更生施設、矯正収容施設及び作業施設を置くことができる |
| 8条の3 | 特別の機関 | 特に必要がある場合には、8条・8条の2に規定するもののほか、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律の定めるところにより、置くことができる |
| 9条 | 地方支分部局 | その所掌事務を分掌させる必要がある場合に、法律の定めるところにより置くことができる |
7条は、内部部局(官房及び局)の定めです。8条の審議会等と、7条の内部部局は、条文の見出しが別になっています。
8条の審議会等に、学問上の分類(諮問機関など)を当てはめて考えることはできますが、8条の条文は「調査審議、不服審査その他」と書いており、諮問に答える機関に限っていません。試験では、「審議会等は諮問を受ける機関だけを指す」という文は、条文の言葉と比べて確かめます。
条文の使われ方:行政不服審査法での審議会等と行政不服審査会
行政不服審査法では、国家行政組織法の機関が条文に直接登場します。
- 9条1項ただし書は、審理員の指名の規定が適用されない場合として、審査庁が、国家行政組織法3条2項に規定する委員会である場合、同法8条に規定する機関である場合などを挙げています
- 43条1項は、審査庁が審理員意見書の提出を受けたときに、審査庁が主任の大臣又は国家行政組織法3条2項に規定する庁の長などである場合には、行政不服審査会に諮問しなければならないと書いています。この諮問をしなくてよい場合も同項で列挙されています
どの機関に諮問するのかを、審査庁が誰かによって見分ける、という読み方の例です。
命令・告示・訓令・通達:誰が何を出せるか
国家行政組織法12条から14条は、行政機関の長が出せる命令の種類を定めています。
| 条 | 出せる者 | 内容 |
|---|---|---|
| 12条1項 | 各省大臣 | 主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、省令を発することができる |
| 12条3項 | (省令の限界) | 省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない |
| 13条1項 | 各委員会・各庁の長官 | 別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる |
| 14条1項 | 各省大臣・各委員会・各庁の長官 | その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合に、告示を発することができる |
| 14条2項 | 各省大臣・各委員会・各庁の長官 | その機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる |
12条3項の「法律の委任がなければ」という条件が、省令に関する出題の根拠になります。
地方の機関との違い:地方自治法の執行機関と附属機関
地方公共団体の機関は、地方自治法に別の定めがあります。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 138条の4第1項 | 普通地方公共団体に、執行機関として、普通地方公共団体の長のほか、法律の定めるところにより、委員会又は委員を置く |
| 138条の4第3項 | 法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として、自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない |
| 180条の5第1項 | 執行機関として法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かなければならない委員会及び委員は、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会(人事委員会を置かない普通地方公共団体では公平委員会)、監査委員 |
地方自治法でいう「執行機関」は、長と、委員会又は委員という組織の種類を指す条文上の言葉です。行政法の学問上の「執行機関」(実力で行政目的を実現する機関)とは、意味が違います。「諮問」「審議会」といった言葉は、地方自治法では、執行機関の「附属機関」の例として挙がっています。
この論点の問題を解く
試験での問われ方(出題の型)
条文と学問上の整理の違いから、次のような出題の型が考えられます。実際の問題文は引用せず、型として書きます。
- 型1:国家行政組織法3条2項の機関(省・委員会・庁)の位置づけを問う。「委員会と庁は省の外局」という3項の内容を確認する
- 型2:行政庁、諮問機関、執行機関などの学問上の分類を、典型例に当てはめて分類させる
- 型3:国家行政組織法12条・13条・14条の命令の種類を、出す者と条件で整理させる。省令の12条3項、規則の13条1項の条件に注意する
- 型4:行政不服審査法・行政事件訴訟法の条文の中で、「行政庁」や「審査庁」を誰と読むかを問う
- 型5:行政委員会や審議会等の性格を問う。条文の言葉(外局、合議制)と、学問上の整理を分けて読む
間違えやすいポイント
- 行政庁・諮問機関・参与機関・執行機関・補助機関は、行政法の学問上の分類です。国家行政組織法に、これらの定義は置かれていません
- 国家行政組織法の対象は、内閣府とデジタル庁以外の国の行政機関です(1条)
- 委員会及び庁は、省の外局です(3条3項)。条文に「行政委員会」という言葉はありません
- 8条の審議会等は、「調査審議、不服審査その他」と書かれていて、諮問に限った規定ではありません
- 規則その他の特別の命令を各委員会・各庁の長官が発するには、「別に法律の定めるところにより」という条件があります(13条1項)
- 地方自治法の「執行機関」は、長と委員会又は委員を指す条文上の言葉で、学問上の「執行機関」とは意味が違います
まとめ
- 行政機関の問題は、条文の定め(国家行政組織法など)と、行政法の学問上の分類の2つに分けて読む
- 国の行政機関は、省、委員会及び庁(3条2項)。委員会と庁は省の外局(3条3項)
- 審議会等(8条)、施設等機関(8条の2)、特別の機関(8条の3)、地方支分部局(9条)は、条文で置かれる機関の種類
- 行政庁・諮問機関・参与機関・執行機関・補助機関は、学問上の分類。条文で確認できるのは、「行政庁」という言葉の使われ方や、補助機関にあたる官職の職務など
- 省令は各省大臣(12条)、規則その他の特別の命令は各委員会・各庁の長官(13条)、告示と訓令・通達は各省大臣・各委員会・各庁の長官(14条)
- 地方自治法の執行機関(138条の4)と、学問上の執行機関は、意味が違う
本サイトは一般財団法人 行政書士試験研究センターとは関係ありません。掲載している問題は、過去の出題論点をもとに合格ナビが作成した論点別問題で、公式の試験問題ではありません。条文は、必ず e-Gov 法令検索の最新の内容で確認してください。
よくある質問
Q行政機関と行政庁は、同じ意味ですか?
同じ意味ではありません。国家行政組織法は、国の行政機関として、省、委員会及び庁を置くと定めています(3条2項)。一方、行政庁は、行政不服審査法の「処分をした行政庁」(処分庁)や、行政事件訴訟法の「処分又は裁決をした行政庁」のように、他の法律の条文で使われている言葉です。「行政庁」とは何かを定義した条文は、国家行政組織法にも、行政手続法2条(定義)にも置かれていません。行政庁を、行政主体の意思を決定し外部に表示する権限を持つ機関と整理するのは、行政法の学問上の整理です。
Q国家行政組織法8条の審議会等は、諮問に答えるだけの機関ですか?
条文は、そう限っていません。8条は、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができると書いています。「調査審議」のほかに「不服審査」が挙がっている点を、条文で確認しておきます。
Q地方自治法の「執行機関」と、行政法の学問上の「執行機関」は同じですか?
同じ言葉でも、使われ方が違います。地方自治法138条の4第1項は、普通地方公共団体に、執行機関として、長のほか、法律の定めるところにより委員会又は委員を置くと書いています。ここでの執行機関は、長や委員会、委員という組織の種類を指す、条文上の言葉です。一方、行政法の学問上の整理で「執行機関」と言うときは、行政目的を実力で実現する機関を指して使われます。試験の問題文では、どちらの意味で使われているかを、文脈で見分けます。
Q各省大臣と各委員会・各庁の長官は、同じ種類の命令を出せますか?
条文の書き方が違います。省令は、各省大臣が、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて発するものです(国家行政組織法12条1項)。各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができます(13条1項)。告示は、各省大臣、各委員会及び各庁の長官が、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合に発することができます(14条1項)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

