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黙秘権とは?憲法31条・令状主義・38条を条文で整理行政書士の憲法

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

黙秘権・憲法31条・令状主義を、日本国憲法31条〜40条の条文で整理します。法定手続の保障(31条)、逮捕と令状(33条)、住居・書類・所持品の捜索・押収(35条)、自己に不利益な供述の強要の禁止と自白(38条)を表で確認し、裁判所サイトの2つの最高裁大法廷判決の裁判要旨を載せます。

目次
  1. 憲法31条〜40条の一覧
  2. 憲法31条:法律の定める手続の保障
  3. 令状主義:33条(逮捕)と35条(住居等の侵入・捜索・押収)
  4. 憲法38条:自己に不利益な供述と自白
  5. 憲法34条・36条・37条・39条・40条の押さえどころ
  6. 判例(裁判所サイトの裁判要旨)
  7. 試験での問われ方:内容の型
  8. 間違えやすいポイント
  9. まとめ
  10. 参照した一次ソース
結論:憲法31条〜40条は、刑事手続に関する保障を順に書いた条文です。31条は「法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と書く、法定手続の保障です。令状主義は、逮捕を定める33条と、住居・書類・所持品の侵入・捜索・押収を定める35条が、権限を有する司法官憲の発する令状を要求する定めです。38条1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と書きます。「黙秘権」という語は日本国憲法の条文に書かれていません(e-Gov、2026-10-09 時点)。刑事訴訟法には、取調べ前の告知(198条2項)や被告人の供述拒否(311条1項)の規定があります。

この記事は、e-Govに掲載されている日本国憲法と刑事訴訟法の条文(2026-10-09 時点の現行の内容)と、裁判所の裁判例検索に載っている2件の最高裁判所大法廷判決の裁判要旨をもとに、憲法の条文の言葉を整理したものです。個別の事件への当てはめや、取調べ・逮捕を受けた場合の対応の助言はしません。個別の事情についての相談先の案内として、日本司法支援センター(法テラス)のサイトがあります。憲法の判例全体は行政書士の憲法判例(最高裁判例12件)にあり、この記事ではそこで扱う12件を繰り返しません。

憲法31条〜40条の一覧

条文内容(条文の要約・現代仮名づかい)
31条法律の定める手続によらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられない
32条何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない
33条現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない
34条理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留または拘禁されない。正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない
35条住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない(1項)。捜索または押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状による(2項)
36条公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる
37条刑事事件の被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する(1項)。すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する(2項)。いかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼できる。被告人が自ら依頼できないときは、国でこれを付する(3項)
38条何人も、自己に不利益な供述を強要されない(1項)。強制、拷問もしくは脅迫による自白、または不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白は、証拠とすることができない(2項)。自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科せられない(3項)
39条実行の時に適法であった行為または既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない
40条抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる

憲法31条:法律の定める手続の保障

31条は1つの文です。部分に分けると、次のとおりです。

部分条文の言葉
主語何人も
条件法律の定める手続によらなければ
禁じられることその生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない

条件は「法律の定める手続」です。条文は、手続の内容については書いていません。31条が行政上の手続にも及ぶかどうかは、判例の問題です(この記事の判例の章を参照)。

令状主義:33条(逮捕)と35条(住居等の侵入・捜索・押収)

令状主義の2つの条文を、条文の言葉で比べます。

項目憲法33条憲法35条
対象逮捕住居、書類及び所持品についての侵入、捜索及び押収
令状が不要な場合現行犯として逮捕される場合33条の場合
令状を発する者権限を有する司法官憲権限を有する司法官憲(2項)
令状に明示すること理由となっている犯罪捜索する場所及び押収する物(正当な理由に基づいて発せられる)
令状の単位—各別の令状(2項)

35条1項は「第三十三条の場合を除いては」と書いています。33条の場合に何が含まれ、令状なしの侵入・捜索・押収がどこまで許されるかは、刑事訴訟法と判例の問題です。この記事では、条文の言葉の確認にとどめます。

刑事訴訟法の条文との対応(参考)

憲法の言葉が、法律でどう書かれているかの一例です。

場面刑事訴訟法の条文
通常逮捕199条1項本文は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる、と書く
現行犯逮捕213条は、現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる、と書く
緊急逮捕210条1項は、死刑または無期もしくは長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕できる、と書く。この場合は、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならず、逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない
令状による捜索・差押え218条1項は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、捜索、電磁的記録提供命令または検証をすることができる、と書く
逮捕に伴う処分220条1項は、199条の規定により被疑者を逮捕する場合または現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、人の住居または人の看守する邸宅、建造物もしくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること、逮捕の現場で差押え・捜索・検証をすること、ができると書く(210条の規定による逮捕の場合も、必要があるときは同様)。3項は、この処分をするには令状は必要としない、と書く

緊急逮捕(210条)と憲法33条の「令状によらなければ、逮捕されない」の関係は、条文の言葉だけでなく判例の考え方によります。この記事では、判例を取り上げません。

憲法38条:自己に不利益な供述と自白

38条は3つの項に分かれています。

項内容関連する刑事訴訟法の条文
1項何人も、自己に不利益な供述を強要されない198条2項:被疑者の取調べに際し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。311条1項:被告人は、終始沈黙し、または個々の質問に対し、供述を拒むことができる
2項強制、拷問もしくは脅迫による自白、または不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない319条1項:強制、拷問または脅迫による自白、不当に長く抑留または拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、証拠とすることができない
3項自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科せられない319条2項:被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない

1項は「供述を強要されない」、2項は「自白を証拠とすることができない」、3項は「唯一の証拠が自白のとき有罪とされない」です。3つの項は、禁じる対象(強要、証拠能力、有罪とすること)が違います。

憲法34条・36条・37条・39条・40条の押さえどころ

条文押さえる言葉
34条理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留または拘禁されない。拘禁の理由は、要求があれば、公開の法廷で示される
36条拷問と残虐な刑罰は「絶対に」禁じられる
37条3つの項で、公開裁判(1項)、証人に対する権利(2項)、弁護人(3項)を別々に書く。弁護人は、被告人が自ら依頼できないときは国が付する
39条実行の時に適法であった行為(遡及処罰の禁止)と既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない
40条無罪の裁判を受けたときの刑事補償。「法律の定めるところにより」国に補償を求める

判例(裁判所サイトの裁判要旨)

裁判所の裁判例検索には、31条・35条・38条1項の保障を行政上の手続との関係で論じた最高裁判所大法廷判決が載っています。ここでは、裁判所サイトに載っている事件名・事件番号・裁判年月日・裁判要旨だけを示します。通称の列は学習上の呼び名で、裁判所サイトの記載ではありません。

事件名(裁判所サイトの記載)通称(学習上の呼び名)裁判年月日・法廷事件番号判例集参照法条のうち憲法の条文
工作物等使用禁止命令取消等成田新法事件平成4年7月1日・最高裁判所大法廷・判決昭和61(行ツ)11民集46巻5号437頁21条1項・22条1項・29条1項2項・31条・35条
所得税法違反川崎民商事件昭和47年11月22日・最高裁判所大法廷・判決昭和44(あ)734刑集26巻9号554頁35条1項・38条1項

工作物等使用禁止命令取消等(昭和61(行ツ)11)の裁判要旨のうち31条・35条に関するもの

裁判所サイトの裁判要旨の四は、次のとおりです。

  • 四 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五九年法律第八七号による改正前のもの)三条一項一、二号は、憲法三一条の法意に反しない。

裁判所サイトの裁判要旨の五は、同法(昭和59年法律第87号による改正前のもの)3条1項・3項が憲法35条の法意に反しない、とするものです。裁判要旨には、四について意見がある旨が付記されています。

所得税法違反(昭和44(あ)734)の裁判要旨

裁判所サイトの裁判要旨は、次のとおりです。

  • 一 当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が、憲法三五条一項による保障の枠外にあることにはならない。
  • 二 所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六三条、七〇条一〇号に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといつて、憲法三五条の法意に反するものではない。
  • 三 憲法三八条一項による保障は、純然たる刑事手続以外においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続にはひとしく及ぶものである。
  • 四 所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六三条、七〇条一〇号、一二号に規定する質問、検査は、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」の「強要」にあたらない。

裁判要旨が判断の対象としているのは、2件とも、特定の法律の特定の条文です(昭和61(行ツ)11は新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法、昭和44(あ)734は改正前の所得税法の条文)。

この記事のほかの憲法判例は、行政書士の憲法判例(最高裁判例12件)の早見表を参照してください。

試験での問われ方:内容の型

条文の言葉が入れ替わった記述を見抜く型が中心になります。

  • 令状を発する者:憲法は「権限を有する司法官憲」(33条・35条)と書く。33条・35条の条文に「裁判官」という語はない
  • 令状が不要な場面:33条は現行犯として逮捕される場合を除く。35条は33条の場合を除く
  • 令状の単位:35条2項は、捜索または押収を「各別の令状」により行うと書く
  • 38条の3つの項:強要の禁止(1項)、自白の証拠能力(2項)、唯一の証拠が自白のとき(3項)
  • 行政手続への適用:判例の要旨が述べるのは、特定の法律の特定の条文についての判断
  • どの条文が何を保障するか:31条(手続)、33条(逮捕)、34条(抑留・拘禁)、35条(住居等)、36条(拷問)、37条(被告人)、38条(自白)、39条(遡及・二重処罰)、40条(補償)

間違えやすいポイント

よくある誤解条文・要旨では
憲法に「黙秘権」と書かれている条文に「黙秘権」の語の記載がない(2026-10-09 時点)。38条1項は「自己に不利益な供述を強要されない」
逮捕令状は検察官が発する33条は「権限を有する司法官憲」。刑事訴訟法199条1項は、裁判官のあらかじめ発する逮捕状と書く
現行犯逮捕にも令状が必要33条は現行犯として逮捕される場合を除く。刑事訴訟法213条は、何人でも、逮捕状なく逮捕できると書く
捜索・押収の令状は、まとめて1通でよい35条2項は「各別の令状」
自白があれば、他に証拠がなくても有罪にできる38条3項は、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされないと書く
強制による自白も、任意の自白と同じく証拠にできる38条2項は、強制、拷問もしくは脅迫による自白は、証拠とすることができないと書く
38条1項の保障は、刑事手続だけに及ぶ川崎民商事件の裁判要旨三は、純然たる刑事手続以外でも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶとする
無罪が確定しても、同じ事件で再び刑事責任を問える39条は、既に無罪とされた行為と、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われないと書く

まとめ

  • 憲法31条〜40条は、刑事手続の保障を順に書く。31条は法定手続、32条は裁判を受ける権利、33条は逮捕と令状、34条は抑留・拘禁、35条は住居等、36条は拷問の禁止、37条は被告人の権利、38条は供述と自白、39条は遡及・二重処罰、40条は刑事補償
  • 令状主義は、33条(逮捕)と35条(住居・書類・所持品)。令状を発するのは権限を有する司法官憲で、現行犯逮捕(33条)と、33条の場合(35条1項)が例外
  • 35条2項は、捜索または押収を、各別の令状により行うと書く
  • 「黙秘権」の語は憲法の条文にない。38条1項が「自己に不利益な供述を強要されない」と書く。刑事訴訟法には、198条2項(告知)・311条1項(供述拒否)の規定がある
  • 38条2項は自白の証拠能力、3項は唯一の証拠が自白のときの有罪の禁止
  • 最高裁判所大法廷の2件(昭和61(行ツ)11、昭和44(あ)734)の裁判要旨は、行政上の手続と31条・35条・38条1項の関係を、特定の法律の特定の条文について判断している
本サイトは一般財団法人 行政書士試験研究センターとは関係ありません。掲載している問題は、過去の出題論点をもとに合格ナビが作成した論点別問題で、公式の試験問題ではありません。条文は、必ず e-Gov 法令検索の最新の内容で確認してください。この記事は一般的な制度の説明であり、個別の事情への助言ではありません。

参照した一次ソース

よくある質問

Q黙秘権は、日本国憲法のどの条文に書かれていますか?

日本国憲法の条文には「黙秘権」という語の記載がありません(e-Gov、2026-10-09 時点)。自己に不利益な供述の強要の禁止を定めているのは、38条1項で、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」と書いています。刑事訴訟法は、取調べの前に「自己の意思に反して供述をする必要がない旨」を被疑者に告げること(198条2項)や、被告人が「終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる」こと(311条1項)を定めています。

Q令状主義とは、憲法のどの条文が定めているのですか?

憲法33条が逮捕について、35条が住居・書類・所持品についての侵入・捜索・押収について、裁判官などの司法官憲が発する令状を要求しています。33条は、現行犯として逮捕される場合を除き、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ逮捕されない、と書いています。35条1項は、33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ侵されない、と書き、2項は、捜索または押収を、権限を有する司法官憲が発する各別の令状によると書いています。

Q現行犯として逮捕するときも、令状が必要ですか?

憲法33条は、現行犯として逮捕される場合を令状の要求から除いています。刑事訴訟法213条は、現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる、と書いています。

Q憲法38条は、自白について何を定めていますか?

38条2項は、強制、拷問もしくは脅迫による自白、または不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない、と書いています。3項は、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科せられない、と書いています。

Q憲法31条は、刑罰を科す手続だけに関する規定ですか?

31条の文言は、「法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」です。刑罰以外の行政上の手続との関係は、判例で問題になっています。裁判所サイトの最高裁判所大法廷平成4年7月1日判決(昭和61(行ツ)11)の裁判要旨は、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和59年法律第87号による改正前のもの)3条1項1号・2号は「憲法三一条の法意に反しない」としています(四につき意見がある)。

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