行政書士試験の憲法で、人権を誰が持つか(享有主体)を、外国人(マクリーン事件・外国人の地方選挙権・管理職選考)、法人(八幡製鉄・南九州税理士会)、天皇(民事裁判権)に分け、私人間効力(三菱樹脂・定年年齢の男女差・百里基地)まで、裁判所の判例ページの事件番号と裁判要旨の言葉で整理します。
目次
結論:人権の享有主体の論点は、誰が(外国人・法人・天皇)、どの権利を、どこまで持つかを、裁判要旨の言葉で1件ずつ押さえます。外国人については、マクリーン事件(昭和53年)の要旨が、在留する権利は保障されないこと、政治活動の自由は外国人の地位にかんがみ認めることが相当でないと解されるものを除き及ぶことを述べています。法人は、八幡製鉄事件(昭和45年)の要旨が「性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用される」とし、私人間の関係では、三菱樹脂事件(昭和48年)の要旨が「憲法一四条や一九条の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない」としています。
この記事は、日本国憲法の条文(e-Gov法令検索)と、裁判所の裁判例検索の個別ページに載っている事件番号・裁判年月日・裁判要旨だけをもとに整理したものです。裁判要旨は判決の本文ではなく、結論と要点を短くまとめた欄です。三菱樹脂事件を思想・良心の自由の事例として扱った整理は精神的自由の記事にあり、この記事では私人間効力の論点に絞って、短く扱います。
判例の一覧表は行政書士の憲法判例、憲法の基本原理は基本原理の記事にあります。
条文は、人権の主語をどう書いているか
人権の享有主体の論点は、条文の主語の書き方から始まります。第三章(10条〜40条)の主な条文の主語は、次のとおりです。
| 条文 | 権利 | 条文の主語 |
|---|---|---|
| 11条 | 基本的人権の享有 | 「国民は」 |
| 13条 | 個人の尊重・幸福追求権 | 「すべて国民は」 |
| 14条1項 | 法の下の平等 | 「すべて国民は」 |
| 15条1項 | 公務員の選定・罷免 | 「国民固有の権利」 |
| 16条 | 請願権 | 「何人も」 |
| 19条 | 思想及び良心の自由 | 主語なし(「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」) |
| 20条1項 | 信教の自由 | 「何人に対しても」 |
| 21条1項 | 表現の自由 | 主語なし(「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」) |
| 22条1項 | 居住・移転・職業選択の自由 | 「何人も」 |
| 25条1項 | 生存権 | 「すべて国民は」 |
| 28条 | 勤労者の団結権 | 「勤労者の」 |
| 31条 | 法定手続の保障 | 「何人も」 |
31条〜40条の刑事手続の条文は、黙秘権とはで条文ごとに整理しています。
条文は「国民」と「何人も」を使い分けていますが、第三章の条文に「外国人」や「法人」の語は出てきません(憲法全体を見ても「外国人」という語はなく、「外国の大使及び公使」「外国に移住し」のように「外国」を含む言葉があるだけです)。22条2項は、「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」と書いています。
10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と定めています。外国人や法人に、どの人権がどこまで及ぶかは、条文には書かれていない論点で、最高裁判所の判例の考え方によります。以下、裁判要旨の言葉で押さえます。
外国人の人権:マクリーン事件の裁判要旨
マクリーン事件は、外国人が在留期間の更新を求めた事件です。裁判所の個別ページの記載は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事件名 | 在留期間更新不許可処分取消 |
| 裁判年月日・法廷 | 昭和53年10月4日・大法廷・判決 |
| 事件番号 | 昭和50(行ツ)120 |
| 判例集 | 民集32巻7号1223頁 |
| 結果 | 棄却(原審は東京高等裁判所) |
裁判要旨は、次の6つの点を述べています。
| 要旨 | 内容 |
|---|---|
| 一 | 外国人は、憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない |
| 二 | 出入国管理令21条3項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断は、法務大臣の裁量に任されているものであり、上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新を不許可にすることが許されないものではない |
| 三 | 裁判所の審査は、判断が全く事実の基礎を欠くか、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかな場合に限って、違法とすることができる(裁量権の範囲を超え又はその濫用) |
| 四 | 政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ |
| 五 | 外国人に対する人権の保障は、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではない |
| 六 | 本件の活動は、外国人の在留期間中の政治活動として直ちに憲法の保障が及ばないものであるとはいえないが、法務大臣が更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断しても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない |
押さえる順番は、在留する権利は保障されない(要旨一)→政治活動の自由は、外国人の地位にかんがみ認めることが相当でないと解されるものを除き及ぶ(要旨四)→更新の判断で、その活動が消極的な事情として斟酌されることはありうる(要旨五)、の順です。要旨四の「除き」という限定と、要旨五の「斟酌されないことまでの保障を含むものではない」を落とした記述は、要旨の文言からずれます。
参照法条の欄には、憲法第3章、19条、21条、22条1項が挙がっています。
外国人と参政権・公務員:地方選挙権と管理職選考
外国人に関する判例は、在留の場面のほかに、選挙権と公務員の任用の場面があります。
| 事件 | 裁判年月日・法廷 | 事件番号 | 判例集 | 裁判要旨 |
|---|---|---|---|---|
| 選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下決定取消 | 平成7年2月28日・第三小法廷・判決 | 平成5(行ツ)163 | 民集49巻2号639頁 | 日本国民たる住民に限り地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとした地方自治法11条、18条、公職選挙法9条2項は、憲法15条1項、93条2項に違反しない |
| 管理職選考受験資格確認等請求 | 平成17年1月26日・大法廷・判決 | 平成10(行ツ)93 | 民集59巻1号128頁 | 地方公共団体が、公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員の職等を包含する一体的な管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、労働基準法3条、憲法14条1項に違反しない |
2件目の要旨の条件は、公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員の職と、これに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する、一体的な管理職の任用制度を構築した上で、という部分です。外国人を公務員にしてはならないというような広い記述は、要旨の文言と違います。要旨2は、東京都が、管理職に昇任すれば公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員に就任することがあることを当然の前提として任用管理を行う管理職の任用制度を設けていたなど、判示の事情の下で、国籍を資格要件とした措置が、労働基準法3条、憲法14条1項に違反しない、と述べています。
条文との対応は、次のとおりです。
| 判例が参照した憲法の条文 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 15条1項 | 「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」 |
| 93条2項 | 「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」(地方自治の条文は地方自治の用語の記事にも出てきます) |
| 14条1項 | 「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」 |
外国人に関する4つの場面の結論を並べると、次のようになります。
| 場面 | 結論(裁判要旨) | 憲法の条文 |
|---|---|---|
| 在留する権利 | 保障されていない | — |
| 政治活動の自由 | 外国人の地位にかんがみ認めることが相当でないものを除き及ぶ | 参照法条は19条・21条・22条1項 |
| 地方選挙権 | 日本国民たる住民に限る規定は違反しない | 15条1項・93条2項 |
| 管理職への昇任 | 日本国民に限る措置は違反しない(上の条件のもとで) | 14条1項 |
法人の人権:八幡製鉄事件と南九州税理士会
法人が人権を持つかも、条文に「法人」の語がない論点です。2件の要旨を比較します。
| 項目 | 八幡製鉄事件 | 南九州税理士会の事件 |
|---|---|---|
| 裁判年月日・法廷 | 昭和45年6月24日・大法廷・判決 | 平成8年3月19日・第三小法廷・判決 |
| 事件番号 | 昭和41(オ)444 | 平成4(オ)1796 |
| 判例集 | 民集24巻6号625頁 | 民集50巻3号615頁 |
| 寄附をした主体 | 会社 | 税理士会 |
| 寄附の相手方 | 政党 | 政党など政治資金規正法上の政治団体 |
| 裁判要旨の結論 | 会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として、政党に対する政治資金の寄附の自由を有する | 寄付することは、税理士会の目的の範囲外の行為。そのための特別会費の徴収の総会決議は無効 |
| 参照法条 | 民法(改正前)43条、憲法3章など | 民法(改正前)43条、税理士法(改正前)49条2項、憲法19条など |
八幡製鉄事件の要旨は、次の言葉で理由を述べています。
「憲法三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから」
覚える言葉は、「性質上可能なかぎり」「内国の法人」「公共の福祉に反しないかぎり」の3つです。
南九州税理士会の事件の要旨は、目的の範囲(改正前の民法43条が参照法条に挙がっています。現行の民法では34条が「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」と定めています)で結論を述べています。同じ「法人の寄附」でも、会社の要旨は憲法三章の適用の言葉、税理士会の要旨は目的の範囲外の言葉で結論を述べている点が、比較の軸です。
天皇の人権・民事裁判権
天皇について、条文は1条〜8条(第一章)で、地位・皇位の継承・国事行為などを定めています。民事裁判権について、裁判所の個別ページの記載は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事件名 | 住民訴訟による損害賠償 |
| 裁判年月日・法廷 | 平成元年11月20日・第二小法廷・判決 |
| 事件番号 | 平成1(行ツ)126 |
| 判例集 | 民集43巻10号1160頁 |
| 判示事項 | 天皇と民事裁判権 |
| 裁判要旨 | 「天皇には民事裁判権は及ばない。」 |
| 参照法条 | 憲法1条、裁判所法3条、民訴法1編1章 |
要旨は、民事裁判権に絞った1文です。天皇や皇族が、国民と同じように人権の享有主体になるのかは、条文には書かれていない論点で、この要旨が述べているのは民事裁判権のことだけです。天皇の地位の条文(1条〜8条)は基本原理の記事で、国事行為は内閣の記事で整理しています。
私人間効力:三菱樹脂・定年年齢の男女差・百里基地の裁判要旨
私人間効力は、憲法の人権規定が、国や公共団体と国民の関係だけでなく、私人と私人の関係にも及ぶかどうか、という論点です。条文には、この論点を直接定めた規定はありません。3件の裁判要旨を並べます。
| 事件 | 裁判年月日・法廷 | 事件番号 | 判例集 | 裁判要旨の言葉 |
|---|---|---|---|---|
| 労働契約関係存在確認請求(三菱樹脂事件) | 昭和48年12月12日・大法廷・判決 | 昭和43(オ)932 | 民集27巻11号1536頁 | 要旨一「憲法一四条や一九条の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない。」 要旨二:企業者が特定の思想、信条を有する労働者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない |
| 雇傭関係存続確認等(定年年齢の男女差の事件) | 昭和56年3月24日・第三小法廷・判決 | 昭和54(オ)750 | 民集35巻2号300頁 | 原判示の事情があって、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、女子の定年年齢を男子より低く定めた就業規則の部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条により無効 |
| 不動産所有権確認等(百里基地訴訟として知られる事件) | 平成元年6月20日・第三小法廷・判決 | 昭和57(オ)164 | 民集43巻6号385頁 | 要旨二「私法上の行為には憲法九条は直接適用されるものではない」。要旨三は、憲法9条の宣明する国家の統治活動に対する規範は、そのままの内容で私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むことはなく、私法上の規範によって相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成する、という内容 |
三菱樹脂事件と百里基地訴訟の要旨は、憲法の規定が「直接」適用されるものではない、という言葉を使い、定年年齢の男女差の事件と百里基地訴訟の要旨は、民法90条の言葉(無効・公ノ秩序)で結論を述べています。学習の場では、憲法の規定が私法の一般条項を通じて間接的に及ぶ整理を「間接適用」と呼びますが、この呼び名は要旨の言葉ではありません。押さえ方としては、要旨の「直接」の言葉を、条文番号(三菱樹脂事件は14条・19条、百里基地訴訟は9条)とセットで覚えておきます。
三菱樹脂事件の要旨には、ほかにも次の点があります(精神的自由の整理は精神的自由の記事にあります)。
- 要旨三:労働基準法3条は、労働者の雇入れそのものを制約する規定ではない
- 要旨四:労働者を雇い入れようとする企業者が、その採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることは、違法とはいえない
百里基地訴訟の要旨一は、国が行う私法上の行為は、憲法98条1項にいう「国務に関するその他の行為」には当たらない、というものです。98条1項は、憲法に反する「法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為」の効力を否定する条文で、この言葉と、要旨一の言葉が対応しています。
試験での問われ方:内容の型
実際の問題文は掲載しませんが、享有主体と私人間効力の分野には次のような型があります。
- 外国人の人権の範囲:在留する権利(保障されない)と、政治活動の自由(外国人の地位にかんがみ認めることが相当でないものを除き及ぶ)を取り違える
- 要旨の限定の脱落:マクリーン事件の「除き」、管理職選考の、公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする職を含む一体的な管理職の任用制度という条件
- 法人の人権:「性質上可能なかぎり」の限定、会社と税理士会の結論の取り違え
- 私人間効力:要旨一の「直接」の言葉の入れ替え(「直接適用される」と言い換える)、事件ごとの適用条文(14条・19条・9条)の取り違え
- 選挙権:地方選挙権の判例の結論(違反しない)と、15条1項・93条2項の条文番号
間違えやすいポイント
| 誤りやすい記述 | 裁判要旨に照らすと |
|---|---|
| 外国人は、憲法上、在留する権利を保障されている | 要旨一は、保障されていないとしている(マクリーン事件) |
| 外国人には、政治活動の自由が一切及ばない | 要旨四は、外国人の地位にかんがみ認めることが相当でないと解されるものを除き及ぶとしている |
| 外国人の活動は、在留期間の更新で不利に扱われてはならない | 要旨五は、更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではないとしている |
| 日本国民に限った地方選挙権の規定は、憲法に違反する | 憲法15条1項、93条2項に違反しないとされた(平成5(行ツ)163) |
| 外国人は公務員の管理職に就けない | 要旨は、一体的な管理職の任用制度の下で日本国民に限る措置が、労基法3条・憲法14条1項に違反しないとするもの(平成10(行ツ)93) |
| 法人には、憲法の人権規定は一切適用されない | 「性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用される」(八幡製鉄事件) |
| 税理士会も、会社と同じく政治団体への寄付の自由を持つ | 要旨は、税理士会の目的の範囲外の行為で、特別会費の総会決議は無効(平成4(オ)1796) |
| 憲法14条・19条は、私人間にもそのまま直接適用される | 「直接私人相互間の関係に適用されるものではない」(三菱樹脂事件) |
| 私法上の行為にも、憲法9条が直接適用される | 「私法上の行為には憲法九条は直接適用されるものではない」(昭和57(オ)164) |
まとめ
- 人権の主語は、条文で「国民」と「何人も」が使い分けられ、第三章に「外国人」「法人」の語はない。外国人・法人に何が及ぶかは、判例の要旨の言葉で押さえる
- 外国人:在留する権利は保障されず、政治活動の自由は外国人の地位にかんがみ認めることが相当でないものを除き及ぶ(マクリーン事件)。地方選挙権を日本国民たる住民に限る規定は憲法15条1項・93条2項に違反しない。一体的な管理職の任用制度のもとで日本国民に限る措置は14条1項に違反しない
- 法人:憲法三章の条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用される(八幡製鉄事件)。税理士会の政治団体への寄付は目的の範囲外(南九州税理士会の事件)
- 天皇:民事裁判権は及ばない(平成1(行ツ)126)。人権の享有主体としての扱いは、条文に書かれていない論点
- 私人間効力:憲法14条・19条の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない(三菱樹脂事件)。私法上の行為には憲法9条は直接適用されるものではない(百里基地訴訟)。定年年齢の男女差の事件と百里基地訴訟の要旨は、民法90条の言葉で結論を述べている
科目ごとの配点と学習の優先順位は行政書士の点数配分、国家賠償法での外国人の扱いは国家賠償法の記事で整理しています。
参照した一次ソース
- e-Gov法令検索 日本国憲法(1条〜8条、9条、10条〜16条、19条〜22条、25条、28条、31条、93条、98条)
- 裁判所 裁判例検索(最高裁判所判例集)の個別ページ:マクリーン事件(昭和50(行ツ)120)・外国人の地方選挙権(平成5(行ツ)163)・管理職選考(平成10(行ツ)93)・八幡製鉄事件(昭和41(オ)444)・南九州税理士会の事件(平成4(オ)1796)・天皇と民事裁判権(平成1(行ツ)126)・三菱樹脂事件(昭和43(オ)932)・定年年齢の男女差の事件(昭和54(オ)750)・国の私法上の行為と憲法9条(昭和57(オ)164)
よくある質問
Qマクリーン事件の裁判要旨は、外国人に政治活動の自由が及ぶとしていますか?
昭和53年10月4日の最高裁判所大法廷判決(昭和50(行ツ)120)の裁判要旨四は、政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶとしています。一方、要旨一は、外国人は憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていないとし、要旨五は、人権の保障は、在留期間の更新の際に、その行為が消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではないとしています。結論は、法務大臣の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない、というものです(要旨六)。
Q外国人に、地方公共団体の議会の議員や長の選挙権を認めないことは、憲法に違反しますか?
平成7年2月28日の最高裁判所第三小法廷判決(平成5(行ツ)163)の裁判要旨は、日本国民たる住民に限り地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとした地方自治法11条、18条、公職選挙法9条2項は、憲法15条1項、93条2項に違反しない、としています。裁判所のページの結果欄は「棄却」です。
Q会社は、政党に政治献金をする自由を持ちますか。税理士会の場合は同じですか?
昭和45年6月24日の最高裁判所大法廷判決(昭和41(オ)444、八幡製鉄事件)の裁判要旨は、憲法三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから、会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政党に対する政治資金の寄附の自由を有する、としています。平成8年3月19日の最高裁判所第三小法廷判決(平成4(オ)1796、南九州税理士会の事件)の裁判要旨は、税理士会が政党など政治資金規正法上の政治団体に金員を寄付することは、税理士会の目的の範囲外の行為であり、そのための特別会費を徴収する総会決議は無効である、としています。会社と税理士会で結論が分かれる点に注意します。
Q定年年齢に男女差を設けた就業規則は、憲法14条に違反して無効になるのですか?
昭和56年3月24日の最高裁判所第三小法廷判決(昭和54(オ)750)の裁判要旨は、会社が就業規則で定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた場合において、原判示の事情があって、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である、としています。要旨は民法90条の言葉で結論を述べており、裁判所のページの参照法条には憲法14条1項が挙がっています。
Q国が行う私法上の行為にも、憲法9条は直接適用されますか?
平成元年6月20日の最高裁判所第三小法廷判決(昭和57(オ)164、百里基地訴訟として知られる事件)の裁判要旨は、国が行う私法上の行為は、憲法98条1項にいう「国務に関するその他の行為」には当たらず(要旨一)、私法上の行為には憲法9条は直接適用されるものではない(要旨二)としています。要旨三は、憲法9条の宣明する国家の統治活動に対する規範は、そのままの内容で私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むことはなく、私的自治の原則、契約における信義則、取引の安全等の私法上の規範によって相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成する、という内容です。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月29日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

