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一票の格差とは?最高裁の判断の枠組みと判例行政書士の憲法

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この記事でわかること

一票の格差(投票価値の不平等)を、憲法14条・15条・43条・44条・47条と公職選挙法の条文、衆議院と参議院で書き方が違う最高裁判所の判断の枠組み、令和2年・令和5年の参議院判決と令和7年の衆議院判決、選挙が無効にならない理由まで、行政書士試験の憲法の見方で整理します。

目次
  1. 一票の格差とは:用語と、裁判になるしくみ
  2. 条文:憲法の5か条と公職選挙法
  3. 判断の枠組み:衆議院と参議院の書き方の違い
  4. 参議院の判例:平成8年から令和5年までの流れ
  5. 衆議院の判例:令和7年9月26日の判決
  6. 違憲とされても、選挙は無効になるとは限らない
  7. 試験での問われ方:内容の型
  8. 間違えやすいポイント
  9. まとめ
  10. 参照した一次ソース
結論:一票の格差とは、選挙区ごとの議員1人当たりの有権者数(または人口)の差によって、1人の投票の影響力に差が出る問題のことです。最高裁判所は、憲法は投票価値の平等を要求していると解しつつ、国会に選挙制度の仕組みを決める広い裁量を認めています。試験で見分けるのは、①衆議院の判決(令和7年9月26日など)は区割りが「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」にあったか、②参議院の判決(令和5年10月18日など)は定数配分規定の下での投票価値の不均衡が「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態」にあったか、という判断の言い方の違いと、③違憲と判断されても選挙が無効になるとは限らないことです。
行政書士 令和8年度の試験日と法令の基準日:試験日 令和8年11月8日(日)、試験時間は午後1時から午後4時まで。法令については、令和8年4月1日現在施行されている法令に関して出題。最終確認日:2026-10-09。出典:行政書士試験研究センター 令和8年度行政書士試験のご案内。

この記事の判例は、裁判所の裁判例検索の個別ページ(事件番号・裁判年月日・判例集の巻号頁・判示事項・裁判要旨)と、そのページから開ける判決全文のPDFにもとづいています。裁判要旨は判決そのものではなく、結論と要点を短くまとめた欄です。条文は e-Gov 法令検索の現行の条文です。この記事は特定の政党や制度案への賛否を述べるものではなく、試験で問われる条文と判例の言葉を整理するものです。

法の下の平等(14条)全体と、昭和51年・昭和60年・平成23年・平成25年・令和5年1月の衆議院の判決を並べた表は法の下の平等の記事にあります。この記事は、そこにない参議院の判決、令和7年の衆議院の判決、そして衆議院と参議院の判断の枠組みの違いを中心に扱います。違憲審査権の制度は違憲審査権(81条)の記事、判例の早見表は行政書士の憲法判例にあります。

一票の格差とは:用語と、裁判になるしくみ

「一票の格差」は通称で、日本国憲法と公職選挙法の条文(e-Gov法令検索)には「一票の格差」の語はありません(2026-10-09 時点)。判決では、次の言葉が使われます。

言葉意味判決に出てくる形
投票価値の平等各選挙人の投票が、議員の選出に及ぼす影響力が平等であること「議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等」(令和5年10月18日)
較差(最大較差)選挙区間で、議員1人当たりの選挙人数(または人口)を比べた、最大の比「選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差」(令和5年10月18日)
定数配分規定・区割規定参議院では各選挙区の議員数を定める規定、衆議院小選挙区では選挙区の区割りを定める規定参議院は公職選挙法14条・別表第3、衆議院小選挙区は13条1項・別表第1
違憲状態通称。令和2年・令和5年10月・令和7年の3つの判決の多数意見の本文には出てこず、下の2通りの言葉で書き分けられる「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」(衆議院)、「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態」(参議院)

最大較差の数字には、選挙人数で比べたものと人口で比べたものがあります。令和7年9月26日の判決は、令和2年国勢調査の人口による最大較差が「1対1.999」、選挙当日の選挙人数による最大較差が「1対2.059」と、別々の数字を挙げています。数字を読むときは、何で比べた較差かを確かめます。

裁判のしくみは、公職選挙法204条が定めています。衆議院議員または参議院議員の選挙で、その選挙の効力に関し異議がある選挙人又は公職の候補者などは、当該選挙に関する事務を管理する都道府県の選挙管理委員会などを被告として、選挙の日から30日以内に、高等裁判所に訴訟を提起できます(衆議院・参議院の比例代表選出議員の選挙では中央選挙管理会が被告になるなど、条文には選挙の種類ごとの定めがあります)。この記事の判決は、高等裁判所の判決に対する上告事件として最高裁判所が判断したもので、令和2年・令和5年10月・令和7年の判決の事件名は「選挙無効請求事件」です。

条文:憲法の5か条と公職選挙法

判決の参照法条に並ぶ憲法の条文(14条1項・15条1項・3項・43条1項・44条)と、令和7年9月26日の判決が国会の裁量の根拠として挙げる条文(43条2項・47条)は、次のとおりです(e-Gov法令検索の表記)。

条文条文の言葉(抜粋)一票の格差との関わり
14条1項「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」判決の結論が「憲法14条1項等に違反する」という形で書かれる
15条1項「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」選挙権の根拠。参照法条に挙げられる
15条3項「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」同上
43条1項「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」参照法条に挙げられる
43条2項「両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。」定数を法律で定める根拠
44条「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。」ただし書の差別事由に「教育、財産又は収入」が入る
47条「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」選挙区を法律で定める。国会の裁量の根拠として判決が挙げる

令和7年9月26日の判決は、この43条2項と47条を挙げて、「選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている」と述べています。

法律の側では、公職選挙法13条1項が「衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区は、別表第一で定め、各選挙区において選挙すべき議員の数は、一人とする。」と定め、14条1項が「参議院(選挙区選出)議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数は、別表第三で定める。」と定めています。

衆議院の小選挙区には、区割りの基準を定めた法律もあります。衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条1項は、改定案の作成について、「各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすること」と定めています。令和5年10月18日の判決は、この点を、衆議院について「選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにする旨の区割りの基準が定められ」ていると説明し、「参議院議員選挙について直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいと解すべき理由は見いだし難い」とする理由の一つにしています。

判断の枠組み:衆議院と参議院の書き方の違い

令和7年9月26日(衆議院)と令和5年10月18日(参議院)の2つの判決は、判断基準を述べる部分で、ほぼ同じ趣旨のことを述べます(言葉は少しずつ違います)。

  • 憲法は、投票価値の平等を要求していると解される
  • ただし、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮できる他の政策的目的ないし理由と調和的に実現されるべきもの
  • 国会が具体的に定めたところが裁量権の行使として合理性を有する限り、投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められても、憲法に違反するとはいえない

令和5年10月18日の判決は、この考え方を、「投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである」と書いています。令和7年9月26日の判決は、同じ箇所を「選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく」と書いています。

そのうえで、衆議院と参議院では、結論を導く言い方が違います。

比べる点衆議院(小選挙区):令和7年9月26日・第二小法廷参議院(選挙区):令和5年10月18日・大法廷
判断の対象区割規定(公職選挙法13条1項・別表第1)による選挙区割り定数配分規定(公職選挙法14条・別表第3)
判断の物差しの言い方定数配分と選挙区割りでは、「議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められている」国会の裁量の範囲内にあるかを問い、違反になるのは、「投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合」
結論の書き方「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず」、規定が「憲法14条1項等に違反するものということはできない」「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず」、規定が「憲法に違反するに至っていたということはできない」
結果上告棄却上告棄却

衆議院の判決の結論部分には、平成11年11月10日の大法廷判決(2件)、平成19年6月13日の大法廷判決、平成30年12月19日の大法廷判決、令和5年1月25日の大法廷判決の趣旨に徴して明らかである、という一文があります。この枠組みは、新しい大法廷判決で作り直されたものではなく、累次の大法廷判決の流れの上にある、という書き方です。参議院の判決も、昭和58年4月27日の大法廷判決以降の「累次の大法廷判決の趣旨とするところであり、基本的な判断枠組みとしてこれを変更する必要は認められない」と述べています。

衆議院の判決として、平成23年3月23日・平成25年11月20日は、裁判要旨で、選挙区割りが「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」にあった(平成23年は「至っていた」)と判断したうえで、さらに「憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず」として、14条1項に違反するとはいえない、という二段階の言い方をしています(表は法の下の平等の記事)。令和5年1月25日・令和7年9月26日の判決は、最初の段階(投票価値の平等の要求に反する状態にあったか)で、そうはいえないと判断しています。

なお、言葉は完全に分かれているわけではありません。令和5年10月18日の参議院の判決も、結論の直前で、投票価値の不均衡が「憲法の投票価値の平等の要求に反するものであったということはできない」と書いています。結論の文(裁判要旨)の言い方の違いとして押さえます。

「違憲状態」という略称は、令和2年11月18日・令和5年10月18日・令和7年9月26日の3つの判決では、多数意見には出てこず、個別の意見が使っています(各判決全文PDF)。令和5年10月18日の三浦守裁判官の意見は、「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態(以下、本意見において「違憲状態」ともいう。)」と書き、令和7年9月26日の高須順一裁判官の意見は、「違憲の問題が生ずる程度の不平等状態(いわゆる違憲状態)」と書いています。

参議院の判例:平成8年から令和5年までの流れ

令和5年10月18日の判決は、理由の中で、参議院(選挙区選出)議員の定数配分規定に関する過去の大法廷判決を、較差の数字とあわせて整理しています。次の表は、その整理を要点だけ並べたものです(判決の言葉は引用、数字は判決が挙げる最大較差)。

判決対象の選挙・最大較差判決が挙げる判断
平成8年9月11日・大法廷(平成6(行ツ)59、民集50巻8号2283頁)6.59倍(平成4年選挙)「違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた旨判示した」
平成24年10月17日・大法廷(平成23(行ツ)51、民集66巻10号3357頁)5.00倍(平成22年選挙)「結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない」としたが、投票価値の不均衡は「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示」
平成26年11月26日・大法廷(平成26(行ツ)155、156、民集68巻9号1363頁)4.77倍(平成25年選挙)平成24年判決に沿って、同じく「著しい不平等状態にあった」と判示。結論は違反するに至っていたとはいえない
平成29年9月27日・大法廷(平成29(行ツ)47、民集71巻7号1139頁)3.08倍(平成28年選挙)合区を含む平成27年改正などを理由に、「著しい不平等状態にあったものとはいえない」
令和2年11月18日・大法廷(令和2(行ツ)78、民集74巻8号2111頁)3.00倍(令和元年選挙)棄却。要旨は、「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず」、規定が憲法14条1項等に違反するに至っていたということはできない
令和5年10月18日・大法廷(令和5(行ツ)54、民集77巻7号1654頁)3.03倍(令和4年選挙)棄却。要旨は、同じく「著しい不平等状態にあったものとはいえず」

この表の平成8年から平成29年までの行は、令和5年10月18日の判決が理由の中で説明している内容です。結論が「違反するに至っていたとはいえない」でも、理由の中で「著しい不平等状態にあった」と判断した判決がある(平成24年・平成26年)点が、試験で取り違えやすいところです。

令和5年10月18日の判決の理由には、次の流れがあります。

  • 平成27年改正(4県2合区)により、数十年にわたり5倍前後で推移してきた最大較差が3倍程度まで縮小し、平成24年大法廷判決等で指摘された著しい不平等状態は「ひとまず解消された」
  • 同改正から本件選挙まで約7年間、合区は維持され、最大較差は3倍程度で推移し、「有意な拡大傾向にあるともいえない」
  • 立法府の取組については、「較差の更なる是正を図ること等は喫緊の課題というべきである」とし、現行の選挙制度の仕組みの抜本的な見直しも含めて検討し、立法的措置を講じていくことが求められる、と付け加えている

令和2年11月18日の判決は、裁判官3名の反対意見があるほか全員一致、令和5年10月18日の判決は、裁判官1名の反対意見があるほか全員一致で、それぞれ個別の意見が付いています。多数意見の結論は、どちらも「上告棄却」です。

衆議院の判例:令和7年9月26日の判決

令和7年9月26日・第二小法廷判決(令和7(行ツ)155、民集79巻6号2676頁)は、令和6年10月27日の衆議院議員総選挙の小選挙区について争われた事件です。判決が挙げる事実は、次のとおりです。

項目判決が挙げる内容
区割りの改定の仕組み区画審設置法の定めで、大規模国勢調査の結果に基づき、各都道府県への定数配分を「アダムズ方式」で行い、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるよう区割りをして改定案を作成する。大規模国勢調査から5年目の国勢調査で人口の最大較差が2倍以上となったときは、定数配分を変えずに2倍未満となるよう区割りをして改定案を作成する
人口の最大較差令和2年国勢調査の結果で「1対1.999」
選挙当日の選挙人数の最大較差「1対2.059」。較差が2倍以上の選挙区は10選挙区
結論「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず」、区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない

判決は、区割りの仕組みについて、「選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させその状態が安定的に持続するよう設けられたもの」であって合理性があるとし、選挙当日に較差が2倍以上の選挙区があったことについても、較差が自然的な人口異動以外の要因で拡大したと考えられる事情はなく、拡大の程度が著しいともいえない、という理由で結論を出しています。

裁判官高須順一の意見は、多数意見とは異なり、令和2年国勢調査の人口による最大較差が2倍に極めて近く、改定後短期間で2倍以上になることがほぼ確実に見込まれる区割りだったことなどから、選挙当時は「いわゆる違憲状態」にあったと考える、というものです。結論は、多数意見と同じ上告棄却です。

違憲とされても、選挙は無効になるとは限らない

「規定が憲法に違反する」ことと、「選挙が無効になる」ことは、別の問題です。条文は次のとおりです。

条文内容
公職選挙法205条1項選挙の効力に関し異議の申出、審査の申立て又は訴訟の提起があった場合に、「選挙の規定に違反することがあるときは選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り」、当該選挙管理委員会又は裁判所は、その選挙の全部又は一部の無効を決定し、裁決し又は判決しなければならない
公職選挙法219条1項この章に規定する訴訟(210条1項を除く)について、行政事件訴訟法の13条、19条から21条まで、25条から29条まで、31条、34条の規定は準用しない(43条の規定にかかわらず)
行政事件訴訟法31条1項取消訴訟について、処分又は裁決が違法ではあるが、取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は請求を棄却することができる(事情判決)。この場合には、判決の主文で処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない

昭和51年4月14日の大法廷判決(昭和49(行ツ)75、民集30巻3号223頁)は、昭和47年12月10日の衆議院議員選挙当時の選挙区・議員定数の定めが全体として憲法14条1項などに違反していたとしたうえで、要旨三で、選挙を無効とする判決によって直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえって憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずる事情などがあるときは、「行政事件訴訟法三一条一項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則」に従い、請求を棄却するとともに選挙が違法であることを主文で宣言すべきである、としました。

公職選挙法219条1項が行政事件訴訟法31条の準用を排除している一方で、判決は、31条1項の基礎に含まれる一般的な法の基本原則を根拠にしています。「31条を準用した」と書かれた選択肢には注意が必要です。昭和51年の判決の結果欄は「破棄自判」です。昭和60年7月17日の判決(昭和59(行ツ)339)の要旨二は、「いわゆる事情判決の制度の基礎に存するものと解すべき一般的な法の基本原則」に従い、選挙無効の請求を棄却するとともに主文で選挙が違法である旨を宣言する、としています(表は法の下の平等の記事)。

試験での問われ方:内容の型

実際の問題文は掲載しませんが、一票の格差の論点には、次のような型があります。

  • 衆議院と参議院の言い方の取り違え:裁判要旨の結論の文では、「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態」は参議院の判決(令和2年・令和5年10月)の言葉、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」は衆議院の判決(平成23年・平成25年・令和5年1月・令和7年)の言葉
  • 「違憲状態」と「違憲」の取り違え:理由の中で不平等状態にあったと判断しても、結論は「規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない」となる判決がある(平成24年・平成26年の参議院)
  • 効果の取り違え:規定が憲法に違反するとされたとき、選挙が当然に無効になる、と書く
  • 平等の絶対化:投票価値の平等が選挙制度を決める唯一絶対の基準である、と書く(判決は逆の言い方)
  • 条文の取り違え:44条ただし書の差別事由、43条2項と47条が法律に委ねている事項、14条1項の差別事由の言葉の入れ替え
  • 訴訟の手続:選挙の効力に関する訴訟は、高等裁判所に、選挙の日から30日以内に提起する

間違えやすいポイント

誤りやすい記述判決・条文に照らすと
投票価値の平等は、選挙制度を決める唯一絶対の基準である令和5年10月18日の判決は、「唯一、絶対の基準となるものではなく」、他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきもの、とする
参議院は、2倍未満という区割りの基準が法律にある区画審設置法3条1項に「二以上とならないようにすること」とあるのは、衆議院小選挙区の改定案の作成の基準。令和5年10月18日の参議院の判決は、衆議院にそうした基準があることを、「参議院議員選挙について直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいと解すべき理由は見いだし難い」とする理由の一つとして挙げている
参議院の最大較差が3倍程度でも、必ず違憲と判断される令和2年(3.00倍)・令和5年(3.03倍)の判決は、「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず」とした
結論が「違反するに至っていたとはいえない」なら、理由でも不平等状態を認めていない平成24年・平成26年の判決は、結論は違反するに至っていたとはいえないとしたが、不均衡は「著しい不平等状態にあった」と判示している(令和5年10月18日の判決の説明)
令和7年の衆議院の判決は、大法廷の判決である第二小法廷の判決。全員一致の意見で、裁判官高須順一の意見が付いている
規定が憲法に違反するとされれば、選挙は必ず無効になる昭和51年の大法廷判決は、請求を棄却して選挙が違法であることを主文で宣言すべきものとした
選挙訴訟には行政事件訴訟法31条が準用される公職選挙法219条1項は、31条の準用を排除している。昭和51年の判決は、31条1項の基礎に含まれる一般的な法の基本原則による、とする
選挙の効力を争う訴訟は、地方裁判所に起こす公職選挙法204条は、高等裁判所に、選挙の日から30日以内と定める

まとめ

  • 一票の格差は通称で、判決では「投票価値の平等」の問題として扱われる。最高裁判所は、憲法は投票価値の平等を要求していると解するが、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく(令和5年10月18日)、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものとする
  • 判決の参照法条は、憲法14条1項、15条1項・3項、43条1項、44条と、公職選挙法13条1項・別表第1(衆議院)、14条・別表第3(参議院)。43条2項と47条は、定数や選挙区などを法律で定めるとする
  • 衆議院は、区割りが「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」だったかを問い、平成23年・平成25年は、その状態だったが憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえない、令和5年1月・令和7年9月は、その状態にあったということはできない、と判断した
  • 参議院は、定数配分規定の下での投票価値の不均衡が「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態」だったかを問い、その状態が相当期間継続しているのに是正する措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超えると判断される場合に、規定が憲法に違反するに至るとする。平成24年・平成26年は理由の中で著しい不平等状態にあったとしたが結論は違反するに至っていたとはいえない、平成29年・令和2年・令和5年は著しい不平等状態にあったものとはいえない、とした(平成24年〜平成29年は令和5年10月18日の判決の説明による)
  • 令和7年9月26日の衆議院の判決は、第二小法廷・全員一致で、高須順一裁判官の意見が付いている
  • 規定が憲法に違反するとされても、選挙が当然に無効になるわけではない。昭和51年の判決は、請求を棄却して選挙が違法であることを主文で宣言した。公職選挙法219条1項は、行政事件訴訟法31条の準用を排除している
  • 選挙の効力を争う訴訟は、公職選挙法204条により、高等裁判所に、選挙の日から30日以内に提起する

試験の科目構成は、行政書士試験研究センターの試験案内では、法令等として、憲法、行政法、民法、商法及び基礎法学からそれぞれ出題する、とされています。科目ごとの配点は行政書士の点数配分で整理しています。

参照した一次ソース

よくある質問

Q一票の格差とは、何の差のことですか?

選挙区ごとに、議員1人を選ぶ有権者の数(または人口)が違うことで、1人の投票が結果に与える影響力に差が出る問題を指して使われる言葉です。判決では「投票価値の不平等」「投票価値の不均衡」といった言葉で書かれ、最高裁判所は、令和5年10月18日の大法廷判決で、憲法は「議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求していると解される」と述べています。どの程度の差が問題になるかは、衆議院と参議院で判断の書き方が違います。

Q一票の格差は、憲法のどの条文の問題として争われていますか?

最高裁判所のページが挙げる参照法条は、令和5年10月18日の判決(令和5(行ツ)54)で、憲法14条1項、15条1項・3項、43条1項、44条、公職選挙法14条と別表第3、令和7年9月26日の判決(令和7(行ツ)155)で、憲法14条1項、15条1項・3項、43条1項、44条、公職選挙法13条1項と別表第1です。結論の言い方は、判決の要旨では「憲法14条1項等に違反する」という形で書かれます。

Q参議院の選挙で、最大較差が3倍を超えれば違憲になりますか?

判決は、倍率だけで結論を出す書き方をしていません。令和2年11月18日の判決は令和元年選挙当時の最大較差3.00倍、令和5年10月18日の判決は令和4年選挙当時の最大較差3.03倍を挙げたうえで、どちらも「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず」と判断しています。令和5年の判決は、その理由として、平成27年改正の合区で数十年にわたり5倍前後だった較差が3倍程度まで縮小したこと、同改正後約7年間その合区が維持され較差に有意な拡大傾向がないことなどを挙げています。

Q令和7年の衆議院の区割りの判決は、大法廷の判決ですか?

大法廷ではなく、第二小法廷の判決です。令和7年9月26日の判決(令和7(行ツ)155)は、令和6年10月27日の衆議院議員総選挙について、区割りが「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず」、公職選挙法13条1項・別表第1の規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない、とした判決です。裁判官全員一致の意見で、裁判官高須順一の意見が付いています。

Q定数配分の規定が憲法に違反するとされたら、選挙は必ず無効になりますか?

必ず無効になるわけではありません。昭和51年4月14日の大法廷判決(昭和49(行ツ)75)の裁判要旨三は、選挙を無効とする判決をすることによって直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえって憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずる事情などがあるときは、行政事件訴訟法31条1項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い、請求を棄却するとともに選挙が違法である旨を主文で宣言すべきである、としています。なお公職選挙法219条1項は、選挙訴訟について行政事件訴訟法31条の規定を準用しないと定めています。

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