行政書士試験の憲法で、違憲審査権(81条)の条文の言葉、具体的事件を離れて審査できないこと(警察予備隊訴訟)、審査の対象、違憲判断の形、最高裁判所が法令を違憲とした主な判決・決定、違憲判決の効力を、事件番号と裁判要旨つきで整理します。
目次
結論:違憲審査権の条文は、憲法81条です。最高裁判所は、「一切の法律、命令、規則又は処分」が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所とされています。判例は、最高裁判所は具体的事件を離れて抽象的に憲法適合性を決定する権限を有するものではない、としています(警察予備隊訴訟)。最高裁判所が法令そのものを憲法違反とした判決・決定は、尊属殺人(昭和48年)、薬事法(昭和50年)、衆議院の議員定数(昭和51年・昭和60年)、森林法(昭和62年)、郵便法(平成14年)、在外国民の選挙権(平成17年)、国籍法(平成20年)、非嫡出子の相続分(平成25年)、再婚禁止期間(平成27年)、在外国民の国民審査(令和4年)、性同一性障害者特例法(令和5年)、旧優生保護法(令和6年)などで、この記事の表に事件番号つきで並べています。
この記事の判例は、裁判所の裁判例検索の個別ページに載っている事件番号・裁判年月日・裁判要旨にもとづいています。裁判要旨は判決の本文ではなく、結論と要点を短くまとめた欄です。条文は e-Gov 法令検索の現行の条文を読んで書いています。この記事は、違憲審査の制度(81条)と、違憲とされた法令の一覧を扱います。14条1項に関わる判断の中身は法の下の平等の記事、政教分離は政教分離の記事、憲法判例を分野別に並べた表は行政書士の憲法判例にあります。
81条の条文と、あわせて読む条文
違憲審査権の条文と、関連する条文の言葉は次のとおりです(e-Gov法令検索の表記)。
| 条文 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 憲法81条 | 「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」 |
| 憲法76条1項 | 「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」 |
| 憲法76条3項 | 「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」 |
| 憲法98条1項 | 「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」 |
| 憲法99条 | 「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」 |
| 裁判所法3条1項 | 「裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。」 |
81条の言葉を分けて読むと、次のようになります。
- 主体は「最高裁判所」です。「終審裁判所」とは、最終の裁判所という意味の言葉です
- 対象は「一切の法律、命令、規則又は処分」の4つです。条文に「条約」という言葉は書かれていません
- 内容は、憲法に「適合するかしないか」を「決定する権限」です。法律を廃止する権限や、法律を作り直す権限とは書かれていません
- 98条1項は、憲法に反する法律などは「その効力を有しない」と書いています。81条は審査の権限、98条1項は憲法の最高法規性と、役割が分かれています
付随的審査制:具体的事件を離れて審査できるか
81条の「決定する権限」を、最高裁判所が具体的事件から離れて行使できるかが争われたのが、警察予備隊訴訟です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 裁判年月日・法廷・種別 | 昭和27年10月8日・最高裁判所大法廷・判決 |
| 事件番号・事件名 | 昭和27(マ)23・日本国憲法に違反する行政処分取消請求 |
| 結果 | 却下 |
| 判例集 | 民集6巻9号783頁 |
| 判示事項 | 具体的事件を離れて最高裁判所は抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるか |
| 裁判要旨 | 「最高裁判所は、具体的事件を離れて抽象的に法律、命令等が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有するものではない。」 |
| 参照法条 | 憲法81条 |
この考え方は、一般に付随的審査制(付随的違憲審査制)と呼ばれます(呼び名で、要旨の言葉ではありません)。押さえる点は次の3つです。
- 要旨の言葉は、「具体的事件を離れて」「抽象的に」「決定する権限を有するものではない」です。具体的事件を離れた、抽象的な憲法適合性の審査が否定されています
- 裁判所の権限について、裁判所法3条1項は「一切の法律上の争訟を裁判し」と書いています。81条の「決定する権限」と、この「法律上の争訟」の裁判との関係を、付随的審査制という名前で整理するのが一般的です
- 警察予備隊訴訟の要旨は、「最高裁判所」の権限について述べたものです。それ以上の理由づけは、判決本文を読んで確認する項目です
審査の対象と、司法審査の限界:条約・高度の政治性
81条が挙げる対象は「一切の法律、命令、規則又は処分」です。条約は条文に書かれていませんが、砂川事件の裁判要旨が、条約の司法審査について次のように述べています。
裁判要旨(八):安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。
砂川事件は、昭和34年12月16日・最高裁判所大法廷・判決(昭和34(あ)710、刑集13巻13号3225頁、結果は破棄差戻し)です。要旨十は、安保条約(およびこれに基くアメリカ合衆国軍隊の駐留)は、憲法9条、98条2項及び前文の趣旨に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは認められない、としています。
| 論点 | 条文・要旨の言葉 |
|---|---|
| 81条が挙げる対象 | 「一切の法律、命令、規則又は処分」 |
| 条約の扱い | 条文に「条約」の語はない。砂川事件の要旨八は、安保条約のような高度の政治性を有するものについて、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、裁判所の司法審査権の範囲外と解する |
| 要旨八の言葉の限定 | 「高度の政治性を有するもの」「一見極めて明白に違憲無効であると認められない限り」 |
判断の限界について、この要旨が一般に「統治行為論」と呼ばれる考え方に関わることがあります。要旨の言葉は「高度の政治性」と「司法審査権の範囲外」です。衆議院の解散を扱った苫米地事件との読み分けは、統治行為論の記事で整理しています。
違憲判断の形:法令を違憲とする判断・行為を違憲とする判断
最高裁判所が憲法違反と判断するとき、対象には法令の規定そのものと、国や自治体の個別の行為があります。憲法判断に関わる要旨には、このほか、条例の文言を限定して解釈したうえで違反しないとする形や、立法の不作為の国家賠償法上の評価、確認の訴えの適否を述べる形もあります。裁判要旨の書き方で並べると、次のようになります。
| 形 | 要旨の書き方の例 | 事件の例 |
|---|---|---|
| 法令の規定そのものを違憲とする | 「森林法一八六条本文は、憲法二九条二項に違反する。」 | 森林法(昭和62年4月22日・大法廷・判決、昭和59(オ)805) |
| 国や自治体の行為を違憲とする | 県が玉串料等を公金から支出して奉納したことは、憲法20条3項、89条に違反する | 愛媛玉串料(平成9年4月2日・大法廷・判決、平成4(行ツ)156) |
| 条例の文言を限定して解釈し、そう解する限り合憲とする | 「公の秩序をみだすおそれがある場合」を限定して解すべきで、「そう解する限り、このような規制は、憲法二一条地方自治法二四四条に違反しない」 | 泉佐野市民会館(平成7年3月7日・第三小法廷・判決、平成1(オ)762) |
| 立法の不作為が国家賠償法上違法と評価される | 在外国民に国民審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことは、判示の事情の下では、平成29年10月22日に施行された審査の当時において、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける | 在外日本人国民審査権(令和4年5月25日・大法廷・判決、令和2(行ツ)255) |
| 確認の訴えが適法とされる | 在外国民が、次回の選挙で投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法 | 在外日本人選挙権(平成17年9月14日・大法廷・判決、平成13(行ツ)82) |
違憲とされたのが「法令の規定」か「行為」かは、要旨の主語を見れば区別できます。要旨に「○○法△条は、憲法××条に違反する」とあれば規定、「○○したことは」とあれば行為です。「法令違憲」「処分違憲」といった呼び名は、この区別を表す学説上の用語として使われることがあります。
最高裁判所が法令を違憲とした主な判決・決定
次の表は、裁判要旨に、法令の規定(またはその一部)が憲法に違反する旨が書かれている最高裁判所の主な判決・決定を、年月日順に並べたものです。「対象の規定」の欄に書いた選挙や届出の時点は、要旨が示しているものです。
| 年月日・法廷・種別 | 事件番号 | 対象の規定 | 違反とされた憲法の条文 |
|---|---|---|---|
| 昭和48年4月4日・大法廷・判決 | 昭和45(あ)1310 | 刑法200条 | 14条1項 |
| 昭和50年4月30日・大法廷・判決 | 昭和43(行ツ)120 | 薬事法6条2項・4項(これらを準用する同法26条2項) | 22条1項 |
| 昭和51年4月14日・大法廷・判決 | 昭和49(行ツ)75 | 公職選挙法13条、同法(昭和50年法律第63号による改正前のもの)別表第1及び附則7項ないし9項による選挙区及び議員定数の定め(昭和47年12月10日の衆議院議員選挙当時、全体として) | 14条1項、15条1項・3項、44条ただし書 |
| 昭和60年7月17日・大法廷・判決 | 昭和59(行ツ)339 | 公職選挙法13条1項、同法別表第1、同法附則7項ないし9項の衆議院議員の議員定数配分規定(昭和58年12月18日施行の衆議院議員選挙当時、全体として) | 14条1項 |
| 昭和62年4月22日・大法廷・判決 | 昭和59(オ)805 | 森林法186条本文 | 29条2項 |
| 平成14年9月11日・大法廷・判決 | 平成11(オ)1767 | 郵便法68条及び73条のうち、書留郵便物について、郵便の業務に従事する者の故意又は重大な過失によって損害が生じた場合に不法行為に基づく国の損害賠償責任を免除し又は制限している部分、特別送達郵便物について、故意又は過失によって損害が生じた場合に国家賠償法に基づく国の損害賠償責任を免除し又は制限している部分 | 17条 |
| 平成17年9月14日・大法廷・判決 | 平成13(行ツ)82 | 公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が在外国民の国政選挙における投票を全く認めていなかったこと(平成8年10月20日施行の衆議院議員総選挙当時)、公職選挙法附則8項のうち対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分(遅くとも、本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の時点) | 15条1項・3項、43条1項、44条ただし書 |
| 平成20年6月4日・大法廷・判決 | 平成18(行ツ)135 | 国籍法3条1項が準正のあった場合に限り届出による日本国籍の取得を認めていることによる区別(遅くとも上告人が国籍取得届を提出した平成15年当時) | 14条1項 |
| 平成25年9月4日・大法廷・決定 | 平成24(ク)984 | 民法900条4号ただし書前段 | 14条1項 |
| 平成27年12月16日・大法廷・判決 | 平成25(オ)1079 | 民法733条1項のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分 | 14条1項、24条2項 |
| 令和4年5月25日・大法廷・判決 | 令和2(行ツ)255 | 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないこと | 15条1項、79条2項・3項 |
| 令和5年10月25日・大法廷・決定 | 令和2(ク)993 | 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号 | 13条 |
| 令和6年7月3日・大法廷・判決 | 令和5(受)1319 | 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条、13条2項(要旨は、条項ごとに施行されていた期間を特定している) | 13条、14条1項 |
この表で押さえる点は次のとおりです。
- 表の13件は、すべて大法廷の判断です。裁判所法10条は、法律などが憲法に適合しないと認めるときは小法廷では裁判をすることができない(2号)と定めています
- 条文は全部が違うわけではありません。表の13件では、14条1項が7件、13条が2件、15条が3件、44条ただし書が2件など、同じ条文が複数の判断に出てきます
- 昭和51年と昭和60年の判決は、議員定数の定めを違憲としたうえで、選挙を無効とする請求は棄却し、選挙が違法であることを主文で宣言すべきだとしました(昭和51年は要旨三、昭和60年は要旨二)。違憲判断と、結論(主文)は別です
- 多くの要旨は、違憲となった時点を書いています(例:非嫡出子の相続分は「遅くとも平成13年7月当時」、再婚禁止期間は「平成20年当時」、国籍法は「遅くとも上告人が国籍取得届を提出した平成15年当時」)。14条1項の判断の詳細は法の下の平等の記事にあります
- 在外国民の2件(平成17年・令和4年)は、規定の違憲に加えて、立法の不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるかどうかも要旨に含まれています
規定ではなく、行為を違憲とした判断
次の3件は、国や自治体の個別の行為を、憲法違反とした判断です。条文の組み合わせは、政教分離の記事で比べています。
| 年月日・法廷 | 事件番号 | 対象の行為 | 違反とされた憲法の条文 |
|---|---|---|---|
| 平成9年4月2日・大法廷 | 平成4(行ツ)156 | 愛媛県が玉串料等を公金から支出して奉納したこと | 20条3項、89条 |
| 平成22年1月20日・大法廷 | 平成19(行ツ)260 | 市が連合町内会に市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為 | 89条、20条1項後段 |
| 令和3年2月24日・大法廷 | 令和1(行ツ)222 | 市長が孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に敷地の使用料の全額を免除した行為 | 20条3項 |
違憲判決の効力:条文に書かれていないこと、要旨が示していること
違憲と判断された法令の効力は、81条には書かれていません。81条は「決定する権限」を定めるだけで、違憲とされた法律をどう扱うかは別の問題です。
| 論点 | 条文・要旨の内容 |
|---|---|
| 憲法に反する法律の効力 | 98条1項は、憲法の条規に反する法律の全部又は一部は「その効力を有しない」と定めている |
| 判決の効力が当該事件に限られるか、一般に及ぶか | 条文には書かれていない論点で、判例・学説の考え方による |
| 違憲判断が、すでに確定した法律関係に及ぶか | 平成25年の決定の要旨2は、平成13年7月から判断時までの間に開始された他の相続について、確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない、としている |
| 違憲とされた要件を除いて制度を適用できるか | 平成20年の国籍法の判決の要旨2は、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子は、違憲の区別を生じさせている準正要件を除いた要件が満たされるときは、国籍法3条1項に基づいて日本国籍を取得する、としている |
| 違憲でも、選挙を無効にするか | 昭和51年の判決の要旨三は、選挙を無効とする判決をしても直ちに違憲状態が是正されるわけではないことなどを挙げ、請求を棄却して選挙が違法であることを主文で宣言すべきだとしている。昭和60年の判決の要旨二も、選挙を無効とする結果余儀なくされる不都合を回避することを相当とする判示のような事情があるときは、請求を棄却して選挙が違法であることを主文で宣言すべきだとしている |
| 行為が違憲とされても、直ちに撤去を求める結論にはならなかった例 | 平成22年の空知太の判決は、行為の違憲を認めつつ、違憲性を解消する他の合理的で現実的な手段の有無を審理しなかった原審の判断を違法として、破棄差戻しとしている |
現行の条文では、刑法200条と民法733条は、e-Gov法令検索で「削除」と表示されています。民法900条4号は、ただし書に「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹」の相続分の定めだけが書かれた条文になっています。国籍法3条1項は、認知された18歳未満の子について、法務大臣に届け出ることによって日本の国籍を取得することができると定め(認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であったことなどの条件があります)、準正を要件とする言葉は書かれていません。
試験での問われ方:内容の型
実際の問題文は掲載しませんが、違憲審査の分野には次のような型があります。
- 条文の言葉:81条の主体(最高裁判所)・対象(法律、命令、規則又は処分)・権限(憲法に適合するかしないかを決定)・終審裁判所の言い換え
- 具体的事件との関係:最高裁判所は、具体的事件を離れて抽象的に憲法適合性を決定する権限を有するか(警察予備隊訴訟の結論は「有しない」)
- 対象の範囲:条約や、高度の政治性を有する国家行為が司法審査の対象になるか(砂川事件の要旨八の限定)
- 違憲とされた規定と条文の組み合わせ:「刑法200条は14条1項」「森林法186条本文は29条2項」「郵便法の一部は17条」など
- 違憲判断と結論の区別:違憲とされても、選挙は無効にならない(昭和51年・昭和60年)、行為が違憲とされても、違憲性を解消する他の手段を審理しなかった原審の判断に違法があるとして破棄差戻し(平成22年)
- 判断の法廷:憲法適合性を判断する事件を扱う法廷(裁判所法10条)
間違えやすいポイント
| 誤りやすい記述 | 条文・判例に照らすと |
|---|---|
| 最高裁判所は、具体的な事件がなくても、法律の合憲性を抽象的に判断できる | 警察予備隊訴訟の要旨は、具体的事件を離れて抽象的に決定する権限を有するものではないとしている |
| 81条の審査の対象に「条約」が明記されている | 条文の言葉は「一切の法律、命令、規則又は処分」。条約の語はない |
| 高度の政治性を有する条約は、一切、司法審査の対象にならない | 砂川事件の要旨八は、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、司法審査権の範囲外と解する、という限定つき |
| 違憲判断を受けた法律は、その判決で自動的に条文が消える | 81条にはその定めがない。判決の効力の及ぶ範囲は条文に書かれていない論点 |
| 議員定数が違憲とされたときは、選挙は無効になる | 昭和51年・昭和60年の判決は、選挙を無効とする請求を棄却して、選挙が違法であることを主文で宣言すべきだとした |
| 平成25年の違憲判断は、過去に確定した遺産分割をすべてやり直させる | 要旨2は、確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼさないとしている |
| 憲法適合性を判断する事件は、最高裁判所のどの法廷でも扱える | 裁判所法10条は、1号・2号の場合は小法廷では裁判をすることができないとしている(1号は意見が前に大法廷でした合憲の裁判と同じ場合を除く) |
| 最高裁判所が違憲としたのは、すべて14条1項違反である | 表のとおり、13条・15条・17条・22条1項・29条2項・44条ただし書・79条など、違反とされた条文は多い |
まとめ
- 違憲審査権の条文は81条。最高裁判所は、「一切の法律、命令、規則又は処分」が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所。条文に「条約」の語はない
- 警察予備隊訴訟(昭和27年)の要旨は、最高裁判所は具体的事件を離れて抽象的に法律・命令等の憲法適合性を決定する権限を有するものではない、とする(一般に付随的審査制と呼ばれる)
- 砂川事件(昭和34年)の要旨は、高度の政治性を有する安保条約について、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り司法審査権の範囲外と解する、とする
- 最高裁判所が法令の規定を違憲とした主な判断は、刑法200条(昭和48年)から旧優生保護法(令和6年)まで、表の13件を事件番号・条文とセットで押さえる。いずれも大法廷の判断
- 違憲判断の効力は、81条には書かれていない。要旨が示す範囲(確定した法律関係への影響、違憲部分を除いた適用、選挙の効力、破棄差戻し)を、事件ごとに区別する
科目ごとの配点と学習の優先順位は行政書士の点数配分、裁判所法や基礎法学の整理は行政書士の基礎法学で扱っています。
参照した一次ソース
- e-Gov法令検索 日本国憲法(76条・81条・98条・99条)/裁判所法(3条・10条)/刑法(200条)/民法(733条・900条)/国籍法(3条)
- 裁判所 裁判例検索(最高裁判所判例集)の個別ページ:警察予備隊(昭和27(マ)23)・砂川(昭和34(あ)710)・尊属殺人(昭和45(あ)1310)・薬事法(昭和43(行ツ)120)・定数配分(昭和49(行ツ)75)・定数配分(昭和59(行ツ)339)・森林法(昭和59(オ)805)・郵便法(平成11(オ)1767)・在外選挙権(平成13(行ツ)82)・国籍法(平成18(行ツ)135)・非嫡出子の相続分(平成24(ク)984)・再婚禁止期間(平成25(オ)1079)・在外国民審査(令和2(行ツ)255)・性同一性障害者特例法(令和2(ク)993)・旧優生保護法(令和5(受)1319)・愛媛玉串料(平成4(行ツ)156)・泉佐野市民会館(平成1(オ)762)・空知太(平成19(行ツ)260)・孔子廟(令和1(行ツ)222)
よくある質問
Q憲法81条の「終審裁判所」とは、どういう意味ですか?
81条は、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と定めています。「終審裁判所」という言葉は、憲法適合性の判断について最高裁判所が最終の裁判所であることを表しています。81条の条文には、下級裁判所が憲法適合性を判断できるかどうかは書かれていません。
Q最高裁判所は、具体的な事件がなくても、法律が憲法に違反するかどうかを判断できますか?
昭和27年10月8日の最高裁判所大法廷判決(昭和27(マ)23、警察予備隊訴訟)の裁判要旨は、「最高裁判所は、具体的事件を離れて抽象的に法律、命令等が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有するものではない。」としています。参照法条は憲法81条で、結果は却下です。なお、裁判所法3条1項は、裁判所の権限を、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて「一切の法律上の争訟」を裁判すること、その他法律において特に定める権限と書いています。
Q条約は、81条の違憲審査の対象ですか?
81条の条文は、審査の対象を「一切の法律、命令、規則又は処分」と書いていて、「条約」という言葉は出てきません。砂川事件(昭和34年12月16日・大法廷・判決、昭和34(あ)710)の裁判要旨は、安保条約のような主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが違憲であるか否かの法的判断は、司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のもので、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする、としています。
Q最高裁判所が法律を違憲と判断すると、その法律の条文は自動的に消えますか?
81条の条文は、憲法適合性を「決定する権限」を最高裁判所に与えているだけで、違憲と判断された法律の効力をどうするかは書いていません。98条1項は、憲法の条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しないと定めています。判決の効力が当該事件に限られるのか、一般に及ぶのかという論点は、条文には書かれておらず、判例・学説の考え方によります。参考として、e-Gov法令検索の現行の条文では、刑法200条と民法733条は「削除」と表示されています。
Q憲法適合性の判断は、最高裁判所の小法廷でもできますか?
裁判所法10条は、事件を大法廷と小法廷のどちらで扱うかは最高裁判所の定めるところによるとしたうえで、次の場合には小法廷では裁判をすることができないと定めています。1号は、当事者の主張に基づいて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く)、2号は、1号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるときです。このほか3号は、憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するときです。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月8日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

