問題
労働基本権(憲法28条)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
オが正答です。地方公務員法52条5項は、警察職員と消防職員が、勤務条件の改善を目的として当局と交渉する団体(職員団体)を作ったり、加入したりすることを禁じています。アは誤りです。全農林警職法事件で、最高裁は公務員の争議行為の禁止を合憲としました。イは誤りです。同じ判決は、処罰の対象を「違法性の強いもの」に絞る限定解釈をとらず、それまでの判例を変更しました。ウは誤りです。電力・ガスなどの事業でも、ストライキは手続や方法の規制を受けるだけで、全面的に禁止されてはいません。エは誤りです。労働基本権を法律で奪うことは許されません。
オの根拠は地方公務員法52条5項で、「警察職員及び消防職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、地方公共団体の当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはならない」と定めています。争議行為はすべての地方公務員に禁止されている(同法37条1項)ため、警察・消防職員は団結・交渉・争議のいずれも法律上認められていません。アについて、全農林警職法事件(最大判昭48.4.25)は、非現業の国家公務員の争議行為を禁止し(国家公務員法98条2項)、そのあおり等を処罰する規定を合憲としました。イについて、同判決は、処罰を「違法性の強いもの」に限る限定解釈は処罰範囲を不明確にするとして採らず、限定解釈をとった全司法仙台事件判決(昭和44年)を変更しました。ウについて、電気・ガスの供給事業は労働関係調整法8条の公益事業にあたり、争議行為の10日前までの通知(同法37条)などの規制を受けますが、完全禁止ではありません。エについて、労働基本権の剥奪や労働組合の廃止は28条に反します。
【理論的背景】
憲法28条は、経済的弱者である労働者が使用者と対等に交渉できるよう、団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)を保障する社会権規定です。公務員も「勤労者」に含まれますが、最高裁は、①公務員の地位の特殊性と職務の公共性(全体の奉仕者・15条2項)、②勤務条件が国会の制定する法律・予算で決まること(財政民主主義)、③人事院勧告などの代償措置が設けられていることを理由に、争議行為の一律禁止を合憲としています(全農林警職法事件・最大判昭48.4.25)。
【実務・条文構造】
①非現業の国家公務員:争議行為禁止(国家公務員法98条2項)、職員団体の結成は可。ただし警察職員・海上保安庁職員・刑事施設職員は職員団体を結成できない(同法108条の2第5項)。②非現業の地方公務員:争議行為禁止(地方公務員法37条1項)、職員団体の結成は可(同法52条3項)。③警察職員・消防職員(地方):職員団体の結成・加入禁止(同法52条5項)に争議行為禁止(37条1項)が重なり、団結・交渉・争議のいずれも法律上認められない(オの根拠)。④民間の公益事業:電気・ガスの供給事業などは労働関係調整法8条の公益事業にあたり、争議行為の10日前までの通知(同法37条)や緊急調整の対象となるほか、電気事業については「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律」が停電ストなど特定の方法の争議行為を禁止しています。いずれも方法・手続の規制であり、争議権の完全禁止ではありません(ウの誤り)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では、①公務員の争議行為禁止は合憲(全農林警職法事件)、②同判決が限定解釈(いわゆる「二重のしぼり」)を否定して判例を変更したこと、③警察・消防職員の団結禁止、④民間の公益事業は規制にとどまること、が繰り返し問われます。特に②は、都教組事件・全司法仙台事件(昭和44年)が限定解釈をとり、全農林警職法事件がこれを変更したという判例の流れとして押さえる必要があります。その後、地方公務員(岩教組学力テスト事件・最大判昭51.5.21)や現業の国家公務員(全逓名古屋中郵事件・最大判昭52.5.4)についても、同様の考え方で争議行為禁止が合憲とされています。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。全農林警職法事件は国家公務員法の争議行為禁止とあおり等の処罰規定を合憲とした。「禁止は28条違反」は判例と正反対。
- イ: 誤り。同判決は、あおり等の処罰を「違法性の強い争議行為を違法性の強い態様であおった場合」に限る限定解釈は、構成要件の明確性を損ない憲法31条の趣旨にも反するおそれがあるとして採らず、限定解釈をとった全司法仙台事件判決(最大判昭44.4.2)を、これと抵触する限度で変更した。
- ウ: 誤り。公益事業の争議行為には事前通知(労働関係調整法37条)や方法の規制(電気事業の停電スト等の禁止)があるが、争議権そのものが完全に否定されているわけではない。
- エ: 誤り。労働基本権は憲法28条が保障する権利であり、法律で剥奪したり労働組合を廃止したりすることは許されない。
- オ: 正答。地方公務員法52条5項が警察職員・消防職員の職員団体の結成・加入を禁止している。条文の文言(勤務条件の維持改善を目的とし、かつ、当局と交渉する団体)とそのまま一致する。
【根拠条文】
日本国憲法 第28条(勤労者の団結権、団体交渉権その他の団体行動をする権利)
地方公務員法 第52条第5項(警察職員・消防職員の職員団体の結成・加入の禁止)
地方公務員法 第37条第1項(争議行為等の禁止)
国家公務員法 第98条第2項(争議行為等の禁止)、第108条の2第5項(警察職員等の職員団体結成の禁止)
労働関係調整法 第8条(公益事業)、第37条(公益事業の争議行為の予告)
【参照判例】
全農林警職法事件(最大判 昭和48年4月25日・刑集27巻4号547頁):争議行為禁止・あおり等処罰規定を合憲とし、限定解釈をとった全司法仙台事件判決(最大判 昭和44年4月2日)を変更
【補足】
「警察・消防職員=団結も不可」「一般の公務員=団結は可・争議は不可」「民間労働者=原則三権保障(公益事業は手続・方法の規制)」という3段階の整理と、「全農林警職法事件=限定解釈を否定して判例変更」の2点が試験対策の核心。
- 日本国憲法第28条・第31条e-Govで原文を読む
- 労働関係調整法第8条・第37条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第28条(勤労者の団結権等)、地方公務員法 第52条第5項・第37条第1項、国家公務員法 第98条第2項 参照判例: 全農林警職法事件(最大判 昭和48年4月25日・刑集27巻4号547頁) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

