行政書士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

行政書士 憲法 問23|公務員・在監者の人権制限

問題

行政書士 | 憲法

公務員・在監者(受刑者等)の人権に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例・通説の趣旨に照らして正しいものはどれか。

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答え合わせ

正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

公務員の人権は、職務の公共性から一定の制約に服しますが、人権そのものが失われるわけではありません。国家公務員の争議行為の禁止については、最高裁が全農林警職法事件(最大判昭48.4.25)で国家公務員法の禁止規定を合憲と判示しています(エが正答)。アは誤りです。憲法15条3項は「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と定めており、公務員であることを理由に投票まで禁止することはできません。イは誤りです。最高裁は猿払事件で政治的行為の制限を合憲としており、「いかなる場合も違憲」と判示した事実はありません。ウ(すべての人権が剥奪)とオ(制限は一切許されない)も、極端な断定で誤りです。

公務員の人権制限の根拠について、かつては「特別権力関係論(公法上の特別な従属関係に入った者には法律の根拠なく人権制限ができる)」が唱えられていましたが、現在の判例・通説はこれを否定し、職務の公共性・特殊性に基づく合理的で必要な限度の制限として説明します。①労働基本権:憲法28条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利」を保障しますが、全農林警職法事件(最大判昭48.4.25)は国家公務員の争議行為を禁止する国家公務員法の規定を合憲と判示しました(エが正答)。②政治活動:猿払事件(最大判昭49.11.6)は国家公務員法による政治的行為の制限を合憲としており、「いかなる場合も違憲と判示した」とするイは誤りです。一方、憲法15条3項は「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と定めます。公務員も国民として選挙権を持つため、投票まで含めた「一切の政治活動」の禁止を認めるアは誤りです。③在監者:憲法11条は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と定めており、受刑者であっても人権がすべて剥奪されることはありません(ウは誤り)。他方、13条は権利の尊重を「公共の福祉に反しない限り」としており、施設の規律・秩序維持のための合理的な制限は許容されます(オの「一切許されない」は誤り)。

【理論的背景】

公務員・在監者の人権制限の根拠論は日本法の重要論点です。かつては「特別権力関係論」(戦前ドイツの公法理論を継受したもの)が支配的でした。これは「公法上の特別な身分関係に入った者(公務員・在監者・国立大学生等)は、一般市民と異なり、包括的な服従義務を負い法律の根拠なく人権を制限される」というものです。現在の判例・通説はこれを否定し、「法律の根拠に基づき、必要最小限の範囲での制限のみが許容される」というアプローチを採っています。この転換が公務員の人権保障の拡充につながっています。

【実務・条文構造】

国家公務員の労働基本権と政治活動について、判例の到達点を整理します。労働基本権については、憲法28条が「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定め、公務員も「勤労者」に含まれます。しかし全農林警職法事件(最大判昭48.4.25)は、公務員の地位の特殊性と職務の公共性を理由に、国家公務員の争議行為を禁止する国家公務員法の規定を合憲と判示しました(エの根拠)。政治活動については、猿払事件(最大判昭49.11.6)が、国家公務員法による政治的行為の禁止について、禁止の目的と禁止される行為との間に合理的関連性があるとして合憲と判断しています。最高裁が「公務員の政治的行為の制限はいかなる場合も違憲」と判示したことはなく、イは誤りです。ただし、制限されるのは法律が定める「政治的行為」です。憲法15条1項は「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とし、同条3項は「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」、同条4項は「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」と定めます。公務員自身も国民として選挙権を有しており、15条2項の「全体の奉仕者」という地位から投票を含む一切の政治活動の禁止を導くアは、15条の構造と矛盾します。在監者(受刑者等)については、憲法11条が「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と定めるとおり、刑罰の執行中であっても人権の享有主体であることに変わりはありません(ウは誤り)。他方で、13条は生命・自由・幸福追求の権利の尊重を「公共の福祉に反しない限り」としており、施設の規律・秩序の維持や矯正の目的から、面会・書信などの外部交通に合理的な制限を加えることは許容されます(オの「一切許されない」は誤り)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での公務員・在監者の人権の出題ポイントは次の3つです。①公務員の労働基本権:国家公務員の争議行為禁止は合憲(全農林警職法事件)。②公務員の政治活動の自由:猿払事件は政治的行為の制限を合憲としたが、制限されるのは法律が定める政治的行為であり、選挙権(15条3項)まで奪うものではない。③在監者の人権:「すべて剥奪」「一切制限できない」はともに誤りで、合理的範囲での制限が許容される。特別権力関係論が現在は否定されている点(法律の根拠なしに人権制限不可)は基礎的知識として押さえること。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。15条3項「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」。公務員も国民として選挙権を有しており、15条2項の「全体の奉仕者」から投票を含む一切の政治活動の禁止は導けない。
  • イ: 誤り。最高裁(猿払事件)は国家公務員法による政治的行為の制限を合憲としており、「いかなる場合も違憲」と判示した事実はない。
  • ウ: 誤り。11条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」。受刑者も人権の享有主体であり、「すべての人権が剥奪」という特別権力関係論的な理解は現在の判例・通説では否定されている。
  • エ: 正答。全農林警職法事件(最大判昭48.4.25)が、国家公務員の争議行為を禁止する国家公務員法の規定を合憲と判示した。
  • オ: 誤り。13条は権利の尊重を「公共の福祉に反しない限り」としており、施設の規律・秩序維持上必要な範囲での面会・書信の制限は許容される。「一切許されない」は誤り。

【根拠条文】

日本国憲法 第11条(基本的人権の享有)、第13条(公共の福祉)、第15条(公務員の選定罷免権・全体の奉仕者・普通選挙)、第28条(勤労者の団結権・団体交渉権・団体行動権)

国家公務員法(争議行為の禁止・政治的行為の制限)

【参照判例】

全農林警職法事件(最大判 昭和48年4月25日)

猿払事件(最大判 昭和49年11月6日)

【補足】

公務員の争議権禁止(全農林:合憲)と政治的行為の制限(猿払:合憲)を押さえつつ、選挙権(15条3項)は公務員にも保障される点を区別する。在監者の「すべて剥奪」は特別権力関係論の誤用として排除すること。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第11条(基本的人権の享有)、第13条(公共の福祉)、第15条(公務員の選定罷免権・全体の奉仕者・普通選挙)、第28条(勤労者の団結権・団体交渉権・団体行動権) 参照判例: 全農林警職法事件(最大判 昭和48年4月25日)、猿払事件(最大判 昭和49年11月6日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。