危険物取扱者の乙3(自然発火性物質及び禁水性物質)と乙6(酸化性液体)を、消防法の別表第一と消防試験研究センターの統計(令和4〜7年度)で整理します。品名の一覧、試験の問題数、毒物及び劇物取締法の毒物劇物取扱責任者との資格の違いも条文で比べます。
目次
結論:乙3は第3類(自然発火性物質及び禁水性物質)、乙6は第6類(酸化性液体)を扱う乙種の免状で、免状に指定された類しか扱えません。試験は乙種の全類で共通の形式(法令15問・物理化学10問・性質消火10問、2時間、各科目60%以上)で、令和7年度の合格率は乙3が65.1%、乙6が67.6%です。乙3・乙6のどちらが高いかは令和4〜7年度で年度ごとに入れ替わり、難易度の順は決められません。毒物及び劇物取締法の毒物劇物取扱責任者は根拠法も試験も別の資格で、乙3を取っても取得できません。
| 項目 | 乙3(乙種第3類) | 乙6(乙種第6類) |
|---|---|---|
| 扱う危険物 | 自然発火性物質及び禁水性物質 | 酸化性液体 |
| 品名の数(別表第一) | 10(カリウム・ナトリウムなど) | 3(過塩素酸・過酸化水素・硝酸) |
| 試験の問題数 | 法令15・物理化学10・性質消火10 | 同左 |
| 令和7年度の合格率 | 65.1%(受験者10,275人) | 67.6%(受験者10,402人) |
| 当サイトの問題 | なし(乙4のみ350問) | なし(乙4のみ350問) |
出典:消防法 別表第一(e-Gov 法令検索、2026-10-04 時点。品名の数は「その他のもので政令で定めるもの」と「前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの」を除いて当サイトが数えました)、消防試験研究センター 試験科目及び問題数・試験実施状況(令和7年度)。
乙4を含めた6類の一覧と、科目免除・同時受験の条件は危険物乙1・2・3・5・6の組み合わせ、取る順番の考え方は乙4以外を取る順番にあります。この記事は、乙3・乙6の中身と、名前が似ていて混同されやすい毒物劇物取扱責任者との違いに絞ります。消防設備士の乙種は別の資格で、この記事では扱いません。
乙3・乙6の試験は何が出る?問題数・時間・合格基準・科目免除
乙種の試験は、免状がない人が最初に受ける場合、類に関係なく次の3科目です(センター 試験科目及び問題数・試験の方法)。
| 科目 | 問題数 | 乙3・乙6での違い |
|---|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15問 | 乙種全類で共通 |
| 基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 10問 | 乙種全類で共通 |
| 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10問 | 受ける類(第3類・第6類)の範囲 |
試験時間は乙種で2時間、解答は五肢択一、合格基準は科目ごとに60%以上です(免除を受けた科目を除く)。10問の科目は6問、15問の科目は9問が基準です。
乙種の試験手数料:5,300円(非課税)。一旦納入した手数料は返金されない。最終確認日:2026-10-04。出典:消防試験研究センター 試験の方法。
乙種の免状を1類でも持っている人が、ほかの類を受ける場合は、法令と物理化学が免除され、性質消火10問(35分)だけになります(規則第55条第6項・センター よくある質問 Q11)。ただし、免除を受けるには、次回試験の受験願書提出時までに免状が交付されている必要があります(Q12)。乙3と乙6を両方取る場合の問題数と時間は、最初の類が35問・120分、2類目が10問・35分で、合計45問・155分です(当サイトの計算で、どちらを先に受けても同じです)。
法令と物理化学は乙種のどの類でも同じ範囲なので、免状を持たない人が最初の類として乙3または乙6を受けるときの準備は、乙4の問題と共通の部分があります。
乙3で扱う第3類・乙6で扱う第6類の品名
消防法の別表第一は、第3類と第6類を次のように定めています(e-Gov 法令検索で確認、2026-10-04 時点の現行条文)。
| 類 | 性質 | 品名 |
|---|---|---|
| 第3類 | 自然発火性物質及び禁水性物質 | カリウム/ナトリウム/アルキルアルミニウム/アルキルリチウム/黄りん/アルカリ金属(カリウム及びナトリウムを除く。)及びアルカリ土類金属/有機金属化合物(アルキルアルミニウム及びアルキルリチウムを除く。)/金属の水素化物/金属のりん化物/カルシウム又はアルミニウムの炭化物(以上10品名)、その他のもので政令で定めるもの、前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
| 第6類 | 酸化性液体 | 過塩素酸/過酸化水素/硝酸(以上3品名)、その他のもので政令で定めるもの、前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
別表第一の備考は、第3類の「自然発火性物質及び禁水性物質」を、固体または液体であって、空気中での発火の危険性を判断するための政令で定める試験で政令で定める性状を示すもの、または水と接触して発火し、もしくは可燃性ガスを発生する危険性を判断するための政令で定める試験で政令で定める性状を示すもの、と定めています(備考八)。第6類の「酸化性液体」は、液体であって、酸化力の潜在的な危険性を判断するための政令で定める試験で政令で定める性状を示すもの、とされています(備考二十)。
つまり、第3類は「空気中で発火する」「水と接触して発火または可燃性ガスを発生する」の2つの危険性を、第6類は酸化力の危険性を、それぞれ政令の試験で判断する区分です。品名の数だけを見ると第6類は3品名、第3類は10品名ですが、どちらにも「その他のもので政令で定めるもの」があるため、品名の数は覚える物質の数そのものではありません。
試験の性質消火の科目名は「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」で、受ける類の範囲から出題されます。ナトリウムやカリウムと水の反応、自然発火の原因といった土台の知識は、共通科目の物理化学の問題でも確認できます。
乙3・乙6の合格率と受験者数(令和4〜7年度)
センターの試験実施状況で、乙3と乙6の合格率と受験者数を並べます。
| 年度 | 乙3の合格率 | 乙3の受験者 | 乙6の合格率 | 乙6の受験者 |
|---|---|---|---|---|
| 令和4年度 | 71.1% | 11,555人 | 70.0% | 11,739人 |
| 令和5年度 | 69.2% | 10,763人 | 69.2% | 10,635人 |
| 令和6年度 | 66.3% | 10,896人 | 67.2% | 10,746人 |
| 令和7年度 | 65.1% | 10,275人 | 67.6% | 10,402人 |
出典:消防試験研究センター 試験実施状況(令和7年度=令和7・6年度、令和5年度=令和5・4年度)。
乙3・乙6の令和7年度の全国合格率:乙3 65.1%(受験者10,275人・合格者6,694人)、乙6 67.6%(受験者10,402人・合格者7,032人)。令和7年4月〜令和8年3月の合計。最終確認日:2026-10-04。出典:消防試験研究センター 試験実施状況(令和7年度)。
この表から言えることは3点です。
- 乙3は71.1%から65.1%へ、乙6は70.0%から67.6%へ、4年で下がっています(乙3の下げ幅の方が大きい)
- 令和5年度は両方とも69.2%で、令和4年度は乙3が高く、令和6・7年度は乙6が高いと、どちらが高いかは年度で入れ替わっています
- 乙4(4年とも31.5〜32.0%)とは約2倍の差があります。令和7年度の乙4以外の5類(乙1・乙2・乙3・乙5・乙6)は62.1〜67.6%の幅にあります
センターのページには、類ごとの合格率の差の理由は書かれていません。したがって、乙3と乙6のどちらが易しいかを数字から決めることはできません。乙種6類を4年分並べた表は乙4以外を取る順番にあります。
毒物劇物取扱責任者との違い:根拠法・資格の取り方・試験
「乙3」は「毒劇」と並んで検索されることがありますが、危険物取扱者と毒物劇物取扱責任者は、別の法律に基づく別の資格です。毒物及び劇物取締法の条文(e-Gov 法令検索、2026-10-04 時点)は次のとおりです。
- 第7条第1項:毒物劇物営業者は、毒物または劇物を直接に取り扱う製造所・営業所・店舗ごとに、専任の毒物劇物取扱責任者を置かなければならない
- 第8条第1項:毒物劇物取扱責任者になれるのは、① 薬剤師、② 厚生労働省令で定める学校で応用化学に関する学課を修了した者、③ 都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験に合格した者
- 第8条第2項:18歳未満の者は責任者になれない
- 第8条第3項:毒物劇物取扱者試験は、一般・農業用品目・特定品目の3つに分かれる
- 第22条第4項:政令で定める事業を行い、業務上シアン化ナトリウムなどを取り扱う人(業務上取扱者)にも、第7条・第8条の規定が準用される
試験の内容は、毒物及び劇物取締法施行規則第7条が、筆記試験(毒物及び劇物に関する法規・基礎化学・性質及び貯蔵その他取扱方法)と実地試験(識別及び取扱方法)と定めています。学校については、同施行規則第6条が、高等学校またはこれと同等以上の学校と定めています。
| 項目 | 危険物取扱者(乙3・乙6) | 毒物劇物取扱責任者 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 消防法 | 毒物及び劇物取締法 |
| 対象 | 危険物(第1〜6類。乙3は第3類、乙6は第6類) | 毒物・劇物 |
| 資格の取り方 | 危険物取扱者試験に合格し、免状の交付を受ける | 薬剤師、応用化学に関する学課の修了者、または都道府県知事が行う試験の合格者(法第8条第1項) |
| 試験の実施 | 消防試験研究センター(試験日程は都道府県ごと) | 都道府県知事(都道府県ごとに実施) |
| 試験の内容 | 筆記のみ(五肢択一)・科目ごとに60%以上 | 筆記試験と実地試験(施行規則第7条) |
| 区分 | 乙種は第1〜6類、甲種・丙種 | 一般・農業用品目・特定品目 |
| 年齢に関する決まり | 乙種・丙種は誰でも受験できる(センター) | 18歳未満は責任者になれない(法第8条第2項)。受験の年齢要件は扱いません |
出典:消防法・毒物及び劇物取締法・毒物及び劇物取締法施行規則(e-Gov 法令検索)、センター 受験資格・試験の方法。
危険物取扱者の試験は、実技試験のない筆記のみで、乙4・乙6を含む乙種の問題は五肢択一です。「乙4」「乙3」のような類ごとの区分は危険物取扱者のもので、毒物劇物取扱責任者の区分は一般・農業用品目・特定品目です。
同じ物質が両方に出てくる場合
同じ物質が、危険物と劇物の両方に指定されることがあります。たとえば、トルエンは毒物及び劇物指定令第2条(第76号の2)で劇物に指定されています。一方、センターのよくある質問は、トルエンは第4類の危険物であり、法で定める指定数量以上を貯蔵し、または取り扱う施設で使用する場合は危険物取扱者免状が必要だと案内しています。トルエンは第4類なので、乙3・乙6ではなく乙4の範囲ですが、「危険物としての規制」と「劇物としての規制」は別の法律で別々にかかります。
どちらの規制がかかるかは、物質ごとに両方の法令で確かめる必要があります。この記事では、個々の物質の該当関係を一覧にはしません。
毒物及び劇物取締法の現行条文:令和7年6月1日施行の改正後の条文(法令番号 昭和二十五年法律第三百三号)。最終確認日:2026-10-04。出典:e-Gov 法令検索 毒物及び劇物取締法。
毒物劇物取扱者試験の全国統一の合格率は、この記事では扱いません。乙3と毒物劇物取扱者試験の難しさの比較も、数字の裏付けとなる出典を示せないため行いません。
乙3・乙6を目指すときに当サイトで使えるもの
当サイトにある問題は乙4だけで、乙3・乙6の問題はありません(2026-10-04 集計。当サイトが出題範囲をもとに作成した論点別問題で、本試験の出題数ではありません)。使えるのは、乙種で共通の2科目です。
- 危険物に関する法令(150問):免状の種類・取扱範囲・保安講習・保安監督者など。乙3・乙6でも同じ範囲
- 基礎的な物理学及び基礎的な化学(100問):燃焼・消火の理論・酸化還元・自然発火など。第3類(禁水性物質)・第6類(酸化性液体)の学習の土台
性質消火は第4類の問題なので、乙3・乙6の性質は、第3類・第6類の品名(上の表)を出発点に、別の教材で確認してください。乙3・乙6のテキストの選び方は危険物乙1・2・3・5・6の組み合わせにまとめています。
まとめ
- 乙3は第3類(自然発火性物質及び禁水性物質・10品名)、乙6は第6類(酸化性液体・3品名)の免状。乙種は免状に指定された類しか扱えない
- 試験は乙種共通で法令15問・物理化学10問・性質消火10問、2時間、各科目60%以上。免状がある人が別の類を受けるなら性質消火10問・35分
- 令和7年度の合格率は乙3が65.1%、乙6が67.6%。令和4〜7年度で高い方が入れ替わり、難易度の順は決められない
- 毒物劇物取扱責任者は毒物及び劇物取締法の資格で、薬剤師・応用化学の学課修了者・都道府県知事の試験の合格者が就ける。乙3とは別の資格
- 同じ物質が危険物と劇物の両方に指定されることがあるが、規制は別の法律で別々にかかる
よくある質問
Q危険物取扱者の乙3と、毒物劇物取扱責任者は同じ資格ですか?
別の資格です。乙3は消防法に基づく危険物取扱者免状の乙種第3類で、取り扱える危険物は第3類(自然発火性物質及び禁水性物質)です。毒物劇物取扱責任者は毒物及び劇物取締法第8条に基づく資格で、薬剤師・応用化学に関する学課の修了者・都道府県知事が行う試験の合格者のいずれかが就けます。試験も別で、乙3の試験を受けても毒物劇物取扱責任者にはなれません。
Q乙3と乙6は、乙4を持っていなくても受けられますか?
受けられます。消防試験研究センターは乙種について「誰でも受験できます。」と案内しています。乙種の免状を1類でも持っていれば、ほかの類は性質消火10問・35分で受けられます。免状がない人が最初に受ける1類は、どの類でも法令15問・物理化学10問・性質消火10問の35問・2時間です。
Q乙3の合格率は乙6より低いですか?
令和7年度は乙3が65.1%、乙6が67.6%ですが、令和4年度は乙3が71.1%、乙6が70.0%と逆でした。令和4〜7年度の4年間では、乙3と乙6のどちらが高いかが年度で入れ替わっていて、難易度の差を示す数字としては使えません。センターのページに、類ごとの差の理由は書かれていません。
Q毒物劇物取扱者試験の合格率は、乙3より高いですか?
比べられる全国統一の数字は、この記事では書きません。毒物劇物取扱者試験は、毒物及び劇物取締法第8条第1項第3号で都道府県知事が行う試験と定められ、都道府県ごとに実施されます。合格率の比較は、受ける都道府県の公表値で確かめてください。
Q乙3・乙6の問題は当サイトにありますか?
当サイトに乙3・乙6の問題はありません。当サイトにあるのは乙4の問題350問(法令150問・物理化学100問・性質消火100問)です。法令と物理化学は、乙種どの類でも出題範囲が同じなので、乙3・乙6の最初の1類を受ける場合の練習にも使えます。性質消火は類ごとに範囲が異なるため、第3類・第6類の性質は別の教材で確認してください。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。
