障害者雇用促進法の目的と全体像、精神障害者が雇用義務の対象になった平成30年4月の改正、法定雇用率と段階的な引上げ、週所定労働時間が短い人の算定特例、差別の禁止と合理的配慮、ジョブコーチや障害者就業・生活支援センターなどの支援機関を、e-Gov 法令検索の条文と厚生労働省の公式資料で整理します。精神保健福祉制度論・精神障害リハビリテーション論との関係も扱います。
目次
結論:障害者雇用促進法は、障害者の雇用義務、雇用の分野での差別の禁止と合理的配慮、職業リハビリテーションなどを定める法律です(第1条)。民間企業の事業主には、常時雇用する労働者の数に法定雇用率を掛けた数以上の対象障害者を雇用する義務があります(第43条)。精神障害者は、平成30年4月1日から法定雇用率の算定基礎に加わりました。雇用率に数えられる精神障害者は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人です(第37条第2項)。法定雇用率は、令和6年4月に2.5%、令和8年7月に2.7%へ段階的に引き上げられました。週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者は、当分の間、1人として数えます。
条文は e-Gov 法令検索で確認(2026年10月11日時点の現行条文)しています。障害者の雇用の促進等に関する法律(e-Gov法令検索)、同法施行令、同法施行規則
現行の版:e-Gov 法令検索の現行版は、障害者雇用促進法が2026年10月1日施行の版(令和7年法律第63号による改正)、施行令と施行規則も2026年10月1日施行の版です。この記事で扱う条文(法第1条・第2条・第20条・第22条・第27条・第28条・第34条〜第36条の6・第37条・第43条・第46条・第47条・第49条・第70条・第74条の4〜第74条の7、施行令第2条・第9条・附則(令和5年政令第44号)第3条、施行規則第1条の4・第6条・第7条・第8条・第24条の2・附則第6条)は、これらの版の文言にもとづきます。最終確認日:2026-10-11。出典:e-Gov法令検索 障害者雇用促進法、同施行令、同施行規則。
障害者雇用促進法の目的と全体像
第1条は、この法律の目的を、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他の措置を総合的に講じ、障害者の職業の安定を図ることと定めています。
用語の意義(第2条)は、障害者を、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者としています。精神障害者は、障害者のうち精神障害がある者であって厚生労働省令で定めるもの(第2条第6号)で、施行規則第1条の4は、「症状が安定し、就労が可能な状態にあるもの」であって、次のどちらかに当たる者としています。
- 精神保健福祉法 第45条第2項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
- 統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む)又はてんかんにかかっている者(手帳の交付を受けている者を除く)
法の章立ては、次のとおりです(法の目次)。
| 章 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 第2章 職業リハビリテーションの推進 | 第8条〜第33条 | 職業紹介、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなど |
| 第2章の2 障害者に対する差別の禁止等 | 第34条〜第36条の6 | 差別の禁止、合理的配慮の提供義務、指針 |
| 第3章 対象障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等 | 第37条〜第74条の3 | 雇用義務、雇用率、障害者雇用調整金・納付金、短時間労働者などの特例 |
| 第3章の2 紛争の解決 | 第74条の4〜第74条の8 | 苦情の自主的解決、紛争の解決の援助、調停 |
このうち、精神保健福祉士の学習で押さえておきたいのは、雇用率の対象になる精神障害者の範囲と、差別の禁止・合理的配慮、そして支援機関です。精神障害者保健福祉手帳そのものの制度は、精神障害者保健福祉手帳の記事で整理しています。
精神障害者の雇用義務:平成30年4月の改正と、対象になる人の範囲
平成30年4月1日の改正:厚生労働省の「障害者雇用促進法の改正の概要」(平成25年改正)は、法定雇用率の算定基礎に精神障害者を追加するとして、施行期日を平成30年4月1日としています。あわせて、施行後5年間(平成30年4月1日から平成35年3月31日まで)は猶予期間とし、精神障害者の追加に係る法定雇用率の引上げ分は、計算式どおりに引き上げないことも可能、と書いています。平成35年は令和5年です。この改正の差別禁止・合理的配慮の部分は平成28年4月1日に施行されました(同資料)。
雇用率の対象になる精神障害者:第37条第2項は、「対象障害者」を、身体障害者、知的障害者又は精神障害者と定め、精神障害者は、精神保健福祉法 第45条第2項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る、としています。厚生労働省のパンフレット「障害者雇用のご案内」(令和8年4月1日現在)のQ&Aも、身体障害者は身体障害者手帳1〜6級に該当する方、知的障害者は児童相談所などで知的障害者と判定された方、精神障害者は手帳の交付を受けている方、と説明しています。
つまり、法の「障害者」「精神障害者」の定義(第2条、施行規則第1条の4)は、手帳のない統合失調症、そううつ病、てんかんの人も含めて広く置かれていますが、雇用率に数えられるのは手帳の交付を受けている人に限られます。この違いは、施行規則 第1条の4が手帳のない人も挙げているのに対して、第37条第2項が手帳の所持を条件にしている、という条文の書き分けによります。
事業主の責務:第5条は、事業主に、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に協力する責務があるとして、適当な雇用の場を与えること、適正な雇用管理並びに職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことなどを定めています。厚生労働省のページによると、事業主の責務に職業能力の開発及び向上に関する措置が含まれることの明確化は、令和4年改正による令和5年4月1日施行の事項です。
法定雇用率と、段階的な引上げ(第43条)
雇用義務の中身:第43条第1項は、事業主(常時雇用する労働者を雇用する事業主)は、雇用する対象障害者である労働者の数が、雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(1人未満の端数は切り捨て)以上であるようにしなければならない、と定めています。この数を「法定雇用障害者数」といいます。障害者雇用率は、第2項により、労働者の総数に対する対象障害者である労働者の総数の割合を基準として設定し、少なくとも5年ごとに、その割合の推移を勘案して政令で定めます。
常時雇用する労働者とは、厚生労働省のパンフレットによると、1週間の所定労働時間が20時間以上で、1年を超えて雇用される見込みがある、または1年を超えて雇用されている労働者です。パートやアルバイトでも、この要件に当たれば含まれます。
率は施行令第9条が定めています。現行の条文は、百分の二・七です。民間企業の率が段階的に引き上げられてきた経過は、次のとおりです。
| 時期 | 民間企業の法定雇用率 | 対象事業主の範囲(常時雇用する労働者) |
|---|---|---|
| 令和5年度 | 2.3% | 43.5人以上 |
| 令和6年4月〜令和8年6月 | 2.5% | 40.0人以上 |
| 令和8年7月〜 | 2.7% | 37.5人以上 |
厚生労働省のパンフレットは、令和5年4月からの民間企業における新たな法定雇用率は2.7%とされ、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度は2.3%に据え置き、令和6年4月から2.5%、令和8年7月から2.7%と段階的な引上げが行われている、と説明しています。施行令第9条を百分の二・七に改めた改正政令(令和5年政令第44号。この改正は令和6年4月1日施行)の附則第3条は、令和8年6月30日までの間、施行令第9条中の「百分の二・七」を「百分の二・五」と読み替えると定めています。その前の令和5年度の施行令第9条は、百分の二・三でした。
法定雇用率と対象事業主の範囲:民間企業の法定雇用率は、令和8年7月から2.7%(令和6年4月〜令和8年6月は2.5%、令和5年度は2.3%)。国、地方公共団体などは令和8年7月から3.0%(令和8年6月までは2.8%)、都道府県などの教育委員会は2.9%(令和8年6月までは2.7%)。障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲は、令和8年7月から労働者37.5人以上(令和8年6月までは40.0人以上)。最終確認日:2026-10-11。出典:厚生労働省 障害者雇用のご案内(令和8年4月1日現在)、厚生労働省 障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について、e-Gov法令検索 障害者雇用促進法施行令 第2条・第9条・附則(令和5年政令第44号)第3条。
計算の例:厚生労働省のパンフレットは、常時雇用している労働者が150人の企業の場合、令和8年6月まで(2.5%)は150×2.5%=3.75人で小数点以下を切り捨てて3人以上、令和8年7月から(2.7%)は150×2.7%=4.05人で4人以上の障害者雇用義務がある、と例示しています。
報告と、未達成のときの仕組み:事業主(常時雇用する労働者が37.5人以上など、施行規則第7条で定める数以上の事業主)は、毎年、6月1日現在の対象障害者の雇用に関する状況を、翌月15日までに、公共職業安定所(ハローワーク)に報告しなければなりません(法第43条第7項、施行規則第7条・第8条)。厚生労働大臣は、雇用する対象障害者の数が法定雇用障害者数に満たない事業主に対して、雇入れに関する計画の作成を命ずることができ(第46条第1項)、計画の変更や適正な実施の勧告に正当な理由がなく従わないときは、その旨を公表することができます(第46条第5項・第6項、第47条)。厚生労働省のパンフレットは、このほかに、法定雇用率を満たしていない事業主(常用雇用労働者100人超)から納付金を徴収し、障害者を多く雇用している事業主に調整金・報奨金や各種の助成金を支給する障害者雇用納付金制度があると説明しています。金額は、厚生労働省と高齢・障害・求職者雇用支援機構の案内で確認します。
算定のしかた:短時間労働者と、精神障害者の特例
雇用する障害者の数は、週所定労働時間と障害の種類・程度で、1人、0.5人、2人などと数えます。第43条第3項は、対象障害者である短時間労働者(週の所定労働時間が通常の労働者より短く、かつ厚生労働大臣の定める時間数未満の常時雇用する労働者)の算定について、1人を、厚生労働省令で定める数の対象障害者に相当するものとみなす、と定めています。施行規則第6条は、その数を0.5人としています。
精神障害者の特例:施行規則 附則第6条は、第6条の規定にかかわらず、当分の間、精神障害者である短時間労働者については、1人とする、と定めています。この文言は、令和5年厚生労働省令第49号による改正で、令和5年4月1日から施行されています。厚生労働省のページによると、精神障害者の短時間労働者を1カウントとする特例は、令和4年度末までは一定の要件を満たした場合に設けられていましたが、令和5年4月1日以降は、全ての方について、当分の間、1人として数えることになりました。
週20時間未満の人:法第70条は、重度身体障害者、重度知的障害者又は精神障害者である特定短時間労働者(短時間労働者のうち、週の所定労働時間が厚生労働大臣の定める時間の範囲内にある労働者)の算定について、その1人を、第43条第5項の厚生労働省令で定める数に満たない範囲内において厚生労働省令で定める数の対象障害者に相当するものとみなす、と定めています。厚生労働省のページは、これを、令和6年4月1日施行の、週所定労働時間が10時間以上20時間未満で働く重度の身体・知的障害者、精神障害者の算定特例としています。
障害者の算定方法は、厚生労働省のパンフレットでは次の表で示されています。
| 週所定労働時間 | 10時間以上20時間未満 | 20時間以上30時間未満 | 30時間以上 |
|---|---|---|---|
| 身体障害者 | 算定対象外 | 0.5人 | 1人 |
| 重度身体障害者 | 0.5人 | 1人 | 2人 |
| 知的障害者 | 算定対象外 | 0.5人 | 1人 |
| 重度知的障害者 | 0.5人 | 1人 | 2人 |
| 精神障害者 | 0.5人 | 1人(当分の間の措置) | 1人 |
算定の数え方:精神障害者は、週所定労働時間30時間以上が1人、20時間以上30時間未満が1人(当分の間の措置。雇入れの日からの期間などにかかわらない)、10時間以上20時間未満が0.5人(令和6年4月以降)。短時間労働者の原則は0.5人(施行規則第6条)。最終確認日:2026-10-11。出典:厚生労働省 障害者雇用のご案内(令和8年4月1日現在)、厚生労働省 令和4年障害者雇用促進法の改正等について、e-Gov法令検索 障害者雇用促進法施行規則 第6条・附則第6条。
差別の禁止と合理的配慮(第34条〜第36条の6)
差別の禁止:第34条は、事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならないと定め、第35条は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならないと定めています。厚生労働省の資料によると、これらの規定と合理的配慮の提供義務は、平成25年の改正により、平成28年4月1日から施行されています。
合理的配慮の提供義務は、次の2つです。
| 場面 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 募集・採用 | 第36条の2 | 障害者からの申出により、障害の特性に配慮した必要な措置を講じる |
| 採用後 | 第36条の3 | 障害者である労働者の障害の特性に配慮した、職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じる |
どちらも、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りではありません。第36条の4は、措置を講ずるに当たって障害者の意向を十分に尊重すること、採用後の措置に関する労働者からの相談に応じ、適切に対応するための体制を整備することを、事業主に求めています。
合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)は、合理的配慮の手続と内容を示しています。基本的な考え方として、合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のものだとしています。手続は、障害者からの申出(具体的な措置を申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足りる)、事業主と障害者との話合い、措置の確定(実施できない場合はその旨と、求めに応じて理由を伝える)という順です。過重な負担かどうかは、事業活動への影響の程度、実現困難度、費用・負担の程度、企業の規模、企業の財務状況、公的支援の有無の6つの要素を総合的に勘案して、個別に判断するとされています。
指針の別表は、障害区分ごとに、多くの事業主が対応できると考えられる措置の例を挙げています。精神障害について挙げられている例は、次のとおりです。
- 募集・採用時:「面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。」
- 採用後:「業務指導や相談に関し、担当者を定めること。」
- 採用後:「出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること。」
- 採用後:「できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること。」
- 採用後:「本人の状況を見ながら業務量等を調整すること。」
- 採用後:「本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。」
別表は、これらはあくまでも例示であり、あらゆる事業主が必ずしも実施するものではなく、例示以外であっても合理的配慮に該当するものがあるとしています。合理的配慮は個々の障害者である労働者の状態や職場の状況に応じて提供されるものだからです。また、指針は、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払っても、雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われないとしています。
苦情と紛争:事業主は、待遇の差別(第35条)と採用後の合理的配慮(第36条の3)について障害者である労働者から苦情の申出を受けたときは、自主的な解決を図るよう努めます(第74条の4)。紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の特例が設けられ、都道府県労働局長による助言・指導・勧告(第74条の6)と、調停(第74条の7。募集・採用についての紛争は除く)の制度があります。
支援機関:ハローワーク・地域障害者職業センター・障害者就業・生活支援センター・ジョブコーチ
障害者の就職と職場定着を支える機関は、法律上の根拠をもつものが中心です。厚生労働省のパンフレットは、障害者を雇用する事業主に対して相談や支援を行う中心的な機関として、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターの3つを挙げています。
| 機関 | 根拠 | 主な役割(条文・パンフレットの要点) |
|---|---|---|
| ハローワーク | 第2章第2節(第9条〜第18条) | 障害の態様や適性に応じた職業相談・職業紹介、事業主への雇用管理上の助言、専門機関や助成金の案内 |
| 地域障害者職業センター | 第22条 | 職業評価、職業指導、職業準備訓練、職業講習。事業主に雇用されている知的障害者等への職場適応の助言・指導。事業主への雇用管理の助言。職場適応援助者の養成・研修 |
| 障害者就業・生活支援センター | 第27条・第28条 | 支援対象障害者からの相談に応じ、必要な指導・助言を行い、ハローワークや地域障害者職業センター、医療施設などとの連絡調整を総合的に行う。就業面と生活面の一体的な相談・支援 |
ジョブコーチ(職場適応援助者):第20条第3号は、職場適応援助者を、身体障害者、知的障害者、精神障害者その他厚生労働省令で定める障害者が職場に適応することを容易にするための援助を行う者と定義しています。厚生労働省のパンフレットは、ジョブコーチが、障害者に対して職場の従業員との関わり方や効率の良い作業の進め方を助言し、事業主に対して本人が力を発揮しやすい作業の提案や障害特性を踏まえた仕事の教え方を助言する、と説明しています。支援の形は、地域障害者職業センターに所属する配置型、就労支援を行う社会福祉法人などに所属する訪問型、自社の従業員が養成研修を受けて行う企業在籍型の3つです。
ジョブコーチ支援の期間:地域障害者職業センターのジョブコーチ支援は、支援期間が1〜8か月(標準2〜4か月)。集中支援(週3〜4日訪問)、移行支援(週1〜2日訪問)、フォローアップ(数週間〜数か月に一度訪問)の流れで行う。最終確認日:2026-10-11。出典:厚生労働省 障害者雇用のご案内(令和8年4月1日現在)。
そのほか、厚生労働省のパンフレットには、精神障害により休職している方や、休職中の従業員の復職を考える事業主に対する職場復帰の支援を、地域障害者職業センターが行うこと、精神・発達障害者しごとサポーター(職場で精神障害や発達障害のある方を見守り支援する応援者。特別な資格制度ではない)の養成講座を労働局・ハローワークが行うことも書かれています。令和6年4月には、障害者雇用に関する相談援助を行う事業者から原則無料で相談援助を受けられる「障害者雇用相談援助事業」が始まった、と厚生労働省のリーフレットは説明しています。法令上は、この事業を行う者への助成金の規定(法第49条第1項第7号の2、施行規則 第24条の2の障害者雇用相談援助助成金)が、令和6年4月1日から施行されています。
福祉の側の就労系サービス(就労移行支援・就労継続支援など)は、障害者総合支援法に定められています。法の全体像は、障害者総合支援法の記事(介護福祉士)に整理されています。障害者雇用促進法は、就労選択支援(障害者総合支援法 第5条第13項。2025年10月1日施行)または就労移行支援を行う事業者を「就労支援事業者」とし、障害者職業総合センター(第20条第4号)と地域障害者職業センター(第22条第5号)が、職業リハビリテーションに関する技術的事項について助言・研修などの援助を行うと定めています。
精神保健福祉士の専門科目での位置づけ
試験センターが公表している科目別出題基準(第28回版)では、次の2つの科目に、この記事の内容がつながります。
| 科目 | 大項目・中項目 | 小項目の例(出題基準) |
|---|---|---|
| 精神保健福祉制度論(p.100) | 精神障害者の生活支援に関する制度/就労支援制度と精神保健福祉士の役割 | 就労支援制度の概要、就労支援制度における精神保健福祉士の役割 |
| 精神障害リハビリテーション論(p.99) | 精神障害リハビリテーションプログラムの内容と実施機関/職業リハビリテーションプログラム | 就労準備プログラム、援助付雇用プログラム、IPSモデル、復職支援プログラム、就労定着プログラム、実施機関(就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター等) |
一方で、出題基準は、「出題基準は、あくまでも標準的な出題範囲の例示であって、出題範囲を厳密に限定するものではなく、また、作問方法や表現等を拘束するものではない。」と書いています。
当サイトに載せている第26〜28回の専門科目176問のうち、問題文・事例文・選択肢に「障害者雇用」を含む問は3問です(第26回2問・第27回0問・第28回1問、2026-10-11 時点)。「合理的配慮」を含む問は2問(第26回1問・第27回0問・第28回1問)、「地域障害者職業センター」を含む問は1問(第27回)です。
条文から確認できる制度の骨格は、次の5点です。
1. 目的:雇用義務、差別の禁止と合理的配慮、職業リハビリテーションを総合的に講じる(第1条)
2. 雇用義務:事業主は、労働者数×障害者雇用率(端数切捨て)以上の対象障害者を雇用する(第43条)。精神障害者は手帳の交付を受けている人に限る(第37条第2項)。平成30年4月1日から算定基礎に加わった
3. 率の見直し:少なくとも5年ごとに政令で定める(第43条第2項)。民間企業は令和8年7月から2.7%(施行令第9条)
4. 算定:短時間労働者は原則0.5人。精神障害者の20時間以上30時間未満は、当分の間1人(施行規則 附則第6条)。10時間以上20時間未満は0.5人(第70条)
5. 差別禁止・合理的配慮:募集・採用は第36条の2、採用後は第36条の3。過重な負担があるときは義務を負わない
専門科目の問題を解くときに確認すること
1. だれが雇用率に数えられるか:精神障害者は手帳の交付を受けている人です。手帳のない統合失調症、そううつ病、てんかんの人は、法の「精神障害者」の定義(施行規則第1条の4第2号)には含まれても、雇用率には数えられません。
2. 雇用義務を負うのはだれか:事業主です。民間企業の対象事業主の範囲は、令和8年7月から労働者37.5人以上です。
3. 数字は時点で変わる:率は令和8年7月から2.7%で、少なくとも5年ごとに見直されます。出題の時点や問われている回の法令の版を確認します。
4. 算定のしかた:週の所定労働時間と障害の種類・程度で数え方が違います。精神障害者の20時間以上30時間未満は当分の間1人です。
5. 合理的配慮の2つの場面:募集・採用は障害者の申出により、採用後は事業主が支障となっている事情を確認して講じます。どちらも過重な負担は除かれます。
6. 支援機関の役割の違い:職業評価や職場適応援助者の養成は地域障害者職業センター。就業と生活の一体的な相談は障害者就業・生活支援センター。職業紹介はハローワークです。
回別の問題一覧は、第26回、第27回、第28回からたどれます。出題範囲は出題範囲の一覧で確認できます。
まとめ
- 障害者雇用促進法は、雇用義務、雇用の分野での差別の禁止と合理的配慮、職業リハビリテーションを定める法律(第1条)
- 精神障害者は、平成30年4月1日から法定雇用率の算定基礎に加わった。雇用率に数えられるのは、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人(第37条第2項)
- 民間企業の法定雇用率は、令和6年4月に2.5%、令和8年7月に2.7%。対象事業主の範囲は令和8年7月から37.5人以上。雇用率は少なくとも5年ごとに見直される(第43条第2項)
- 精神障害者の短時間労働者(週20時間以上30時間未満)は、当分の間1人として数える(施行規則 附則第6条)。10時間以上20時間未満は、令和6年4月から0.5人(第70条)
- 募集・採用時(第36条の2)と採用後(第36条の3)の合理的配慮は事業主の義務。過重な負担があるときは義務を負わない。合理的配慮指針が手続と例を示している
- 支援機関は、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター。ジョブコーチ(職場適応援助者)は、配置型・訪問型・企業在籍型の3つの形がある
- 次の一歩は、精神障害者保健福祉手帳の記事で手帳の制度を整理することと、専門科目の問題を解いてみることです
本サイトは社会福祉振興・試験センター・厚生労働省とは関係のない民間のサイトです。条文の引用・要約は e-Gov 法令検索の現行条文(2026年10月11日確認)と、厚生労働省・試験センターの公表資料にもとづきます。制度の説明であり、個別の雇用や手続についての相談には対応できません。お住まいの地域のハローワークなどの窓口にご確認ください。
よくある質問
Q障害者雇用の法定雇用率に数えられる精神障害者は、どんな人ですか。
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人です。障害者雇用促進法 第37条第2項は、雇用義務の対象となる「対象障害者」を、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神保健福祉法 第45条第2項の規定により手帳の交付を受けているものに限る)と定めています。厚生労働省のパンフレット「障害者雇用のご案内」も、精神障害者は手帳の交付を受けている方を指すと書いています。
Q週20時間未満で働く精神障害者は、法定雇用率の算定に入りますか。
令和6年4月以降は、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者も、雇用率の算定対象で、0.5人として数えます(障害者雇用促進法 第70条、厚生労働省のパンフレットの算定表)。それより前は、週20時間未満は算定の対象外でした。週所定労働時間が10時間未満の人は、パンフレット「障害者雇用のご案内」の算定表に区分がありません(2026-10-11 時点)。
Q精神障害者の短時間労働者は、1人として数えると聞きました。本当ですか。
週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者は、当分の間の措置として、雇入れの日からの期間などにかかわらず、1人として数えます(施行規則 附則第6条)。短時間労働者の原則は0.5人ですが(施行規則 第6条)、精神障害者はこの特例で1人になります。附則第6条の現在の文言は、令和5年厚生労働省令第49号による改正で令和5年4月1日から施行されたもので、厚生労働省のページも、令和5年4月1日以降は全ての方について当分の間1人として数えると説明しています。
Q合理的配慮は、障害のある人が申し出なければ、事業主は何もしなくてよいのですか。
募集・採用のときは、障害者からの申出により、障害の特性に配慮した必要な措置を講じる義務です(障害者雇用促進法 第36条の2)。採用後は、事業主が職場で支障となっている事情を確認し、必要な措置を講じる義務があります(第36条の3、合理的配慮指針)。ただし、指針は、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払っても、雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合は、提供義務違反を問われないとしています。事業主に過重な負担を及ぼすときは、義務を負いません。
Qジョブコーチとは、どんな支援ですか。
障害者の職場適応に向けて、障害者と事業主の双方に助言などを行う支援です。法律上は「職場適応援助者」で、身体障害者、知的障害者、精神障害者などが職場に適応することを容易にするための援助を行う者をいいます(障害者雇用促進法 第20条第3号)。厚生労働省のパンフレットは、配置型(地域障害者職業センターに所属)、訪問型(就労支援を行う社会福祉法人などに所属)、企業在籍型(自社の従業員が養成研修を受けて行う)の3つの形を示しています。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月11日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

