問題
次の 1 〜 5 の文は,トータルステーション(以下「TS」という。)を用いた水平角観測において生じる誤差について述べたものである。正反観測の平均値をとっても消去できない誤差はどれか。次の 1 〜 5 の中から選べ。
答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
トータルステーション(TS)の誤差のうち,正反観測の平均で消去できないものを問う問題です。正答は 5「鉛直軸誤差」です。
正反観測(望遠鏡正位と反位で各1回ずつ観測して平均をとる操作)では,視準軸誤差・水平軸誤差・外心誤差・目盛盤偏心誤差などは互いに打ち消し合って消去されます。
鉛直軸誤差(鉛直軸が本当の鉛直方向からずれている)だけは,正反どちらで観測しても同じ向きに誤差が生じるため,正反の平均をとっても消去できません。このため,整準(気泡管や電子センサーで器械を水平に保つ作業)を丁寧に行うことが重要です。
【TS の誤差分類と正反観測による消去の可否】
正反観測で消去できる誤差(選択肢 1〜4)
1. 目盛盤の偏心誤差(水平目盛盤の中心と鉛直軸のずれ)
正位と反位では目盛盤の読み取り位置が 180° 異なる方向になる。偏心誤差は両方向で逆符号になるため,平均で消去される。(現代の TS は複数のダイオードで多点読み取りし,偏心誤差を電子的に補正)
2. 外心誤差(視準線が鉛直軸を通らない)
正位と反位では外心の効果が逆向きになるため,平均で消去される。
3. 視準線誤差(コリメーション誤差)(視準軸と視準線のずれ)
正位(r): +c,反位(l): −c(c:視準誤差定数) → 平均で消去。
TS では自動的に補正される場合が多い。
4. 水平軸誤差(チルティング軸誤差)(水平軸が鉛直軸に対して直交していない)
正位と反位で水平軸の傾き方向が逆転するため,平均で消去される。
正反観測で消去できない誤差(選択肢 5)
5. 鉛直軸誤差(鉛直軸が真の鉛直線から傾いている)
鉛直軸が傾いている場合,望遠鏡を回転させても常に同じ方向に傾いた平面内で回転する。正位でも反位でも誤差の向きが変わらないため,正反の平均をとっても誤差が残る。
消去方法:整準(気泡管水準器または電子水準センサーによる器械の水平化)を精密に行う。電子TS(モータードライブ式)では電子傾斜センサーで自動補正(チルトコンペンセーター)する機種もある。
【正反観測のまとめ表】
| 誤差の種類 | 正反消去 |
|-----------|--------|
| 目盛盤偏心誤差 | 消去できる |
| 外心誤差 | 消去できる |
| 視準線誤差 | 消去できる |
| 水平軸誤差 | 消去できる |
| 鉛直軸誤差 | 消去できない |
【TS 誤差の数学的解析と精密観測への応用】
鉛直軸誤差の幾何学的解析
鉛直軸が真の鉛直方向から傾き角 ε(水平面での傾き方向 φ₀)だけずれているとき,目標高低角 α の方向を観測する場合の水平角誤差 Δβ:
Δβ = −ε × sin(φ − φ₀) × tan α(φ:観測方向の方向角)
この誤差は:
① 正反観測で符号が変わらない(望遠鏡を 180° 反転しても鉛直軸の傾きは同一)
② 高低角 α が大きいほど誤差が増大(tanα が大きくなる)
③ 傾斜方向(φ₀)に向いた観測で最大
消去できる誤差の数学的根拠(視準線誤差の例)
視準線誤差 c の場合:
- 正位観測角 β_r = β_真 + c / cosα
- 反位観測角 β_l = β_真 − c / cosα + 180°(+反転180°)
- 平均: (β_r + β_l − 180°) / 2 = β_真 ✓ → 消去確認
電子 TS のチルトコンペンセーター
近代の TS には「2軸チルトコンペンセーター」が内蔵されており,縦横2方向の傾きをリアルタイムで測定し,水平角・鉛直角に自動補正を加える。補正範囲は通常 ±3〜6′ 以内で,これを超える傾きは整準で修正する必要がある。
補正精度:±1″(高精度 TS)。補正を有効にすることで鉛直軸誤差を実質的に消去できる。
精密1級基準点測量での対処法
鉛直軸誤差を最小化する手順:
① 三脚の脚を確実に締め付け,地盤の安定した場所に設置
② 円形気泡管で粗整準 → 管状気泡管(感度 20″/2mm 以上)で精整準
③ 観測前後に整準確認(長時間の観測で気温変化により傾く)
④ 電子チルトコンペンセーターの ON 確認と補正値のログ記録
測量士試験への接続
測量士試験では,TS 誤差の数学的定式化(偏微分による誤差伝播),精密観測における誤差消去手順の設計,測角精度の理論的下限(センサー分解能・大気揺らぎ)などが問われる。特に「正反観測で消去できる/できない」誤差の分類は1級基準点測量での観測セット数決定にも関わり,実務上も重要な知識である。
出典と作り方
本問は国土地理院が公表した過去問題を出典明記の上で引用しています(コンテンツ利用規約PDL1.0で出典明記による複製・商用利用を許諾・GREEN判定)。 根拠・出典:出典: 令和6年度 測量士補試験 問7(国土地理院)/国土地理院コンテンツ利用規約・PDL1.0に基づき利用 各根拠条文・規定は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)や国土地理院公式(https://www.gsi.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令・基準の数値を反映(数値確認日 2026-06-19)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・基準は改正されることがあるため、最新の内容は国土地理院・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは国土地理院・国土交通省と一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報)。測量法・作業規程の準則・計算式根拠に基づき、段差のある3段階の解説(初心者・標準・上級)を作成しています。

