電圧降下の計算式を、単相2線式(2Ir)・単相3線式(Ir)・三相3線式(√3Ir)の順に、なぜその形になるのかから解説。第二種電気工事士の公式問題(令和8年度上期など)4問を解き、答えを2通りで検算します。電線の太さの選び方と電力損失との違いもわかります。
目次
結論:電圧降下は「電源側の電圧Vs-負荷側の電圧Vr」で、電線1本の抵抗をr、電流をIとすると、単相2線式はe=2Ir、単相3線式(上下の負荷が等しく中性線の電流が0Aのとき)はe=Ir、三相3線式(抵抗負荷)はe=√3Irです。どれも「電線1本の電圧降下Ir」が何本分・どう重なるかの違いで、往復2本なら2倍、中性線に電流が流れなければ1本分、三相は線間で見るので√3倍になります。
| 配電方式 | 電圧降下の式 | 係数 | 成り立つ条件 |
|---|---|---|---|
| 単相2線式 | e=2Ir | 2 | 行きと帰りの2本に同じ電流Iが流れる |
| 単相3線式 | e=Ir | 1 | 上下の負荷電流が等しく、中性線の電流が0A |
| 三相3線式 | e=√3Ir | √3(試験では1.73) | 三相の負荷が平衡し、抵抗負荷(力率1)とみなせる |
rは電線1本の抵抗[Ω]、Iは電線を流れる電流[A]です。rは「1 km当たりの抵抗×長さ(km)」で出します。
合格ナビが電気技術者試験センターの公表問題(令和4年度上期〜令和8年度上期の筆記・学科試験13回分。令和6年度上期以降は第二種電気工事士試験の問題と解答に掲載、令和4・5年度分は同センターのサイトに残る問題PDF)を読んで数えたところ、配線の計算が並ぶ問6・問7の26問のうち14問が、電圧降下や負荷側の電圧を求める問題でした。残りは電力損失が9問、断線が3問です。この13回では、三相3線式の電圧降下を求める問題は出ておらず、三相は電力損失(3問)と断線(1問)で出題されています(2026-10-02 集計)。
電圧降下とは:計算式の元になる考え方
電線にもわずかな抵抗があるため、電流が流れると電線の両端に「抵抗×電流」の電圧がかかります。この分だけ負荷に届く電圧が下がるのが電圧降下です。
求め方の基本は次の2つだけです。
- ① 電線1本ごとに、その電線を流れる電流と抵抗をかけて、電線の電圧降下を出す(オームの法則)
- ② 電源から負荷までの経路をたどり、通った電線の電圧降下を電源電圧から引く(キルヒホッフの電圧の法則)
単相2線式・単相3線式・三相3線式の式は、この①②を配電方式ごとに当てはめた結果です。式を丸暗記するより、①②で組み立て直せるようにしておくと、中性線に電流が流れる問題や負荷が複数ある問題にも対応できます。
単相2線式の電圧降下:e=2Ir
単相2線式は、電源と負荷を行きの電線と帰りの電線の2本でつなぎます。2本とも同じ電流Iが流れるので、電線1本の電圧降下はIr、2本でIr+Ir=2Irです。負荷にかかる電圧はVr=Vs-2Irになります。
例題1(令和8年度上期 問6)
図のように,電線のこう長12 m の配線により,消費電力1 600 W の抵抗負荷に電力を供給した結果,負荷の両端の電圧は100 V であった。配線における電圧降下[V]は。
ただし,電線の電気抵抗は長さ1 000 m 当たり5.0 Ωとする。
イ.1 ロ.2 ハ.3 ニ.4
出典:令和8年度上期 第二種電気工事士 学科試験 問6(一般財団法人電気技術者試験センター)
図(公式の問題PDFの問6)は、単相2線式の電源から行き12 m・帰り12 mの電線で1 600 Wの抵抗負荷につなぎ、負荷の両端が100 Vという回路です。
解き方:
- ① 電流:I=1 600÷100=16A
- ② 電線1本の抵抗:r=5.0×12÷1 000=0.06Ω
- ③ 電圧降下:e=2×16×0.06=1.92V
最も近い値を選ぶので答えはロ(2V)です。公式の解答もロです。
検算1(電線1本ずつ):行きの電線で16×0.06=0.96V、帰りの電線でも0.96V、合計1.92Vで一致します。
検算2(電力の収支):電源電圧は100+1.92=101.92V。電源が出す電力は101.92×16≒1 630.7W、負荷の1 600Wと電線の損失2×16²×0.06≒30.7Wの合計も1 630.7Wで一致します。
例題2:電圧降下から電線の太さを選ぶ(令和7年度上期 問6)
図のような単相2線式回路において,配線の長さは100 m,負荷電流は10 A で,抵抗負荷が接続されている。配線の電圧降下(Vs-Vr)を4 V 以内にするための電線の最小太さ(断面積)[mm²]は。
ただし,電線の抵抗は表のとおりとする。
イ.5.5 ロ.8 ハ.14 ニ.22
出典:令和7年度上期 第二種電気工事士 学科試験 問6(一般財団法人電気技術者試験センター)
問題の表(公式の問題PDFの問6)は、電線の太さと1 km当たりの導体抵抗の組み合わせです。
| 電線の太さ[mm²] | 1 km当たりの導体抵抗[Ω/km] |
|---|---|
| 5.5 | 3.33 |
| 8 | 2.31 |
| 14 | 1.30 |
| 22 | 0.82 |
解き方:1 km当たりの抵抗をρ[Ω/km]とすると、電線1本の抵抗はr=ρ×0.1(100 m=0.1 km)。条件は 2×10×ρ×0.1≦4 なので、ρ≦2.0Ω/km。表で2.0Ω/km以下になる一番細い電線は14 mm²(1.30Ω/km)です。答えはハ(14 mm²)。公式の解答もハです。
検算(表の全部で電圧降下を出す):
| 太さ | 電圧降下 e=2×10×ρ×0.1 | 4V以内か |
|---|---|---|
| 5.5 mm² | 6.66V | 超える |
| 8 mm² | 4.62V | 超える |
| 14 mm² | 2.60V | 以内 |
| 22 mm² | 1.64V | 以内 |
4V以内に入るのは14 mm²と22 mm²で、「最小太さ」は14 mm²です。逆向きに確かめると、8 mm²では4.62Vとなり条件を満たしません。
この論点の問題を解く:
- こう長8 mの配線の電圧降下(令和6年度上期 問6)
- 電圧降下を4V以内にする電線の最小太さ(令和7年度上期 問6)
- 線路の長さ50 m・負荷電流25 Aで電線の太さを選ぶ(令和4年度下期(午前)問6)
- 負荷が3つ並ぶ単相2線式で、一番遠い負荷の電圧を求める(令和4年度上期(午後)問6)
単相3線式の電圧降下:e=Ir(中性線の電流が0Aのとき)
単相3線式は、上の電線・中性線・下の電線の3本で、100Vの負荷を上下に1つずつつなぎます。中性線には上下の負荷電流の差が流れます(しくみと、中性線が切れたときの電圧は単相3線式の記事にまとめています)。上下の電流が等しいと中性線の電流は0Aになり、中性線に電圧降下は生じません。電源から上の負荷までをたどると、通る電線のうち電流が流れているのは上の電線1本だけなので、電圧降下はIrです。
この式そのものが出題されたこともあります。
図のような単相3線式回路で,電線1線当たりの抵抗がr[Ω],負荷電流がI[A],中性線に流れる電流が0 A のとき,電圧降下(Vs-Vr)[V]を示す式は。
イ.2rI ロ.3rI ハ.rI ニ.√3rI
出典:令和5年度上期 第二種電気工事士 学科試験(午後) 問7(一般財団法人電気技術者試験センター)
公式の解答はハ(rI)です。単相2線式の2rI(イ)や三相の√3rI(ニ)も並んでいるので、係数を取り違えるとそのまま誤答になります。
例題3(令和8年度上期 問7)
図のような単相3 線式回路において,抵抗負荷は3.3 Ωで一定である。スイッチS を開いているとき,図中の電圧V は99 V であった。この状態からスイッチS を閉じた場合,電圧V はどのように変化するか。
ただし,電源電圧は105 V 一定で,電線1 線当たりの抵抗は0.1 Ωとする。
イ.3 V 下がる。 ロ.変化しない。 ハ.1 V 上がる。 ニ.3 V 上がる。
出典:令和8年度上期 第二種電気工事士 学科試験 問7(一般財団法人電気技術者試験センター)
図(公式の問題PDFの問7)のつながりは次のとおりです。
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| 電源 | 上側105V・下側105V(単相3線式) |
| 電線 | 上の電線・中性線・下の電線とも1本0.1Ω |
| 上の負荷 | 3.3Ω。両端の電圧がV |
| 下の負荷 | 3.3ΩとスイッチSが直列 |
解き方:
- スイッチを開いているとき:電流が流れるのは上の負荷だけで、通り道は「上の電線0.1Ω+負荷3.3Ω+中性線0.1Ω」。I=105÷3.5=30A、V=3.3×30=99V(問題の条件と一致)
- スイッチを閉じたとき:上下の負荷が同じ3.3Ωなので電流が等しく、中性線の電流は0A。上の通り道で電圧降下が生じるのは上の電線0.1Ωだけになり、I=105÷3.4≒30.9A、V=3.3×105÷3.4≒101.9V
Vは約2.9V上がるので、最も近い答えはニ(3V上がる)です。公式の解答もニです。
検算1(電圧降下の式で):閉じたあとは平衡しているのでe=Ir=30.9×0.1≒3.1V、V=105-3.1≒101.9V。開いているときは中性線にも30A流れるので、e=30×0.1+30×0.1=6V、V=105-6=99V。差は約2.9Vで一致します。
検算2(網目電流で連立):上下2つの閉路に電流を仮定して電圧の式を立てると、閉じたときの2つの閉路の電流はどちらも約30.88Aで、中性線の電流(2つの差)は0A、Vは約101.9Vになります。
例題4:上下の電流が違うとき(令和7年度上期 問7)
図のような単相3線式回路において,電線1線当たりの抵抗が0.1 Ωのとき,a-b間の電圧[V]は。
イ.99 ロ.100 ハ.101 ニ.102
出典:令和7年度上期 第二種電気工事士 学科試験 問7(一般財団法人電気技術者試験センター)
図(公式の問題PDFの問7)では、電源は上側103V・下側103V(206V)、上の負荷に20A、下の負荷に10Aが流れ、a-b間は上の負荷の両端です。
解き方:中性線には上下の差の20-10=10Aが、負荷側から電源側へ流れます。上の負荷までの経路で電圧が下がるのは、上の電線(20A×0.1Ω=2V)と中性線(10A×0.1Ω=1V)です。Vab=103-2-1=100V。答えはロ(100V)。公式の解答もロです。
検算1(下の負荷とあわせて確かめる):下の負荷の電圧は、中性線の1Vが逆向きに効くので103+1-1(下の電線10A×0.1Ω)=103V。上下の合計は100+103=203Vで、206Vから外側2本の電圧降下(2V+1V)を引いた値と一致します。
検算2(よくある誤りとの比較):中性線の電流を見落として「平衡のときの式e=Ir」を使うと103-2=101Vになり、選択肢ハと同じ値です。上下の電流が違うときは、中性線の電圧降下を必ず入れます。
この論点の問題を解く:
三相3線式の電圧降下:e=√3Ir
三相3線式の負荷が平衡していて抵抗負荷(力率1)とみなせるとき、各相の電線には同じ大きさの電流Iが流れ、1本ごとにIrの電圧降下が生じます。この電圧降下は、各相を中性点から見た電圧(相電圧)と同じ向きにそろっているため、相電圧がちょうどIrずつ下がります。三相3線式の電圧は線と線のあいだ(線間電圧)で表し、線間電圧は相電圧の√3倍なので、線間で見た電圧降下は√3×Irになります。
自作の例:三相3線式200V、抵抗負荷、線電流30A、電線1本の抵抗0.05Ω。
- 電圧降下:e=√3×30×0.05=1.73×1.5≒2.6V(√3を1.73として計算)
検算1(相電圧から組み立てる):電源の相電圧は200÷√3≒115.47V。各相で1.5V下がって約113.97V。線間電圧に戻すと113.97×√3≒197.40Vで、200-197.40≒2.6Vとなり一致します。
検算2(電力損失と比べる):同じ回路の電力損失は3I²r=3×30²×0.05=135Wです。電圧降下(√3倍)と電力損失(3本分)は係数が違うので、取り違えないよう別に覚えます。
上の集計どおり、第二種電気工事士の13回分では三相の電圧降下は出題されていません。リアクタンスと力率を含めた近似式(e≒√3I(Rcosθ+Xsinθ))は、第一種電気工事士や電験三種の配電の計算で使います。
この論点の問題を解く:
電線の長さと電圧降下:100 mならいくつ下がるか
電圧降下は電線の長さに比例します(rが長さに比例するため)。例えば例題2と同じ表の値で、単相2線式・負荷電流10A・長さ100 mのとき、電線の太さごとの電圧降下は5.5 mm²で6.66V、14 mm²で2.60Vでした。長さが60 mなら、どれも0.6倍になります(5.5 mm²なら約4.0V)。
同じように電流にも比例するので、電流が2倍になれば電圧降下も2倍です。「100 mなら何V」という決まった値はなく、方式(係数2・1・√3)×電流×1 km当たりの抵抗×長さで、その都度求めます。
電圧降下と電力損失の違い(式を並べて整理)
問6・問7には電力損失の問題も並んで出ます(上の集計で9問)。電力損失は、電線1本で熱になる電力I²rを、電流が流れている電線の本数だけ足したものです。
| 配電方式 | 電圧降下 | 電力損失 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 2Ir | 2I²r |
| 単相3線式(中性線0A) | Ir | 2I²r(外側の2本) |
| 三相3線式(抵抗負荷) | √3Ir | 3I²r |
単相3線式は、電圧降下では1本分(Ir)ですが、電力損失では電流の流れる外側の2本分(2I²r)です。例えば電線1本0.1Ω・負荷電流15Aの平衡した単相3線式なら、電力損失は2×15²×0.1=45Wです。
電圧降下の許容範囲は問題文で与えられる
試験の計算問題では、電圧降下の許容値は「電圧降下(Vs-Vr)を4 V 以内にするための」(令和7年度上期 問6)のように問題文で与えられます(令和4年度下期(午前)問6も同じく「4 V 以内」)。この形の問題では、与えられた許容値に対して2Ir≦(許容値)の式を立て、表から電線を選べるかが問われます。
実際の屋内配線の設計で使う許容値は、この記事では扱いません。試験で問われる計算に絞って解説しています。
電圧降下の問題を続けて解く
電圧降下の問題は「電気機器・配線器具・配線」と「工事の方法」の科目に分かれて収録しています。式の係数(2・1・√3)と、中性線に電流が流れるかどうかを意識して解いてみましょう。配線の工事の論点は第二種電工 工事の方法 攻略法、計算の土台になる公式は第二種電工 電気の基礎理論 攻略法で整理しています。
よくある質問
Q電圧降下と電力損失はどう違いますか?
電圧降下は、電線の抵抗のせいで負荷側の電圧が電源側より下がる「電圧の差」(単位V)です。電力損失は、電線の抵抗で熱になって失われる「電力」(単位W)です。単相2線式なら、電圧降下は2Ir、電力損失は2I²rで、どちらも電線1本の抵抗rと電流Iから求めます。
Q単相3線式の中性線に電流が流れるのはどんなときですか?
上と下の負荷に流れる電流が等しくないときです。中性線には2つの負荷電流の差が流れます。電流が等しい(平衡)ときは中性線の電流が0Aになり、電圧降下は外側の電線1本分のIrだけになります。差があるときは、中性線の電圧降下も足し引きして計算します。
Q電圧降下を小さくするにはどうすればよいですか?
計算式からわかるとおり、電圧降下は電線の抵抗rと電流Iに比例します。電線を太くする(1 km当たりの抵抗が小さい電線にする)、配線を短くする、負荷の電流を減らす、のいずれかで小さくなります。試験では、表から抵抗の小さい電線を選んで「電圧降下を○V以内」にする問題が出ています。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月2日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

