第二種電工

単相3線式とは?100V/200Vのしくみと中性線欠相第二種電気工事士

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

単相3線式は、電圧線2本と中性線1本で100Vと200Vの両方を取り出す配電方式です。接続の図解代わりの表、同じ電力で電力損失が小さい理由、中性線に過電流遮断器を入れない規定(解釈 第35条)、中性線が欠けたときの電圧を、第二種電気工事士の学科試験の出題に合わせて解説します。

目次
  1. 単相3線式のしくみ:3本の電線と2つの電圧
  2. なぜ3線式か:同じ電力で電力損失が4分の1になる(当サイトの計算)
  3. 中性線に過電流遮断器を入れない:条文の読み方
  4. 中性線欠相:中性線が切れると電圧はどうなるか
  5. 試験での使われ方(出題の型)
  6. 間違えやすいポイント
  7. まとめ
結論:単相3線式とは、電圧線2本(上と下)と中性線1本の計3本で、電圧線と中性線の間の100Vと、電圧線どうしの間の200Vの両方を取り出せる配電方式です。住宅の100V機器と200V機器の両方に給電できます。中性線は変圧器の低圧側の中性点につながり、その中性点がB種接地工事を施す箇所になります(解釈 第24条第1項第一号イ)。試験では、①電圧降下・電力損失の計算、②中性線が切れたとき(欠相)の電圧、③中性線と過電流遮断器の関係(中性線に過電流遮断器を施設しないという規定など)、が問われます。

電気技術者試験センターの公表問題(令和4年度上期〜令和8年度上期)で、この記事で触れた問題は 令和6年度上期・令和6年度下期・令和5年度上期(午後)の公式PDFで読めます。条文は経済産業省の電気設備の技術基準の解釈(令和7年11月20日改正)によります。電圧降下の計算は電圧降下の記事で扱っているので、ここでは繰り返しません。

単相3線式のしくみ:3本の電線と2つの電圧

電線呼び方接続先のイメージ
上の電線電圧線(外側線)変圧器の低圧側巻線の一端
中の電線中性線変圧器の低圧側の中性点(B種接地工事を施す)
下の電線電圧線(外側線)変圧器の低圧側巻線の他端
取り出す場所電圧つなぐ機器の例
上の電圧線と中性線の間100V照明、コンセント(100V機器)
下の電圧線と中性線の間100V同上
上の電圧線と下の電圧線の間200V200V用の機器(エアコンの専用回路など)

解釈 第24条第1項は、高圧電路又は特別高圧電路と低圧電路とを結合する変圧器にB種接地工事を施すこととし、施す箇所として「低圧側の中性点」を挙げています(第一号イ。使用電圧が300V以下で中性点に施し難いときの低圧側の1端子(ロ)なども定めています)。中性線が大地とほぼ同電位に保たれるので、電圧線と大地の間(対地電圧)は100Vになります。絶縁抵抗の基準値が、200Vの回路でも「300V以下・対地電圧150V以下」の区分(0.1MΩ以上)になるのはこのためです(絶縁抵抗の記事)。

用語の整理です。

用語意味単相3線式100/200Vの場合
使用電圧(公称電圧)電路を代表する線間電圧(解釈 第1条第一号)200V
対地電圧接地式電路では、電線と大地との間の電圧(省令第58条の表)100V

なぜ3線式か:同じ電力で電力損失が4分の1になる(当サイトの計算)

2kWの抵抗負荷に電力を送る場合で比べます(当サイトの作例)。電線1本の抵抗を r[Ω]とします。

方式流れる電流電力損失
単相2線式100V2000W ÷ 100V = 20A(2本に20A)2 × 20² × r = 800r
単相3線式(1kWを上下に1つずつ)1000W ÷ 100V = 10A(上下の電圧線に10A、中性線は0A)2 × 10² × r = 200r

800r ÷ 200r = 4 なので、3線式の電力損失は2線式の4分の1です。r = 0.1Ω なら 80W と 20W です(検算:20² × 0.1 × 2 = 80、10² × 0.1 × 2 = 20)。上下の負荷電流が等しいと、中性線には電流が流れません。上下の電流が違うと、その差が中性線に流れます(中性線の電流は、上下の電流の差)。

センターの出題でも、この型が出ています。令和6年度下期 問7 は、単相3線式回路を単相2線式回路に変更したときの電力損失の変化を問い、正答は「4倍になる」(ニ)でした。令和6年度上期 問7 は、単相3線式回路で、電線1線当たりの抵抗が0.1Ω、抵抗負荷に流れる電流がともに15Aのときの電力損失を問い、正答は45W(イ)でした。2本の電圧線に15Aずつ流れ、中性線は0Aなので、2 × 15² × 0.1 = 45W と求められます(検算:15² = 225、225 × 0.1 = 22.5、22.5 × 2 = 45)。

中性線に過電流遮断器を入れない:条文の読み方

解釈 第35条第1項第二号は、「多線式電路の中性線」には過電流遮断器(ヒューズや配線用遮断器)を施設しないと定めています。第2項第一号が例外で、「多線式電路の中性線に施設した過電流遮断器が動作した場合において、各極が同時に遮断されるとき」は、第1項によらないことができます。第35条の全体は遮断器・開閉器の記事の「施設しない箇所(第35条)」にまとめています。

理由は、次のとおりです(当サイトの説明)。中性線だけが過電流遮断器の動作で切れると、上下の負荷が直列になって、次の章のように片方の負荷に高い電圧がかかるからです。

条文での扱いを表にします。

条文内容(要点)
第148条第1項第六号低圧幹線の過電流遮断器は、各極(多線式電路の中性極を除く。)に施設する。ただし書あり
第149条第1項第二号低圧分岐回路の過電流遮断器も、各極(多線式電路の中性極を除く。)に施設する。ただし書あり

開閉器は?(第148条第2項・第149条第1項第三号)

「中性線に開閉器は入れない」と丸暗記するのは正確ではありません。条文は、条件を満たす場合に、中性線(又は接地側電線)の極に開閉器を施設しないことができる、という書き方です。

  • 低圧幹線(第148条第2項):低圧幹線に施設する開閉器は、次の各号に適合する場合には、中性線又は接地側電線の極に施設しないことができる。一 開閉器は、前条(第147条。低圧屋内電路の引込口の開閉器)の規定により施設する以外のものであること。二 低圧幹線は、イ 第19条又は第24条第1項の規定により接地工事を施した低圧電路で、かつ、ロ 電路に地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設するか、イの接地工事の接地抵抗値が3Ω以下である低圧電路、に接続するものであること。三 中性線又は接地側電線の極の電線は、開閉器の施設箇所において、電気的に完全に接続され、かつ、容易に取り外すことができること
  • 低圧分岐回路(第149条第1項第三号):第一号に規定する場所(分岐点から3m以下の箇所など、過電流遮断器を施設する場所)には、開閉器を各極に施設する。ただし、イ 第24条第1項又は第19条第1項から第4項までの規定により接地工事を施した低圧電路に接続する分岐回路で、分岐元の低圧幹線の各極に開閉器を施設するもの、ロ 第148条第2項第二号イ・ロに適合する低圧電路に接続する分岐回路で、開閉器の施設箇所において中性線又は接地側電線を電気的に完全に接続し、かつ、容易に取り外すことができるもの、の中性線又は接地側電線の極は除く

細かい条件は、条文のとおりに読みます。試験では、「過電流遮断器は中性線に施設しない」が基本の知識です。

中性線欠相:中性線が切れると電圧はどうなるか

中性線が途中で切れる(断線する、欠相する)と、上下の負荷が、200Vの両端に直列につながった状態になります。電流は上下で同じ値になり、各負荷にかかる電圧は、抵抗に比例して分かれます。

当サイトの計算で確かめます(作例)。100V用の1200Wの抵抗負荷A(上)と、100V用の300Wの抵抗負荷B(下)を、中性線が切れた状態でつないだとします(電圧が変わっても抵抗値は変わらないものとして計算します)。

手順負荷A負荷B
抵抗 R = V² ÷ P(V=100V)100² ÷ 1200 = 25/3 ≒ 8.33Ω100² ÷ 300 = 100/3 ≒ 33.3Ω
直列の合計25/3 + 100/3 = 125/3 ≒ 41.7Ω
電流 I = 200 ÷ 合計200 ÷ (125/3) = 4.8A
各負荷の電圧4.8 × 25/3 = 40V4.8 × 100/3 = 160V

電圧の合計は 40 + 160 = 200V です。

検算(別の方法):抵抗の比は、消費電力の逆比です。1200W:300W = 4:1 なので、抵抗の比は A:B = 1:4。200Vを1:4に分けると、A は 200 × 1/5 = 40V、B は 200 × 4/5 = 160V で、上の結果と一致します。

100V用の300Wの負荷に160Vがかかると、電力は 160² ÷ (100/3) = 768W で、定格の 768 ÷ 300 = 2.56倍です((160 ÷ 100)² = 2.56 とも一致)。電圧が高くなる側の機器は、定格を超える電圧がかかって損傷するおそれがあります。1つの規則として覚えるなら、「消費電力の小さい(抵抗の大きい)負荷の側に、高い電圧がかかる」です。

上下の負荷の抵抗が等しければ、中性線が切れても、どちらも100Vのままです(100 + 100 = 200)。1000Wと200Wの具体例は、過去問解説の読み方の記事の「単相3線式の断線の例」にあります。

条文:住宅の屋内の中性線を有する分岐回路(第149条第3項)

解釈 第149条第3項は、「住宅の屋内には、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、中性線を有する低圧分岐回路を施設しないこと。」と定め、各号は次のとおりです。

号内容
一1の電気機械器具(配線器具を除く。)に至る専用の低圧配線として施設する場合
二低圧配線の中性線が欠損した場合において、当該低圧配線の中性線に接続される電気機械器具に異常電圧が加わらないように施設する場合
三低圧配線の中性線が欠損した場合において、当該電路を自動的に、かつ、確実に遮断する装置を施設する場合

第二号・第三号は、中性線の欠損(欠相)で機器に異常な電圧が加わることへの備えを定めています。試験では、令和5年度上期(午後)問25 が、単相3線式回路で機器Aの両端の電圧が150Vを示した原因を問い、正答は「中性線が断線している。」(ニ)でした。同じ回の問34 では、選択肢に「中性線欠相保護付」の遮断器が並び、正答はロの「3極2素子漏電遮断器(過負荷保護付,中性線欠相保護付)」でした。

試験での使われ方(出題の型)

  • 電圧降下・電力損失:中性線の電流が0Aのとき、損失は電線2本分、電圧降下は1本分(e=Ir)として計算する型(電圧降下の記事に例題)
  • 2線式との比較:3線式にすると電力損失がどう変わるか(令和6年度下期 問7)
  • 中性線が断線したとき、負荷の両端の電圧を求める型(抵抗に比例して200Vを分ける)と、電圧の測定値から断線の箇所を選ぶ型(令和5年度上期(午後)問25)
  • 遮断器と中性線:電灯専用(単相100V)の分岐回路に2極1素子の配線用遮断器を取り付け、「素子のある極に中性線を結線した。」は不適切な工事とされた(令和5年度上期(午後)問21、正答ニ)
  • 絶縁抵抗:単相3線式100/200Vの200V回路は、「300V以下・対地電圧150V以下」の区分で0.1MΩ以上

科目別の問題は電気の基礎理論・検査・法令の分野別ページから解けます。

間違えやすいポイント

  • 単相3線式100/200Vの使用電圧は200V、対地電圧は100V
  • 中性線の電流は、上下の負荷電流の差。等しければ0A
  • 中性線が切れると、片方に100Vを超える電圧がかかる。電圧が高くなるのは、抵抗の大きい(消費電力の小さい)側
  • 「中性線には過電流遮断器(ヒューズ・配線用遮断器)を施設しない」は第35条の原則で、中性線に施設した過電流遮断器が動作したとき各極が同時に遮断されるなら例外が認められる
  • 開閉器の扱いは、第148条第2項・第149条第1項第三号の条件つき

まとめ

  • 単相3線式は、電圧線2本と中性線1本。電圧線と中性線の間が100V、電圧線どうしが200V
  • 中性線は変圧器の中性点につながり、B種接地工事が施される(解釈 第24条第1項第一号イ)
  • 同じ電力なら、2線式より電流が小さく、条件がそろえば電力損失は4分の1(当サイトの計算、令和6年度下期 問7)
  • 中性線には過電流遮断器を施設しない(解釈 第35条第1項第二号。例外は第2項)
  • 中性線が切れると、上下の負荷が200Vを抵抗に比例して分け合う(1200Wと300Wなら40Vと160V)

よくある質問

Q単相3線式100/200Vの「使用電圧」は100Vと200Vのどちらですか。

200Vです。電気設備の技術基準の解釈 第1条第一号は、使用電圧(公称電圧)を「電路を代表する線間電圧」と定めています。単相3線式100/200Vの線間電圧は電圧線どうしの200Vなので、使用電圧は200Vです。中性線は変圧器の低圧側でB種接地工事により大地につながっているので、電圧線と大地の間の電圧(対地電圧)は100Vです(接地式電路の対地電圧は「電線と大地との間の電圧」。省令第58条の表の括弧書き)。

Q単相3線式の中性線を切ると、100Vの機器にはいくらの電圧がかかりますか。

負荷のつり合いで決まります。中性線が切れると、上下の負荷は直列につながって200Vを分け合い、抵抗の小さい(消費電力の大きい)負荷の方に低い電圧が、抵抗の大きい負荷に高い電圧がかかります。当サイトの計算では、1200W用と300W用(どちらも100V用の抵抗負荷で、抵抗値は変わらないものとする)なら、40Vと160Vです。同じ消費電力どうしなら、どちらも100Vのままです。

Q単相3線式にすると、なぜ電力損失が小さくなるのですか。

同じ電力を、半分の電流で送れるからです。令和6年度下期 問7 は、単相3線式回路を単相2線式回路に変更したときの配線の電力損失の変化を問い、センターの公表した正答は「4倍になる」でした。上下の負荷の電流がどちらも I で中性線の電流が0Aなら、3線式の損失は電線2本分の 2×I²r です。同じ負荷を100Vの2線式にまとめてつなぐと、電線に流れる電流は 2I になり、損失は 2×(2I)²r=8I²r で、3線式の4倍です。

Q単相3線式の分岐回路で、開閉器は中性線にも付けますか。

原則は付けます。解釈 第149条第1項第三号は、開閉器を各極に施設するとしたうえで、ただし書で、イ(第24条第1項又は第19条第1項から第4項までの規定により接地工事を施した低圧電路に接続する分岐回路であって、分岐元の低圧幹線の各極に開閉器を施設するもの)、ロ(第148条第2項第二号イ・ロに適合する低圧電路に接続し、開閉器の施設箇所で中性線又は接地側電線を電気的に完全に接続し、かつ、容易に取り外すことができるもの)の中性線又は接地側電線の極を除いています。一律に「付けない」ではなく、この条件に当てはまる場合に限られます。

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