絶縁抵抗測定とは、電線と大地の間などの絶縁が保たれているかを絶縁抵抗計で確かめる検査です。基準値は「電気設備に関する技術基準を定める省令」第58条の表で、測定が困難なときは漏えい電流1mA以下(解釈 第14条)。使用電圧と対地電圧の見分け方、測り方とやってはいけないことを、第二種電気工事士の過去問で解説します。
目次
結論:絶縁抵抗測定とは、電線と電線の間や電線と大地の間の絶縁(電気を漏らさない性能)が保たれているかを、絶縁抵抗計(通称メガー)で確かめる検査です。電気使用場所の低圧の電路の絶縁抵抗は、「電気設備に関する技術基準を定める省令」第58条により、開閉器や過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、使用電圧300V以下で対地電圧150V以下なら0.1MΩ以上、300V以下のその他の電路なら0.2MΩ以上、300Vを超える電路なら0.4MΩ以上が必要です。停電できず測定が困難な場合は、使用電圧が加わった状態の漏えい電流が1mA以下であればよいとされています(電気設備の技術基準の解釈 第14条)。
合格ナビに収録している第二種電気工事士の学科試験の過去問326問(令和4年度上期〜令和7年度下期のうち、令和5年度下期を除く10回分から収録した問題)のうち、絶縁抵抗の基準値・測り方・漏えい電流を問う問題は17問でした。基準値の当てはめが13問、絶縁抵抗計の使い方が2問、漏えい電流による判定が2問です(2026-10-02 集計)。センターの公表問題(令和4年度上期〜令和8年度上期の13回分)では、「低圧屋内配線の電路と大地間の絶縁抵抗を測定した。」で始まる同じ問題が、令和4年度下期(午前)・令和5年度上期(午前)・令和8年度上期の3回出ています。
この記事の条文は、電気設備に関する技術基準を定める省令(e-Gov 法令検索。令和5年3月20日施行の改正を反映した現行版)、経済産業省の電気設備の技術基準の解釈(最終改正 令和7年11月20日)と電気設備の技術基準の解釈の解説によります(2026-10-02 時点)。
絶縁抵抗の基準値(省令第58条の表)
省令第58条(低圧の電路の絶縁性能)の本文は次のとおりです。
電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は、開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次の表の上欄に掲げる電路の使用電圧の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上でなければならない。
出典:電気設備に関する技術基準を定める省令 第58条
条文の表は、次の3つの区分です(文言は条文どおり。結合されたセルを1行ずつに分けて載せています)。
| 電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 |
|---|---|
| 三百ボルト以下:対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう。以下同じ。)が百五十ボルト以下の場合 | 〇・一メガオーム |
| 三百ボルト以下:その他の場合 | 〇・二メガオーム |
| 三百ボルトを超えるもの | 〇・四メガオーム |
表の区分はまず「使用電圧」で300V以下と300V超に分かれ、300V以下の中だけが「対地電圧」150V以下かどうかで分かれます。代表的な回路に当てはめると次のとおりです。
| 電路の例 | 使用電圧 | 対地電圧 | 絶縁抵抗の最小値 |
|---|---|---|---|
| 単相2線式100Vの電灯・コンセント回路 | 100V | 100V | 0.1MΩ |
| 単相3線式100/200Vの200V回路(エアコン専用回路など) | 200V | 100V | 0.1MΩ |
| 三相3線式200Vの動力回路(対地電圧200V) | 200V | 200V | 0.2MΩ |
| 三相400Vの回路 | 400V | — | 0.4MΩ |
表の値は「これ以上なければならない」という最低ラインです。センターの令和8年度上期 問30でも、同省令について「電気の使用場所における低圧の電路の絶縁性能については,使用電圧の区分に応じ,絶縁抵抗値を規定している。」という記述が正しい記述として扱われています(この問題の正答=誤っている記述は イ)。
「使用電圧」と「対地電圧」の見分け方(過去問で確認)
基準値を取り違える原因の多くは、「200Vの回路だから0.2MΩ」と使用電圧だけで決めてしまうことです。単相3線式100/200Vの200V回路は、電線と大地の間の電圧(対地電圧)が100Vなので、0.1MΩ以上で足ります。
低圧屋内配線の電路と大地間の絶縁抵抗を測定した。「電気設備に関する技術基準を定める省令」に適合していないものは。
イ.単相 3 線式 100/200 V の使用電圧 200 V 空調回路の絶縁抵抗を測定したところ 0.16 MΩであった。
ロ.三相 3 線式の使用電圧 200 V(対地電圧 200 V)電動機回路の絶縁抵抗を測定したところ 0.18 MΩであった。
ハ.単相 2 線式の使用電圧 100 V 屋外庭園灯回路の絶縁抵抗を測定したところ 0.12 MΩであった。
ニ.単相 2 線式の使用電圧 100 V 屋内配線の絶縁抵抗を,分電盤で各回路を一括して測定したところ,1.5 MΩであったので個別分岐回路の測定を省略した。
出典:令和8年度上期 第二種電気工事士 学科試験 問25(一般財団法人電気技術者試験センター)
問題は公式の問題PDF(令和8年度上期)の9ページにあります。
| 選択肢 | 使用電圧/対地電圧 | 最小値 | 測定値 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| イ | 200V/100V | 0.1MΩ | 0.16MΩ | 適合 |
| ロ | 200V/200V | 0.2MΩ | 0.18MΩ | 適合しない |
| ハ | 100V/100V | 0.1MΩ | 0.12MΩ | 適合 |
| ニ | 100V/100V | 0.1MΩ | 一括で1.5MΩ | 適合 |
答えはロ。公式の解答(令和8年度上期の解答PDF)も問25はロです。
ニの確かめ方:分電盤で各回路を一括して測ると、各回路の絶縁抵抗が並列につながった値が出ます。並列の合成抵抗は、つないだどの抵抗よりも小さくなるので、一括で1.5MΩなら、どの分岐回路も1.5MΩ以上あります。これは0.1MΩを十分に上回るので、個別の測定を省略しても基準を満たすと判断できます。数値で確かめると、仮に2回路がどちらも3MΩなら、一括の値は3×3÷(3+3)=1.5MΩで、各回路の3MΩより小さくなっています。
同じ問題は令和4年度下期(午前)問25・令和5年度上期(午前)問25でも出ていて、公式の正答はどちらもロです。
この論点の問題を解く:
接地抵抗との組合せ問題(D種接地の自動販売機)
絶縁抵抗は、接地抵抗と組み合わせて出題されることがあります。令和6年度上期 問26(令和5年度上期(午前)問26 も同じ問題)は、使用電圧100Vで0.1秒で自動遮断する装置がある電路の自動販売機について、接地抵抗値aと絶縁抵抗値bの組合せで「適合していないもの」を選ばせます。使用電圧100V(対地電圧100V)なので絶縁抵抗は0.1MΩ以上、D種接地は0.5秒以内に遮断する装置があるので500Ω以下です。aが600Ωの選択肢イが適合せず、公式の正答もイです。接地工事の値はD種接地工事の記事で条文つきで整理しています。
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絶縁抵抗測定のやり方(手順)
試験で問われる範囲を、センターの公表問題の正答と解釈の条文から手順にまとめます(測定器の細かい操作は機種ごとの取扱説明書に従います)。
| 順番 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 測定する電路を停電させ、無充電の状態にする | 令和7年度下期 問24 の正答「(A)無充電状態の回路」 |
| 2 | 絶縁抵抗計の電池が有効であることを確かめる | 令和6年度上期 問25・令和6年度下期 問25 |
| 3 | 測定レンジに切り替え、アナログ形なら接地端子(E)と線路端子(L)を短絡して零点を指すことを確かめる | 令和6年度上期 問25 |
| 4 | 電子機器が接続された回路では、機器を損傷させない適正な定格測定電圧を選ぶ | 令和6年度上期 問25・令和6年度下期 問25 |
| 5 | 開閉器や過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、電路と大地の間(必要に応じて電線相互間)を測る | 省令 第58条・解釈 第14条 |
| 6 | 測定値が基準値以上かを確かめ、記録する | 令和7年度下期 問24「所定の抵抗値以上であることを確認する」 |
新しく工事した配線の竣工検査では、測定は通電の前に行います。センターの令和5年度上期(午後)問24は、「検査は点検,通電試験(試送電),測定及び試験の順に実施する。」を誤りの記述として出題しています。点検(目視)→測定及び試験(絶縁抵抗・接地抵抗・導通など)→通電試験の順です。
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絶縁抵抗測定でやってはいけないこと
検索で多い「やってはいけないこと」を、試験の正答で確定している範囲に絞ると、次の3つです。
- 電源電圧が加わった状態で測定する:令和6年度上期 問25 は「被測定回路に電源電圧が加わっている状態で測定する。」を誤りとしています。絶縁抵抗計は電路に電圧をかけて測る計器なので、必ず停電した回路で使います
- 電子機器がつながったまま、適さない測定電圧をかける:同じ問題は「電子機器が接続された回路の絶縁測定を行う場合は,機器等を損傷させない適正な定格測定電圧を選定する。」を正しい記述としています
- 回路計(テスタ)の抵抗値を絶縁抵抗値として使う:令和4年度下期(午前)問24 は「電路と大地間の抵抗測定を行った。その測定値は電路の絶縁抵抗値として使用してよい。」を誤りの選択肢としています
また、停電できない回路は無理に停電させずに、後の章の漏えい電流で判定する方法があります。
絶縁抵抗計とテスター(回路計)の違い
| 比べる点 | 絶縁抵抗計 | 回路計(テスタ) |
|---|---|---|
| 主な用途 | 電路の絶縁抵抗の測定 | 電圧・電流・抵抗の測定、導通試験 |
| 測定のときにかける電圧 | 直流(定格測定電圧) | 抵抗測定時の端子の出力電圧は直流(令和4年度下期(午前)問24 で「交流電圧である」が誤りの選択肢) |
| 絶縁抵抗の判定 | できる | テスタの抵抗値は絶縁抵抗値として使えない |
令和6年度下期 問25 は、絶縁抵抗計について「絶縁抵抗計の定格測定電圧(出力電圧)は,交流電圧である。」を誤りの記述として出題しています。つまり絶縁抵抗計の出力は直流です。回路計は、令和8年度上期 問24(測定器と用途の組合せで誤っているものを選ぶ問題・正答はハ)で「回路計(テスタ) と 導通試験」が正しい組合せとして扱われているとおり、導通(断線や誤接続)の確認に使います。
この論点の問題を解く:
停電できないとき:漏えい電流1mA以下(解釈 第14条)
電気設備の技術基準の解釈 第14条第1項は、電気使用場所の低圧の電路について、開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、次のどちらかに適合する絶縁性能を求めています。
一 省令第58条によること。
二 絶縁抵抗測定が困難な場合においては、当該電路の使用電圧が加わった状態における漏えい電流が、1mA以下であること。
出典:電気設備の技術基準の解釈 第14条第1項
解説によると、第二号は「一般家庭では停電して行う屋内配線等の絶縁抵抗測定が困難になってきたため、停電せずに絶縁性能を判定する漏えい電流(I0)による絶縁性能基準を明確にしたもの」です。1mAという値は、「低圧電路に1mA程度の漏えい電流があっても人体に対する感電の危険はなく」「この程度の漏れ電流では、仮にこれが1箇所に集中したとしても過去の経験に照らして火災の発生はほとんど考えられない」という理由で定められています。
1mAという数値そのものも問われます。令和5年度下期(午前)問25 は、「電気設備の技術基準の解釈」に定める、絶縁性能を有していると判断できる漏えい電流の最大値[mA]を、0.1・0.2・1・2から選ばせる問題で、公式の正答はハ(1mA)でした(問題PDF・解答PDF)。
過去問で確認(令和7年度下期 問25)
絶縁抵抗測定が困難なので,単相100/200 V の分電盤の各分岐回路に対し,使用電圧が加わった状態で,クランプ形漏れ電流計を用いて,漏えい電流を測定した。その測定結果は,使用電圧100 VのA回路は0.5 mA,使用電圧200 VのB回路は1.5 mA,使用電圧100 VのC回路は3 mAであった。絶縁性能が「電気設備の技術基準の解釈」に適合している回路は。
イ.すべて適合している。
ロ.A 回路とB 回路が適合している。
ハ.A 回路のみが適合している。
ニ.すべて適合していない。
出典:令和7年度下期 第二種電気工事士 学科試験 問25(一般財団法人電気技術者試験センター)
問題は公式の問題PDF(令和7年度下期)の9ページにあります。基準は使用電圧に関係なく1mA以下です。A回路0.5mAは適合、B回路1.5mAとC回路3mAは1mAを超えるので適合しません。答えはハで、公式の解答(令和7年度下期の解答PDF)も問25はハです。
確かめ方:B回路は使用電圧が200Vですが、1mAの基準は電圧で変わりません。「200Vだから基準がゆるい」と考えるとロを選んでしまいます。この問題は令和4年度上期(午後)問25 と同じ文で、そのときの公式の正答もハでした。
漏えい電流が流れる地絡(漏電)と、線どうしがつながる短絡の違いは、短絡とは?地絡・漏電・過電流との違いで整理しています。
漏れ電流計(クランプ形)について、センターの令和5年度上期(午後)問27 は「接地線を開放することなく,漏れ電流が測定できる。」「漏れ電流計には増幅回路が内蔵され,[mA]単位で測定できる。」を正しい記述とし、「漏れ電流計(クランプ形)の方が一般的な負荷電流測定用のクランプ形電流計より感度が低い。」を誤りとしています。
この論点の問題を解く:
まとめ
- 絶縁抵抗の基準値は「電気設備に関する技術基準を定める省令」第58条。使用電圧300V以下で対地電圧150V以下は0.1MΩ、300V以下のその他は0.2MΩ、300V超は0.4MΩ以上
- 単相3線式100/200Vの200V回路は対地電圧100Vなので0.1MΩ。三相200V(対地電圧200V)は0.2MΩ
- 測定は停電した回路で、開閉器や過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに行う。竣工検査では通電試験より前に測る
- 停電できず測定が困難なときは、使用電圧が加わった状態で漏えい電流1mA以下なら適合(解釈 第14条)。1mAは使用電圧で変わらない
- テスタの抵抗値は絶縁抵抗値として使えない。絶縁抵抗計の出力は直流
よくある質問
Q絶縁抵抗の基準でいう「対地電圧」とは何ですか?
省令第58条の表の中で定義されています。「接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧」です。住宅の単相3線式100/200Vは、変圧器の低圧側の中性点にB種接地工事が施されている(電気設備の技術基準の解釈 第24条)接地式電路なので、200Vの回路でも電線と大地の間は100Vで、対地電圧150V以下の区分(0.1MΩ以上)に入ります。
Q絶縁抵抗は電路と大地の間だけを測ればよいのですか?
省令第58条が値を定めているのは「電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗」で、どちらも同じ表の値以上が必要です。学科試験の問題は「電路と大地間」を問うものが中心ですが、条文上は電線相互間も対象です。
Q漏えい電流が1mA以下なら、絶縁抵抗値はいくらと考えればよいですか?
経済産業省の「電気設備の技術基準の解釈の解説」は、漏えい電流には対地静電容量による電流が含まれることなどから「必ずしも絶縁抵抗値に換算できない」としています。そのうえで、漏えい電流が1mA以下なら「省令第58条で定める絶縁抵抗値の基準と同等以上の絶縁性能を有しているものとみなすことができる」と説明しています。換算するのではなく、1mA以下かどうかで判定します。
Q漏えい電流の1mAの基準は、使用電圧が200Vでも同じですか?
同じです。電気設備の技術基準の解釈 第14条第1項第二号は、使用電圧の区分を設けずに「漏えい電流が、1mA以下であること」としています。令和7年度下期 問25 では、使用電圧200VのB回路(1.5mA)を適合としない選択肢が正答(ハ)でした。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月8日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

