問題
騒音による健康障害(騒音性難聴)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正しいのはイです。騒音性難聴では、聴力低下は典型的にはまず4kHz(4,000Hz)で起こり、ばく露が続くにつれて低い周波数・高い周波数へ徐々に広がります(MSDマニュアル)。この4kHz付近の谷型の低下が「C5-dip」と呼ばれる所見です。騒音健康診断の定期健診でも、1,000Hzと4,000Hzの選別聴力検査が行われます(騒音障害防止のためのガイドライン)。
各誤りの要点:ア→最初に低下するのは4kHz(1kHzではない)。ウ→騒音への反復ばく露は最終的に有毛細胞の消失を招く(完全回復するとはいえない)。エ→ガイドラインは聴覚保護具の正しい使用方法の指導と使用状況の確認を求めている。オ→低下は4kHzから徐々に低い周波数へ広がるので、初期から会話音域が大きく低下するわけではない。
騒音性難聴の特徴(MSDマニュアルの記載):
- 約85dBを超える騒音への慢性的なばく露により、時間をかけて進行する
- 大きな騒音への反復ばく露は、最終的にコルチ器の有毛細胞の消失を招く
- 聴力低下は典型的にはまず4kHzで起こり、ばく露が続くにつれて低い周波数・高い周波数へ徐々に広がる
- 他の多くの感音難聴と異なり、8kHzの低下が4kHzより軽いことがある
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 最初に低下するのは4kHzであり、1kHzではない。
- イ(正): 4kHzの低下が初期の特徴。騒音健康診断の定期健診は、オージオメータによる1,000Hz(30dB)及び4,000Hz(25dB及び30dB)の選別聴力検査を含む。
- ウ(誤): 騒音への反復ばく露は最終的に有毛細胞の消失を招く。障害された有毛細胞が自然回復して聴力が完全に戻るとはいえない。
- エ(誤): ガイドラインは、聴覚保護具をJIS T8161-1の試験方法による遮音値を目安に選定し、管理者に正しい使用方法を指導させたうえで、正しく使用されていることを目視等で確認するよう求めている。正しく装着しなくても性能が出るという前提はない。
- オ(誤): 低下は4kHzから始まり、徐々に低い周波数へ広がる。初期から会話音域が著しく低下するわけではない。
【理論的背景】
MSDマニュアルによると、騒音性難聴は約85dBを超える騒音への慢性的なばく露により時間をかけて進行します。難聴が記録できるようになる前から、騒音ばく露は聴神経やその有毛細胞とのシナプスを傷つけることがあり(hidden hearing loss・synaptopathy)、騒がしい環境での聞き取りにくさとして現れることがあります。大きな騒音への反復ばく露は最終的にコルチ器の有毛細胞の消失を招き、聴力低下は典型的にはまず4kHzで起こって、ばく露が続くにつれて低い周波数・高い周波数へ徐々に広がります。他の多くの感音難聴と異なり、8kHzの低下が4kHzより軽いことがあるのも特徴です。
一方、1回の極めて大きな騒音による突然の難聴(音響外傷)は、鼓膜や中耳の損傷がなければ通常1日以内に消失しますが、内耳のわずかな損傷が後年の加齢に伴う難聴を促進することがあるとされています(MSDマニュアル家庭版)。
【実務・条文構造】
安衛則と「騒音障害防止のためのガイドライン」(令和5年4月20日 基発0420第2号):
- 安衛則第588条: 著しい騒音を発する屋内作業場(圧縮空気により駆動される機械・器具を取り扱う業務を行う屋内作業場等)を定める。
- 安衛則第590条: 第588条の屋内作業場について、6月以内ごとに1回、定期に、等価騒音レベルを測定し、記録を3年間保存。
- 安衛則第595条: 強烈な騒音を発する場所における業務では、耳栓その他の保護具を備えなければならない。
- 騒音健康診断(ガイドライン): 雇入れ・配置替えの際は250・500・1,000・2,000・4,000・6,000・8,000Hzの聴力検査。定期は6月以内ごとに1回で、1,000Hz(30dB)及び4,000Hz(25dB及び30dB)の選別聴力検査など。30dBの音圧での検査で異常が認められる者等は二次検査。結果は記録して5年間保存し、定期健診の結果は所轄労働基準監督署長に報告。
- 聴覚保護具(ガイドライン): JIS T8161-1の試験方法により測定された遮音値を目安に選定し、正しい使用方法を指導したうえで、目視等により正しく使用されていることを確認する。
- 作業時間の管理(ガイドラインの表。日本産業衛生学会の許容基準からの抜粋): 等価騒音レベル85dBで1日8時間、88dBで4時間、91dBで2時間、94dBで1時間。3dB上がるごとに許容時間が半分になる関係です。
【試験での位置づけ】
この論点では、①騒音性難聴の聴力低下はまず4kHzで起こる(C5-dip)、②その後、徐々に他の周波数へ広がる、③反復ばく露で有毛細胞が消失する、④騒音健康診断の定期健診は6月以内ごと・1,000Hzと4,000Hzの選別聴力検査、⑤聴覚保護具は正しい使用の指導と確認が必要、の5点を押さえます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 1kHzは定期健診の選別聴力検査で4kHzとあわせて調べる周波数ですが、騒音性難聴で最初に低下するのは4kHzです。
- ウ: 音響外傷のような一時的な聴力低下は回復することがありますが、反復ばく露による有毛細胞の消失は別の問題です。MSDマニュアル家庭版も、難聴の原因の多くには根治的な治療法がないとしています。
- エ: ガイドラインは、危険作業等で周囲の音を聞く必要がある場合に、遮音値が必要以上に大きい聴覚保護具を選定しないよう配慮することも求めています。
- オ: 低下は4kHzから徐々に広がるため、4kHzを含む聴力検査を定期に行うことが早期発見の手段になります。
【根拠】MSD Manual Professional Version「Hearing Loss」、MSDマニュアル家庭版「難聴」、騒音障害防止のためのガイドライン(令和5年4月20日 基発0420第2号)、労働安全衛生規則第588条・第590条・第595条。
【補足】イ(正): 騒音性難聴の初期変化は4kHzの聴力低下(C5-dip)。ア(誤): 1kHzではない。ウ(誤): 反復ばく露で有毛細胞が消失し、完全回復するとはいえない。エ(誤): 聴覚保護具は正しい使用の指導・確認が必要。オ(誤): 低下は4kHzから徐々に広がり、初期から会話音域が著しく低下するわけではない。
- 労働安全衛生規則第588条・第590条・第595条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: MSD Manual Professional Version「Hearing Loss」(https://www.msdmanuals.com/professional/ear-nose-and-throat-disorders/hearing-loss/hearing-loss)、「騒音障害防止のためのガイドライン」(令和5年4月20日 基発0420第2号)、労働安全衛生規則第588条・第590条・第595条。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

