問題
次の事例を読んで,問題78 から問題80 までについて答えなさい。
〔事 例〕
Aさん(40 歳,男性)は,20 代後半にうつ病で通院したことがある。その後,回復してIT企業に就職し,仕事に懸命に取り組んでいた。ところが,最近,Aさんが開発したソフトウェアの不具合が複数発生したため対応に追われ,疲労困憊し,食欲不振や不眠も現れ,ふさぎ込むようになった。心配した妻に連れられて,かつて通院していたY精神科病院を受診した。Aさんは,診察の際に医師に,「死にたい」と言っており,うつ病の再発と診断されたため,休職して入院した。 Y精神科病院のB精神保健福祉士が,Aさんに詳しく話を聞くと,「ここ数か月は毎日残業で,休日にも出勤していた」と話した。そこで,妻に,最近1 か月の時間外労働の時間数を職場に確認してもらったところ,160 時間を超えていることが分かった。B精神保健福祉士は,この状況は,ある社会保険制度の「心理的負荷による精神障害の認定基準」(以下,認定基準)に該当するのではないかと考え,Aさんにこの制度の説明をしたところ,申請の意思が示されたため,必要書類を一緒に準備し,Z機関に提出した。(問題78)入院中のAさんは,責任感や経済的な理由から復職を急いでおり,病状が安定しない日が続いたが,2 か月後,Z機関から「認定基準」に該当すると認定された。(問題79)その後,Aさんは1 か月ほどで退院することができた。退院してから半年がたち,通院中のAさんからB精神保健福祉士は復職の相談を受けた。その中で,「復職を主治医に相談したところ,賛同してくれた。ただし,職場には時間外労働の在り方について考えてもらわなければいけないと言っていた」「今後は体調を崩さないように,今の自分に合った働き方を考えたい」などの言葉が聞かれたため,B精神保健福祉士は,U機関による精神障害者総合雇用支援の職場復帰支援の利用をAさんと一緒に検討することとなった。(問題80)
次のうち,Z機関の業務として,正しいものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第26回精神保健福祉士国家試験(令和5年度)」専門科目 問題78(精神障害者の生活支援システム)
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
正解は 1
Aさんは長時間労働が原因でうつ病が再発した可能性があり、B精神保健福祉士は「心理的負荷による精神障害の認定基準」に当たると考えました。これは労災保険(労働者災害補償保険)の認定基準で、労災の請求書を提出する先(Z機関)は労働基準監督署です。
労働基準監督署は、労働基準法が守られているかを監督する機関で、労働基準法の運用に関する事務を担います(肢1)。障害者雇用率の未達成企業への指導、失業の認定、公共職業訓練の紹介はハローワーク、就業と生活の一体的な相談支援は障害者就業・生活支援センターの仕事です。
正解は 1
「心理的負荷による精神障害の認定基準」は、業務による精神障害を労災保険の対象として認定するための基準です。労災保険給付の請求先であるZ機関は労働基準監督署です。
- 肢1(正しい): 労働基準監督署は、労働基準法などの労働基準関係法令に基づく監督・指導など、労働基準法の運用に関する事務を行い、労災保険給付の請求の受付と支給決定も担います。
- 肢2(誤り): 障害者雇用率の未達成企業に対する雇入れ計画の作成命令や指導は、公共職業安定所(ハローワーク)の業務です。
- 肢3(誤り): 就業面と生活面の一体的な相談・支援を行うのは障害者就業・生活支援センターです(障害者雇用促進法)。
- 肢4(誤り): 雇用保険の基本手当の受給に必要な失業の認定は、ハローワークが行います。
- 肢5(誤り): 公共職業訓練の受講あっせん(紹介)もハローワークの業務です。
正解は 1
事例の読み取り
- 最近1か月の時間外労働が160時間を超える→「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、発病直前の1か月におおむね160時間を超える時間外労働を行った場合などが、心理的負荷が「強」となる「特別な出来事」(極度の長時間労働)の例として示されています。
- この基準は、精神障害が業務上の疾病として労災保険の給付対象になるかを判断するためのものです。
- 「必要書類を一緒に準備し、Z機関に提出した」→ 労災保険給付の請求書は、事業場を管轄する労働基準監督署長に提出します。
労働基準監督署とハローワークの役割分担
| 機関 | 主な業務 |
|---|---|
| 労働基準監督署 | 労働基準法・労働安全衛生法等の監督・指導、労災保険給付の請求受付・支給決定 |
| 公共職業安定所(ハローワーク) | 職業紹介、雇用保険(失業の認定・給付)、障害者雇用率達成指導、職業訓練の受講あっせん |
| 障害者就業・生活支援センター | 就業面と生活面の一体的な相談・支援(障害者雇用促進法) |
| 地域障害者職業センター | 職業評価、職業準備支援、ジョブコーチ支援、リワーク支援 |
誤りの肢の掘り下げ
- 肢2: 障害者雇用率制度の運用(雇用状況の報告の受理、雇入れ計画の作成命令、適正実施勧告など)はハローワークが担います。労働基準監督署の業務ではありません。
- 肢3: 障害者就業・生活支援センターは、都道府県知事が指定する法人が運営し、身近な地域で就業と生活の両面の支援を一体的に行います。
- 肢4・肢5: 雇用保険と職業紹介・職業訓練はハローワークの領域です。Aさんは休職中で離職していないため、失業の認定もそもそも関係しません。
精神保健福祉士の実践として
長時間労働や職場のハラスメントの後に発症・再発したケースでは、本人の経済的な不安を和らげ、療養に専念できる環境を整えるために、労災保険の申請支援が重要です。申請の判断は本人の意思決定に基づき、主治医の意見書、勤務記録、家族の情報などを整理して支援します。認定基準は見直されることがあるため、申請時点の基準を厚生労働省の資料で確認して支援に当たります。
- 労働基準法e-Govで原文を読む
- 障害者の雇用の促進等に関する法律e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第26回精神保健福祉士国家試験(令和5年度)」専門科目 問題78(精神障害者の生活支援システム)です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ。原文にふりがなが付いている語は、ふりがなも付けています)。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。精神保健福祉に関する法令・制度は改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:合格ナビ運営事務局(運営者情報)・編集方針。

