社会福祉士の倫理綱領を、定めた団体(日本ソーシャルワーカー連盟・日本社会福祉士会)、前文・6つの原理・4つの倫理責任の構成、法律上の義務(社会福祉士及び介護福祉士法第44条の2から第47条の2)との違い、行動規範、試験の出題基準での位置づけまで、団体の公式ページと条文の出典つきで整理します。
目次
結論:社会福祉士の倫理綱領は、法律ではなく、専門職の団体が定めた文書です。日本ソーシャルワーカー連盟の「ソーシャルワーカーの倫理綱領」(2005年制定、2020年改定)と、日本社会福祉士会の「社会福祉士の倫理綱領」(2020年6月30日採択)があり、どちらも前文、6つの原理、4つの倫理責任(クライエント・組織職場・社会・専門職、計29項目の倫理基準)で構成されています。法律上の義務(社会福祉士及び介護福祉士法第44条の2から第47条の2)とは、定めた主体も、違反したときの扱いも違います。
この記事は、日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)の倫理綱領のページ、日本社会福祉士会の倫理綱領のページに掲載されている文書(倫理綱領・行動規範のPDF)、e-Gov 法令検索の社会福祉士及び介護福祉士法(2026年10月7日時点の現行条文)、社会福祉振興・試験センター(以下「センター」)の出題基準だけをもとに、倫理綱領の位置づけと要点を整理したものです。倫理綱領の全文は、この記事には載せません。要点を自分の言葉で説明し、全文は団体のページへのリンクで案内します。法律上の義務は社会福祉士とはに条文ごとの整理があります。合格ナビは、どちらの団体ともセンターとも関係のない民間のサイトです。
社会福祉士の倫理綱領の要点(一覧表)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定めた団体 | 日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)、日本社会福祉士会 |
| 文書の名前 | 「ソーシャルワーカーの倫理綱領」(JFSW)、「社会福祉士の倫理綱領」(日本社会福祉士会) |
| 構成 | 前文、原理(6)、倫理基準(4つの倫理責任・29項目) |
| 位置づけ | 法律ではなく、専門職団体が定めた綱領 |
| 土台 | 「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年7月) |
| 行動の具体化 | 日本社会福祉士会の「社会福祉士の行動規範」 |
| 試験での位置づけ | センターの出題基準「ソーシャルワークの基盤と専門職」の「ソーシャルワークの倫理」 |
誰が定めたものか:2つの団体と2つの綱領
倫理綱領は、国が定めた法令ではなく、専門職の団体が定めた文書です。確認できた団体は2つあります。
日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)のページには、「ソーシャルワーカーの倫理綱領」が載っており、制定は社会福祉専門職団体協議会代表者会議(2005年1月27日)、改定は日本ソーシャルワーカー連盟代表者会議(2020年6月2日)と書かれています。
日本社会福祉士会のページには、「社会福祉士の倫理綱領」が載っています。2020年6月30日に採択された文書で、同じPDFには、2021年3月20日に採択された「社会福祉士の行動規範」も入っています。
社会福祉士に関する倫理綱領の制定・採択日:JFSW「ソーシャルワーカーの倫理綱領」は2005年1月27日制定、2020年6月2日改定。日本社会福祉士会「社会福祉士の倫理綱領」は2020年6月30日採択、「社会福祉士の行動規範」は2021年3月20日採択。最終確認日:2026-10-07。出典:日本ソーシャルワーカー連盟 倫理綱領、日本社会福祉士会 倫理綱領・行動規範(PDF)。
2つのページの文書は、前文、原理、倫理基準の項目が同じ構成で、主語が「ソーシャルワーカー」か「社会福祉士」かが違います。日本社会福祉士会の文書の注には、「社会福祉士」とは、「本倫理綱領を遵守することを誓約し、ソーシャルワークに携わる者」をさすと書かれています。綱領が想定しているのは、誓約して実践する専門職という考え方です。
改定されたり、新しい版が採択されたりすることがあります。使うときは、団体のページで最新の文書と日付を確認してください。
倫理綱領の構成:前文・原理・倫理基準
綱領の構成は、次のとおりです。
- 前文:社会正義、人権、集団的責任、多様性尊重および全人的存在の原理に則り、人々がつながりを実感できる社会への変革と社会的包摂の実現をめざす専門職であることを述べます。また、国際ソーシャルワーカー連盟と国際ソーシャルワーク教育学校連盟が採択した「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年7月)を実践の基盤とすることが書かれています
- 原理:6つ
- 倫理基準:4つの倫理責任に分かれた29項目
前文の最後には、「ソーシャルワークの知識、技術の専門性と倫理性の維持、向上が専門職の責務である」ことを認識し、綱領を制定してこれを遵守することを誓約する、と書かれています。倫理綱領が、専門性の維持と倫理性の維持を並べて、専門職の責務としていることが分かります。
6つの原理の要点
原理は、専門職として何を大切にするかの土台です。名称と要点を、自分の言葉で整理します。
| 原理 | 要点 |
|---|---|
| 人間の尊厳 | 出自や性別、年齢、社会的地位などの違いにかかわらず、すべての人をかけがえのない存在として尊重する |
| 人権 | すべての人が生まれながらに侵すことのできない権利を持つことを認識し、権利の抑圧や侵害を容認しない |
| 社会正義 | 差別、貧困、抑圧、排除などのない、自由・平等・共生に基づく社会の実現をめざす |
| 集団的責任 | 集団の持つ力と責任を認識し、人と環境の双方に働きかけて、互恵的な社会に貢献する |
| 多様性の尊重 | 個人、家族、集団、地域社会にある多様性を認識し、尊重する社会をめざす |
| 全人的存在 | 人を、生物的・心理的・社会的・文化的・スピリチュアルな側面からなる全人的な存在として捉える |
4つの倫理責任:29項目の中身
倫理基準は、誰に対する責任かで4つに分かれています。項目の数と、中身の方向をまとめます。
| 倫理責任 | 項目数 | 中身の方向 |
|---|---|---|
| クライエントに対する倫理責任 | 12 | 専門的援助関係の位置づけ、利益の最優先、受容、説明責任、自己決定の尊重、参加の促進、意思決定が難しい人への対応、プライバシーと秘密の保持、記録の開示、差別・虐待の禁止、権利擁護、情報処理技術の適切な使用 |
| 組織・職場に対する倫理責任 | 6 | 最良の実践、同僚への敬意、綱領の理解の促進、倫理的実践の推進、組織内のアドボカシー、組織改革 |
| 社会に対する倫理責任 | 3 | ソーシャル・インクルージョン、社会への働きかけ、グローバル社会への働きかけ |
| 専門職としての倫理責任 | 8 | 専門性の向上、専門職の啓発、信用失墜行為の禁止、社会的信用の保持、専門職の擁護、教育・訓練・管理における責務、調査・研究、自己管理 |
12 + 6 + 3 + 8 で、29項目です。項目の本文は、団体のページで確認してください。
倫理基準の特徴は、クライエント個人への責任に加え、組織・職場、社会、専門職自身への責任まで書かれている点です。たとえば、組織・職場の方針や業務命令がソーシャルワークの倫理的実践を妨げるときに、適切な方法で提言し、改善を図ることが挙げられています。個人の判断だけでなく、職場や社会に働きかけることまでが、専門職の倫理に含まれています。
倫理綱領と法律上の義務の違い
社会福祉士には、倫理綱領とは別に、法律に条文として書かれた義務があります。社会福祉士及び介護福祉士法の第4章は、次の義務を定めています。
| 法律上の義務 | 条 | 条文の要点 | 綱領で近い項目 |
|---|---|---|---|
| 誠実義務 | 第44条の2 | 担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、「常にその者の立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない」 | クライエントの利益の最優先、受容 など |
| 信用失墜行為の禁止 | 第45条 | 「社会福祉士又は介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない」 | 信用失墜行為の禁止(専門職としての倫理責任) |
| 秘密保持義務 | 第46条 | 「正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない」。資格を失った後も同様 | プライバシーの尊重と秘密の保持 |
| 連携 | 第47条第1項 | 福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない | 同名の項目はない |
| 資質向上の責務 | 第47条の2 | 「知識及び技能の向上に努めなければならない」 | 専門性の向上 |
社会福祉士及び介護福祉士法の現行条文には、「倫理」の語が出てきません(2026年10月7日にe-Gov法令検索の全文を検索)。倫理綱領は、この法律の外にある文書です。名前が似ていても、次の点が違います。
- 定めた主体:法律上の義務は、国会が定めた法律の条文です。倫理綱領は、専門職の団体が定めた文書です
- 違反したときの扱い:法律上の義務には、条文に定めがあります。秘密保持義務(第46条)に違反した者には、第50条が1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金を定めています。第45条と第46条に違反したときは、第32条第2項により、厚生労働大臣が登録を取り消し、または期間を定めて名称の使用の停止を命ずることができます。倫理綱領の本文(前文・原理・倫理基準)には、罰則や処分の規定は書かれていません
- 範囲:法律上の義務は、登録を受けた社会福祉士(介護福祉士にも同じ条が適用されます)に課されます。倫理綱領は、誓約して実践するソーシャルワーカーの専門職としての約束事で、法律上の義務より広い内容(組織への働きかけ、社会への働きかけ、グローバル社会への働きかけ)を含みます
倫理綱領には、法律上の義務に同名の項目がない内容(組織・職場や社会への働きかけなど)も含まれています。この記事は、どちらの文書も、それぞれの出典で確認できる範囲で、違いを整理したものです。
行動規範:綱領を行動の単位にしたもの
日本社会福祉士会のPDFには、倫理綱領のあとに、「社会福祉士の行動規範」(2021年3月20日採択)が続いています。冒頭には、「行動規範は倫理綱領を行動レベルに具体化したものであり」と書かれています。倫理綱領の各項目を、実践の場で何をするか、何をしてはならないかという行動の形に、具体的に書き下したものです。
たとえば、倫理基準の「クライエントとの関係」は、行動規範では複数の行動に分かれています。専門的援助関係に基づくことを説明する、対等な協力関係を尊重する、専門職として社会通念上不適切な関係を持たない、などです。事例問題で、この対応は適切かを考えるときの手がかりになります。
試験での位置づけ:ソーシャルワークの基盤と専門職
センターの出題基準には、倫理綱領が出題範囲として示されています。第37回試験から適用される予定版の「ソーシャルワークの基盤と専門職」には、次の内容があります。
- 大項目「ソーシャルワークの倫理」:中項目は、専門職倫理の概念、専門職の倫理綱領、倫理的ジレンマの3つ
- 「専門職の倫理綱領」の例:ソーシャルワーカーの倫理綱領、社会福祉士の倫理綱領、精神保健福祉士の倫理綱領
- 大項目「社会福祉士及び精神保健福祉士の法的な位置づけ」:社会福祉士及び介護福祉士法の定義・義務、精神保健福祉士法の定義・義務など
つまり、試験の準備では、法律に書かれた義務と、専門職団体の倫理綱領の両方を、区別して整理しておくことになります。出題基準は、センターによると「標準的な出題範囲の例示」で、出題範囲を厳密に限定するものではありません。出題の有無や頻度を示すものではないことに注意してください。
当サイトに収録している、センターが公表した第36回から第38回の408問で、問題文または選択肢に「倫理綱領」の語を含むのは2問でした。いずれも第37回の専門科目「ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)」です(2026年10月7日に収録データを文字列検索して数えた件数。「倫理」「秘密保持」など別の語で問われる問題は含まない、限られた範囲の集計で、出題の頻度を示すものではありません)。
学習の使い方としては、次の3点を押さえると整理しやすくなります。
1. 6つの原理の名称と、4つの倫理責任の分け方(クライエント・組織職場・社会・専門職)
2. 法律上の義務(条番号)と、倫理綱領の項目を、混ぜずに整理する
3. 事例問題では、クライエントの利益、自己決定、秘密の保持など、倫理基準のどの項目に当たる場面かを考える
まとめ
- 社会福祉士の倫理綱領は、法律ではなく、専門職の団体が定めた文書。日本ソーシャルワーカー連盟の「ソーシャルワーカーの倫理綱領」(2005年1月27日制定・2020年6月2日改定)と、日本社会福祉士会の「社会福祉士の倫理綱領」(2020年6月30日採択)がある
- 構成は、前文、6つの原理(人間の尊厳・人権・社会正義・集団的責任・多様性の尊重・全人的存在)、4つの倫理責任の29項目(12・6・3・8)
- 土台は、「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年7月)
- 法律上の義務(社会福祉士及び介護福祉士法第44条の2から第47条の2)は、罰則・行政処分の定めが条文にある。倫理綱領の本文には、罰則・処分の規定は書かれていない
- 行動規範(2021年3月20日採択)は、倫理綱領を行動レベルに具体化したもの
- 試験では、センターの出題基準に、ソーシャルワークの倫理と、3種類の倫理綱領が例示されている。法律上の義務と、倫理綱領を区別して整理しておく
本サイトは日本ソーシャルワーカー連盟・日本社会福祉士会・社会福祉振興・試験センターとは関係ありません。倫理綱領の全文は、各団体のページで確認してください。条文の引用・要約は e-Gov 法令検索の現行条文(2026年10月7日確認)にもとづきます。
よくある質問
Q倫理綱領に違反すると、罰則はありますか?
倫理綱領の本文(前文・原理・倫理基準)には、罰則や処分の規定は書かれていません。法律の条文として書かれた義務は別です。社会福祉士及び介護福祉士法では、秘密保持義務(第46条)に違反した者に、第50条が1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金を定めています。また、第45条(信用失墜行為の禁止)と第46条に違反したときは、第32条第2項により、登録の取消しまたは名称使用の停止の命令の対象になります(e-Gov法令検索の2026-10-07時点の現行条文)。
Q「ソーシャルワーカーの倫理綱領」と「社会福祉士の倫理綱領」は、同じものですか?
別の団体が、それぞれのページで公表している文書です。日本ソーシャルワーカー連盟のページには、2005年に制定され、2020年に改定された「ソーシャルワーカーの倫理綱領」が載っています。日本社会福祉士会のページには、2020年6月30日に採択された「社会福祉士の倫理綱領」が載っています。2つのページを読み比べると、前文・6つの原理・4つの倫理責任(29項目)の構成は同じで、主語が「ソーシャルワーカー」か「社会福祉士」かが違います。
Q倫理綱領と行動規範は、何が違いますか?
日本社会福祉士会の「社会福祉士の行動規範」(2021年3月20日採択)は、冒頭に「行動規範は倫理綱領を行動レベルに具体化したものであり」と書かれています。倫理綱領が原理と倫理基準を示す文書であるのに対し、行動規範は、その項目を行動の単位に具体化したものです。たとえば、倫理基準の「クライエントとの関係」には、行動規範で複数の行動(説明する、対等な協力関係を尊重する、など)が付いています。
Q国家試験では、倫理綱領はどのように出題範囲になっていますか?
センターの出題基準(第37回試験から適用の予定版)では、「ソーシャルワークの基盤と専門職」の大項目「ソーシャルワークの倫理」に、専門職倫理の概念、専門職の倫理綱領、倫理的ジレンマが挙げられています。専門職の倫理綱領の例として、ソーシャルワーカーの倫理綱領、社会福祉士の倫理綱領、精神保健福祉士の倫理綱領が示されています。出題基準は、標準的な出題範囲の例示であり、出題の有無や頻度を示すものではありません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

