電験三種
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

電験三種 令和5年度下期 法規 問11(a)|電気設備技術基準(電技解釈)

問題

電験三種 | 法規 | 令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-10-29

図は,線間電圧V[V],周波数f[Hz]の中性点非接地方式の三相3線式高圧配電線路及びある需要設備の高圧地絡保護システムを簡易に示した単線図である。高圧配電線路一相の全対地静電容量をC1[F],需要設備一相の全対地静電容量をC2[F]とするとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし,図示されていない負荷,線路定数及び配電用変電所の制限抵抗は無視するものとする。(図:受電点より高圧配電線路側にC1,需要設備側にC2が対地静電容量として接続され,受電点の需要設備側に零相変流器・地絡継電器・遮断器が設けられ,地絡事故点は受電点より高圧配電線路側にある。) (a) 図の配電線路において,遮断器が「入」の状態で地絡事故点に一線完全地絡事故が発生し地絡電流Ig[A]が流れた。このときIgの大きさを表す式として,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。なお,間欠アークによる影響等は無視するものとし,この地絡事故によって遮断器は遮断しないものとする。

問題の図(出典: 令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験 法規 問11/電気技術者試験センター)

図の出典:令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験 法規 問11

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正解は 4
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解説

中性点非接地方式の高圧配電線路で一線完全地絡事故が発生したときの地絡電流Igを表す式を求める問題(令和5年度下期 問11(a))。正答は(4)「2√3Vπf(C1+C2)」です。

中性点非接地方式では,地絡電流は配電線路側と需要設備側の対地静電容量(C1とC2)を通って大地に戻る電流として流れます。線間電圧V,角周波数ω=2πfのもとで,地絡電流の大きさは「√3×ω×(C1+C2)×V」という形になり,これを整理すると2√3Vπf(C1+C2)となります。「対地静電容量の合計に比例し,電圧・周波数にも比例する」という構造を覚えておけば(4)を選べます。

【論点】中性点非接地方式における一線完全地絡電流の式(令和5年度下期 問11(a))

【① 中性点非接地方式の地絡電流の基本式】

中性点を接地していない三相3線式の高圧配電系統で一線が完全地絡すると,健全相の対地電圧が線間電圧と同じ大きさまで上昇し,地絡相には系統全体の対地静電容量を介して充電電流(地絡電流)が流れ込む。一相あたりの対地静電容量をC,相電圧をE=V/√3とすると,健全2相の静電容量にはそれぞれ線間電圧V(=√3E)がかかり,各相の充電電流は√3ωCE。2相の電流は60°ずれているので,その和の大きさは√3倍となり

Ig=√3×√3ωCE=3ωCE=√3ωCV=2√3πfCV

という形で表される。

【② 本問での全対地静電容量】

本問では,地絡電流が流れる経路(配電線路側と需要設備側の両方)の対地静電容量として,高圧配電線路側のC1と需要設備側のC2が与えられている。遮断器が「入」の状態なので,両方の静電容量が地絡電流の経路として働き,全対地静電容量はC1+C2となる。

【③ 式の完成】

Ig=2√3πf(C1+C2)V,つまりV・π・f・(C1+C2)の積に2√3を掛けた(4)「2√3Vπf(C1+C2)」が地絡電流の大きさを表す式となる。

【他の選択肢が誤りである理由】

(1)(2)はC1²+C2²の平方根という形になっており,これは各静電容量を流れる電流を誤ってベクトル的に直交計算してしまった場合の形で,実際には同じ対地電圧がかかる並列な静電容量として単純にC1+C2で足し合わされる。(3)の(2/√3)Vπf(C1+C2)はω(C1+C2)×V/√3,つまり平常時に一相の対地静電容量に相電圧がかかったときの充電電流で,地絡電流(その3倍)ではない。(5)はC1とC2の積の平方根(幾何平均)になっており,並列な静電容量の合成という物理的な意味と合わない。

【核心論点】中性点非接地方式で一線完全地絡が起きると,健全相の対地電圧が線間電圧まで上昇し,系統全体の対地静電容量を介して地絡電流が流れるという現象の定量化(令和5年度下期 問11(a))。正答は(4)です。

【中性点非接地方式での地絡時の電圧変化】

通常運転時,三相の各相の対地電圧は相電圧(線間電圧の1/√3)である。ところが中性点を接地していない系統で一線が完全に地絡すると,中性点の電位が大地電位からずれ(中性点電位の浮き上がり),健全な2相の対地電圧は相電圧から線間電圧まで上昇する。この電圧上昇が,地絡電流の大きさを求める式に√3という係数が現れる理由である。

【対地静電容量を介した地絡電流の経路】

地絡電流は,大地に直接短絡した地絡相から,健全相の対地静電容量(ここではC1とC2の合計)を介して回り込み,大地を経由して地絡点に戻る,という経路で流れる。この電流は,静電容量に交流電圧が加わったときに流れる充電電流(I=ωCV)と同じ考え方で求められ,三相分・線間電圧ベースでの係数を整理すると,Ig=√3ωCV=2√3πfCVという式になる。

【C1+C2とする理由】

本問では,地絡事故点が高圧配電線路側にあり,かつ遮断器が「入」の状態(配電線路と需要設備が電気的につながった状態)にあるため,地絡電流の帰路となる対地静電容量は,配電線路側のC1と需要設備側のC2の両方が並列に働く。並列に接続された静電容量は単純に足し算で合成できるため,全体の対地静電容量はC1+C2となる。もし遮断器が「切」であれば,需要設備側のC2は地絡電流の経路から切り離され,C1のみで計算することになる点も関連して押さえておきたい。

【(b)とのつながり(もらい事故による不必要動作)】

続く(b)では,V=6 600 V,f=60 Hz,C1=2.3 μF,C2=0.02 μFとして,Igのうち需要設備の零相変流器を通る電流を求める。(a)の式からIg=2√3×6 600×π×60×2.32×10⁻⁶≒10.0 Aで,需要設備側への分流はIg×C2/(C1+C2)=10.0×0.02/2.32≒0.086 A=86 mA(公式解答(2))となる。事故点は需要設備の構外なのに,構内のC2を流れる電流が零相変流器で検出されるため,地絡継電器の整定値(例えば200 mA)によっては不必要に動作するおそれがある。需要設備のケーブルが長くC2が大きいほどこの電流が増えるので,地絡方向継電器を用いて事故の方向を判別する対策がとられる。

この問題の根拠出典:令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験 法規(一般財団法人 電気技術者試験センター)
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は電気技術者試験センター公表の過去問題を出典明記の上で引用しています。同センターは公式サイトの「よくあるご質問」で、教育目的など試験制度の意義に反しない限り、公表された過去問題を問題集やテキストに使用する際の許諾および使用料は不要としています。 根拠・出典:出典:令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験 法規(一般財団法人 電気技術者試験センター) 各根拠条文・規定は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令・基準の数値を反映(数値確認日 2026-10-29)。

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執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。電気事業法・電気工事士法・電気用品安全法・電気設備技術基準・内線規程の根拠条文に基づき、段差のある3段階の解説(初心者・標準・上級)を作成しています。