ITパスポートの公開問題600問(令和3〜8年度)で生成AIを扱う問題は5問で、令和7年度から出ています。ハルシネーション・基盤モデル・プロンプトエンジニアリングの問われ方、IPAのサンプル問題との対応、令和8年度 問1の生成AIと著作権を、IPAの問題文と条文で確かめます。
目次
結論:ITパスポートの公開問題600問(令和3〜8年度)で、生成AIを扱う問題は5問で、令和7年度に3問、令和8年度に2問出ています。用語の意味を選ぶ形と、生成AIの説明や扱いを選ぶ形です。AIの問題全体では31問あり、令和7年度が7問で最も多くなりました。
ITパスポートの生成AIはどう出る?公開問題600問で5問
生成AIを扱う問題は、公開問題600問のうち5問で、どれも令和7年度以降です。
集計は、合格ナビの問題データ(IPA公開問題 令和3〜8年度・600問・集計日 2026-10-30)です。問題文か選択肢に、生成AI・基盤モデル・プロンプトなどの語がある問題を数え、AIのほかの問題は1問ずつ読んで分けました。
公開問題は、各年度に実際に出た問題のうち100問です(IPA)。CBT方式の試験全体での出題数ではありません。
| 分類 | 令和3 | 令和4 | 令和5 | 令和6 | 令和7 | 令和8 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 生成AI | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 2 | 5 |
| AIの原則・留意事項 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 5 |
| AIのしくみ(機械学習など) | 1 | 2 | 3 | 3 | 2 | 2 | 13 |
| AIの活用事例・種類 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | 8 |
| 合計 | 3 | 4 | 6 | 5 | 7 | 6 | 31 |
IPAは2023年8月、生成AIの仕組み・活用例・留意事項などをシラバスに加えました。適用は2024年4月の試験からです。令和6年度の公開問題100問には、生成AIの語はありませんでした。
今のシラバス Ver.6.5 では、生成AIの用語は3つの場所に分かれています。
| シラバスの場所 | 主な用語例 | 公開問題 |
|---|---|---|
| ストラテジ系「ビジネスシステム」のAIの活用領域 | 生成AI、マルチモーダルAI | 令和7年度 問28 |
| 同じく、AIを利活用する上での留意事項 | ハルシネーション、ディープフェイク | 令和7年度 問10 |
| テクノロジ系「情報に関する理論」のAIの技術 | 基盤モデル、大規模言語モデル(LLM)、プロンプトエンジニアリング | 令和7年度 問80、令和8年度 問98 |
| ストラテジ系「知的財産権」の著作権法 | AIが学習に使うデータ・生成したデータと著作権 | 令和8年度 問1 |
シラバスの記載:ITパスポート試験のシラバス Ver.6.5(2026年1月掲載)は、ビジネスシステムの「AIの利活用」に生成AI・ハルシネーションなどを、情報に関する理論の「AIの技術」に基盤モデル・大規模言語モデル(LLM)・プロンプトエンジニアリングなどを挙げています。最終確認日:2026-10-30。出典:IPA ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5、IPA シラバスの一部改訂について(生成AIに関する項目・用語例の追加など)。
改訂の履歴と、Ver.6.5で増えた用語の一覧は、シラバスVer.6.5の変更点にまとめています。
生成AIの5問:用語の意味を選ぶ形と、説明を選ぶ形
5問のうち3問は用語の意味を選ぶ形、2問は生成AIの説明や生成物の扱いを選ぶ形でした。
用語を選ぶ形の例が、令和7年度 問10です。
問10 生成AIにおいて,もっともらしいが事実とは異なる内容が出力されることを表す用語として,最も適切なものはどれか。
ア エコーチェンバー イ シンギュラリティ ウ ディープフェイク エ ハルシネーション
出典:令和7年度 ITパスポート試験 問10(独立行政法人情報処理推進機構)
正解はエです。不正解のディープフェイクも、シラバスでは同じ「留意事項」の用語例に並んでいます。
- 令和7年度 問80:広範囲かつ大量のデータで訓練され、ファインチューニングなどで様々な用途に適応できるものを選びます。正解はウ「基盤モデル」です。
- 令和8年度 問98:プロンプトエンジニアリングの説明を選びます。正解はウで、意図した回答を得るために、AIへの質問・指示・情報・出力形式を工夫することです。
- 令和7年度 問28:生成AIの説明を選びます。正解はエで、自然言語の指示に従い、事前に学習したデータを基に新しいコンテンツを生成する、という説明です。
令和7年度 問28の不正解には、「一切の学習を必要とせずに」生成する、という説明があります。生成AIは、事前の学習があって初めて動きます。
生成AIは、大量の本を読んだ作文の名人のようなものです。文章はうまいのですが、知らない事実も、もっともらしく書いてしまいます。これがハルシネーションです。
- 生成AIのもっともらしい誤りを表す用語(令和7年度 問10)
- 生成AIに関する記述(令和7年度 問28)
- 様々な用途に適応できる基盤モデル(令和7年度 問80)
- 生成AIの生成物と著作権者の許諾(令和8年度 問1)
- プロンプトエンジニアリングの説明(令和8年度 問98)
IPAのサンプル問題3問のうち、2問の論点が本試験に出た
IPAが2023年8月31日に公開した生成AIのサンプル問題3問のうち、2問と同じ論点が令和7年度に出ています。
| サンプル問題 | 正解 | 同じ論点の公開問題 |
|---|---|---|
| 問1 システム開発に生成AIを活用する事例 | ウ(対象業務や出力形式を自然言語で指示し、E-R図や処理フローの図を描くコードを出力させる) | 600問の中に同じ形の問題はない |
| 問2 事実と異なる情報をもっともらしく生成する事象 | エ ハルシネーション | 令和7年度 問10 |
| 問3 基盤モデルの特徴 | ウ(広範囲かつ大量のデータで事前学習し、微調整で幅広い用途に適応できる) | 令和7年度 問80 |
IPAは、問3の出題趣旨で、生成AIは「その多くが基盤モデルを基にして実現されている」と書いています。問2の出題趣旨は、生成AIが作り出した「もっともらしいウソ」が社会を混乱させるリスクを挙げています。
出典:ITパスポート試験 生成AIに関するサンプル問題(IPA・PDF)
サンプル問題の問2では、アノテーションが不正解の選択肢に入っています。令和7年度 問80でも、アノテーションは不正解でした。一方、令和8年度 問16では、正解となる情報を付ける作業として、アノテーションが正解です。
令和8年度 問1:生成AIで作った曲と著作権者の許諾
正解はア(aだけ)で、似せて作った曲をインターネットで公開した場合だけ、許諾が要る可能性があります。
問1 生成AIを用いた生成物の取扱いに関して,既存の著作物の著作権者から許諾を得ることが必要となる可能性のあるものだけを,全て挙げたものはどれか。
a 好みのアーティストの楽曲に似た音楽が得られるように生成AIを用いて楽曲を生成し,その楽曲をインターネット上にアップロードし,無料で公開した。
b 好みのアーティストの楽曲に似た音楽が得られるように生成AIを用いて楽曲を生成し,その楽曲を自分のPC上に保管し,個人で視聴した。
c 生成AIで音楽を生成したところ,偶然好みのアーティストの楽曲に似た音楽が生成できたので,自分のPC上に保管し,個人で視聴した。
ア a イ a, b ウ a, b, c エ b, c
出典:令和8年度 ITパスポート試験 問1(独立行政法人情報処理推進機構)
分かれ目は、「似せたかどうか」より「どう使ったか」です。
- a:インターネットで公開すること(公衆送信)は、著作者が専有する権利です(著作権法23条1項)。似せて作った曲を公開すると、許諾が要る可能性があります。
- b:個人で楽しむための複製は、私的使用として原則、許諾なしにできます(30条1項。違法にアップロードされたと知りながらのダウンロードなど、各号の例外を除きます)。似せる目的で作っても、PCに保管して個人で聴くだけなら、この範囲です。
- c:bと同じく、PCに保管して個人で聴くだけです。
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)は、侵害になる要件を整理しています。既存の著作物との類似性と依拠性(それを元にしたこと)が両方認められると、侵害になりうるという整理です。生成・利用の段階でも、私的使用の複製(30条1項)が使える場合があるとしています。
自分の部屋で好きな歌を歌うのは自由でも、舞台で歌うなら許しが要る、という区別に近いと考えると覚えやすくなります。
AIの学習のための複製は、別の条文(30条の4、思想や感情の享受を目的としない利用)の話です。シラバスも、学習に使うデータと生成したデータを分けて、著作権の観点で留意するよう書いています。
参考:e-Gov 法令検索『著作権法』(2026-10-30確認)、文化庁『AIと著作権に関する考え方について』(文化審議会著作権分科会法制度小委員会)
AIの原則と留意事項:毎年1問ずつ、5問
人間中心のAI社会原則と、AIを使う上での留意事項の問題は、令和4〜8年度に毎年1問ずつ出ています。5問のうち4問は、正しいものを「全て」選ぶ形でした。
- 令和4年度 問21:人間中心のAI社会原則の3つの価値を選びます。正解はイで、持続性ある社会、多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会、人間の尊厳が尊重される社会です。「人間があらゆる労働から解放される社会」は入りません。
- 令和5年度 問34:社会が留意すべき事項を選びます。正解はウ(bだけ)で、AIの利用は基本的人権を侵すものであってはならない、という記述です。
- 令和6年度 問12:7つのAI社会原則のうち、イノベーションの原則に当たる記述を選びます。正解はアです。
- 令和7年度 問8:学習データのバイアスを減らし、品質を確保する対策を選びます。正解はイで、4つの記述が全て適切です。
- 令和8年度 問17:AIを使う上で留意すべき事項を選びます。正解はイで、危害・差別・プライバシー侵害の3つが全て適切です。
令和7・8年度の2問は、記述が全部正しい問題でした。「どれか1つは誤り」と決めつけずに、1つずつ確かめます。
留意事項の用語例には、説明可能なAI(XAI)やヒューマンインザループ(HITL)などがあります。
- 人間中心のAI社会原則の三つの価値(令和4年度 問21)
- 人間中心のAI社会原則で社会が留意すべき事項(令和5年度 問34)
- AI社会原則のイノベーションの原則(令和6年度 問12)
- バイアスの低減とデータの品質を確保する対策(令和7年度 問8)
- AIを利活用する上で留意すべき事項(令和8年度 問17)
生成AIの土台になるAIのしくみと活用:21問
生成AIの土台になるAIのしくみの問題は13問、AIの活用事例や種類の問題は8問ありました。
しくみの13問で多いのは、ニューラルネットワークとディープラーニングの7問です。バックプロパゲーション(重みを調整して誤差を小さくする)や活性化関数も出ています。
- 教師あり学習:正解を付けたデータで学ぶ方法です。事例を選ぶ問題(令和4年度 問24)と、分類・回帰・クラスタリングの組合せ(令和6年度 問65)が出ています。
- 計算:AIの判定結果や誤り率の変化を計算する問題が2問あります(令和5年度 問76、令和7年度 問85)。
活用の8問は、自然言語処理の事例、コールセンターでのAIの活用、PoC(概念実証)などです。令和8年度 問27は、特定の課題だけを判断できる「弱いAI」の説明を選ぶ問題でした。
基盤モデルは、大量のデータで「事前学習」し、「ファインチューニング」で用途に合わせる仕組みです。どちらもシラバスのAIの技術の用語例で、しくみの問題を解いておくと、生成AIの問題の選択肢も読みやすくなります。
AIの問題がストラテジ系とテクノロジ系のどちらに入るかは、3分野の違いで整理しています。
- 教師あり学習で正解となる情報を付与する作業(令和8年度 問16)
- バックプロパゲーションで行われていること(令和8年度 問82)
- 教師あり学習・教師なし学習と分類・回帰・クラスタリング(令和6年度 問65)
- 教師あり学習の事例(令和4年度 問24)
- 画像から特徴を自動的に抽出するAIの技術(令和7年度 問86)
- ニューラルネットワークの活性化関数(令和5年度 問91)
- 自然言語処理が利用されている事例(令和5年度 問14)
- 「弱いAI」の記述(令和8年度 問27)
生成AIの5問から解いて、用語と留意事項を固めよう
ITパスポートの公開問題で生成AIを扱うのは5問で、令和7年度から出ています。ハルシネーション・基盤モデル・プロンプトエンジニアリングの意味と、生成物の著作権が問われました。AIの原則と留意事項も毎年1問ずつ出ています。まず5問を解いて、用語の意味と正解の理由を確かめましょう。
よくある質問
QIPAの「生成AIに関するサンプル問題」は、勉強に使ってよいですか?
IPAは、教育目的など情報処理技術者試験制度の意義に反しない限り、問題集やテキストに使う際の使用許諾と使用料は要らないとしています(法令に特別の定めがある場合を除く)。使うときは「出典:ITパスポート試験 生成AIに関するサンプル問題」と明記するよう求めています。解答例と出題趣旨も同じPDFに載っています。
Q生成AIに過去問の答えを聞いて勉強してもよいですか?
シラバス Ver.6.5 は、AIの出力に誤った情報・古い情報・学習元が不明な情報が含まれる可能性と、出力に人間が関わる必要性を、AIを利活用する上での留意事項に挙げています。生成AIの答えは、IPAが公開している解答例と照らし合わせてから覚えると、誤りをそのまま覚えずにすみます。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月30日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

