ITパスポートの公開問題600問(令和3〜8年度)から法務の49問を、シラバスの項目と法律ごとに数えました。不正アクセス禁止法は4問とも「規制される行為を全て選ぶ」形、労働関連は派遣と請負の違いなど、法律ごとの問われ方と、名前が一度も出ない法律を整理します。
目次
結論:ITパスポートの公開問題600問(令和3〜8年度)で、法務の問題は49問です。多いのは知的財産権15問とセキュリティ関連法規14問で、法律名と「規制される行為」の組合せを選ぶ形が中心です。
ITパスポートの法務は何が出る?公開問題600問で49問
公開問題600問のうち、法務の問題は49問で、年度ごとに7〜10問ありました。
集計は、合格ナビの問題データ(IPA公開問題 令和3〜8年度・600問・集計日 2026-10-30)です。シラバス Ver.6.5 の中分類「法務」の項目4〜8にそって、1問ずつ読んで分けました。
公開問題は、各年度に実際に出た問題のうち100問です(IPA)。CBT方式の試験全体での出題数ではありません。
| シラバスの項目 | 問題数 | 出た法律・論点(問題数) |
|---|---|---|
| 4. 知的財産権 | 15 | 著作権法5、特許法3、不正競争防止法3、ソフトウェアライセンス2、実用新案法1、商標法1、パブリシティ権1 |
| 5. セキュリティ関連法規 | 14 | 不正アクセス禁止法4、個人情報保護法4、サイバーセキュリティ基本法3、マイナンバー法1、GDPR1、特定電子メール法1 |
| 6. 労働関連・取引関連法規 | 7 | 労働者派遣3、請負2、守秘義務契約(NDA)1、資金決済法1 |
| 7. その他の法律・ガイドライン・情報倫理 | 7 | コーポレートガバナンス3、コンプライアンス・情報倫理2、情報公開法1、プロバイダ責任制限法1 |
| 8. 標準化関連 | 6 | 国際標準化団体(ITUなど)、JANコードとQRコード、フォーラム標準、ISO 9001、ISO/IEC 27017、ISO 26000 が1問ずつ |
| 合計 | 49 | 年度別:令和3年度8、令和4年度10、令和5年度8、令和6年度8、令和7年度7、令和8年度8 |
著作権と特許を1問で問う令和4年度 問1は、両方の法律に数えています。
次の問題は、シラバスで別の項目にあるため数えていません。特許ポートフォリオ(技術開発戦略)、マネーロンダリング対策(e-ビジネス)、OSS(テクノロジ系)です。
法務の問題は、法律名と「何を禁止・保護するか」の組合せでほぼ解けます。法律を「鍵」、禁止される行為を「鍵穴」と見て、組で覚えるのが近道です。
参考:IPA ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5、IPA 過去問題(問題冊子・解答例)
不正アクセス禁止法:4問とも「規制される行為を全て選ぶ」
不正アクセス禁止法の4問は、どれも事例の中から、この法律で規制される行為を全て選ぶ形でした。
正解に入ったのは、他人のID・パスワードを「使う」と「渡す」の2種類だけです。
- 使う:他人のIDとパスワードを無断で入力し、ネットワーク越しにサーバに入って情報を見る。不正アクセス行為(2条4項1号)で、3条が禁じています(令和3年度 問30、令和4年度 問9、令和7年度 問16)。
- 渡す:他人のIDとパスワードを、正当な理由なく本人に無断で第三者に教える。5条が禁じています(令和4年度 問9、令和5年度 問15、令和7年度 問16)。
不正解の選択肢に並んだのは、次の行為です。
- 同僚のPCの画面に出ていた情報をのぞき見る(令和3年度 問30)
- 情報の入ったUSBメモリを無断で持ち出す(令和3年度 問30)
- IDとパスワードを無効にするマルウェアを作る(令和4年度 問9、令和7年度 問16)
- 自分のIDとパスワードを同僚に伝える、パスワードのメモをPCに貼る、受け取った文書の閲覧用パスワードを権利のない人に教える(令和5年度 問15)
ID・パスワードは、他人の家の鍵のようなものです。法律が禁じるのは、鍵を勝手に使う(3条)、不正に使うために手に入れる(4条)、正当な理由なく人に渡す(5条)ことです。不正に使うために鍵をしまっておく(6条)、管理者になりすまして鍵を入力させる(7条)ことも禁じています。
罰則は、不正アクセス行為が3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(11条)。4条・6条・7条の違反と、相手の目的を知って行う5条の違反は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(12条)。シラバスも「実際に被害がなくても罰することができる」法律と書いています。
不正アクセス禁止法の罰則:3条違反は3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(11条)。4条・6条・7条違反と、相手の目的を知って行う5条違反は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(12条)。それ以外の5条違反は30万円以下の罰金(13条)。最終確認日:2026-10-30。出典:e-Gov 法令検索 不正アクセス行為の禁止等に関する法律。
- 不正アクセス禁止法で定められている禁止行為(令和3年度 問30)
- 不正アクセス禁止法で規制されている行為(令和4年度 問9)
- パスワードに関連した行為と不正アクセス禁止法(令和5年度 問15)
- 他人のIDとパスワードの取扱いと不正アクセス禁止法(令和7年度 問16)
セキュリティの法律:サイバーセキュリティ基本法と特定電子メール法
サイバーセキュリティ基本法の3問は、どれも「この法律は何を定めた法律か」を問う形でした。
- 令和3年度 問32:国・地方公共団体の責務、国民の努力、基本理念の3つが、全て規定されているものです。条文では、基本理念が3条、国の責務が4条、地方公共団体の責務が5条、国民の努力が9条です。
- 令和6年度 問2:説明文から法律名を選びます。不正解の選択肢は、公益通報者保護法・不正アクセス禁止法・プロバイダ責任制限法でした。
- 令和8年度 問21:立法趣旨を選びます。不正解には、不正アクセス禁止法など、ほかの法律の説明が並びます。
見分ける言葉は「基本理念」と「国及び地方公共団体の責務」です。この法律は、行為を罰する法律ではなく、国の施策の土台を決める法律です。
特定電子メール法の令和7年度 問6は、規制の対象となりうる送信の事例を選ぶ問題で、正解はイです。
- イ:拒否されたら送信をやめればよいと考えて、広告宣伝メールを送った。送ってよい相手は、あらかじめ同意した人など3条1項の各号に限られます。
- エ:長年の取引関係にある相手への広告宣伝メールは、3条1項3号の相手に当たります。
- ウ:事務連絡と料金請求のメールは、広告や宣伝のためのメール(2条2号の特定電子メール)ではありません。
同じ項目の個人情報保護法の4問とマイナンバー法・GDPRは、ITパスポートの個人情報保護法で1問ずつ解いています。
- サイバーセキュリティ基本法に規定されているもの(令和3年度 問32)
- 国の責務などを明らかにした法律はどれか(令和6年度 問2)
- サイバーセキュリティ基本法の立法趣旨(令和8年度 問21)
- 特定電子メール法の規制対象となり得る送信(令和7年度 問6)
参考:e-Gov 法令検索『サイバーセキュリティ基本法』『特定電子メールの送信の適正化等に関する法律』(2026-10-30確認)
労働・取引の法律:派遣と請負の違いが5問
労働関連では、労働者派遣と請負の違いを問う問題が5問ありました。労働基準法の問題は、600問の中にありません。
派遣は「人を借りて、自分で指示する」形です。請負は「仕事の完成を頼み、作業の指示は受けた会社に任せる」形です。
| 比べる点 | 労働者派遣 | 請負 |
|---|---|---|
| 約束すること | 雇っている労働者を、他人の指揮命令の下で働かせる(労働者派遣法2条1号) | 仕事を完成させ、相手がその結果に報酬を払う(民法632条) |
| 雇用関係 | 派遣元との間だけ(令和6年度 問32) | 請負業者とその従業員の間 |
| 作業の指揮命令 | 派遣先が行う | 請負業者が行う。発注者が直接指示すると、いわゆる偽装請負になる(令和7年度 問1) |
- 令和3年度 問12:正解はウ(bだけ)。派遣が終わった後に、派遣先がその人を雇ってもよい、という記述です。派遣労働者の給与を払うのは派遣先ではありません。
- 令和7年度 問1:正解はウ(aとc)。B社の従業員が、A社(発注者)の責任者の指揮命令の下で働く状態が、偽装請負です。働く場所がA社かB社かは関係ありません。
- 令和8年度 問29:特段の取決めがない請負で、正解はウ「引渡しを受けた時点で報酬を支払う義務が生じる」です。民法633条は、物の引渡しを要する場合、報酬は目的物の引渡しと同時に払うと定めています。
令和8年度 問29の不正解エは、完成前なら「損害を賠償することなく」解除できる、としています。民法641条は、完成前の解除を「損害を賠償して」できると定めています。
取引関連では、資金決済法の前払式支払手段(令和5年度 問22)が1問です。正解は、全国で使える使用期限のない商品券です。先に払った金額が記録された証票などが、前払式支払手段です(3条1項1号)。
- 労働者派遣に関する記述(令和3年度 問12)
- 派遣労働者の雇用関係(令和6年度 問32)
- いわゆる偽装請負とみなされる状態(令和7年度 問1)
- 請負契約の注文者と請負業者の権利や義務(令和8年度 問29)
- 請負契約の後に交わされる書類(令和3年度 問33)
- NDAに関する記述(令和4年度 問5)
- 資金決済法における前払式支払手段(令和5年度 問22)
参考:e-Gov 法令検索『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律』『民法』『資金決済に関する法律』(2026-10-30確認)
知的財産権:15問。著作権で守られるものを選ぶ形が多い
知的財産権の15問では、著作権法が5問で最も多く、何が著作権で守られるかを選ぶ形が中心でした。
- 令和3年度 問7:フリーソフトウェアと操作マニュアルは保護の対象で、プログラム言語とアルゴリズムは対象外です(正解ア)。
- 令和7年度 問30:ソースプログラムは対象、通信プロトコルは対象外です(正解エ)。
著作権法10条3項は、プログラムの著作物の保護は、プログラム言語・規約・解法に及ばないと定めています。2問とも、この規定で解けます。
不正競争防止法の3問は、ほかの法律と並べて選ばせる形でした。令和3年度 問9は、似たドメイン名を不正な利益のために使う行為です(2条1項19号)。令和5年度 問29は、コピープロテクトを無効化するプログラムの販売です(2条1項17号)。
ソフトウェアライセンスは2問です。包装を開けると契約が成立するシュリンクラップ契約(令和4年度 問14)と、サブスクリプション(令和6年度 問21)です。
著作権と産業財産権の違い、保護期間、営業秘密と限定提供データは、知的財産権の記事で公開問題とあわせて整理しています。生成AIの生成物と著作権(令和8年度 問1)は、ITパスポートの生成AIで解いています。
- 著作権によって保護の対象と成り得るもの(令和3年度 問7)
- 著作権法による保護の対象になるもの・ならないもの(令和7年度 問30)
- 自社開発した技術の特許化で期待できる効果(令和4年度 問6)
- 不正競争防止法で規制されている行為(令和3年度 問9)
- コピープロテクトを無効化するプログラムの販売を規制する法律(令和5年度 問29)
- シュリンクラップ契約に関する記述(令和4年度 問14)
- 定額・期間で利用できるソフトウェアの提供形態(令和6年度 問21)
参考:e-Gov 法令検索『著作権法』『不正競争防止法』(2026-10-30確認)
ガバナンス・情報公開・標準化:名前が出ない法律もある
コーポレートガバナンスは3問で、そのうち2問は「社外取締役」を選ぶ形でした(令和6年度 問18、令和7年度 問23)。
- 情報公開法(令和4年度 問13):開示を請求できるのは、総務省などの行政機関が作り、持っている行政文書です。条文では、行政機関と行政文書が2条、「何人も」請求できることが3条です。
- プロバイダ責任制限法(令和3年度 問17):正解はアです。電子掲示板に個人情報を載せられ、権利が侵害された事例だけが、対応責任の対象となりえます。
- コンプライアンス(令和5年度 問25):正解はエです。問題となるおそれがあるのは、広告と隠した記事(ステルスマーケティング)と、原産国を誤認させるタグです。シラバスは、ステルスマーケティングを景品表示法が規制すると書いています。
- 標準化は6問です。国際標準化団体(ITUなど)、JANコードとQRコード、フォーラム標準、ISO 9001、ISO/IEC 27017、ISO 26000が1問ずつです。
シラバスに載っていても、600問の問題文と選択肢に名前が一度も出てこない法律があります。労働基準法、取適法(中小受託取引適正化法)、独占禁止法、PL法、景品表示法、環境関連法です。公益通報者保護法(令和6年度 問2)と特定商取引法(令和5年度 問29)は、不正解の選択肢に出ただけでした。
公開問題は試験の一部なので、名前が出ていない法律も出題範囲です。法律名と目的を1行で言えるようにしておきます。
- コーポレートガバナンスを強化した事例(令和6年度 問18)
- コーポレートガバナンスの強化に有効な施策(令和7年度 問23)
- コーポレートガバナンスの説明(令和8年度 問24)
- 情報公開法に基づいて公開請求できる文書(令和4年度 問13)
- プロバイダ責任制限法の対象となり得る事例(令和3年度 問17)
- コンプライアンスで問題となるおそれのある行為(令和5年度 問25)
- 国際標準化を行う機関(令和3年度 問2)
- JANコードとQRコード(令和4年度 問20)
- フォーラム標準に関する記述(令和5年度 問10)
- ISO 26000で定められている企業の社会的責任(令和8年度 問14)
参考:e-Gov 法令検索『行政機関の保有する情報の公開に関する法律』(2026-10-30確認)
法律名と規制される行為を組で覚えて、法務の問題を解こう
ITパスポートの法務は、公開問題600問のうち49問で、知的財産権とセキュリティ関連法規が多く出ています。不正アクセス禁止法は「使う・渡す」、サイバーセキュリティ基本法は「基本理念と責務」が決め手でした。派遣と請負は「誰が指示するか」で分かれます。
法律名と規制される行為を組にして、問題で確かめましょう。
よくある質問
Qプロバイダ責任制限法は、今もありますか?
2025年4月1日施行の改正で、法律の題名が「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(情報流通プラットフォーム対処法)に変わりました(e-Gov 法令検索の改正履歴)。令和3年度 問17は、変わる前の名前で出題されています。シラバス Ver.6.5 は、情報倫理の用語例に情報流通プラットフォーム対処法を挙げています。
Qウイルスを作ると、不正アクセス禁止法の違反になりますか?
不正アクセス禁止法が禁じるのは、他人のID・パスワードの無断入力などの不正アクセス行為(3条)と、その準備や助長にあたる行為(4〜7条)です。ウイルスの作成・提供は、刑法168条の2(不正指令電磁的記録作成等)が3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金としています。シラバスは「不正指令電磁的記録に関する罪(ウイルス作成罪)」を用語例に挙げています。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月30日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。


