問題
次の事例を読んで,問題25 から問題27 までについて答えなさい。
〔事 例〕
会社を定年退職したAさん(60 代後半)は,昨年妻を事故で亡くし,一人息子(30代)と二人で暮らしている。息子は仕事でのトラブル等が重なり,自宅にひきこもって3 年になる。Aさんは息子を一度強く叱責し拒絶されてからは話し掛けることもできなくなり,息子を心配しながら一人で家事を担い,日々を過ごしていた。最近Aさんは生活の中で年齢を感じることが増え,自分に何かあったら息子はどうなるだろうとの思いから,県のホームページで見付けたひきこもり地域支援センター(以下「センター」という。)に電話をかけた。息子とうまく関係を築けず拒絶されているように感じること,3 年もひきこもっている息子の将来についての心配などをAさんはしっかりした口調で話した。電話を受けたB精神保健福祉士はその話を傾聴し,Aさんをねぎらい,センターとして関わりたいことを伝え,情報を整理した。(問題25)センターの対応に安堵したAさんは,B精神保健福祉士とであれば息子のことについて進展を得られるように感じ,時折センターに出向くようになった。そのうちAさんは,いつまでこの状態が続くのか,自分の息子だけなぜこうなのかなど,悩みを具体的に語るようになった。そこでB精神保健福祉士は,センターで行われている「ひきこもり家族の会」(以下「家族会」という。)への参加をAさんに勧めた。(問題26)家族会に参加したAさんは,そこでの学びからセンターに行った感想を添えたメッセージや「名刺の人が話をしてみたいそうだ」とB精神保健福祉士の名刺を添えたセンターのチラシを台所のテーブルに置くようになった。息子はそれらを夜中に台所で読んでいるようだった。 ある日,B精神保健福祉士のところに電話がかかってきた。B精神保健福祉士は,その名前からAさんの息子からであることに気付いた。Aさんの息子は,仕事も続かず,職場でも家でも誰ともうまくやれないこと,学生時代もそうだったことなどを語った。(問題27)
次の記述のうち,この段階でB精神保健福祉士が考えた関わりの内容として,適切なものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第27回精神保健福祉士国家試験(令和6年度)」専門科目 問題27(精神保健福祉の原理)
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
正解は 5
ついに息子本人がB精神保健福祉士に電話をかけてきました。息子は、仕事が続かないこと、誰ともうまくやれないこと、学生時代からそうだったことを語っています。
この段階で最も大切なのは、本人との信頼関係をつくることです。「無知の姿勢」とは、専門家が答えを知っている立場に立たず、本人の体験を本人から教えてもらうという姿勢で、本人が安心して語れる関係を築くのに役立ちます。
外出の設定、当事者の会の立ち上げ、職業評価、SSTは、関係ができていない初めての電話の段階では早すぎます。
なぜ正解か
正解は 5。3年ひきこもっていた息子が自分から電話をかけてきたのは、支援につながる大切な一歩である。この段階の課題は、本人が「話してよかった」と思える関係を築くこと。無知の姿勢(not-knowing)は、援助者が先入観や専門的な解釈を押しつけず、本人こそが自分の人生の専門家であるという前提で、好奇心をもって本人の語りを教えてもらう態度であり、関係形成の段階に合う。
ほかの選択肢
- 1:外出の場面を設定するのは、本人の意向や状態が分からないうちに支援者の目標を押しつけることになる。
- 2:当事者の会の立ち上げは、初めて電話をかけてきた本人に求める段階ではない。
- 3:職業評価は就労支援の段階で行うもの。本人は「仕事が続かない」と語ったが、就労を希望しているかはまだ分からない。
- 4:SST(社会生活技能訓練)は、本人の同意と目標設定を前提にしたプログラム。電話相談の初期に「父親に気持ちを伝えるため」と支援者が目的を決めて行うものではない。
正解の根拠
正解は 5。この問の「この段階」とは、家族支援を通じて間接的に情報を受け取っていた本人が、初めて自分から支援者に連絡してきた場面である。本人が語ったのは、仕事が続かないこと、職場でも家でも誰ともうまくやれないこと、学生時代もそうだったことで、長年の生きづらさの表明といえる。
ここで支援者がまず担うのは、評価や訓練ではなく関係づくりである。無知の姿勢は、ナラティヴ・アプローチの文脈でアンダーソン(Anderson, H.)とグーリシャン(Goolishian, H.)が示した考え方で、援助者は相手の体験について「まだ知らない者」として、相手の言葉で語られる意味を教えてもらう立場に立つ。専門家が先回りして原因や解決策を示すのではなく、本人の語りを尊重することで、ひきこもってきた人が否定されずに話せる場が生まれる。
誤りの肢の論点
- 1 外出場面の設定:外出は結果として目指されることがあっても、本人の意向を確かめる前に支援者が設定すると、本人が再び引きこもるきっかけになりかねない。
- 2 当事者の会の立ち上げ:「社会的な役割」を得ることはリカバリーの一要素だが、初めての電話の段階では本人に過大な負担を求めることになる。ピアの場は、まず参加者として紹介するのが通常の順序。
- 3 職業評価:就労支援の入口として職業評価を行うことはあるが、それは本人が就労を希望し、ある程度の関係と見通しができてからである。本人の「仕事が続かない」という語りを即座に就労支援の課題に置き換えるのは、本人の語りを聴くことにならない。
- 4 SST:SSTは対人場面の技能を練習する認知行動療法的なプログラムで、本人が目標を選び、同意して参加することが前提になる。父親との関係を改善するという目的を支援者が先に決めて訓練を行うのは、この段階に合わない。
関連論点
- 連続事例の流れは、(25) 家族の初回相談で本人の精神的健康を見立てる → (26) 家族の孤立を和らげるために家族会へ → (27) 本人と直接つながったら関係形成を優先、という段階的な支援になっている。各段階で「誰の、何のニーズに応えるか」が変わる点が出題のねらい。
- 無知の姿勢と混同しやすいものに、受容(バイステックの原則の一つ)や傾聴がある。無知の姿勢は、援助者が専門知識による解釈をいったん脇に置き、本人の意味づけを教えてもらうという点に重心がある。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第27回精神保健福祉士国家試験(令和6年度)」専門科目 問題27(精神保健福祉の原理)です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ。原文にふりがなが付いている語は、ふりがなも付けています)。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。精神保健福祉に関する法令・制度は改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:合格ナビ運営事務局(運営者情報)・編集方針。

