問題
Aさん(34 歳,男性)は,仕事上のストレスを感じていた時期に,友人から「気分転換になる」と誘われ,大麻を使用するようになった。次第に使用頻度が増し,仕事への集中困難や睡眠障害がみられるようになった。ある日,大麻所持中に警察官に職務質問を受け,現行犯で逮捕された。その後,保釈され,再使用を防ぐために薬物依存症治療に対応した精神科病院へ入院し,回復を目的としたプログラムに参加することとなった。プログラム開始時の面接でAさんは「大麻は海外で合法の国もあるし,仕事では成果を出している。問題にすることではない」と話した。 次のうち,面接時のAさんの状態として,最も適切なものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第28回精神保健福祉士国家試験(令和7年度)」専門科目 問題3(精神医学と精神医療)
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
正解は 2
Aさんは、大麻の使用が増えて仕事への集中困難や睡眠障害が出ており、逮捕もされています。それでも「海外で合法の国もある」「仕事では成果を出している」と、問題を問題として認めていません。このように、依存症の人が自分の使用の問題や、それによる悪影響を認めようとしない心の動きを否認といいます。依存症の回復支援では、まずこの否認と向き合うことが大切な課題になります。
離脱症状や身体依存は、薬物をやめたときの体の症状のことで、Aさんの発言とは関係しません。グッド・トリップは薬物使用中の快い体験、作話は記憶の穴を作り話で埋める症状で、どちらも当てはまりません。
なぜ正解か
正解は 2。依存症では、使用によって健康・仕事・人間関係・法的な問題が起きていても、本人がそれを認めない、あるいは小さく見積もる「否認」が典型的にみられる。Aさんは、集中困難・睡眠障害・逮捕という明らかな悪影響があるのに、「海外で合法の国もある」と使用を正当化し、「仕事では成果を出している」と問題を打ち消している。これは否認(とくに合理化・矮小化を伴う否認)の表れである。
ほかの選択肢
- 1:離脱症状は、依存している物質を中止・減量したときに出る心身の症状(不安、焦燥、不眠、発汗など)。面接での発言内容を指す用語ではない。
- 3:身体依存は、物質が体にある状態に体が適応し、切れると離脱症状が出る状態。本問はAさんの認識(考え方)を問うており、該当しない。
- 4:グッド・トリップは、薬物使用中に多幸感など快い体験をすることを指す俗語。反対の不快な体験はバッド・トリップと呼ばれる。
- 5:作話は、記憶の欠落を事実でない話で埋めてしまう症状で、コルサコフ症候群などでみられる。Aさんの発言は記憶障害によるものではない。
正解の根拠と位置づけ
正解は 2。依存症では、使用やその害を認めない「否認」が典型的にみられる。否認には、使用そのものを認めない段階から、使用は認めるが問題を認めない段階、問題は認めるが自分で何とかできると考える段階(コントロールできるという思い込み)まで幅がある。Aさんは使用は認めつつ、その害を「合法の国もある」という一般論にすり替え、「仕事の成果」で打ち消しており、問題の否認にあたる。
支援の場では、否認を正面から論破したり責めたりすると、かえって防衛が強まり治療から離れやすい。現在は、本人の中にある「変わりたい気持ち」と「変わりたくない気持ち」の両方(両価性)に寄り添いながら、本人の言葉で変化の理由を引き出す動機づけ面接の考え方が重視される。Aさんが保釈後に自ら治療プログラムに参加していること自体が、変化への動機の手がかりになる。
誤りの肢の掘り下げ
- 1 離脱症状と 3 身体依存:両者はセットで理解する。身体依存がある物質を急にやめると離脱症状が出る。アルコール・ベンゾジアゼピン系薬物・オピオイドは身体依存と離脱症状が目立つ。一方、「やめたくてもやめられない」「欲しくてたまらない(渇望)」という状態は精神依存と呼ばれ、依存の中心はこちらにある。
- 4 グッド・トリップ:幻覚剤などの使用時の主観的体験を指す言葉で、医学的な診断用語ではない。
- 5 作話:記憶障害を背景に、本人は嘘をついている自覚なく事実と異なる話をする。Aさんの発言は記憶の欠落ではなく、問題を認めたくない心理によるもので、区別が問われている。
関連して出る論点
- 刑の一部の執行猶予:薬物使用等の罪を犯した人について、刑の一部を猶予し、社会内で処遇(保護観察下での再乱用防止プログラム等)を行う制度がある。司法と医療・福祉の連携の論点として出題されやすい。
- 回復のための社会資源:依存症専門医療機関、精神保健福祉センターの依存症相談、ダルクなどの民間回復施設、NA(ナルコティクス・アノニマス)などの自助グループを区別して覚えておく。
- 否認は家族にもみられ、家族が問題を肩代わりして結果的に使用を続けさせてしまう関わり(イネイブリング)とあわせて出題される。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第28回精神保健福祉士国家試験(令和7年度)」専門科目 問題3(精神医学と精神医療)です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ。原文にふりがなが付いている語は、ふりがなも付けています)。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。精神保健福祉に関する法令・制度は改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
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