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社労士の懲戒処分とは?戒告・業務停止・失格の違いと処分の流れを条文と厚労省資料で確認

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

社労士の懲戒処分を、社会保険労務士法25条〜25条の5と厚生労働省の運用基準で整理。戒告・業務停止・失格の違い、処分の事由と手続、公表の期間と掲載件数、社労士を選ぶ側が確認できる方法を一次資料で確認します。

目次
  1. 社労士の懲戒処分とは:誰が、どんな処分を行うか
  2. 処分の種類と、処分を受けたあとの効果
  3. 処分の事由:25条の2と25条の3
  4. 処分の流れ:聴聞・通知・官報公告
  5. どのくらい公表されているか:厚労省ページの掲載件数
  6. 厚労省が公表している懲戒の事例(匿名)
  7. 社労士を選ぶ側が確認できる方法
  8. 社労士を目指す人が押さえておくこと
  9. まとめ
  10. 関連記事
結論:社労士に対する懲戒処分は、厚生労働大臣が行う戒告・1年以内の業務の停止・失格処分の3種類です(社会保険労務士法25条)。事由は、故意に事実に反する申請書等を作成した場合などの第25条の2と、法令違反や重大な非行などの第25条の3です。処分の前には聴聞が行われ(戒告・業務の停止は25条の4、失格処分は行政手続法13条1項1号ロ)、処分後は理由を付けた書面で通知し、官報で公告されます(25条の5)。厚生労働省は、運用基準で量定の目安を定め、処分事案を公表しています。2026年9月28日現在の掲載は、失格5件・業務の停止23件・戒告1件です。

条文の出典は e-Gov 法令検索です(2026-10-04 時点の現行条文):社会保険労務士法。処分の運用と公表は、厚生労働省の公表資料(社会保険労務士懲戒処分事案、運用基準)によります。個別の処分を受けた人の氏名や、報道された事件は、この記事では扱いません。

処分の種類内容根拠厚労省の公表期間
戒告戒めの処分社労士法25条1号処分の日から1年
業務の停止1年以内の期間、業務を停止する処分同条2号業務の停止の日から期間終了の翌日より2年
失格処分社会保険労務士の資格を失わせる処分同条3号処分の日から5年
(社労士法人)解散社労士法人に対する解散命令25条の24処分の日から5年

社労士の懲戒処分とは:誰が、どんな処分を行うか

社会保険労務士法第25条は、社労士に対する懲戒処分を「次の三種」と定めています。

  • 戒告
  • 一年以内の業務の停止(開業社労士、その使用人である社労士、社労士法人の社員・使用人である社労士の業務の停止)
  • 失格処分(社会保険労務士の資格を失わせる処分)

処分を行うのは厚生労働大臣です(25条の2、25条の3)。第24条は、厚生労働大臣が、開業社労士または社労士法人の業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときに、報告を求め、立入検査をさせることができると定めています。同条第3項は、この立入検査の権限を「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」としています。

社労士法人に対しては、第25条の24が、法や命令に違反したとき、または運営が著しく不当と認められるときに、戒告・1年以内の業務の全部または一部の停止・解散を命ずることができると定めています。社員である社労士に懲戒の事実があれば、社労士への懲戒処分を併せて行えます(同条第4項)。

処分の種類と、処分を受けたあとの効果

懲戒処分そのものは上の3種類ですが、条文には、処分に関連した効果が定められています。

処分条文に定められている効果
業務の停止業務の停止の処分に違反した者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(32条の2第1項4号)
失格処分失格処分を受けた日から3年を経過しない者は、社労士となる資格を有しない(5条3号)。資格を有しないこととなったときは、連合会が遅滞なく登録を抹消する(14条の10第1項4号)
社労士法人の解散命令・業務停止社労士法人は、25条の24第1項で、戒告・1年以内の業務の全部または一部の停止・解散のいずれかを命じられる

失格処分から3年を経過すると、第5条第3号には当たらなくなります。ただし、社労士として登録を受けられるかどうかは、登録拒否事由(14条の7)などの審査によります。

社労士法第5条は、失格処分のほか、法令違反による罰金以上の刑(4号)、拘禁刑以上の刑(5号)などから3年を経過しない者を、社労士となる資格を有しない者と定めています。懲戒処分とは別に、刑罰を受けた場合にも資格に影響が出る仕組みです。

処分の事由:25条の2と25条の3

懲戒処分の事由は、2つの条文に分かれています。厚生労働省の運用基準(令和2年7月1日以後にした不正行為等に係る懲戒処分から適用)は、条文の事由ごとに、処分の目安を別表で示しています。

事由条文運用基準の目安(別表)
故意に、真正の事実に反して申請書等の作成、事務代理、紛争解決手続代理業務を行ったとき。不正受給・保険料の不正免除などの違反行為を指示し、相談に応じたとき25条の2第1項(15条違反を含む)主導的立場:失格処分又は1年以内の業務停止。従属的立場:1年以内の業務停止
相当の注意を怠り、上の行為をしたとき25条の2第2項被害が重大で回復しがたい:1年以内の業務停止。重大で回復可能:6か月以内の業務停止。軽微で回復しがたい:3か月以内の業務停止又は戒告。軽微で回復可能:戒告
添付書面・付記(17条)に虚偽の記載をしたとき25条の3主導的立場:失格処分又は1年以内の業務停止。従属的立場:1年以内の業務停止
この法律・命令、労働社会保険諸法令に違反したとき25条の3同上(16条違反の場合を除く)
社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行があったとき25条の3(16条違反を含む)罰金以下の刑・依頼者への背信行為・適正な労使関係を損なう行為:1年以内の業務停止又は戒告。それ以外:失格処分・1年以内の業務停止又は戒告

運用基準は、量定を、別表を基準として、次の7つの事項に関する情状を総合的に考慮して決めると定めています。別表の量定が適切でない特段の事情があるときは、法の定める範囲を限度として量定を決められます。

  • ① 社会保険労務士制度に対する信用失墜の程度
  • ② 円滑な労働・社会保険行政に対する侵害の程度
  • ③ 不正行為等の規模
  • ④ 更なる不正行為等の防止の必要性
  • ⑤ 刑事処分の有無及びその内容
  • ⑥ 過去の量定との均衡
  • ⑦ その他の情状

社労士法第15条は、不正に保険給付を受けることや、保険料の賦課・徴収を免れることなどについて、指示をしたり、相談に応じたりすることを禁じています。第16条は、社労士の信用または品位を害する行為を禁じています。

処分の流れ:聴聞・通知・官報公告

処分の手続は、条文では次の順序で定められています。

  • ① 事由の通知:社労士会または連合会は、会員について懲戒の事由があると認めたときに、厚生労働大臣に氏名・事業所の所在地・行為または事実を通知しなければならない(25条の3の2第1項)。何人も、社労士に懲戒の事由があると認めたときに、厚生労働大臣に氏名と行為または事実を通知し、適当な措置をとるべきことを求めることができる(同条第2項)
  • ② 聴聞:戒告または業務の停止の処分をしようとするときは、行政手続法第13条第1項の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない(25条の4第1項)。失格処分は資格を失わせる処分で、行政手続法第13条第1項第1号ロ(名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分)により、もともと聴聞の対象です。聴聞の期日の一週間前までに通知し、期日と場所を公示する(同条第2項)。聴聞の期日の審理は、公開で行う(同条第3項)
  • ③ 処分の通知と公告:処分をしたときは、遅滞なく、その理由を付記した書面で当該社労士に通知するとともに、官報で公告する(25条の5)

社労士法人への処分についても、25条の3の2、25条の4、25条の5が準用されます(25条の24第2項)。

懲戒処分に似た制度との違いは、次のとおりです。

制度内容根拠懲戒処分か
注意勧告社労士会が、所属の社労士や社労士法人が法令に違反するおそれがあると認めるときに、会則の定めるところにより、注意を促し、必要な措置を講ずべきことを勧告する25条の33懲戒処分ではない(種類は25条の3種のみ)
登録の取消し連合会が、資格審査会の議決に基づき、虚偽の告知で登録を受けた場合などに登録を取り消す。取消処分への審査請求は厚生労働大臣に行う14条の9懲戒処分ではない(登録の制度)
刑罰社労士法・労働社会保険諸法令の罰則による刑32条の2など別の制度。運用基準は、懲戒の量定で刑事処分の有無を考慮する(⑤)

どのくらい公表されているか:厚労省ページの掲載件数

厚生労働省は、「懲戒処分の公表の基準」を定めて、懲戒処分の事案を公表しています。公表事項は、氏名(または法人名)、登録番号、事務所の名称と所在地、懲戒処分の年月日、処分の対象となった行為などです。公表の期間は、戒告が処分の日から1年、業務の停止が業務の停止の日から期間終了の翌日より2年、失格処分と解散が処分の日から5年です。

懲戒処分事案の掲載件数:厚生労働省「社会保険労務士懲戒処分事案」の掲載は、令和8年9月28日現在、失格5件(処分年月日 令和5年3月25日〜令和8年8月1日)、業務の停止23件(業務停止期間の始期 令和5年12月15日〜令和8年8月28日)、戒告1件(令和7年10月15日付)。公表の期間は戒告1年、業務の停止は期間終了の翌日より2年、失格処分・解散5年。最終確認日:2026-10-04。出典:厚生労働省 社会保険労務士懲戒処分事案。

この件数は、公表の期間内にある処分の一覧です。公表の期間が処分の種類で異なるため、1年間の処分の件数ではなく、社労士の総数に対する割合としても読めません。この記事では、割合は示していません。

厚労省が公表している懲戒の事例(匿名)

厚生労働省の同じページは、「懲戒処分の事例」を匿名で3つ示しています。

事例行為(ページの記載の要旨)処分
事例1事業主と共謀して、虚偽の事実に基づく申請書を作成して行政機関に提出し、給付金を搾取した失格処分
事例2事業主から交付された保険料を国に納付せず横領し、隠蔽のために虚偽の申告書を作成・提出した失格処分
事例3事業主に対して、労働保険料が安くなるという虚偽の説明をして、労働保険料を搾取した1年の業務の停止

事例の処分の量定が、運用基準の別表の目安(主導的立場なら失格処分または1年以内の業務停止)とどう対応するかは、事案の個別の事情によるため、この記事では扱いません。

社労士を選ぶ側が確認できる方法

社労士や社労士法人に依頼する前に、公的な情報として次のものが確認できます。

  • 厚生労働省「社会保険労務士懲戒処分事案」:失格・業務の停止・戒告の公表事案(公表の期間内のもの)
  • 全国社会保険労務士会連合会「社会保険労務士の懲戒処分等事案」:情報公開規則に基づく公開
  • 官報:厚生労働大臣は、懲戒処分をしたときに官報で公告する(25条の5)
  • 厚生労働大臣への通知:何人も、社労士に懲戒の事由があると認めたときは、厚生労働大臣に通知して適当な措置を求められる(25条の3の2第2項)
  • 全国社会保険労務士会連合会「各都道府県の社労士会を探す」:所属の社労士会の案内

公表の期間は処分の種類で異なります。掲載がないことは、処分を受けていないことの保証ではありません。個別の依頼や紛争の判断は、社会保険労務士会や弁護士などの専門家に確認してください。

社労士を目指す人が押さえておくこと

懲戒に関わる条文は、社労士の仕事の線引きと同じ法律にあります。業務の範囲(第2条)、業務の制限(第27条)、不正行為の指示等の禁止(第15条)、信用失墜行為の禁止(第16条)の位置づけは、社労士の仕事内容で章立てごとに整理しています。登録の要件は社労士になるにはにまとめています。

合格ナビの社労士の論点別問題は全358問です(2026-10-04 時点の集計・すべて当サイトのオリジナル問題で、本試験の出題数ではありません)。このうち、社労士の懲戒処分を直接扱う問題はありません。社労士法の資格・登録・業務区分を扱う問題は2問です。

論点別問題で、資格・登録と業務区分を確認する:

まとめ

  • 社労士の懲戒処分は、厚生労働大臣が行う戒告・1年以内の業務の停止・失格処分の3種類(社労士法25条)。社労士法人には、戒告・1年以内の業務停止・解散(25条の24)
  • 事由は、故意の虚偽申請書等の作成・不正行為の指示(25条の2第1項)、相当の注意を怠ったとき(同第2項)、虚偽記載・法令違反・重大な非行(25条の3)
  • 厚労省の運用基準は、主導的か従属的か、被害の重大さなどで量定の目安を示し、7つの情状を総合的に考慮する
  • 処分の前に聴聞(戒告・業務停止は社労士法25条の4、失格処分は行政手続法13条1項1号ロ)、処分後は理由付記書面で通知し、官報で公告する(25条の4・25条の5)
  • 失格処分から3年を経過しない者は、社労士となる資格を有しない(5条3号)。業務停止の処分に違反すると、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(32条の2第1項4号)
  • 社労士会の注意勧告(25条の33)と登録の取消し(14条の9)は、懲戒処分とは別の制度
  • 厚労省の掲載件数(2026年9月28日現在:失格5・業務の停止23・戒告1)は、公表の期間内の処分の一覧で、年間の件数ではない

※ 本記事は、e-Gov 法令検索の条文、厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公表資料(最終確認日 2026-10-04)をもとに、合格ナビが独自に作成しています。法令・運用基準・公表内容は変更されることがあります。個別の事案の判断は、社会保険労務士・弁護士などの専門家に確認してください。

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よくある質問

Q社労士の懲戒処分は、誰が決めるのですか?

厚生労働大臣です。社会保険労務士法第25条の2・第25条の3は、懲戒処分を行う主体を「厚生労働大臣」と定めています。社会保険労務士会や連合会は、会員に懲戒の事由があると認めたときに、厚生労働大臣に通知する立場です(第25条の3の2第1項)。

Q社労士会の「注意勧告」は、懲戒処分ですか?

懲戒処分ではありません。懲戒処分の種類は、社労士法第25条が戒告・1年以内の業務の停止・失格処分の3つと定めています。注意勧告は、社会保険労務士会が、所属の社労士が法令に違反するおそれがあると認めるときに、会則の定めるところにより注意を促し、必要な措置を講ずべきことを勧告する制度です(第25条の33)。

Q懲戒処分を受けた社労士を調べることはできますか?

厚生労働省が、懲戒処分の事案を一定の期間ホームページで公表しています。全国社会保険労務士会連合会も、情報公開規則に基づき、懲戒処分等に関する事案を公開しています。処分は官報でも公告されます(第25条の5)。公表の期間は処分の種類で異なるため、掲載がないことは、処分を受けていないことの保証ではありません。

Q失格処分を受けると、社労士に戻れますか?

社労士法第5条第3号は、失格処分を受けた者で、その処分を受けた日から3年を経過しないものを、社会保険労務士となる資格を有しない者と定めています。3年を経過すると、この号には当たらなくなります。ただし、登録を受けられるかどうかは、登録拒否事由(第14条の7)などの審査によるため、この記事では扱いません。

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