高額療養費の自己負担限度額を自分で計算する方法を、厚生労働省の令和8年8月〜の表で整理。70歳未満の5区分の式、70歳以上、多数回該当、世帯合算、年間上限、3つの計算例と、試験で問われる条文(健保法115条・施行令41条)まで。
目次
- 70歳未満の自己負担限度額(令和8年8月〜令和9年7月診療分)
- 自分の区分の調べ方:標準報酬月額を確認する
- 計算の手順:4つのステップ
- 計算例1:区分ウで医療費が100万円のとき
- 計算例2:区分イで医療費が150万円のとき
- 世帯合算:複数の人・複数の医療機関の自己負担を足す
- 多数回該当と年間上限
- 70歳以上の自己負担限度額(令和8年8月〜令和9年7月診療分)
- 令和9年8月からの見直し予定(70歳未満)
- 限度額適用認定証とマイナ保険証:窓口の支払いを限度額までにする
- 高額療養費と「高額医療費」の違い:高額介護合算・医療費控除との比較
- 社労士試験との関係:健保法115条と施行令41条・42条
- まとめ:計算に使うのは「区分」と「総医療費」の2つだけ
結論:高額療養費の自己負担限度額は、令和8年8月診療分から改められ、70歳未満の標準報酬月額が28万〜50万円の区分なら「85,800円+(医療費−286,000円)×1%」で計算します(医療費は保険適用の総額・10割分)。医療費100万円なら92,940円で、3割負担の窓口払い30万円との差の207,060円が払い戻しの対象です。直近12か月に3回以上高額療養費に該当すると、4か月目からは44,400円に下がります。
高額療養費の限度額は、令和8年8月に引き上げられ、令和9年8月にも区分が細かくなる予定です。古い記事や古い計算サイトの数字だと、答えが合いません。この記事は、厚生労働省と協会けんぽが公表している現在の表だけを使い、自分の自己負担限度額を手で計算できるようにしました。個人の事情に応じた判断はできないため、実際の金額は加入している保険者に確認してください。なお、検索では「シュミレーション」と入力されることが多いですが、正しい表記は「シミュレーション」です。
70歳未満の自己負担限度額(令和8年8月〜令和9年7月診療分)
まず、現在の70歳未満の表です。「医療費」は保険適用の診療費用の総額(10割)、〈 〉内は多数回該当の額です。
| 区分 | 標準報酬月額 | 年収の目安(厚生労働省) | 自己負担限度額(月) | 多数回該当 |
|---|---|---|---|---|
| ア | 83万円以上 | 約1,160万円〜 | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 140,100円 |
| イ | 53万〜79万円 | 約770万〜約1,160万円 | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 93,000円 |
| ウ | 28万〜50万円 | 約370万〜約770万円 | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 44,400円 |
| エ | 26万円以下 | 〜約370万円 | 61,500円 | 44,400円 |
| オ | 住民税非課税 | — | 36,900円 | 24,600円 |
高額療養費の自己負担限度額・70歳未満:令和8年8月〜令和9年7月診療分の額。厚生労働省は令和9年8月から区分を細分化する予定と公表している。最終確認日:2026-10-04。出典:厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ(更新日 2026年7月31日)、厚生労働省 高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)、協会けんぽ 高額療養費。
令和8年7月診療分までの式(たとえば区分ウの「80,100円+(医療費−267,000円)×1%」)は、すでに使われなくなっています。厚生労働省のページは、令和8年8月からの制度の例として「70歳未満・年収約370万円〜約510万円の方が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円まで抑えられる」と説明しています。後の計算例1の答え(92,940円)は、この説明と一致します。
区分の名前(ア〜オ)は、協会けんぽの案内の呼び方です。国民健康保険など、加入先によっては所得の測り方(標準報酬月額ではなく旧ただし書き所得など)が異なります。厚生労働省の表には、国民健康保険の区分(旧ただし書き所得)も載っていて、70歳未満では、区分アが901万円超、区分イが600万〜901万円、区分ウが210万〜600万円、区分エが210万円以下です。自分がどの区分かは、加入先の保険者に確認してください。
自分の区分の調べ方:標準報酬月額を確認する
会社の健康保険(協会けんぽなど)に入っている人は、給与の額そのものではなく「標準報酬月額」で区分が決まります。標準報酬月額は、毎月の報酬を区切りのよい額に当てはめた金額で、協会けんぽの保険料額表に、報酬月額の範囲との対応が載っています。区分の境目に関係する行だけを抜き出します。
| 標準報酬月額 | 報酬月額の範囲 | 区分 |
|---|---|---|
| 26万円以下 | 270,000円未満 | エ |
| 28万円 | 270,000円以上290,000円未満 | ウの下端 |
| 50万円 | 485,000円以上515,000円未満 | ウの上端 |
| 53万円 | 515,000円以上545,000円未満 | イの下端 |
| 79万円 | 770,000円以上810,000円未満 | イの上端 |
| 83万円 | 810,000円以上855,000円未満(83万円以上はア) | ア |
標準報酬月額と報酬月額の範囲:令和8年度の保険料額表(令和8年3月分〜)。最終確認日:2026-10-04。出典:協会けんぽ 令和8年度保険料額表(東京支部)。
自分の標準報酬月額は、会社から受け取る標準報酬の通知や、保険者の案内で確認できます。この表は目安の対応を示すもので、標準報酬月額が実際にどう決まるか(定時決定・随時改定など)は、加入先の案内で確認してください。
計算の手順:4つのステップ
- ① 保険適用の診療費用の総額(10割分)を求める。窓口で3割払った人は、窓口の額÷0.3で割り戻す(食事代・差額ベッド代など保険外のものは入れない)
- ② 自分の区分を表から選び、式に医療費を入れて自己負担限度額を出す
- ③ 窓口で払った額(自己負担額)から自己負担限度額を引く。残りが高額療養費として払い戻される額
- ④ 直近12か月に3回以上高額療養費に該当している場合は、4か月目からは「多数回該当」の額を限度額にする
式の仕組みは次のとおりです。「医療費が基準額(286,000円など)に満たないとき」は、基準額を医療費とみなして計算します(施行令42条1項)。区分ウなら、3割負担で窓口に払う額が85,800円になる医療費が286,000円(286,000円×0.3=85,800円)です。つまり、この境目より医療費が低いなら、窓口で払った額が限度額を超えないため、高額療養費は出ません。区分イの境目は597,000円(×0.3=179,100円)、区分アの境目は901,000円(×0.3=270,300円)で、どの区分も同じ関係になっています。
計算例1:区分ウで医療費が100万円のとき
条件:標準報酬月額が28万〜50万円(区分ウ)、3割負担、1か月の保険適用の医療費が1,000,000円(10割分)。
- ① 窓口で払う額:1,000,000円×3割=300,000円
- ② 自己負担限度額:85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1%=85,800円+7,140円=92,940円
- ③ 払い戻される高額療養費:300,000円−92,940円=207,060円
- ④ 検算:(1,000,000−286,000)×0.01=7,140円。厚生労働省の「約9.3万円」の例とも一致
直近12か月に3回以上高額療養費に該当していて、この月が4か月目以降なら、限度額は44,400円です。払い戻しは300,000円−44,400円=255,600円になります。
計算例2:区分イで医療費が150万円のとき
条件:標準報酬月額が53万〜79万円(区分イ)、3割負担、医療費が1,500,000円。
- ① 窓口で払う額:1,500,000円×3割=450,000円
- ② 自己負担限度額:179,100円+(1,500,000円−597,000円)×1%=179,100円+9,030円=188,130円
- ③ 払い戻される高額療養費:450,000円−188,130円=261,870円
- ④ 検算:限度額が窓口払い(450,000円)より小さいので払い戻しが出る。境目の医療費597,000円なら、窓口払い179,100円がちょうど基準額に等しい
世帯合算:複数の人・複数の医療機関の自己負担を足す
同じ月に、被保険者と被扶養者が別々に受診したり、1人が複数の医療機関にかかったりしたとき、自己負担額を世帯で合算し、合算額が限度額を超えた分が払い戻されます。協会けんぽの案内は、ここでいう世帯を「被保険者とその被扶養者」としています。合算には次の決まりがあります。
- 自己負担額は、医療機関ごとに分けて数える。同じ医療機関でも「医科入院」「医科外来」「歯科入院」「歯科外来」は別に数える
- 調剤薬局の自己負担は、処方せんを出した医療機関の分に合算する
- 70歳未満の人は、1つの医療機関(上の区分ごと)の自己負担額が21,000円以上のものだけを合算する。70歳以上の人は全部を合算する
70歳未満の「21,000円以上」は、施行令41条1項が「二万千円…以上のもの」に限ると定めています(70歳に達する日の属する月以前の療養について)。
計算例3:区分ウの世帯で、2人の自己負担を合算する
条件:被保険者Aは区分ウ。同じ月に、Aが入院(医療費200,000円・窓口60,000円)、配偶者Bが外来(医療費200,000円・窓口60,000円)、子Cが外来(医療費50,000円・窓口15,000円)。すべて3割負担、同じ保険者。
- ① Cの15,000円は21,000円未満なので合算に入れない。Aの60,000円とBの60,000円は21,000円以上なので合算する
- ② 合算額:60,000円+60,000円=120,000円。合算対象の医療費は200,000円+200,000円=400,000円
- ③ 世帯の自己負担限度額:85,800円+(400,000円−286,000円)×1%=85,800円+1,140円=86,940円
- ④ 払い戻し:120,000円−86,940円=33,060円
- ⑤ 検算:Aだけ、Bだけだと、どちらも窓口払い60,000円が限度額85,800円を超えないので、1人では払い戻しがゼロ。合算したから出る払い戻しです
この計算は、同じ区分の人どうしの単純な例です。年齢や区分が混じる世帯の合算の順序は、施行令41条に細かい規定があるため、実際の金額は保険者が計算します。
多数回該当と年間上限
多数回該当は、直近12か月の間に高額療養費に該当した月が3か月以上あるとき、4か月目以降の限度額がさらに下がる仕組みです(厚生労働省)。令和8年8月の見直しでも、多数回該当の額は据え置かれました。協会けんぽの案内には、次の注意があります。
- 多数回該当は、同じ保険者での療養に適用される。加入先の保険者が変わると、月数は通算されない
- 同じ被保険者で適用される。退職して被保険者から被扶養者に変わった場合などは、月数が通算される
- 70歳以上75歳未満の人が、通院(外来)の限度額によって高額療養費を受けた回数は、数えない
令和8年8月からは、新たに「年間上限」ができました。月ごとの自己負担額が積み上がっても、年間(8月から翌年7月)の上限額に達した後は、それ以上の医療費は保険者から還付を受けられます(厚生労働省)。70歳未満の年間上限は、区分ア168万円、区分イ111万円、区分ウ53万円、区分エ53万円、区分オ29万円です。区分エのうち標準報酬月額が15万円以下であることが確認できた人は、年間上限41万円を適用し、令和9年8月以降に払い戻される、と協会けんぽは案内しています。年間上限の申請の開始は令和9年8月です。
年間上限・申請開始:年間上限は令和8年8月から。年間上限額の高額療養費の申請は令和9年8月開始(協会けんぽの案内)。最終確認日:2026-10-04。出典:協会けんぽ 高額療養費、厚生労働省 高額療養費制度の見直しについて。
70歳以上の自己負担限度額(令和8年8月〜令和9年7月診療分)
70歳以上は、外来(個人ごと)の上限と、世帯ごと(入院を含む)の上限の2段階があります。現役並み所得者(標準報酬月額が28万円以上)は、70歳未満の区分ア〜ウと同じ式です。
| 区分 | 外来(個人ごと) | 世帯ごと(入院を含む) | 多数回該当 | 年間上限 |
|---|---|---|---|---|
| 現役並みⅢ(標準報酬月額が83万円以上) | — | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 140,100円 | 168万円 |
| 現役並みⅡ(53万〜79万円) | — | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 93,000円 | 111万円 |
| 現役並みⅠ(28万〜50万円) | — | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 44,400円 | 53万円 |
| 一般(標準報酬月額が26万円以下) | 22,000円(年間上限216,000円) | 61,500円 | 44,400円 | 53万円 |
| 低所得Ⅱ | 11,000円(年間上限96,000円) | 25,700円 | 24,600円 | 29万円 |
| 低所得Ⅰ | 8,000円 | 15,700円 | — | 18万円 |
高額療養費の自己負担限度額・70歳以上:令和8年8月〜令和9年7月診療分の額。外来の上限の対象年齢は、政府が今後検討するとされている。最終確認日:2026-10-04。出典:厚生労働省 高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)、協会けんぽ 高額療養費。
70歳以上は、外来と世帯の2つの上限が組み合わさるため、手計算では間違えやすい区分です。実際の計算は、加入している保険者に確認してください。
令和9年8月からの見直し予定(70歳未満)
厚生労働省は、令和9年8月から応能負担の考え方で所得区分を細かくする(現在の限度額から著しく増えないよう配慮する)と公表しています。厚生労働省の資料(高額療養費制度の見直しについて)に載っている、令和9年8月〜の70歳未満の予定の額は次のとおりです(標準報酬月額・年収の目安・多数回該当)。令和9年8月の額は、予定として扱います。
| 標準報酬月額(年収の目安) | 自己負担限度額(月) | 多数回該当 |
|---|---|---|
| 127万円以上(約1,650万円〜) | 342,000円+(医療費−1,140,000円)×1% | 140,100円 |
| 103万〜121万円(約1,410万〜約1,650万円) | 303,000円+(医療費−1,010,000円)×1% | 140,100円 |
| 83万〜98万円(約1,160万〜約1,410万円) | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 140,100円 |
| 71万〜79万円(約1,040万〜約1,160万円) | 209,400円+(医療費−698,000円)×1% | 93,000円 |
| 62万〜68万円(約950万〜約1,040万円) | 194,400円+(医療費−648,000円)×1% | 93,000円 |
| 53万〜59万円(約770万〜約950万円) | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 93,000円 |
| 44万〜50万円(約650万〜約770万円) | 110,400円+(医療費−368,000円)×1% | 44,400円 |
| 36万〜41万円(約510万〜約650万円) | 98,100円+(医療費−327,000円)×1% | 44,400円 |
| 28万〜34万円(約370万〜約510万円) | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 44,400円 |
| 20万〜26万円(約260万〜約370万円) | 69,600円 | 44,400円 |
| 16万〜19万円(約200万〜約260万円) | 65,400円 | 44,400円 |
| 15万円以下(〜約200万円) | 61,500円 | 34,500円 |
| 住民税非課税 | 36,900円 | 24,600円 |
令和9年8月からの見直し予定:令和9年8月から所得区分を細分化し、標準報酬月額が15万円以下の区分の多数回該当を34,500円に下げる予定(厚生労働省の資料)。最終確認日:2026-10-04。出典:厚生労働省 高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)。令和9年7月診療分までは、前の章の表を使います。
この表を見ると、式のある9つの区分では「基準額=境目の医療費×0.3」の関係(たとえば209,400円=698,000円×0.3)が保たれていることが分かります。計算の考え方は令和8年8月の式と変わらず、区分と数字が細かくなるだけです。
限度額適用認定証とマイナ保険証:窓口の支払いを限度額までにする
高額な医療が事前に分かっているときは、窓口で払う額を最初から自己負担限度額までに抑える方法があります。厚生労働省は、この取扱いを受けるには、マイナ保険証を利用するか、事前に「限度額適用認定証」を入手する必要があると案内しています。交付の手続きは、加入している健康保険組合、協会けんぽ、市町村などに問い合わせます。
協会けんぽの案内は、次のように説明しています。
- マイナ保険証を利用すれば、オンライン資格確認により限度額の情報が医療機関に提供される。この場合、限度額適用認定証の申請は不要
- オンライン資格確認を導入していない医療機関で受診する場合などは、あらかじめ申請して限度額適用認定証を提出する
- 被保険者が低所得者に当たる場合は、マイナ保険証を使うときでも「限度額適用・標準負担額減額認定」の申請が必要
- 限度額適用認定証の有効期間は、申請書を受け付けた日の属する月の1日から最長1年の範囲
細かい扱い(70歳以上の区分ごとの提示方法など)は、協会けんぽの案内に表があります。加入先が違う場合は、その保険者の案内で確認してください。
高額療養費と「高額医療費」の違い:高額介護合算・医療費控除との比較
「高額医療費」という言葉は、医療費が高額になったときに自己負担を抑える「高額療養費」のことを指して使われる場合があります。制度の正式な名称は「高額療養費」で、健康保険法115条の見出しも「高額療養費」です。健康保険法の現行条文(e-Gov 法令検索で確認、2026-10-04 時点)には、「高額医療費」という語は出てきません。名前が似ているために混同されやすい制度は、次の3つです。
- 高額医療費貸付制度:協会けんぽが案内している貸付制度。高額療養費の支給見込額の8割相当額を、無利子で貸し付ける。返済は、協会けんぽに支給申請した高額療養費の給付金を返済に充てる(協会けんぽ)
- 高額介護合算療養費:医療保険と介護保険の自己負担額を合わせて、基準額を超えたときに支給される。健康保険法115条の2に定められている
- 医療費控除:1年間に払った医療費が一定額を超えたとき、確定申告で所得税の控除を受ける。税金の制度で、健康保険の給付ではない(国税庁)
| 制度 | 何をする制度か | 期間の単位 | 申請・手続きの先 |
|---|---|---|---|
| 高額療養費 | 1か月の自己負担が限度額を超えた分を払い戻す(健康保険法115条) | 1か月(暦月)ごと | 加入している保険者(協会けんぽなら支部) |
| 高額医療費貸付制度 | 高額療養費が支給されるまでの間、支給見込額の8割を無利子で貸し付ける(協会けんぽの案内) | 申請ごと | 協会けんぽの支部 |
| 高額介護合算療養費 | 医療と介護の自己負担の合計が基準額を超えた分を支給する(健康保険法115条の2) | 8月から翌年7月までの1年間 | 加入している保険者 |
| 医療費控除 | 払った医療費が一定額を超えたとき、所得税の所得控除を受ける(国税庁) | 1月1日から12月31日までの1年間 | 所轄の税務署(確定申告) |
高額介護合算療養費・医療費控除の条件:高額介護合算は、毎年8月から1年間の医療と介護の自己負担を合算し、基準額を超えた額が501円以上の場合に支給(医療と介護のどちらかの自己負担が0円なら支給しない)。医療費控除は、最高200万円で、実際に払った医療費の合計額から保険金などで補てんされる額と10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を引いて計算する。最終確認日:2026-10-04。出典:協会けんぽ 高額介護合算、協会けんぽ 高額療養費(高額医療費貸付制度)、国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)(令和8年4月1日現在法令等)。
高額介護合算療養費は、高額療養費の「次の段」の制度
高額介護合算は、高額療養費が支給された後に残る自己負担と、介護保険の自己負担(高額介護サービス費などが支給される場合はその額を除く)を合わせて見る制度です。協会けんぽの案内には、次の点があります。
- 医療保険の自己負担額は、70歳未満の場合、医療機関別・医科歯科別・入院通院別に21,000円以上あるものが合算の対象
- 入院時の食費負担や差額ベッド代などは含まない
- 基準額は所得区分ごとに決まっていて、協会けんぽの案内ページに表がある
健康保険法115条の2は、一部負担金等の額(高額療養費が支給される場合はその額を控除した額)と介護サービス利用者負担額などの合計額が「著しく高額であるとき」に、高額介護合算療養費を支給すると定めています。
医療費控除との関係:高額療養費で戻った額は差し引く
国税庁の説明では、医療費控除の金額を計算するとき、保険金などで補てんされる金額を実際に払った医療費から差し引きます。その例として、健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などが挙げられています。つまり、高額療養費で払い戻された分を、医療費控除で重ねて控除することはできません。
計算例1(区分ウ、医療費100万円、窓口で30万円)の続きで確かめます。条件:医療費控除の計算は、その年に他の医療費がなく、総所得金額等が200万円以上の人とします。
- ① 実際に払った医療費:300,000円
- ② 補てんされる金額(高額療養費):207,060円
- ③ 差し引き:300,000円−207,060円=92,940円。これは、限度額92,940円と同じ額
- ④ 10万円を引く:92,940円−100,000円=−7,060円。マイナスなので、医療費控除の対象になる金額は0円
同じ年に、他の医療費(保険が適用される診療の自己負担)をさらに80,000円払った場合は、次のとおりです。
- ① 払った医療費の合計:300,000円+80,000円=380,000円
- ② 補てんされる金額:207,060円
- ③ 差し引き:380,000円−207,060円=172,940円
- ④ 10万円を引く:172,940円−100,000円=72,940円。医療費控除の対象になる金額
- ⑤ 検算:92,940円(高額療養費の後の自己負担)+80,000円−100,000円=72,940円で一致する
この例は、制度の関係を示す当サイトの計算例です。医療費控除の対象になる医療費の範囲(保険外の費用や交通費など)や、最終的な税額は、国税庁の案内や税務署で確認してください。
高額医療費貸付制度は、払い戻しを待つ間の資金繰り
協会けんぽの高額医療費貸付制度は、払い戻される高額療養費が手元に来るまでの間の貸付です。計算例1で払い戻しの見込みが207,060円なら、貸付の額は支給見込額の8割で、207,060円×0.8=165,648円になります(この例は、案内の「8割相当額」を当てはめた当サイトの計算で、貸付の条件や実際の額は協会けんぽの案内を確認してください)。限度額適用認定証かマイナ保険証で、窓口の支払いを最初から限度額までに抑えられる場合は、払い戻しを待つ間の資金の問題そのものが小さくなります。
社労士試験との関係:健保法115条と施行令41条・42条
高額療養費は、社労士試験の健康保険法で問われる論点です。条文は、次の3つを押さえます。
- 健康保険法115条(高額療養費):1項は、一部負担金等の額が「著しく高額であるとき」に高額療養費を支給すると定める。2項は、支給要件や支給額などを、家計への影響、とりわけ長期にわたって継続的に療養を受ける者の家計への影響と療養に要した費用の額を考慮して、政令で定めるとする
- 健康保険法施行令41条(月間の高額療養費の支給要件及び支給額):同一の月に、それぞれ一の病院等から受けた療養に係る一部負担金等を合算し、高額療養費算定基準額を超えた分を支給する。70歳に達する日の属する月以前の療養は「二万千円」以上のものに限って合算する。41条の2は、年間の高額療養費の支給要件・支給額
- 健康保険法施行令42条(高額療養費算定基準額):標準報酬月額による区分と、85,800円など区分ごとの額、「当該療養のあった月以前の十二月以内に既に高額療養費…が支給されている月数が三月以上ある場合」の多数回該当の額を定める
条文:健康保険法115条、健康保険法施行令41条・42条。条文は e-Gov 法令検索で確認(2026-10-04 時点の現行条文)。最終確認日:2026-10-04。出典:e-Gov法令検索 健康保険法、e-Gov法令検索 健康保険法施行令。
試験では、数字(21,000円・3か月・12か月・区分ごとの額)を取り違えさせる出題が考えられます。ただし、試験の法令基準日は年ごとに決まり、受験する年の基準日の条文が答えの基準になります。令和8年8月の改正と基準日の関係は、令和8年度の協会けんぽの改正を条文で整理した記事にまとめています。受験する年の基準日は、試験の案内で確認してください。
最初の問題として使える問題(論点別問題・当サイトの自作問題):
試験全体の進め方は社労士試験の合格ガイド、学習計画は独学ロードマップにあります。
まとめ:計算に使うのは「区分」と「総医療費」の2つだけ
- 70歳未満は、標準報酬月額で5区分に分け、区分ごとの式に総医療費(10割分)を入れる。区分ウは「85,800円+(医療費−286,000円)×1%」
- 窓口で払った額と限度額の差が、払い戻しの対象。直近12か月に3回以上該当すれば4か月目から多数回該当の額
- 世帯合算は、70歳未満なら1つの医療機関で21,000円以上の自己負担だけを合算する
- 令和8年8月から年間上限が新設され、令和9年8月から区分がさらに細かくなる予定
- 実際の金額・申請の方法は、加入している保険者に確認する
よくある質問
Q高額療養費は、申請しなくても自動で戻ってきますか?
保険者によって扱いが異なるため、加入している保険者の案内で確認してください。協会けんぽの案内では、払い戻しを受けるには高額療養費の支給申請書を支部に出す流れです。一方、医療費が高額になりそうなときは、マイナ保険証を使うか限度額適用認定証を提示すると、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます(厚生労働省・協会けんぽの案内)。
Q入院中の食事代や差額ベッド代も、限度額の計算に含まれますか?
含まれません。協会けんぽの案内は、保険外併用療養費の差額部分、入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は高額療養費の対象にならないと説明しています。限度額の計算に使うのは、保険が適用される診療の費用が対象です。
Q計算式の「医療費」には、窓口で払った金額を入れればよいですか?
窓口で払った金額(3割負担なら3割分)ではありません。式に入れるのは、保険適用の診療費用の総額(10割分)です。協会けんぽの案内も、総医療費を「保険適用される診察費用の総額(10割)」と説明しています。3割負担の人は、窓口で払った額を0.3で割り戻して10割分にします。
Q年間上限は、いつから申請できますか?
協会けんぽの案内では、年間上限額の高額療養費の申請は令和9年8月から始まります。年間は8月から翌年7月までです(厚生労働省)。申請の様式や手順は、加入している保険者の案内で確認してください。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

