宅建の地役権と、公道に至るための他の土地の通行権(囲繞地通行権)を民法210条〜213条・280条〜294条で整理します。袋地、要役地と承役地、償金、付従性・不可分性、時効取得と消滅を表で比べます。
目次
結論:公道に至るための他の土地の通行権(210条〜213条。一般に囲繞地通行権と呼ばれます)は、他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者に、法律上認められる通行権です。地役権(280条〜)は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自分の土地の便益に供する権利で、便益を受ける土地が要役地、提供する土地が承役地です。宅建試験では、償金の要否、要役地との付従性、不可分性、時効の取り扱いが条文の言葉で問われます。
この記事は宅建試験の学習のための解説です。自分の土地の通行や境界をめぐる個別の事情は、弁護士・司法書士・土地家屋調査士などの専門家に確認してください。条文の出典は e-Gov 法令検索の民法(2026年10月7日に読んだ現行条文)です。判例の考え方によって決まる論点は、条文に書かれていないものとして区別して扱います。
権利関係の全体像は宅建 権利関係(民法)攻略で、抵当権は宅建の抵当権で扱っています。この記事は、土地と土地の関係を扱う通行権と地役権に絞ります。
公道に至るための他の土地の通行権(210条〜213条):袋地の所有者の権利
例で考えます。Aの土地は、Bら周囲の土地にぐるりと囲まれていて、公道に出る道がありません。このように他の土地に囲まれて公道に通じない土地を、一般に袋地と呼びます(「袋地」という語は条文にはありません)。袋地の所有者Aには、民法210条1項が通行権を認めています。
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。(210条1項)
条文は、囲まれている場合のほか、次の場合も同じ扱いにしています(210条2項)。
| 場面 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 他の土地に囲まれて公道に通じない | 囲んでいる他の土地を通行できる(1項) |
| 池沼・河川・水路・海を通らなければ公道に至れない | 1項と同様(2項) |
| 崖があって土地と公道とに著しい高低差がある | 1項と同様(2項) |
通行権は、袋地を所有していることから法律上当然に生じる権利です。条文は「通行することができる」と書くだけで、契約(設定行為)を前提にしていません。この点が、次に見る地役権との大きな違いです。
通行の場所・方法・償金・分割の特則
通行権の中身は、211条から213条が決めています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 211条1項 | 通行の場所と方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ぶ |
| 211条2項 | 通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設できる |
| 212条本文 | 通行する他の土地の損害に対して、償金を支払わなければならない |
| 212条ただし書 | 通路の開設のために生じた損害に対する償金を除き、一年ごとに支払うことができる |
| 213条1項 | 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、他の分割者の所有地のみを通行できる。この場合は償金を支払うことを要しない |
| 213条2項 | 土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合にも準用する |
覚えるポイントは2つです。
- 原則は有償です。212条は償金の支払いを求め、一年ごとの支払いは「通路の開設のために生じた損害」に対するものを除いて認めています
- 分割や一部譲渡で袋地になった場合は、通行できる土地が「他の分割者の所有地のみ」に限られ、償金は不要です
試験では、「償金は一切不要」「どの隣地でも通行できる」のように、一方の条件だけを広げた肢が作られます。212条の例外が213条の場面だけであることと、213条の通行範囲が限られていることを対にして確認しておくと整理できます。
この論点の問題を解く
地役権とは:要役地・承役地・設定行為
地役権は、民法280条に定義があります。
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。(280条本文)
ただし書は、第三章第一節(所有権の限界)の規定のうち公の秩序に関するものに違反しないものでなければならないとしています。
「自己の土地」と「他人の土地」という、2つの土地が登場します。条文が括弧書きで定義している言葉は次のとおりです。
| 用語 | 条文の定義 | 例(Aの土地がBの土地を通る場合) |
|---|---|---|
| 要役地 | 地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるもの(281条1項) | A所有の土地 |
| 承役地 | 地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるもの(285条1項) | B所有の土地 |
当サイトの作例として、AがBの土地の一部を通路として使えるように合意した場合を考えると、Aの土地が要役地、Bの土地が承役地です。目的は通行に限りません。民法には、用水地役権についての規定(285条)も置かれています。通行を目的とする地役権を、一般に通行地役権と呼びます。
地役権は、袋地かどうかとは関係なく成立し得る点も通行権と違います。280条は袋地であることを要件にしていないので、公道に通じている土地のためにも地役権を設定できます。
付従性・不可分性:地役権のきまり
地役権には、条文上の特徴が2つあります。
| 性質 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 付従性 | 281条 | 地役権は要役地の所有権に従たるものとして、所有権とともに移転し、または要役地について存する他の権利の目的となる(設定行為に別段の定めがあるときは除く)。要役地から分離して譲り渡し、または他の権利の目的とすることはできない(2項) |
| 不可分性 | 282条 | 土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない(1項)。土地の分割またはその一部の譲渡の場合には、地役権は各部のために又は各部について存する(2項。ただし地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは除く) |
付従性は、要役地を売れば地役権もついていくという動きです。地役権だけを別に売ることはできません。不可分性は、土地が分けられても、地役権は分けられた各部に残るという考え方です。1項の「共有者の一人は消滅させられない」とあわせて、試験で問われます。
なお、承役地の所有者に関するきまりも置かれています。
- 設定行為または設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、または修繕する義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担します(286条)
- 承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、286条の義務を免れることができます(287条)
- 承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内で、その行使のために設けられた工作物を使用でき、利益を受ける割合に応じて設置・保存の費用を分担します(288条)
地役権の取得と消滅:時効・登記
地役権の取得と消滅には、時効が関わります。
| 場面 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 時効による取得 | 283条 | 継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得できる |
| 共有者の取得 | 284条1項 | 土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も取得する |
| 承役地の時効取得による消滅 | 289条 | 承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権はこれによって消滅する |
| 上記の消滅の中断 | 290条 | 地役権者がその権利を行使することによって中断する |
| 消滅時効 | 291条 | 166条2項の消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権は最後の行使の時から、継続的に行使される地役権は行使を妨げる事実が生じた時から起算する |
| 一部の不行使 | 293条 | 地役権者が権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する |
283条のポイントは「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるもの」に限られることです。2つの要件は両方満たす必要があります。通行地役権がこの要件を満たすかどうかは事実関係による論点で、条文に書かれていない判例の考え方に委ねられます。
消滅時効の期間は、291条が参照する166条2項で「債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する」とされています。地役権は所有権以外の財産権なので、20年が基準です。起算点が行使の態様で2通りに分かれる点を押さえます。
登記については、不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ第三者に対抗できません(177条)。地役権は不動産に関する物権ですので、第三者に対抗するには登記が必要です。これに対して通行権(210条〜213条)は、民法第三章第一節(所有権の限界)の相隣関係の款に置かれ、袋地などの所有者に法律上認められる権利です。210条〜213条には登記についての規定がなく、通行権と登記の関係は、条文ではなく判例の考え方で扱われる論点です。地役権の登記の話と混ぜないようにします。
時効の一般的な仕組みは宅建の時効で整理しています。
この論点の問題を解く
似た制度との違い:通行権と地役権
比較の軸を揃えて整理します。
| 比べる点 | 公道に至るための通行権(210条〜) | 地役権(280条〜) |
|---|---|---|
| 発生のしかた | 袋地などの所有者に、法律上認められる | 設定行為で定めた目的に従う(280条)。時効による取得もある(283条) |
| 便益を受ける土地 | 袋地など(公道に通じない土地) | 要役地 |
| 提供する土地 | 囲んでいる他の土地 | 承役地 |
| 対価 | 償金を支払う(212条)。分割・一部譲渡の場合は不要(213条) | 地役権の章に対価の規定はない。有償か無償かは設定の際の当事者の取り決めによる |
| 土地との結びつき | 袋地の所有者に認められる | 要役地の所有権に従たるもの(281条) |
| 時効 | 210条〜213条に定めなし | 取得(283条)・消滅(291条)の定めあり |
| 登記 | 210条〜213条に定めなし | 不動産に関する物権として、第三者への対抗に登記が必要(177条) |
地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、所有権とともに移転します(281条1項)。通行権の主体は袋地などの所有者です。どちらも土地の所有関係に結びついた権利ですが、発生の根拠(法律の定めか、設定行為・時効取得か)と、償金・時効・登記の扱いが違います。通行を目的とする地役権(通行地役権)と、210条の通行権は別の権利です。土地を借りる権利は宅建の借地借家で別に整理しています。
試験での問われ方
当サイトの論点別問題での出題の型を、自分の言葉で整理します。
- 通行権で「償金は不要」とする肢:212条は原則として償金を求める。不要なのは分割・一部譲渡の場面(213条)に限る
- 地役権の付従性を問う肢:要役地を譲渡すれば地役権も移転するが、地役権だけを分離して譲渡することはできない(281条)
- 共有者の一人が地役権を消滅させられるかを問う肢:共有者は持分についてもこれを消滅させられない(282条1項)
- 時効取得の対象を問う肢:継続的に行使され、かつ外形上認識できるものに限る(283条)
- 地役権の消滅時効の起算点を問う肢:継続的でない行使は最後の行使の時、継続的な行使は妨げる事実が生じた時(291条)
- 要役地・承役地の取り違え:便益を受けるのが要役地、提供するのが承役地
間違えやすいポイント
- 通行権は法律上当然に認められる権利で、地役権は設定行為で定めた目的に従う権利です(時効による取得もあります。283条)。「地役権の通行」と「袋地の通行」を同じ条文で処理しないように注意します
- 212条の「一年ごとに支払うことができる」は、通路の開設のために生じた損害に対する償金を除くものです。一年払いの対象を広げないようにします
- 213条の通行範囲は「他の分割者の所有地のみ」です。周囲のどの土地でも通れるわけではありません
- 地役権の時効取得は「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるもの」の両方が要件です。どちらか一方では足りません
- 承役地の占有者の取得時効によって、地役権が消滅することがあります(289条)。時効が地役権者に不利に働く場面です
まとめ
- 公道に至るための他の土地の通行権(210条〜213条)は、他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者に、法律上認められる。通行の場所・方法は、必要で、かつ他の土地の損害が最も少ないものを選ぶ(211条)
- 通行権は原則として償金を支払う(212条)。分割・一部譲渡で袋地になったときは、他の分割者の所有地のみを通行でき、償金は不要(213条)
- 地役権は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供する権利(280条)
- 地役権は要役地の所有権に従たるもので、分離して譲渡できない(281条)。共有者の一人は消滅させられない(282条)
- 地役権の時効取得は、継続的に行使され、かつ外形上認識できるものに限る(283条)。消滅時効は166条2項の20年で、起算点は291条が定める
- 地役権を第三者に対抗するには、不動産に関する物権として登記が必要(177条)。210条の通行権とは別に考える
本サイトは一般財団法人 不動産適正取引推進機構とは関係ありません。掲載している問題は、機構が公表する出題範囲を参照して合格ナビが作成した論点別問題です。条文は e-Gov 法令検索の民法を2026年10月7日に読んだものです。試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。
よくある質問
Q袋地の所有者は、他人の土地を通るのにお金を払う必要がありますか?
民法212条本文は、公道に至るための通行権(210条)を有する者は、通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならないと定めています。ただし書で、通路の開設のために生じた損害に対する償金を除き、一年ごとに支払うことができるとされています。例外が213条です。土地の分割によって公道に通じない土地が生じた場合、その土地の所有者は他の分割者の所有地のみを通行でき、この場合は償金を支払うことを要しません。土地の一部を譲り渡した場合にも、この規定が準用されます(213条2項)。
Q地役権は、要役地と切り離して売ったり、担保にしたりできますか?
できません。281条2項は、地役権は要役地から分離して譲り渡し、または他の権利の目的とすることができないと定めています。1項は、地役権は要役地の所有権に従たるものとして、所有権とともに移転し、または要役地について存する他の権利の目的となるとしています(設定行為に別段の定めがあるときは除く)。
Q地役権は、何年使わないと消滅しますか?
291条は、166条2項に規定する消滅時効の期間(権利を行使することができる時から20年間)の起算点を定めています。継続的でなく行使される地役権は最後の行使の時から、継続的に行使される地役権は行使を妨げる事実が生じた時からです。なお、地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅します(293条)。
Q袋地の所有者は、必要なら通路を新しく作ってもよいですか?
211条2項は、通行権(210条)を有する者は、必要があるときは通路を開設することができると定めています。ただし通行の場所と方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません(211条1項)。通路の開設のために生じた損害に対する償金は、一年ごとに支払うことができる扱いの対象外です(212条ただし書)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

