抵当権とは何かを宅建の受験向けに民法369条以下の条文で整理。効力の及ぶ範囲、物上代位、法定地上権の要件、抵当不動産を買った人と借りている人の立場、根抵当権との違い(極度額・元本確定)を表にまとめ、試験で誤りになりやすい肢の形と論点別問題へつなげます。
目次
結論:抵当権とは、お金を借りた人(債務者)や第三者が、不動産の占有を移さないまま借金の担保にし、貸した人(抵当権者)が他の債権者より先に弁済を受けられる権利です(民法369条1項)。根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を「極度額」の限度で担保する抵当権です(398条の2)。宅建試験では、効力の及ぶ範囲・物上代位・法定地上権・第三取得者の立場・根抵当権との違いが条文の言葉で問われます。
合格ナビの宅建の論点別問題360問(権利関係100問)のうち、抵当権・根抵当権・法定地上権を主題とする問題は4問です(2026-10-02 集計)。これは当サイトの問題データの内訳で、本試験の出題数ではありません。
この記事は宅建試験の学習のための解説です。住宅ローンの返済、抵当権の付いた不動産の売却、抹消登記の手続きなど個別の事情については、取引の担当者や司法書士などの専門家に確認してください。条文の出典は e-Gov 法令検索です(民法・不動産登記法。2026-09-13 取得の現行条文)。
抵当権の仕組み:登場人物と条文
例で考えます。Aが銀行Bから3,000万円を借り、A所有の土地と建物に抵当権を設定したとします。Aが返済を続けている間、AはBに家を引き渡す必要はなく、住み続けられます。返済が滞ると、Bは抵当権を実行して不動産を競売にかけ、その代金から他の債権者より先に弁済を受けます。
民法369条1項の条文はこうです。「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」
| 登場人物 | 例 | 関係する条文 |
|---|---|---|
| 抵当権者 | 銀行B(貸した人) | 369条1項:他の債権者に先立って弁済を受ける |
| 抵当権設定者 | A(担保に出した人)。債務者以外の第三者のこともある | 369条1項「債務者又は第三者が」 |
| 後順位抵当権者 | 同じ不動産に後から抵当権を設定した別の債権者 | 373条:順位は登記の前後 |
| 第三取得者 | 抵当権が付いたままの不動産を買った人 | 378条〜386条・390条・391条 |
| 抵当不動産の賃借人 | 抵当権が付いた建物を借りている人 | 387条・395条 |
抵当権を設定できるのは不動産のほか、地上権と永小作権です(369条2項)。比較のために他の担保も押さえておくと、質権は債権者が「受け取った物を占有」する点(342条)で、占有を移さない抵当権と対照的です。民法には留置権(295条)・先取特権(303条)も定められています。
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抵当権の効力が及ぶ範囲と、利息は「最後の2年分」
| 条文 | 及ぶもの・及ばないもの |
|---|---|
| 370条本文 | 抵当地の上に存する建物を除き、抵当不動産に「付加して一体となっている物」に及ぶ |
| 370条ただし書 | 設定行為に別段の定めがある場合、債務者の行為について詐害行為取消請求ができる場合は及ばない |
| 371条 | 担保する債権に不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ |
| 375条1項 | 利息その他の定期金は「その満期となった最後の二年分についてのみ」抵当権を行使できる(満期後に特別の登記をすれば、その登記の時から行使できる) |
| 375条2項 | 遅延損害金も最後の2年分。ただし利息と通算して2年分を超えられない |
ポイントは2つです。土地に設定した抵当権は、その上の建物には及びません(370条本文の「建物を除き」)。また、利息その他の定期金について抵当権を行使できるのは最後の2年分です(375条)。後で見る根抵当権は、極度額を限度として利息などの「全部」について行使できる点が違います(398条の3第1項)。
順位と対抗要件:登記の前後で決まる
不動産に関する物権の得喪・変更は、登記をしなければ第三者に対抗できません(177条)。同一の不動産に数個の抵当権があるときの順位は「登記の前後による」と定められています(373条。不動産登記法4条1項も、登記した権利の順位は登記の前後によるとしています)。
順位は各抵当権者の合意で変更できます。ただし利害関係を有する者があるときはその承諾が必要で、変更は登記をしなければ効力を生じません(374条)。抵当権者と抵当権設定者の合意だけで順位を入れ替えることはできません。
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物上代位:目的物が「お金」に変わったとき
民法372条は、先取特権の物上代位(304条)を抵当権に準用しています。304条1項は「その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし…その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と定めています。
| 要素 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 何が原因で | 目的物の売却・賃貸・滅失・損傷 |
| 何に対して | 受けるべき金銭その他の物 |
| 条件 | 払渡し・引渡しの前に差押えをすること(304条1項ただし書) |
条文の言葉に当てはめると、債務者でもある設定者Aが抵当権付きの建物を賃貸して受けるべき金銭や、建物の滅失・損傷によってAが受けるべき金銭が、物上代位の対象として挙がります。ただし、いずれも払渡しの前に差押えをすることが条件です。試験では「当然に行使できる」「差押えは不要」という肢が、このただし書と食い違う形で出ます。
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法定地上権:土地と建物の持ち主が分かれたとき
民法388条:「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。」
| 条文の要件 | 例 |
|---|---|
| ① 土地とその上の建物が同一の所有者に属する | Aが土地も建物も所有している |
| ② その土地または建物に抵当権が設定される | Aが土地だけにBのための抵当権を設定 |
| ③ その実行により所有者が別々になる | 競売で土地をCが買い受け、建物はAのまま |
| 効果 | 建物のために地上権が設定されたものとみなされ、地代は当事者の請求により裁判所が定める |
388条は、抵当権の実行で土地と建物の持ち主が分かれた場面で、建物のために地上権が設定されたものとみなす規定です。条文の要件は「同一の所有者に属する場合において」から始まるので、土地と建物の持ち主がもともと別人の場合は①を満たしません。
似た規定に一括競売(389条)があります。抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は土地とともにその建物を競売できます。ただし優先弁済を受けられるのは土地の代価だけで、建物の所有者が抵当地の占有について抵当権者に対抗できる権利を持つときは適用されません。
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抵当不動産を買った人・借りている人の立場
抵当権は登記をしておけば第三者に対抗できる(177条)ため、抵当権が付いたまま不動産が売られることがあります。民法は、抵当権付きの不動産を買った人(第三取得者)と借りている人を守る規定を置いています。借地と借家の全体表は、借地借家法をわかりやすくにまとめています。
| 制度 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 代価弁済 | 378条 | 所有権または地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の「請求に応じて」代価を弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する |
| 抵当権消滅請求 | 379条・383条・384条・386条 | 第三取得者が登記をした各債権者に書面を送り、債権者が2箇月以内に競売の申立てをしなければ承諾したものとみなされる。全員の承諾と払渡し・供託で抵当権は消滅 |
| 消滅請求ができない人 | 380条 | 主たる債務者、保証人、これらの者の承継人 |
| 消滅請求の時期 | 382条 | 競売による差押えの効力が発生する前 |
| 競売での買受け | 390条 | 第三取得者も買受人になれる |
| 費用の償還 | 391条 | 第三取得者が支出した必要費・有益費は、代価から他の債権者より先に償還を受けられる |
| 抵当権者の同意の登記 | 387条 | 登記した賃貸借は、先に登記したすべての抵当権者が同意し、その同意の登記があれば、同意した抵当権者に対抗できる |
| 建物の引渡しの猶予 | 395条 | 抵当権者に対抗できない賃貸借で建物を使う者のうち、競売手続の開始前から使用する者などは、買受人の買受けの時から6箇月を経過するまで引渡しを要しない |
代価弁済は抵当権者の「請求」が出発点、抵当権消滅請求は第三取得者の側から始める手続、と主体の違いで区別すると混同しません。期間の数字は、消滅請求が「2箇月」、建物の引渡し猶予が「6箇月」です。
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根抵当権と普通の抵当権の違い(比較表)
根抵当権は、継続的な取引から次々に生まれる債権をまとめて担保するための抵当権です。398条の2第1項は「抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる」と定めています。
| 比べる点 | 普通の抵当権 | 根抵当権 |
|---|---|---|
| 担保する債権 | 特定の債権 | 一定の範囲に属する不特定の債権(398条の2第1項)。範囲は特定の継続的取引契約や一定の種類の取引によって生ずるものなどに限定して定める(同条2項) |
| 優先弁済の上限 | 利息・遅延損害金は最後の2年分(375条) | 確定した元本・利息・遅延損害金の全部を「極度額を限度として」(398条の3第1項) |
| 債権の範囲・債務者の変更 | — | 元本の確定前ならでき、後順位抵当権者など第三者の承諾は不要。確定前に登記しないと変更しなかったものとみなす(398条の4) |
| 上限額の変更 | — | 極度額の変更は利害関係を有する者の承諾が必要(398条の5) |
| 債権を譲り受けた人 | — | 元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使できない(398条の7第1項) |
| 元本確定期日 | — | 定めることができ、定め・変更した日から5年以内(398条の6第3項) |
| 元本の確定請求 | — | 設定者は設定の時から3年を経過すれば請求でき、請求から2週間で確定。根抵当権者はいつでも請求でき、請求の時に確定(398条の19。確定期日の定めがあるときは適用しない) |
| 確定後の減額請求 | — | 設定者は極度額を「現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息」等を加えた額に減額するよう請求できる(398条の21) |
| 確定後の消滅請求 | 抵当権消滅請求(379条) | 現存の債務額が極度額を超えるとき、他人の債務のために設定した者や第三取得者などは、極度額に相当する金額を払い渡し・供託して消滅請求できる(398条の22) |
表の「—」は、普通の抵当権にはその仕組みの規定がないことを示します。根抵当権は「元本の確定」の前と後で扱いが変わるのが特徴です。確定前に根抵当権者から個々の債権を譲り受けても、その債権について根抵当権は行使できません(398条の7第1項)。確定事由には、根抵当権者が競売や物上代位の差押えを申し立てたとき(手続の開始・差押えがあったときに限る)や、債務者・設定者が破産手続開始の決定を受けたときなどがあります(398条の20第1項)。
数字の覚え方は「3年たてば設定者が確定請求、2週間で確定」「確定期日は5年以内」「確定後の減額は、現に存する債務の額に以後2年間の利息・損害賠償を加えた額まで」の3つです。
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抵当権が消えるとき:時効・取得時効・抹消登記
| 消える場面 | 条文 |
|---|---|
| 代価弁済 | 378条 |
| 抵当権消滅請求(全員の承諾と払渡し・供託) | 386条 |
| 根抵当権の消滅請求 | 398条の22 |
| 時効 | 債務者・抵当権設定者に対しては、担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しない(396条) |
| 第三者の取得時効 | 債務者・設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は消滅する(397条) |
| 混同 | 同一物について所有権と他の物権が同一人に帰属したときは、その他の物権は消滅する。ただし、その物またはその物権が第三者の権利の目的であるときは消滅しない(179条1項) |
抵当権の消滅の登記(いわゆる抹消登記)は、権利に関する登記の一つです(不動産登記法2条4号・3条7号)。同法60条は、権利に関する登記の申請は「法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない」と定めています。共同申請の原則とその例外は、不動産登記法の論点です。実際の抹消の手続きや必要書類は、この記事では扱いません。
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試験での問われ方
権利関係の全体像は、宅建 権利関係(民法)攻略で確認できます。抵当権の問題は、条文の言葉を1か所だけ変えた肢が中心です。この記事の表と照らすと、次のような肢の誤りに気づけます。
- 「抵当権の効力は土地の上の建物にも当然に及ぶ」→ 370条は「建物を除き」
- 「利息は全額について優先弁済を受けられる」→ 375条は最後の2年分(根抵当権は極度額まで)
- 「物上代位は差押えなしで当然にできる」→ 304条1項ただし書で払渡し前の差押えが必要
- 「土地と建物の所有者が別人でも法定地上権が成立する」→ 388条は同一の所有者が要件
- 「消滅請求の書面を受けた債権者は1か月以内に競売を申し立てないと承諾したものとみなす」→ 384条は2箇月
当サイトの問題は、過去の出題論点をもとに作成した論点別問題です。各問に初級・標準・上級の3段階の解説と根拠条文がついています。
まとめ
- 抵当権は、占有を移さずに不動産を担保にし、他の債権者に先立って弁済を受ける権利(369条1項)
- 効力は付加一体物に及ぶが、土地の上の建物には及ばない(370条)。利息は最後の2年分(375条)
- 物上代位は売却・賃貸・滅失・損傷で受けるべき金銭等に及ぶが、払渡し前の差押えが必要(372条・304条)
- 法定地上権は、同一所有の土地・建物の一方に抵当権が設定され、実行で所有者が分かれたとき(388条)
- 根抵当権は不特定の債権を極度額まで担保し、元本の確定の前後で扱いが変わる(398条の2以下)
よくある質問
Q抵当権を設定しても、その家に住み続けられるのはなぜですか?
民法369条1項は、抵当権を「債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産」について優先して弁済を受ける権利と定めています。占有を移さないのが抵当権の特徴で、設定者は不動産を使い続けられます。これに対し質権は、債権の担保として受け取った物を質権者が占有します(342条)。
Q抵当権を設定するのは債務者本人だけですか?
本人に限りません。369条1項は「債務者又は第三者が」担保に供した不動産としていて、他人の債務のために自分の不動産に抵当権を設定することもできます。398条の22も「他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者」という言い方で、この立場の人を扱っています。
Q同じ土地に抵当権が2つ以上あるとき、どちらが優先しますか?
抵当権の順位は登記の前後で決まります(民法373条、不動産登記法4条1項)。順位は各抵当権者の合意で変更できますが、利害関係を有する者がいるときはその承諾が必要で、変更は登記をしなければ効力を生じません(民法374条)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月2日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

