登録販売者から薬剤師になる道は、薬剤師法15条の受験資格で決まります。薬剤師と登録販売者の違い(販売できる医薬品・調剤・免許)、薬剤師が登録販売者を受験できるか、合格率の比較、看護師との関係を、e-Govの条文と厚生労働省の資料で整理します(2026年10月時点)。
目次
結論:登録販売者から薬剤師になるための近道はありません。薬剤師国家試験を受けられるのは、薬学の6年制課程を卒業した人などに限られ(薬剤師法15条)、登録販売者の資格や実務経験は受験資格に含まれていません。両者の大きな違いは、薬剤師が第一類医薬品・要指導医薬品の販売と調剤を行えるのに対し、登録販売者は第二類・第三類医薬品の販売に従事する点です(薬機法36条の5・36条の9、薬剤師法19条)。
合格ナビの登録販売者の問題360問のうち、問題文・選択肢に「薬剤師」を含む問題は48問、「薬剤師」と「登録販売者」の両方を含む問題は27問です(うち第4章が15問・2026-10-03集計)。当サイトの自作問題の数で、本試験の出題比率ではありません。
| 項目 | 登録販売者 | 薬剤師 |
|---|---|---|
| 資格を与える者 | 都道府県知事の登録(試験合格後・法36条の8第2項) | 厚生労働大臣の免許(国家試験合格後・薬剤師法2条・3条) |
| 試験を行う者 | 都道府県知事(法36条の8第1項) | 厚生労働大臣が毎年少なくとも1回(薬剤師法12条1項) |
| 受験資格 | 制限なし(厚生労働省の通知) | 薬学の6年制課程の卒業など(薬剤師法15条) |
| 一般用医薬品の販売 | 第二類・第三類(法36条の9第2号) | 第一類・第二類・第三類(法36条の9) |
| 要指導医薬品 | 販売させる者に含まれない | 薬剤師に販売させる(法36条の5第1項) |
| 調剤 | できない(薬剤師法19条) | 薬剤師の任務に含まれる(薬剤師法1条) |
| 管理者 | 店舗販売業の店舗管理者になれる(要件あり・法28条2項) | 薬局の管理者になる(法7条)、店舗管理者にもなれる(法28条2項) |
一般用医薬品の販売に従事する者:第一類医薬品は薬剤師、第二類医薬品・第三類医薬品は薬剤師または登録販売者(法36条の9)。要指導医薬品は薬剤師に販売させる(法36条の5第1項)。最終確認日:2026-10-03。出典:e-Gov法令検索 医薬品医療機器等法(2026-10-03時点の現行条文)。
登録販売者と薬剤師の違い:販売できる医薬品
医薬品医療機器等法(薬機法)36条の9は、薬局開設者・店舗販売業者・配置販売業者が一般用医薬品を、次の区分に応じた者に販売させなければならないと定めています。
- 第一類医薬品:薬剤師
- 第二類医薬品・第三類医薬品:薬剤師または登録販売者
要指導医薬品は、36条の5第1項が薬局開設者・店舗販売業者に、薬剤師に販売させることを求めています。つまり、登録販売者が販売に従事できるのは第二類・第三類医薬品で、第一類医薬品と要指導医薬品は薬剤師が扱います。薬剤師は、第二類・第三類医薬品も販売できます。
36条の7は、一般用医薬品の区分を、第一類(日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうち、特に注意が必要なものとして厚生労働大臣が指定するもの等)、第二類(第一類を除く、厚生労働大臣が指定するもの)、第三類(第一類・第二類以外)と定めています。区分ごとの情報提供の義務は、登録販売者 合格ガイドの表にまとめています。登録販売者が「できること・できないこと」の全体は、登録販売者 やめとけで整理しています。
この論点の問題を解く
調剤と管理者:薬剤師にだけ認められていること
薬剤師法1条は、薬剤師の任務を「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどること」と定めています。19条は、薬剤師でない者が販売または授与の目的で調剤することを禁じています(ただし書は、医師・歯科医師・獣医師が自己の処方箋により自ら調剤する場合などの例外で、登録販売者には及びません)。調剤は薬剤師の業務で、登録販売者はできません。
管理者の面でも違いがあります。薬局の管理者は、薬剤師でなければなりません(薬機法7条。薬局開設者が薬剤師でない場合は、その薬局の薬剤師から管理者を指定する)。一方、店舗販売業の店舗管理者は、薬剤師または登録販売者でなければなりません(28条2項)。登録販売者が店舗管理者になるには、厚生労働省の通知で従事期間などの要件が示されています。第一類医薬品を販売する店舗の管理者は、通知上、原則として薬剤師とされています(薬剤師を店舗管理者にできない場合の例外も、同じ通知に定められています)。要件の詳細は登録販売者 合格ガイドにあります。
登録販売者から薬剤師になるには
結論は、薬剤師法15条の受験資格を満たす必要がある、ということです。
薬剤師国家試験の受験資格:試験を受けられるのは、①学校教育法に基づく大学で薬学の正規の課程(同法87条2項に規定するもの)を修めて卒業した者、②外国の薬学校を卒業し、または外国の薬剤師免許を受けた者で、厚生労働大臣が①と同等以上の学力及び技能を有すると認定したもの(薬剤師法15条)。最終確認日:2026-10-03。出典:e-Gov法令検索 薬剤師法(2026-10-03時点の現行条文)。
①の「同法87条2項に規定するもの」は、学校教育法87条2項の、薬学を履修する課程のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするもので、修業年限は6年とされています。条文のこの括弧書きは、①の「薬学の正規の課程」にかかっています。
登録販売者試験の合格、登録販売者としての実務経験、登録販売者の登録は、15条の2つの号のどちらにも挙げられていません。なお、薬剤師法の平成16年改正法(平成16年法律第134号)の附則には、改正前の15条の受験資格に当たっていた人や、改正法の施行前から大学に在学していた人などに、15条にかかわらず受験を認める経過措置があります。これは当時の制度の人を対象にしたもので、登録販売者の資格や経験を受験資格にする規定ではありません。したがって、登録販売者として働いていても、そのことだけでは薬剤師国家試験を受けられません。進むには、①に当たる薬学の課程のある大学に入学して卒業する道が、条文上の基本の道です。大学の入学の条件や、働きながら学べるかどうかは大学ごとに異なるため、各大学の募集要項で確認してください。登録販売者の資格が入試で考慮されるかどうかは、この記事では扱いません。
免許までの流れは、次のとおりです。
- ① 薬学の6年制課程を卒業する(薬剤師法15条1号)
- ② 薬剤師国家試験に合格する(毎年少なくとも1回、厚生労働大臣が実施・薬剤師法12条)
- ③ 厚生労働大臣の免許を受ける(薬剤師法2条・3条)
薬剤師は登録販売者試験を受けられるか・両方持つ意味
厚生労働省の通知「登録販売者制度の取扱い等について」は、登録販売者試験の受験資格としてこれまで求めてきた実務経験等は不要になったとしています。令和8年度の宮城県・関西広域連合・福岡県・北海道の受験案内の本文には、薬剤師の受験を制限する記載はありません。ほかの自治体は、受験する自治体の案内で確かめてください。
販売の権限の面では、薬機法36条の9第2号が第二類・第三類医薬品の販売を「薬剤師又は登録販売者」としているため、薬剤師は登録販売者の登録を受けなくても、これらを販売できます。「両方の資格を持つ」ことで法律上の販売の範囲が広がるわけではありません。
難易度の違い:合格率は単純に比べられない
登録販売者試験の合格率:令和7年度の年度計は受験者58,996人・合格者24,004人・合格率40.7%(延べ人数・令和8年3月31日現在)。最終確認日:2026-10-03。出典:厚生労働省 令和7年度登録販売者試験実施状況。
薬剤師国家試験の合格率:第111回(令和8年2月21日・22日実施)は受験者12,774人・合格者8,749人・合格率68.49%。6年制の新卒は86.25%(受験者7,781人・合格者6,711人)、6年制の既卒は41.33%(受験者4,871人・合格者2,013人)。令和8年3月25日合格発表。最終確認日:2026-10-03。出典:厚生労働省 第111回薬剤師国家試験の結果について(薬剤師国家試験のページ)。
| 比べる点 | 登録販売者試験 | 薬剤師国家試験 |
|---|---|---|
| 受験できる人 | 制限なし | 薬学の6年制課程の卒業者など(薬剤師法15条) |
| 問題数・日程 | 120問・240分(実施要領) | 問題番号は1〜345、令和8年は2月21日・22日の2日間(第111回) |
| 直近の合格率 | 40.7%(令和7年度・延べ人数) | 68.49%(第111回) |
合格率は、薬剤師国家試験のほうが高い数字ですが、受験できる人が6年間の専門の課程を修めた人に絞られているため、「簡単」という意味ではありません。同じ薬剤師国家試験でも、6年制の新卒(86.25%)と既卒(41.33%)で数字が大きく違います。登録販売者試験の40.7%は、だれでも受けられる試験の数字で、数字の差の理由は公式には示されていません。分母の違う合格率を並べて難しさを決めることは、できません。
薬剤師国家試験の合格基準は、第111回では「全問題の得点が426点以上」「禁忌肢問題選択数は2問以下」「必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上」とされています。登録販売者試験の合格基準は、総出題数の7割程度の正答と、各試験項目ごとに都道府県知事が定める割合以上の正答です(実施要領)。
看護師が登録販売者を取ると、制度の上で何が変わるか
保健師助産師看護師法5条は、看護師を「厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と定めています。看護師の免許は、薬機法36条の9の「薬剤師又は登録販売者」には含まれません。したがって、看護師の免許だけでは、一般用医薬品の販売に従事する者としては扱われません。
登録販売者になるには、試験に合格して、都道府県知事の登録を受けます(薬機法36条の8)。厚生労働省の実施要領と通知には、看護師などの免許を持つ人への試験の免除は見当たりません(当サイトが全文を確認)。
制度の上で変わる点は、次の2つです。
- 登録後は、第二類・第三類医薬品の販売に従事できる者に当たる(法36条の9第2号)
- 店舗販売業の店舗管理者になる候補の資格に当たる(法28条2項・通知の従事期間などの要件あり)
看護師としての業務の範囲は、保健師助産師看護師法5条の定義のままで、登録販売者の資格で変わるものではありません。収入や転職への影響は、公的な資料で確かめられる数字がないため、この記事では扱いません。
まとめ
- 登録販売者から薬剤師になる近道はなく、薬剤師国家試験の受験資格は薬学の6年制課程の卒業者などに限られる(薬剤師法15条)
- 薬剤師は第一類医薬品・要指導医薬品の販売と調剤を行える。登録販売者は第二類・第三類医薬品の販売に従事する(薬機法36条の5・36条の9、薬剤師法19条)
- 薬剤師は、登録販売者の資格がなくても第二類・第三類医薬品を販売できる
- 合格率は登録販売者試験40.7%(令和7年度)、薬剤師国家試験68.49%(第111回)で、受験できる人の範囲が違うため難しさは比べられない
- 看護師の免許だけでは「薬剤師又は登録販売者」に当たらない。登録販売者になるには試験と登録が必要
一次ソース
- e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(4条・7条・28条・36条の5・36条の7〜36条の9)
- e-Gov法令検索 薬剤師法(1条・2条・3条・12条・15条・19条)
- e-Gov法令検索 学校教育法(87条2項)
- e-Gov法令検索 保健師助産師看護師法(5条)
- 厚生労働省「登録販売者制度の取扱い等について」の一部改正について(令和8年6月26日)
- 厚生労働省 登録販売者試験実施要領
- 厚生労働省 令和7年度登録販売者試験実施状況
- 厚生労働省 第111回薬剤師国家試験の結果について
条文は e-Gov 法令検索で確認(2026-10-03 時点の現行条文)。
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よくある質問
Q登録販売者の実務経験は、薬剤師国家試験の受験資格になりますか?
なりません。薬剤師法15条は、受験できる者を、①学校教育法に基づく大学で薬学の正規の課程(同法87条2項に規定するもの=修業年限6年)を修めて卒業した者、②外国の薬学校を卒業し、または外国の薬剤師免許を受けた者で、厚生労働大臣が①と同等以上の学力及び技能を有すると認定したもの、の2つとしています(改正前の制度の人に受験を認める経過措置は、改正法の附則にあります)。登録販売者の資格や実務経験は、この条文にも附則の経過措置にも挙げられていません。
Q薬剤師は登録販売者の試験を受けられますか?
厚生労働省の通知は、登録販売者試験の受験資格としての実務経験等は不要としています。令和8年度の宮城県・関西広域連合・福岡県・北海道の受験案内には、薬剤師の受験を制限する記載はありません。他の自治体は、受験する自治体の案内で確かめてください。なお薬剤師は、登録販売者でなくても第二類・第三類医薬品を販売できます(薬機法36条の9第2号)。
Q看護師は登録販売者試験の一部が免除されますか?
厚生労働省の実施要領と「登録販売者制度の取扱い等について」の通知に、看護師などの免許を持つ人への免除の定めは見当たりません(当サイトが全文を確認)。試験は5つの試験項目・120問・240分で、全員が同じ内容です。
Q登録販売者は調剤ができますか?
できません。薬剤師法19条は、薬剤師でない者が販売または授与の目的で調剤することを禁じています(医師・歯科医師・獣医師が自己の処方箋により自ら調剤する場合などの例外は、その条文のただし書にあります)。登録販売者は薬剤師ではないため、この例外にも当たりません。
Q登録販売者と薬剤師は、どちらが難しいですか?
単純には比べられません。登録販売者試験は受験資格の制限がなく、令和7年度の年度計の合格率は40.7%(延べ人数)です。薬剤師国家試験は、薬学の6年制課程の卒業者などだけが受験でき、第111回(令和8年)の合格率は68.49%です。受験できる人の範囲・問題数・試験の日程が違うため、合格率の数字だけでは難しさを比べられません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

