第一種電気工事士合格後の電験三種ステップアップを解説。第一種電工と電験三種の試験構成・保安監督範囲・免状交付の違い、第一種電工既習者が新たに学ぶ論点(電子理論・送電・パワーエレクトロニクス・自動制御・電気施設管理)、科目別合格制度、電験二種・一種への発展を電気技術者試験センターの公表情報で整理します。
結論:第一種電気工事士は電気工事の作業に従事する資格、電験三種(第三種電気主任技術者)は電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物の保安を監督する資格で、試験構成も免状の取り方も異なります。電験三種は試験に合格した方に免状が交付され(電気事業法44条2項2号)、第一種電工は免状の取得に3年以上の実務経験が必要です。本記事では両者の違い、第一種電工既習者が新たに学ぶ論点、科目別合格制度、電験二種・一種への発展を整理します。出典:電気技術者試験センター 電気工事士の資格概要、電気主任技術者の資格概要。
第一種電工と電験三種の根本的な違い
電気工事士と電験(電気主任技術者)の資格の違いは、電気工事士と電験の違いで条文とあわせて比較しています。
| 項目 | 第一種電気工事士 | 電験三種 |
|---|---|---|
| 立場 | 電気工事の作業に従事できる資格 | 保安の監督ができる電気主任技術者 |
| 対象範囲 | 一般用電気工作物等及び自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備に限る)の電気工事の作業 | 電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所又は蓄電所を除く)の保安の監督 |
| 試験回数 | 令和8年度は上期・下期の年2回(技能試験を含む) | 年2回(上期・下期) |
| 試験構成 | 学科試験(四肢択一)+技能試験 | 4科目(理論・電力・機械・法規。五肢択一) |
| 免状要件 | 試験合格に加え、電気工事の実務経験3年以上(センター) | 試験に合格した方に免状を交付(電気事業法44条2項2号) |
出典:電気技術者試験センター 電気工事士の資格概要、第一種電気工事士試験、第三種電気主任技術者試験、電気主任技術者の資格概要(2026-10-02 時点)。
電験三種の試験の進め方
電験三種は理論・電力・機械・法規の4科目(五肢択一)で、試験は科目ごとに合否が決まります。一部の科目だけ合格した場合は「科目合格」となり、最初に合格した試験以降、申請により最大で連続5回まで当該科目の試験が免除されます(令和7年度上期に科目合格した場合は令和9年度下期まで)。免除は自動では適用されません。出典:電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者の試験概要、令和8年度上期受験案内。
電験三種 令和8年度下期の申込みと試験日:申込受付期間は2026年11月9日10時〜11月26日17時。試験日はCBT方式が2027年2月4日〜2月28日、筆記方式が2027年3月21日。受験手数料はインターネット申込み7,700円、郵送の書面申込み8,100円。最終確認日:2026-10-02。出典:電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者試験。
科目合格の有効期限や免除の申請は電験三種の科目合格で確認できます。
科目の進め方の例:
- 1年目:理論+法規
- 2年目:電力+機械
この配分は一例です。必要な勉強時間は電気技術者試験センターが公表していないため、受験日から逆算して計画を立ててください。
新規対策が必要な5領域
第一種電工で扱わない論点:
1. 電子理論(理論科目)
- 半導体(PN接合・ダイオード・トランジスタ)(トランジスタ増幅回路の問題で練習できます)
- オペアンプ(反転/非反転/差動増幅)
- 論理回路(AND/OR/NAND/NOR/XOR・フリップフロップ)
- FET
2. 送電(電力科目)
- 架空送電線(がいし・支持物)
- 電圧階級(66kV/154kV/275kV/500kV)
- コロナ放電・臨界電圧(コロナ損の問題で練習できます)
- 誘導障害(静電誘導・電磁誘導)
- 中性点接地方式
3. パワーエレクトロニクス(機械科目)
- 整流回路(半波/全波/ブリッジ)
- チョッパ(降圧/昇圧/昇降圧)
- インバータ(PWM制御)
- コンバータ
4. 自動制御(機械科目)
- フィードバック制御
- 伝達関数・ラプラス変換
- ボード線図・ベクトル軌跡
- PID制御
5. 電気施設管理(法規科目)
- 負荷曲線・需要率・不等率・負荷率
- 受電設備容量計算
- 力率改善コンデンサ容量計算
流用できる第一種電工の知識
電験三種の以下の論点は第一種電工で既習:
| 流用領域 | 第一種電工で既習 |
|---|---|
| 電気の基礎理論 | オーム・キルヒホッフ・三相交流 |
| 配電理論 | 高圧6,600V・配電方式 |
| 電気機器 | 変圧器・遮断器・電動機 |
| 高圧受電設備 | キュービクル・PAS・VCB・LBS |
| 接地工事 | A〜D種・接地抵抗値 |
| 絶縁抵抗 | 値・測定方法 |
| 絶縁耐力試験 | 試験電圧・印加時間 |
| 電気事業法 | 保安規程・主任技術者 |
| 電気工事士法 | 作業範囲 |
これらが新鮮なうちに電験三種固有論点を上乗せするのが最効率です。
電験二種・電験一種への発展
電気主任技術者の資格は、取り扱える電圧によって第一種から第三種まであります。第二種は電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物、第一種はすべての事業用電気工作物の保安の監督ができます。第一種・第二種の試験は一次試験と二次試験があり、第三種は一次試験のみです(出典:電気技術者試験センター 電気主任技術者の資格概要)。
第一種・第二種電気主任技術者の合格率:令和7年度の一次試験は第一種32.0%(受験者1,569人・4科目合格者502人)、第二種35.0%(受験者7,211人・4科目合格者2,524人)。二次試験は第一種31.7%(受験者772人・合格者245人)、第二種16.5%(受験者3,692人・合格者611人)。最終確認日:2026-10-02。出典:電気技術者試験センター 令和7年度一次試験の結果、二次試験の結果。
免状交付のしくみ
電気事業法は、第一種から第三種までの電気主任技術者免状を電気主任技術者試験に合格した方に交付すると定めています(44条2項2号。e-Gov法令検索)。免状交付の事務は試験センターが行い、申請からおよそ2ヶ月かかります(電気技術者試験センター 電気主任技術者の免状交付)。一方、第一種電気工事士は試験に合格しても、免状の取得に電気工事の実務経験3年以上が必要です(電気工事士の免状交付)。
まとめ:第一種電工合格者への推奨
第一種電気工事士で身に付けた電気基礎理論・高圧受電設備・配電・接地・絶縁の知識は、電験三種にも流用できます。新規に必要になるのは、電子理論・送電・パワーエレクトロニクス・自動制御・電気施設管理の5領域です。電験三種は科目別合格制度を使って年度をまたいで科目を取り切れること、試験合格者に免状が交付されることが、第一種電工との違いです。
本サイトでは電験三種の4科目の問題を、登録不要で解くことができます。各問に3段階の解説が付いています(2026-10-02 時点)。電験三種の問題を解く
よくある質問
Q第一種電工合格後、電験三種はすぐ受験すべきですか?
第一種電工で身に付けた電気基礎理論・配電理論・電気機器の知識が新鮮なうちに、電験三種固有の論点(電子理論/送電/パワエレ/自動制御)を上乗せしていく進め方があります。また免状の取り方に違いがあり、電験三種は試験に合格した方に免状が交付される(電気事業法44条2項2号)のに対し、第一種電工は試験合格に加えて3年以上の実務経験が必要です。出典:e-Gov法令検索 電気事業法、電気技術者試験センター 電気工事士の免状交付。
Q第一種電工で学んだことは電験三種にどの程度流用できますか?
第一種電工で扱う電気基礎理論(直流・交流・三相交流)・高圧受電設備(キュービクル・PAS・VCB)・配電方式・接地工事・絶縁抵抗・電気事業法/電気工事士法は、電験三種でも学ぶ内容です。新規に対策が必要な領域は、電子理論(半導体・電子回路・オペアンプ・論理回路)・送電(架空送電線・コロナ放電・誘導障害)・パワーエレクトロニクス(インバータ・コンバータ・チョッパ)・自動制御(フィードバック・伝達関数・ラプラス変換)・電気施設管理(負荷曲線・需要率・不等率)の5領域です。必要な勉強時間は電気技術者試験センターが公表していないため、受験日から逆算して計画を立ててください。
Q第一種電工と電験三種の違いは?
第一種電工は、一般用電気工作物等及び自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備に限る)の電気工事の作業に従事できる資格です。免状の取得には、試験合格に加えて電気工事の実務経験3年以上が必要です。電験三種は、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所又は蓄電所を除く。電気事業法施行規則56条)の保安の監督ができる電気主任技術者の資格で、試験に合格した方に免状が交付されます。電気工事の作業に従事する資格と、設備の保安を監督する資格という違いがあります。出典:電気技術者試験センター 電気工事士の資格概要、電気主任技術者の資格概要。
Q電験三種合格後、電験二種・一種に進むべきですか?
電験二種は電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物、電験一種はすべての事業用電気工作物の保安の監督ができる資格です。第一種・第二種の試験は一次試験と二次試験があり、第三種は一次試験のみです。令和7年度の合格率は、第二種が一次35.0%・二次16.5%、第一種が一次32.0%・二次31.7%でした。どこまで目指すかは、取り扱いたい設備の電圧や範囲に合わせて決めてください。出典:電気技術者試験センター 電気主任技術者の資格概要、令和7年度一次試験の結果、二次試験の結果。
Q電験三種の免状はいつ交付されますか?
試験に合格された方には、試験センターから郵送する試験結果通知書に免状交付申請書等が同封され、免状が交付されるまでの所要期間は申請からおよそ2ヶ月です。出典:電気技術者試験センター 電気主任技術者の免状交付(2026-10-02 時点)。
Q電験2種と3種はどっちを受けるべきですか?
取り扱いたい設備の電圧で決めます。電気技術者試験センターの資格概要では、第二種は電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物、第三種は電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)の保安の監督ができるとされています。試験の構成も違います。第三種は理論・電力・機械・法規の4科目の一次試験のみです。第二種は同じ4科目の一次試験に加えて、記述方式の二次試験(電力・管理、機械・制御の2科目)があります。二次試験には科目別合格の制度がなく、一次試験に合格した年度の二次試験に不合格でも、翌年度の一次試験は免除されます。令和7年度の合格率は第二種が一次35.0%・二次16.5%で、第三種とは試験の段階が異なるため、数字を単純には比べられません。どちらが自分に合うかは、扱う設備の電圧と、二次試験の記述に取り組む時間を取れるかで考えてください。出典:電気技術者試験センター 電気主任技術者の資格概要、第二種電気主任技術者の試験概要(2026-10-04 時点)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月4日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

