中小企業診断士と行政書士の違いを、行政書士法・中小企業支援法の条文と、令和7・8年度の公式試験データで整理。業務の線引き、試験の仕組み、合格率の分母の違い、科目の重なり、ダブル受験の日程まで一次資料で確認できます。
目次
結論:中小企業診断士と行政書士は、根拠になる法律も業務も別の資格です。行政書士は、官公署に提出する書類などの作成を業とし、資格のない人がこれを報酬を得て業として行うことは行政書士法第19条で禁じられています。中小企業診断士は、中小企業支援法に基づく経営診断の登録制度で、同法には、診断士に限る業務や名称を定めた条文はありません。令和7年度の合格率は、行政書士が14.54%、診断士の1次試験が23.7%、2次試験が17.6%ですが、分母の数え方が違うため、並べて優劣は言えません。どちらの資格も、もう一方の試験の免除にはなりません(診断士規則第41条、行政書士法第2条)。
この記事の数値は、行政書士試験研究センター、中小企業庁、日本中小企業診断士協会連合会の公式発表と、e-Gov 法令検索の各法令(2026-10-03 時点)にもとづきます。診断士の年収・勉強時間・独立開業の割合のように、公的な一次資料がない数字は載せていません。
当サイトに掲載しているのは、行政書士の論点別問題493問です(2026-10-03 集計)。中小企業診断士の問題はありません。診断士の1次試験の「経営法務」の範囲に出てくる民法と会社法は、当サイトの民法118問と商法・会社法70問が扱う法律と同じです。
2資格の早見表
| 項目 | 行政書士 | 中小企業診断士 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 行政書士法 | 中小企業支援法(第11条・第12条)と、登録等及び試験に関する規則 |
| 主な業務の定め | 官公署に提出する書類・権利義務事実証明に関する書類の作成など(第1条の3) | 中小企業の経営診断(経営の診断・経営に関する助言)に従事する者の登録(支援法第11条) |
| 資格者でない人の業務の禁止 | あり(第19条第1項) | 支援法には定めがない |
| 名称の使用制限 | あり(第19条の2) | 支援法には定めがない |
| 受験資格 | 年齢・学歴・国籍等に関係なく受験できる | 1次は年齢・性別・学歴等に関係なく受験できる。2次は1次の合格者 |
| 試験の構成 | 1回の試験(法令等46題・基礎知識14題、300点満点) | 1次(7科目・多肢選択式)→ 2次(筆記・事例Ⅰ〜Ⅳ) |
| 令和8年度の試験日 | 11月8日 | 1次:8月1日・2日、2次:10月25日 |
| 令和7年度の合格率 | 14.54%(受験者に対する合格者) | 1次23.7%、2次17.6%(いずれも欠席した科目がない受験者に対する合格者) |
出典は、行政書士が令和8年度行政書士試験のご案内と令和7年度試験実施結果の概要、診断士が中小企業庁 令和8年度の中小企業診断士試験についてとJF-CMCA 申込者数・合格率等の推移です。
業務の違い:条文で見る
行政書士の業務は、行政書士法第1条の3第1項が定めています。
- 行政書士は、「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類」その他、権利義務または事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を作成することを業とします。
- 行政書士または行政書士法人でない者は、他人の依頼を受け、報酬を得て、業として第1条の3の業務を行うことができません(第19条第1項)。例外は、他の法律に別段の定めがある場合と、総務省令で定める定型的で容易な手続の電磁的記録の作成などです。
- 行政書士でない者は、「行政書士」またはこれと紛らわしい名称を用いてはなりません(第19条の2第1項)。
- 一方、書類の作成であっても、他の法律でその業務を行うことが制限されているものは行えません(第1条の3第2項)。
条文の出典は、e-Gov 法令検索の行政書士法です(2026-10-03 時点の現行条文。業務の定めは第1条の3です)。
中小企業診断士の根拠は、中小企業支援法です。第11条第1項は、経済産業大臣が、中小企業の経営診断の業務に従事する者で、第12条第1項の試験に合格し、経済産業省令で定める実務の経験その他の条件に適合する者などについて、登録簿に登録すると定めています。第12条第1項は、経営診断に必要な知識についての試験を経済産業大臣が行うと定めています。同法には、診断士に限る業務や、診断士の名称の使用を制限する規定がありません(2026-10-03 時点の現行条文。他の法令・告示は、この記事では扱いません)。
行政書士法の全文には「診断士」の語がなく、診断士の規則の全文には「行政書士」の語がありません。2つの資格は、法律の上では、互いを前提にしない別々の制度です。
当サイトの行政書士の問題には、行政書士法の業務範囲を扱う基礎知識の問題があります。条文を読んだあとに、選択肢で確認できます。
試験の仕組みの違い
| 項目 | 行政書士(令和8年度) | 中小企業診断士(令和8年度) |
|---|---|---|
| 試験日 | 11月8日(日)13:00〜16:00 | 1次:8月1日(土)・2日(日)、2次:10月25日(日) |
| 科目・形式 | 法令等(憲法・行政法・民法・商法・基礎法学)46題+基礎知識14題。択一式・多肢選択式・記述式 | 1次:7科目の多肢選択式(計510分)。2次:事例Ⅰ〜Ⅳの筆記(各80分)。令和8年度から口述試験は廃止 |
| 法令の基準日 | 令和8年4月1日現在施行の法令に関して出題 | 受験案内で確認 |
| 合格基準 | 法令等122点以上・基礎知識24点以上・全体180点以上(令和7年度の基準) | 1次:総点数の60%以上で、1科目でも満点の40%未満がないこと。2次も同じ型の基準 |
| 科目合格 | なし | 1次にあり(規則第41条第2項:合格した年度の初めから3年以内の1次で免除を申請できる) |
診断士の1次試験の7科目は、経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理(オペレーション・マネジメント)、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策です。2次試験は、1次の合格者が受ける筆記試験で、受験できるのは令和7年度または令和8年度の1次合格者です(規則附則の経過措置の対象者を除く。中小企業庁の発表)。
行政書士試験は、受験者が受ける試験が1つで、基礎知識にも足切りの基準点があります。診断士は、1次と2次の2段階で、1次には科目ごとの合格と有効期間があります。「一度に何を受けるか」という点で、試験の組み立てが違います。
令和8年度の受験手数料:行政書士10,400円。中小企業診断士は、1次17,200円・2次15,100円(令和7年度までは1次14,500円・2次17,800円で、総額は32,300円で同額)。最終確認日:2026-10-03。出典:行政書士試験研究センター 令和8年度試験のご案内、JF-CMCA 令和8年度 1次試験案内。
合格率は、分母をそろえて読む
令和7年度の数字を、分母とあわせて並べます。
| 資格・試験 | 分母 | 合格者 | 率 | 率の種類 |
|---|---|---|---|---|
| 行政書士 | 受験者50,163人 | 7,292人 | 14.54% | センター公表 |
| 診断士 1次 | 受験者②(欠席科目なし)18,360人 | 4,344人 | 23.7% | JF-CMCA 公表 |
| 診断士 2次 | 受験者②(欠席科目なし)7,044人 | 最終合格者1,240人 | 17.6% | JF-CMCA 公表 |
令和8年度の診断士1次試験は、受験者(欠席科目のない受験者)17,829人・合格者4,099人で、合格率は23.0%です(JF-CMCA の令和8年度1次統計)。令和8年度の2次試験は10月25日に実施され、この記事の確認日(2026-10-04)の時点では結果は出ていません。
読むときの注意点が3つあります。
- 診断士の1次の率は、1次の合格者だけの割合です。 1次に合格した人が、2次にも合格して初めて、診断士の登録の要件の1つである「試験の合格」になります(支援法第11条第1項第1号)。1次と2次をあわせた最終合格率は、JF-CMCA の公表表には載っていないため、この記事では書きません。
- 診断士の分母は「欠席した科目がひとつもない受験者」です。 1科目でも受験した人(令和7年度は21,678人)とは別の数字です。行政書士の分母は、受験者全体です。
- 行政書士の合格率は、1回の試験の結果です。 14.54%は、令和6年度の12.90%から上がっていますが(センター公表)、率の上下だけでは、試験の難しさの変化は判断できません。10年分の推移は、行政書士の難易度と合格率にまとめています。
令和7年度の受験者数・合格者数・合格率:行政書士 受験者50,163人・合格者7,292人・合格率14.54%(前年度12.90%)。診断士 1次 受験者②18,360人・合格者4,344人・合格率23.7%、2次 受験者②7,044人・最終合格者1,240人・合格率17.6%。最終確認日:2026-10-03。出典:行政書士試験研究センター、JF-CMCA 申込者数・合格率等の推移。
この記事では、勉強時間・必要な年数・偏差値は載せていません。公式の発表に、それらの数字がないためです。
科目の重なり:診断士の「経営法務」と行政書士の法令
診断士の1次試験の「経営法務」は、企業の経営に関する法務の基本的な知識を判定する科目です(JF-CMCA の令和8年度1次試験案内)。案内には、出題の内容を中心とする範囲として、次のような法律が挙がっています。
- 民法(物権、債権、相続)
- 会社法(会社の種類、株式、会社の機関(株主総会・取締役・取締役会・監査役・監査役会等)、会社の計算、合併、株式譲渡の制限、取締役の忠実義務)
- 金融商品取引法、独占禁止法、不正競争防止法 など
- 産業財産権・著作権などの知的財産権、契約に関する基礎知識
行政書士試験の「法令等」にも、民法と商法(会社法を含む)が含まれます(令和8年度試験のご案内)。つまり、同じ法律名が両方の範囲に出てきます。 ただし、試験が問う深さと出題の形は、2つの試験で別です。診断士の案内は「基本的な知識を判定する」としており、行政書士試験は法令等で択一式・多肢選択式・記述式が出ます。「片方を勉強すればもう片方が免除される」という制度はありません。
重なる法律の問題は、当サイトの行政書士の問題で確認できます。診断士の問題はないため、診断士の対策には使えない点にご注意ください。
ダブル受験の順序:制度の事実から考える
ダブル受験の順序は、「どちらが先に受かる資格か」ではなく、制度が決める条件を先に並べると整理できます。
| 確認する点 | 制度の事実 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一方がもう一方の免除になるか | ならない。診断士の1次免除に行政書士はなく、行政書士法第2条に診断士はない | 規則第41条、行政書士法第2条 |
| 診断士の2次を受けられる年度 | 当年度または前年度の1次合格者(令和8年度の2次は、令和7年度または令和8年度の1次合格者) | 規則第43条、中小企業庁の発表 |
| 診断士の1次の科目合格の有効期間 | 合格した年度の初めから3年以内の1次で免除を申請できる | 規則第41条第2項 |
| 行政書士試験の受験機会 | 令和8年度の案内に載っている試験日は11月8日の1回。受験資格の制限なし | 試験のご案内 |
| 令和8年度の日程 | 診断士1次:8月1日・2日、診断士2次:10月25日、行政書士:11月8日 | 各団体の案内 |
この表から組み立てられる考え方の例が、次の2つです(当サイトが、制度の事実から組み立てた例で、どちらが良いと決めるものではありません)。
- 行政書士を先に受ける例: 11月8日の本試験のあと、次の年度の1次試験(8月)に向けて、経営法務の範囲にある民法・会社法を、行政書士の学習で扱った状態から診断士の学習に入れます。行政書士試験の結果の発表は翌年の1月です(令和7年度は令和8年1月28日付の発表)。
- 診断士の1次を先に受ける例: 8月の1次に合格すると、当年度または翌年度の2次を受けられます。2次(10月25日)と行政書士試験(11月8日)の間は2週間で、同じ年度に両方を受ける場合は、本番が近い時期に重なります。令和9年度の日程は、2026-10-03 時点で各団体の案内に掲載がないため、実際の年間計画は、各団体の最新の案内で確認してください。
どちらの例でも、診断士の1次試験の科目合格には有効期間があり、2次の受験資格にも年度の制限があるため、「いつ1次を受けるか」が全体の計画を左右します。
資格を得たあとの登録の違い
試験に合格しただけでは、どちらの資格も、仕事の資格としては完成しません。
- 行政書士: 行政書士となる資格を有する者が、行政書士になるには、行政書士名簿への登録を受けなければなりません。名簿は日本行政書士会連合会に備えられ、登録は同連合会が行います(行政書士法第6条)。
- 中小企業診断士: 診断士として登録されるには、申請の日前3年以内に試験に合格し、合格した日から申請の日までに、実務に従事した日数または実務補習を受講した日数の合計が15日以上あることが条件です(診断士規則第1条第1項)。登録は、経済産業大臣の登録簿に行われます(支援法第11条)。
「合格のあとに何が必要か」が、2つの資格で違います。行政書士は合格のあとに名簿登録、診断士は合格のあとに実務従事または実務補習の日数と登録、という流れです。費用や手続の詳細は、各団体の案内で確認してください。
まとめ:比べられるのは制度の事実、選ぶのは仕事
- 行政書士法・中小企業支援法は、それぞれ別の制度を定めています。業務の禁止(行政書士法第19条)と名称の使用制限(同第19条の2)があるのは行政書士法で、支援法には定めがありません。
- 令和7年度の合格率は、行政書士14.54%、診断士1次23.7%・2次17.6%で、分母の定義が違います。優劣は言えません。
- どちらの資格も、もう一方の試験の免除にはなりません(診断士規則第41条、行政書士法第2条)。
- 診断士の経営法務と行政書士の法令等は、民法・会社法が両方の範囲に出ます。深さと出題の形は別です。
- 令和8年度の日程は、診断士1次が8月、2次が10月25日、行政書士が11月8日です。令和9年度は、2026-10-03 時点で各団体の案内に掲載がありません。
行政書士の問題で民法と会社法を確認したい方は、次のハブから科目別に解けます。
よくある質問
Q中小企業診断士の資格があれば、行政書士として登録できますか?
できません。行政書士法第2条が行政書士となる資格を定めているのは、行政書士試験の合格者、弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を有する者、公務員として行政事務を担当した期間が一定以上の者などで、中小企業診断士は挙げられていません(2026年10月3日、e-Gov 法令検索の現行条文で確認。同法の全文に「診断士」の語もありません)。行政書士になるには、第2条の要件を満たしたうえで、第6条の行政書士名簿への登録を受けます。
Q行政書士の資格があれば、中小企業診断士の1次試験が免除されますか?
免除されません。中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則第41条第1項が定める1次試験の免除の対象は、経済学の教授等、公認会計士、不動産鑑定士、税理士、弁護士、技術士(情報工学部門)、情報処理技術者試験の一部区分の合格者などで、行政書士は含まれていません(2026年10月3日時点の現行規則。同規則に「行政書士」の語はありません)。
Q中小企業診断士の資格で、行政書士の仕事をしてよいですか?
行政書士法第19条第1項は、行政書士または行政書士法人でない者が、報酬を得て業として第1条の3の業務(官公署に提出する書類などの作成)を行うことを禁じています。例外は、他の法律に別段の定めがある場合などで、中小企業診断士であることは例外として挙げられていません。個別の業務が第1条の3に当たるかどうかは、行政書士会など専門家に確認してください。
Q中小企業診断士と行政書士は、どちらが難しいですか?
公式の資料からは判断できません。令和7年度の合格率は、行政書士が14.54%(受験者に対する合格者)、中小企業診断士の1次試験が23.7%(欠席した科目がない受験者に対する合格者)、2次試験が17.6%ですが、診断士は1次と2次に分かれ、1次には科目合格もあり、率の分母の定義も異なります。1次と2次をあわせた最終合格率は、公式の表には載っていません。
Q同じ年度に、中小企業診断士と行政書士の本試験を両方受けられますか?
令和8年度の日程でみると、診断士の1次試験が8月1日・2日、2次試験が10月25日、行政書士試験が11月8日で、日程は重なりません。ただし診断士の2次試験は1次試験に合格した人だけが受けられるため(令和7年度または令和8年度の1次合格者)、すべてを同じ年度に受けられるかは1次試験の結果次第です。令和9年度の日程は、2026-10-03 時点で、行政書士試験研究センター・中小企業庁・日本中小企業診断士協会連合会の案内に掲載がありません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

