問題
Aさん(74 歳,女性)は,2 年前に母親が亡くなった頃からふさぎ込むようになり,物忘れが徐々に目立ってきた。物忘れは,ついさっきのことを忘れることが多く,本人の物忘れへの自覚は乏しかった。数ヵ月前から,「お母さんが来ているでしょう」と夜中に何度も夫を起こすようになった。昼間は比較的しっかりしているが,時折,「誰かが財布を盗んだ」と訴えて,険しい表情になることがある。 次のうち,Aさんに疑われる診断名として,適切なものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第26回精神保健福祉士国家試験(令和5年度)」専門科目 問題4(精神疾患とその治療)
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
正解は 2
Aさんには、次のような認知症を疑わせる特徴がそろっています。
- 物忘れが徐々に進み、特に「ついさっきのこと」を忘れる(近時記憶の障害)
- 物忘れの自覚が乏しい
- 亡くなった母親が来ていると言う、財布を盗まれたと訴える(物盗られ妄想)
- 夜中に混乱しやすく、昼間は比較的しっかりしている
単なる老化の物忘れは「忘れたことを自覚している」ことが多いのに対し、認知症では自覚が乏しくなりやすいのがポイントです。不安症・うつ病・統合失調症・妄想症では、こうした記憶の障害が中心にはなりません。
なぜ正解か
正解は 2。74歳で、物忘れが「徐々に」進行し、近時記憶(直前の出来事)の障害が目立ち、物忘れへの自覚(病識)が乏しい。さらに「お母さんが来ている」という誤った認識や、「誰かが財布を盗んだ」という物盗られ妄想がみられる。夜間に症状が強まり昼間は比較的しっかりしている点も、高齢の認知症の人によくみられる経過で、全体として認知症が最も疑われる。
ほかの選択肢
- 1:誤り。全般性不安症は、さまざまな出来事への過剰な心配が長く続く状態で、記憶障害や妄想は中心症状ではない。
- 3:誤り。母親の死をきっかけにふさぎ込んだ点はうつ病も考えさせるが、高齢者のうつ病の物忘れ(いわゆる仮性認知症)は本人が「忘れっぽい」と強く訴えることが多く、自覚が乏しい本事例とは合わない。物盗られ妄想も認知症に典型的。
- 4:誤り。統合失調症は多くが青年期に発症し、幻聴や被害妄想などが中心。74歳で記憶障害が先に進む経過とは合わない。
- 5:誤り。妄想症(妄想性障害)は、妄想以外の機能は比較的保たれるのが特徴で、記憶障害が進行する本事例とは合わない。
正解の読み解き
正解は 2。事例問題では「年齢・経過・中心症状・本人の自覚」の4点で絞り込むとよい。
| 手がかり | Aさん | 認知症と合うか |
|---|---|---|
| 年齢 | 74歳 | 高齢発症 |
| 経過 | 2年かけて徐々に | 緩やかに進行 |
| 記憶 | さっきのことを忘れる | 近時記憶の障害 |
| 自覚 | 乏しい | 病識の低下 |
| 精神症状 | 物盗られ妄想・誤認 | 行動・心理症状(BPSD) |
物盗られ妄想は、置き忘れたことを思い出せず「誰かが盗った」と考えてしまうもので、身近な介護者が疑われやすい。認知症の行動・心理症状(BPSD)として代表的である。
誤りの肢の掘り下げ
- うつ病との鑑別:高齢者のうつ病では、集中力・意欲の低下から物忘れが目立ち、認知症と見分けにくいことがある(仮性認知症)。一般に、うつ病では発症の時期が比較的はっきりしており、本人が物忘れを強く気にして訴える、質問に「わからない」と答えがちである、といった点が手がかりになる。本事例の「自覚が乏しい」「物盗られ妄想」は認知症寄りの所見である。ただし、うつ状態が認知症の初期に現れることもあり、両者は重なりうる。
- 統合失調症・妄想症:どちらも記憶障害が中心ではない。高齢で初めて妄想が出た場合でも、まず認知症や身体疾患・薬剤の影響を確かめることが大切である。
- 全般性不安症:不安・緊張・不眠などが中心で、妄想は通常みられない。
関連論点
- 夜間の症状悪化:夕方から夜にかけて混乱が強まる、夜中に起きて誤った認識に基づく行動をとるといった経過は、せん妄の合併でもみられる。せん妄は意識の障害で、急に始まり時間帯で大きく変動するのが特徴。認知症の人はせん妄を起こしやすく、両者の区別は試験の頻出論点。
- 認知症の種類:アルツハイマー型(近時記憶障害から始まり緩やかに進行)、血管性(脳血管障害と関連し段階的に悪化しやすい)、レビー小体型(はっきりした幻視・認知機能の変動・パーキンソン症状)、前頭側頭型(人格変化・脱抑制・常同行動)を特徴で区別できるようにしておく。本問は種類までは問わず「認知症」を選ばせている。
支援の視点
物盗られ妄想は、本人にとっては事実として感じられている。否定や説得は不安と怒りを強めやすいため、気持ちを受け止め一緒に探すなどの関わりと、介護する家族の負担への支援を組み合わせることが求められる。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第26回精神保健福祉士国家試験(令和5年度)」専門科目 問題4(精神疾患とその治療)です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ。原文にふりがなが付いている語は、ふりがなも付けています)。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。精神保健福祉に関する法令・制度は改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
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