問題
Bさん(28 歳,女性)は,数年前から,紙幣に誰かの血液が付着しているかもしれないという考えにとらわれて,紙幣に直接触れることができない。やむを得ず触れた後には,長時間手を洗うため,生活に支障が生じており,困って自ら精神科を受診した。 次のうち,Bさんの症状として,正しいものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第26回精神保健福祉士国家試験(令和5年度)」専門科目 問題5(精神疾患とその治療)
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
正解は 3
Bさんは「紙幣に誰かの血液が付いているかもしれない」という考えが頭から離れず、自分でもおかしいと思いながら打ち消せません。このように、ばかばかしいと分かっていても繰り返し浮かんでくる考えを強迫観念といいます。その不安を打ち消すために長時間手を洗うのは強迫行為です。
Bさんは困って自分から受診しており、考えが行き過ぎだと自覚しています。これは、本人が正しいと確信して訂正できない「妄想」との大きな違いです。選択肢1・2・4は妄想、5の観念奔逸は躁状態でみられる思考の速さの障害です。
なぜ正解か
正解は 3。強迫観念とは、本人の意思に反して繰り返し浮かび、強い不安や苦痛をもたらす考え・イメージ・衝動である。Bさんの「紙幣に血液が付着しているかもしれない」という考えは、汚染への恐怖を内容とする強迫観念で、長時間の手洗いはそれを打ち消すための強迫行為。生活に支障が出て自ら受診していることから、考えの不合理さをある程度自覚していることがうかがえ、強迫症の典型的な姿である。
ほかの選択肢
- 1:誤り。血統妄想は「自分は高貴な家柄の出だ」などと確信する誇大妄想の一つ。
- 2:誤り。被毒妄想は「食べ物に毒を入れられている」と確信する被害妄想。汚れへの心配ではなく、他者に害されるという確信が中心。
- 4:誤り。妄想知覚は、実際に知覚したもの(例:信号が赤に変わった)に、理由なく特別な意味づけ(例:自分が狙われている合図だ)がされる一次妄想。
- 5:誤り。観念奔逸は、考えが次々に浮かび話題が飛ぶ思考の障害で、躁状態でみられる。
正解の根拠
正解は 3。DSM-5-TRの強迫症は、強迫観念と強迫行為のどちらか(多くは両方)があり、それが時間を浪費させる(1日1時間以上など)か、著しい苦痛や生活上の支障をもたらしている状態とされる。強迫観念は、本人がそれを無視・抑え込もうとしたり、別の考えや行為で打ち消そうとしたりする点が特徴である。
妄想との違い
強迫観念と妄想は「頭から離れない考え」という点で似て見えるが、次の点で区別される。
| 強迫観念 | 妄想 | |
|---|---|---|
| 内容への態度 | 行き過ぎ・不合理と感じ、打ち消そうとする | 正しいと確信している |
| 訂正 | 頭では分かっているが不安が消えない | 訂正できない |
| 受診 | 苦しくて自ら受診することが多い | 病識が乏しく自ら受診しにくい |
DSM-5以降は、強迫症の病識を「良好または十分」「不十分」「欠如・妄想的な信念を伴う」に分けて特定するようになっており、病識の乏しい強迫症もありうる点は知っておきたい。
誤りの肢の掘り下げ
- 1 血統妄想・2 被毒妄想:妄想は内容で、誇大妄想(血統・発明・宗教など)、被害妄想(被毒・追跡・注察・関係など)、微小妄想(罪業・貧困・心気)に分類される。被毒妄想は統合失調症などでみられ、汚染への不安とは「他者からの加害を確信しているか」で区別できる。
- 4 妄想知覚:統合失調症の一次妄想(了解不能で、ほかの心理現象から導き出せない妄想)の代表で、ほかに妄想気分・妄想着想がある。第26回問6で問われる妄想気分とセットで覚えたい。
- 5 観念奔逸:思考の速さ・まとまりの障害(思考形式の障害)。強迫観念は思考内容の障害なので、そもそも分類が違う。
関連論点
- 強迫症の関連症群:DSM-5では強迫症と関連する疾患群として、醜形恐怖症、ためこみ症、抜毛症、皮膚むしり症が同じ章にまとめられた。
- 治療:認知行動療法の一つである曝露反応妨害法(不安を感じる状況にあえて身を置き、確認や手洗いをしないで不安が下がるのを体験する)と、薬物療法が中心となる。
- 家族の巻き込み:家族が確認や手洗いに付き合わされることがあり、家族の負担と、症状を強める関わりになっていないかにも目を向ける必要がある。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第26回精神保健福祉士国家試験(令和5年度)」専門科目 問題5(精神疾患とその治療)です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ。原文にふりがなが付いている語は、ふりがなも付けています)。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。精神保健福祉に関する法令・制度は改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:合格ナビ運営事務局(運営者情報)・編集方針。

