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同一労働同一賃金とは?パート有期法8条・9条とガイドラインの要点社労士

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この記事でわかること

同一労働同一賃金は、短時間・有期雇用労働者についてはパートタイム・有期雇用労働法8条(不合理な待遇の禁止)と9条(差別的取扱いの禁止)、派遣労働者については労働者派遣法30条の3・30条の4が根拠です。8条と9条の違い、6条・14条の明示と説明、令和8年10月1日のガイドライン改正、最高裁判決の要旨を整理します。

目次
  1. 同一労働同一賃金の根拠:3つの法令と1つの指針
  2. パート有期法8条と9条:禁止の中身と対象の違い
  3. 雇入れ時の明示と説明:6条・14条・施行規則2条
  4. 派遣労働者:労働者派遣法30条の3と30条の4
  5. ガイドライン(指針)の読み方と、令和8年10月1日の改正
  6. 最高裁判決:改正前の労働契約法20条をめぐる判断
  7. 社労士試験での問われ方と、間違えやすいポイント
  8. 相談先と、法令基準日
  9. まとめ
結論:「同一労働同一賃金」は、条文の言葉ではなく、厚生労働省の指針(同一労働同一賃金ガイドライン)が使う言葉です。法律上の根拠は、短時間・有期雇用労働者についてはパートタイム・有期雇用労働法(以下「パート有期法」)8条(不合理と認められる待遇の相違の禁止)と9条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者への差別的取扱いの禁止)、派遣労働者については労働者派遣法30条の3(派遣先の通常の労働者との不合理な相違の禁止など)と30条の4(労使協定による待遇)です。ガイドラインはこの4条に定める事項について、どのような待遇の相違が不合理と認められるか、認められないかの原則となる考え方と具体例を示しています。ガイドラインは令和8年4月28日の厚生労働省告示第203号で改正され、改正後のものが令和8年10月1日から適用されています。

「同一労働同一賃金」は、働く人も、事業主も、社労士試験を受ける人も検索する言葉です。この記事は、パート有期法・同法施行規則・労働者派遣法(e-Gov 法令検索)の条文と、厚生労働省のガイドライン・Q&A・リーフレット、裁判所の裁判例検索の要旨だけをもとに、制度の骨組みを整理します。個別の会社や個人の待遇がこの記事のどれに当たるかという助言はしていません(相談先は、記事末尾の「相談先と、法令基準日」に載せています)。パート有期法の紛争解決援助と調停は特定社会保険労務士の記事、一般常識の科目全体は社労士 一般常識(社一・労一)対策の記事でも触れています。

同一労働同一賃金の根拠:3つの法令と1つの指針

パート有期法、同法施行規則、労働者派遣法、同法施行規則の条文には、「同一労働同一賃金」という語の記載がありません(e-Gov 法令検索、2026-10-09 時点)。この語が出てくるのは、厚生労働省の指針です。ガイドラインの第1は、次のように書いています。

「我が国が目指す同一労働同一賃金は、同一の事業主に雇用される通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱いの解消並びに派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱いの解消(協定対象派遣労働者にあっては、当該協定対象派遣労働者の待遇が労働者派遣法第30条の4第1項の協定により決定された事項に沿った運用がなされていること)を目指すものである。」

ガイドラインの正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(平成30年厚生労働省告示第430号)で、令和8年4月28日厚生労働省告示第203号による改正があります。第1は、この指針がパート有期法8条・9条と、労働者派遣法30条の3・30条の4に定める事項に関するものだと書いています。

対象の労働者根拠条文禁止・求められる内容
短時間・有期雇用労働者(パート有期法2条3項)パート有期法8条待遇のそれぞれについて、通常の労働者の待遇との間で、不合理と認められる相違を設けてはならない
同上のうち、通常の労働者と同視すべき者パート有期法9条短時間・有期雇用労働者であることを理由として、待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない
派遣労働者労働者派遣法30条の3第1項・第2項派遣元事業主が、派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間で、不合理と認められる相違を設けてはならない(1項)。一定の派遣労働者について、正当な理由がなく不利なものとしてはならない(2項)
協定対象派遣労働者労働者派遣法30条の4第1項書面による労使協定で1号〜6号の事項を定めたときは、30条の3は協定で定める範囲の派遣労働者の待遇(40条2項の教育訓練・同条3項の福利厚生施設その他の厚生労働省令で定めるものに係るものを除く)には適用しない(ただし書あり)

パート有期法8条と9条:禁止の中身と対象の違い

2条は、短時間労働者を「一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者…の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」、有期雇用労働者を「事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者」、この両者を「短時間・有期雇用労働者」と定義しています。

項目8条(不合理な待遇の禁止)9条(差別的取扱いの禁止)
禁止の内容不合理と認められる相違を設けてはならない差別的取扱いをしてはならない
対象短時間・有期雇用労働者(待遇のそれぞれについて)「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」(待遇のそれぞれについて)
比べる相手・理由当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間で見る「短時間・有期雇用労働者であることを理由として」差別的取扱いをしてはならない
考慮する事情・要件職務の内容(業務の内容及び責任の程度)、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるもの職務の内容が通常の労働者と同一で、当該事業所における慣行その他の事情からみて、事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、職務の内容及び配置が通常の労働者の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれること

8条の「職務の内容」は、条文の中で「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」と定義されています。9条は、職務の内容が通常の労働者と同一であること、および職務の内容及び配置の変更の範囲が通常の労働者と同一の範囲と見込まれることを、対象の要件にしています。

経過措置も確認しておきます。働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の附則11条1項は、中小事業主について、令和3年3月31日までの間、改正後のパート有期法の一部の規定を適用しないと定めていました。この期間は過ぎているため、現在はこの経過措置による適用除外はありません(2026-10-09 時点)。

厚生労働大臣は、パート有期法18条1項により、事業主に対して報告を求め、または助言、指導若しくは勧告をすることができます。18条2項は、勧告に従わなかったときにその旨を公表することができる対象を「第六条第一項、第九条、第十一条第一項、第十二条から第十四条まで及び第十六条」の規定に違反している事業主と書いており、8条は列挙に含まれていません。

雇入れ時の明示と説明:6条・14条・施行規則2条

パート有期法は、待遇そのものの規制のほかに、事業主に明示と説明を求めています。

条文内容
6条1項短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、労働基準法15条1項の厚生労働省令で定める事項以外の、厚生労働省令で定める「特定事項」を、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法で明示しなければならない
同法施行規則2条1項特定事項は、1号 昇給の有無、2号 退職手当の有無、3号 賞与の有無、4号 法14条2項の規定による説明を求めることができる旨、5号 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
14条1項雇い入れたときは、速やかに、8条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法15条1項の事項と特定事項を除く)に関し講ずることとしている措置の内容を、説明しなければならない
14条2項雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由、並びに6条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項を、説明しなければならない
14条3項短時間・有期雇用労働者が2項の求めをしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
16条雇用管理の改善等に関する事項に関し、その雇用する短時間・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならない

施行規則2条1項4号は、令和8年厚生労働省令第87号による改正で加わり、令和8年10月1日に施行された号です。2026年4月1日現在の版には4号がなく、旧4号(相談窓口)が5号になっています。厚生労働省のリーフレットは、現行の明示事項(昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無・相談窓口)に加えて、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」の明示が必要になる、と説明しています。

14条1項と2項は、いつ・何を説明するかが違います。1項は雇い入れたときの、講ずることとしている措置の内容、2項は求めがあったときの、待遇の相違の内容と理由・考慮した事項です。

派遣労働者:労働者派遣法30条の3と30条の4

派遣労働者は、雇用関係にあるのが派遣元事業主、指揮命令関係にあるのが派遣先という特殊性があります(ガイドライン第1)。30条の3と30条の4の主語は「派遣元事業主」です。

労働者派遣法30条の3は、2つの項に分かれています。

  • 1項:派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない
  • 2項:派遣元事業主は、職務の内容が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者であって、労働者派遣契約及び派遣先における慣行その他の事情からみて、派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が派遣先との雇用関係が終了するまでの全期間における当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはならない

30条の4第1項は、派遣元事業主が、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による協定により、その雇用する派遣労働者の待遇(40条2項の教育訓練、同条3項の福利厚生施設その他の厚生労働省令で定めるものに係るものを除く)について、次の事項を定めたときは、30条の3の規定は、1号の範囲に属する派遣労働者の待遇には適用しない、と定めています。

号協定で定める事項
1号その待遇が協定で定めるところによることとされる派遣労働者の範囲
2号1号の範囲の派遣労働者の賃金の決定の方法(イ・ロに該当するものに限る。通勤手当その他の厚生労働省令で定めるものはイのみ)。イ:派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の賃金の額となること。ロ:派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に賃金が改善されること
3号派遣元事業主は、賃金の決定にあたって、職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価して決定すること
4号1号の範囲の派遣労働者の待遇(賃金を除く)の決定の方法(派遣元事業主に雇用される通常の労働者の待遇との間で、不合理と認められる相違が生じることとならないものに限る)
5号派遣元事業主が1号の範囲の派遣労働者に、30条の2第1項の教育訓練を実施すること
6号前各号のほか、厚生労働省令で定める事項

ただし書は、2号、4号若しくは5号の事項で協定で定めたものを遵守していない場合、または3号に関する協定の定めによる公正な評価に取り組んでいない場合は、この限りでない(30条の3が適用される)としています。比べる相手が、30条の3は「派遣先に雇用される通常の労働者」、30条の4第1項4号は「派遣元事業主に雇用される通常の労働者(派遣労働者を除く)」で、違います。

ガイドライン(指針)の読み方と、令和8年10月1日の改正

ガイドラインは、第1 目的、第2 基本的な考え方、第3 短時間・有期雇用労働者、第4 派遣労働者、第5 協定対象派遣労働者、第6 所定労働時間が通常の労働者と同一であり、かつ、事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者等、の6つの部分でできています。第3と第4は、基本給・賞与・退職手当・各種手当・福利厚生・その他に分けて、「原則となる考え方」と「問題とならない例」「問題となる例」を示しています。第2は、ガイドラインの性格を次のように書いています。

「この指針に原則となる考え方が示されていない待遇や、具体例に該当しない場合であっても、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の待遇の相違が不合理と認められる等の可能性があり、その場合についても、不合理と認められる待遇の相違の解消等が求められる。」

厚生労働省の特集ページによると、ガイドラインは令和8年4月28日に公布され、令和8年10月1日から適用されています。厚生労働省のQ&A(令和8年改正)は、追加の内容を次のように説明しています。

追加・明確化された内容ガイドライン上の位置
「留意すべき事項」(解消等の取組を進めるに当たって留意すべき事項)の追加(Q&A 問1-1)。就業規則の変更により労働条件を変更する場合の留意事項は、Q&A 問1-3が「第2の(3)」としている第2(基本的な考え方)など
改正前に記載のなかった6つの待遇の追加:退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇、褒賞第3・第4の各項目
「その他の事情」の取扱い第3・第4の(注)1
「通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的で待遇を行う場合の取扱い第3の(注)3、第4の(注)2
定年後継続雇用の有期雇用労働者の取扱い、基本給の(注)の移設第2・第3
所定労働時間が通常の労働者と同一で無期契約の労働者等第6

例えば、ガイドラインは通勤手当・出張旅費、家族手当、夏季冬季休暇について、次のように書いています(第3、短時間・有期雇用労働者)。

「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の通勤手当及び出張旅費を支給しなければならない。」
「労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない。」
「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない。」

通勤手当・出張旅費は、Q&Aが挙げる6つの追加項目には入っていません。家族手当と夏季冬季休暇は、6つに入っています。退職手当(同じく6つの1つ)は、「しなければならない」ではなく、条件を付けた次の書き方です。

「退職手当については、…通常の労働者と同様に短時間・有期雇用労働者にも当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当するにもかかわらず、…均衡のとれた内容の退職手当を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て、…基本給を高く支給している等の事情もない場合、当該退職手当の相違は不合理と認められるものに当たりうることに留意すべきである。」

ガイドラインには、「しなければならない」と書く項目と、「当たりうる」と書く項目があり、条件も項目ごとに違います。家族手当の「相応に継続的な勤務が見込まれる」のように、条件を含めて読むものです。引用は抜粋なので、全文はガイドラインでご確認ください。

ガイドラインの第2は、「通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に賃金その他の待遇の決定基準・ルールの相違がある場合」にも8条の適用を受けるとしたうえで、「将来の役割期待が異なるため、待遇の決定基準・ルールが異なる」等の主観的又は抽象的な説明では足りない、と書いています。

最高裁判決:改正前の労働契約法20条をめぐる判断

ガイドラインのQ&A(令和8年改正)は、8条が「職務の内容等が異なる場合であっても、その違いを考慮して両者の待遇が均衡のとれたものであることを求めるもの」と解されるとして、「ハマキョウレックス事件(最判平成30年6月1日)」を挙げています(問1-4)。また、追加された6つの待遇のうち褒賞を除く5つは最高裁判決を踏まえたものだと説明しています。

裁判所の裁判例検索に載っている次の判決は、いずれも平成30年法律第71号による改正前の労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるかが争われたものです(判示事項の表記は、平成30年6月1日の判決が「労働契約法20条」、ほかの6件が「労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条」。現在のパート有期法8条の条文そのものについての判決ではありません)。判示事項と裁判要旨の言葉で、要点だけを並べます。結論は「判示の事情の下で」の判断であり、待遇の名前が同じなら同じ結論になる、という意味ではありません。

判決(事件番号)争われた待遇判示事項の結論
最高裁第二小法廷 平成30年6月1日判決(平成28(受)2099)皆勤手当無期契約労働者に支給し有期契約労働者に支給しない相違は、判示の事情の下で、不合理と認められるものに当たるとされた
最高裁第三小法廷 令和2年10月13日判決(令和1(受)1055)賞与判示の事情の下で、不合理と認められるものに当たらないとされた
最高裁第三小法廷 令和2年10月13日判決(令和1(受)1190)退職金判示の事情の下で、不合理と認められるものに当たらないとされた
最高裁第一小法廷 令和2年10月15日判決(平成30(受)1519)夏期休暇・冬期休暇判示の事情の下で、不合理と認められるものに当たるとされた
最高裁第一小法廷 令和2年10月15日判決(令和1(受)777)私傷病による病気休暇(有給か無給か)判示の事情の下で、不合理と認められるものに当たるとされた
最高裁第一小法廷 令和2年10月15日判決(令和1(受)794)年末年始勤務手当、祝日給、扶養手当判示の事情の下で、それぞれ不合理と認められるものに当たるとされた
最高裁第一小法廷 令和5年7月20日判決(令和4(受)1293)基本給(定年退職後に再雇用された有期契約労働者との金額の相違)相違の一部が不合理と認められるものに当たるとした原審の判断に違法があるとされた(裁判要旨は、各基本給の性質や支給の目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま判断した点を挙げている)

裁判要旨は、結論に至った事情(待遇の目的、職務の内容の相違、配置の変更の範囲、登用制度の有無、契約期間の見込みなど)を列挙しています。賞与と退職金の判決は、それぞれの待遇が「無期契約労働者としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図る」などの目的から支給されるものとされたこと等を事情に挙げています。ガイドラインの第3の(注)3は、「「通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的があることのみをもって直ちに当該待遇の相違が不合理ではないと当然に認められるものではない」と書いています。

社労士試験での問われ方と、間違えやすいポイント

出題の型を、問題文は載せずに、条文の言葉で整理します。当サイトでは、この論点を「労務管理その他の労働に関する一般常識」の科目で扱っています。

  • ① 8条(不合理な相違の禁止)と9条(差別的取扱いの禁止)の、禁止の内容と対象の違いを問う型
  • ② 8条の考慮要素(職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情のうち待遇の性質・目的に照らして適切と認められるもの)を問う型
  • ③ 雇入れ時の明示(6条)と説明(14条1項・2項)の違いを問う型
  • ④ 短時間労働者・有期雇用労働者の定義(2条)を問う型
  • ⑤ 派遣労働者について、30条の3(派遣先の通常の労働者との比較)と30条の4(労使協定)を問う型
  • ⑥ 勧告に従わないときの公表(18条2項)の対象となる規定を問う型
  • ⑦ 紛争解決援助・調停(24条・25条)を問う型

間違えやすい点は次のとおりです。

  • 「同一労働同一賃金」という言葉は、条文ではなくガイドラインの言葉です。条文の根拠は、パート有期法8条・9条、派遣法30条の3・30条の4です
  • 8条は「不合理と認められる相違」の禁止、9条は「差別的取扱い」の禁止で、9条の対象は要件を満たす者に限られます
  • 8条の比較対象は「当該待遇に対応する通常の労働者の待遇」で、待遇のそれぞれについて見ます
  • 14条1項(雇入れ時・措置の内容)と2項(求めがあったとき・相違の内容と理由・考慮した事項)は別の規定です。3項は、2項の求めをしたことを理由とする不利益取扱いの禁止です
  • 18条2項の公表の対象に、8条は列挙されていません
  • 30条の3・30条の4の主語は派遣元事業主です。30条の4の協定方式でも、ただし書があり、協定の事項を遵守していない場合などは30条の3が適用されます
  • 無期契約で所定労働時間が通常の労働者と同一の人は、パート有期法2条の定義の対象外です(ガイドライン第6)
  • 最高裁の判決は、改正前の労働契約法20条についてのものです。判決の名前や待遇の名称だけで結論を決めず、判示の事情と結論を一組で覚えます

この論点の問題を解く

相談先と、法令基準日

個別の会社や個人の待遇についての相談は、この記事ではお答えできません。厚生労働省のガイドラインのページは、パート有期法やガイドラインの内容についての問い合わせ先の欄で、都道府県労働局所在地一覧を案内しています。厚生労働省のリーフレットの発行元は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。次の公式ページから窓口を探せます。

この記事が引用したパート有期法2条・6条・8条・9条・14条・16条・18条・22条〜25条と、同法施行規則2条1項(4号の追加は令和8年10月1日施行)、労働者派遣法30条の3・30条の4は、e-Gov 法令検索の2026年10月9日時点の現行の版にもとづきます。第58回(令和8年度)社会保険労務士試験の受験案内は、「試験問題の解答に当たり適用すべき法令等は、令和8年4月10日(金)現在施行のものとします」としており、試験日は令和8年8月23日でした。パート有期法の上記の条と労働者派遣法30条の3・30条の4の本文は、2026年4月10日時点の版と現行の版で同じです(労働者派遣法30条の3・30条の4は、未施行の2027年1月1日と2027年4月1日の版とも同じです)。一方、施行規則2条1項4号の追加と、ガイドラインの改正(令和8年厚生労働省告示第203号)は、令和8年10月1日の施行・適用で、第58回の法令基準日と試験日の後です。次の回以降の法令基準日と日程は、その年度の受験案内で確認してください(社労士試験の日程)。当サイトの社労士の問題は、過去の出題論点をもとに作成した論点別問題です。

まとめ

  • 「同一労働同一賃金」は、条文ではなくガイドライン(平成30年厚生労働省告示第430号、令和8年告示第203号で改正)の言葉。根拠は、パート有期法8条・9条と、労働者派遣法30条の3・30条の4
  • 8条は、待遇のそれぞれについて、通常の労働者の待遇との間の不合理と認められる相違の禁止。9条は、通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者への差別的取扱いの禁止
  • 6条・施行規則2条1項(昇給・退職手当・賞与の有無、14条2項の説明を求めることができる旨、相談窓口)で明示、14条1項で雇入れ時の措置の説明、14条2項で求めがあったときの相違の内容・理由の説明。公表の対象(18条2項)に8条は含まれない
  • 派遣労働者について、30条の3・30条の4の主語は派遣元事業主。30条の3は派遣先の通常の労働者との比較、30条の4は労使協定(ただし書あり)
  • 令和8年10月1日から、明示事項の追加(施行規則)とガイドラインの改正が施行・適用され、追加された待遇は退職手当・無事故手当・家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇・褒賞の6つ
  • 最高裁の判決は、改正前の労働契約法20条についての判断。待遇ごとに、判示の事情と結論を一組で読む
本サイトは社会保険労務士試験の実施機関とは関係ありません。条文は e-Gov 法令検索のパートタイム・有期雇用労働法・同法施行規則・労働者派遣法にもとづき、厚生労働省のガイドライン・Q&A・リーフレット、裁判所の裁判例検索の内容は2026年10月9日時点のものです。個別の事情に当てはめた助言は行っていません。

よくある質問

Q同一労働同一賃金とは、正社員と同じ賃金にしなければならないという意味ですか?

条文はそのようには書かれていません。パートタイム・有期雇用労働法8条は、短時間・有期雇用労働者の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間で「不合理と認められる相違を設けてはならない」と定め、考慮する事情として、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを挙げています。短時間・有期雇用労働者であることを理由とする差別的取扱いを禁止するのは9条で、通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者という要件を満たす場合の規定です。個別の会社や個人の待遇が不合理かどうかは、この記事では判断できません。相談は、記事末尾の窓口へどうぞ。

Qパートタイム・有期雇用労働法の8条と9条は、何が違いますか?

8条は「不合理と認められる相違を設けてはならない」、9条は「差別的取扱いをしてはならない」で、禁止の内容が違います。9条の対象は、職務の内容が通常の労働者と同一で、事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、職務の内容及び配置が通常の労働者の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれる短時間・有期雇用労働者です(条文の言葉では「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」)。8条は、この要件を満たすかどうかを問わず、短時間・有期雇用労働者の待遇のそれぞれが対象です。

Q派遣社員にも同一労働同一賃金のルールはありますか?

労働者派遣法30条の3と30条の4があります。30条の3第1項は、派遣元事業主が、その雇用する派遣労働者の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間で、不合理と認められる相違を設けてはならないと定めています。30条の4第1項は、派遣元事業主が、過半数組合または過半数代表者との書面による協定で一定の事項を定めたときは、30条の3の規定は、協定で定める範囲に属する派遣労働者の待遇(40条2項の教育訓練、同条3項の福利厚生施設その他の厚生労働省令で定めるものに係るものを除く)については適用しない、と定めています(ただし書あり)。

Q令和8年10月1日から、何が変わりましたか?

厚生労働省の特集ページによると、主な改正事項は、雇い入れ時の労働条件明示事項の追加(省令)、同一労働同一賃金ガイドラインの改正(告示)、雇用管理の改善等に関する措置内容の改正(告示)の3つで、令和8年10月1日に施行・適用されています。パート有期法施行規則2条1項に「法第十四条第二項の規定による説明を求めることができる旨」が4号として加わりました。ガイドラインでは、厚生労働省のQ&Aによると、改正前に記載のなかった待遇のうち追加されたのは、退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇及び褒賞の6つです。

Q期間の定めのない契約で、所定労働時間が正社員と同じ人は、パートタイム・有期雇用労働法の対象ですか?

パート有期法の定義では対象になりません。2条は、短時間労働者を「一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者…の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」、有期雇用労働者を「事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者」と定め、2条3項で両者をあわせて「短時間・有期雇用労働者」としています。ガイドライン第6は、所定労働時間が通常の労働者と同一で、かつ期間の定めのない労働契約を締結している労働者について、同法2条3項の短時間・有期雇用労働者に該当しないとしたうえで、労働契約法3条2項の均衡の考慮などに留意する必要がある、と書いています。

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法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月10日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

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