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不法行為とは?709条の要件と使用者責任宅建の民法で押さえる点

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、損害を賠償する責任を負う制度。709条の要件、使用者責任(715条)、工作物責任(717条)、共同不法行為、724条の期間を民法の条文で整理します。

目次
  1. 不法行為とは:709条の要件を条文の言葉で読む
  2. 責任能力がないとき:712条〜714条
  3. 使用者責任(715条):従業員が事業の執行について与えた損害
  4. 注文者・工作物・動物:716条〜718条
  5. 共同不法行為・正当防衛・賠償の範囲:719条〜722条
  6. 請求できる期間:724条と724条の2
  7. 試験での出題の型と、間違えやすいポイント
  8. 令和8年度試験の法令基準日と、改正への対応
  9. まとめ
結論:不法行為とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う制度です(民法709条)。709条の言葉を要件に分けると(当サイトの整理)、①故意または過失、②他人の権利または法律上保護される利益の侵害、③損害の発生、④「これによって」という因果関係の4つ。ほかに、使用者責任(715条)、土地の工作物の占有者・所有者の責任(717条)、共同不法行為(719条)などの特別な規定があり、請求権は損害および加害者を知った時から3年間(生命・身体の侵害は5年間)、不法行為の時から20年間で時効消滅します(724条・724条の2)。

この記事は、e-Gov 法令検索の民法の条文(709条〜724条の2、417条・417条の2)だけをもとに、宅建(宅地建物取引士資格試験)の権利関係で扱う不法行為を整理したものです。判例の結論は、条文に書かれていない論点として扱い、この記事では述べません。契約にもとづく責任は宅建の契約不適合責任、債権の消滅時効の一般ルールと相殺の制限は宅建の債権の消滅、権利関係の全体は宅建の権利関係の攻略にあります。

不法行為とは:709条の要件を条文の言葉で読む

709条は、次のように定めています。

  • 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う

条文の言葉を、要件に分けると次のとおりです(当サイトの整理)。

要件条文の言葉ポイント
① 故意または過失「故意又は過失によって」わざと(故意)か、不注意(過失)。どちらかがあればよい
② 権利・利益の侵害「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」権利だけでなく、法律上保護される利益も含む
③ 損害「損害」賠償の対象になる不利益
④ 因果関係「これによって生じた」侵害から損害が生じたという関係

近い条文として、次の3つがあります。

条文内容
710条財産以外の損害(慰謝料にあたるもの)にも賠償の責任がある。身体・自由・名誉を侵害した場合も、財産権を侵害した場合も同じ
711条他人の生命を侵害した者は、被害者の父母・配偶者・子に対して、財産権が侵害されなかった場合でも、損害の賠償をしなければならない
721条胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす

責任能力がないとき:712条〜714条

自己の行為の責任を弁識する知能・能力がない人は、一定の場合に、賠償の責任を負いません。条文は2つの場合を分けています。

条文対象内容
712条未成年者他人に損害を加えた場合に、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、賠償の責任を負わない
713条精神上の障害により責任を弁識する能力を欠く状態にある者その間に他人に損害を加えた者は、賠償の責任を負わない。ただし、故意または過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない

責任を負わない人(責任無能力者)が加えた損害については、714条が、その人を監督する法定の義務を負う者(監督義務者)に責任を負わせます。

  • 1項本文:責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う
  • 1項ただし書:監督義務者がその義務を怠らなかったとき、またはその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない
  • 2項:監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、1項の責任を負う

民法712条(e-Gov 法令検索)には、年齢の数字の記載はありません(2026-10-09 時点)。

使用者責任(715条):従業員が事業の執行について与えた損害

715条は、会社や個人事業主などの「使用者」の責任を定めています。

項内容
1項本文ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う
1項ただし書使用者が被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない
2項使用者に代わって事業を監督する者も、1項の責任を負う
3項1項・2項の規定は、使用者または監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない

要件を分けると、次のとおりです(当サイトの整理)。

要件条文の言葉
使用関係「ある事業のために他人を使用する者」と「被用者」
事業の執行について「その事業の執行について」
第三者への損害「第三者に加えた損害」
使用者側の免責(ただし書)選任・監督について相当の注意をした、または相当の注意をしても損害が生ずべきであった

「事業の執行について」の範囲や、被用者本人の責任との関係、求償の範囲は、条文に定義が書かれていない論点で、判例の考え方によります。この記事では、条文の言葉だけを整理します。

当サイトの作例です。不動産会社の従業員が、顧客を物件に案内する途中、運転を誤って歩行者にけがをさせたとします。715条1項本文の言葉に当てはめると、確かめるのは、その事故が、被用者が「その事業の執行について」第三者に加えた損害にあたるかどうかです。あたるかどうかを判断する基準は、条文には書かれていません(判例の論点)。あたる場合、使用者である会社は、その損害を賠償する責任を負います(715条1項本文)。ただし、会社が被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、責任を負いません(同項ただし書)。

注文者・工作物・動物:716条〜718条

使用者責任のほかに、人以外のものや、請負に関わる責任が定められています。

条文責任を負う人内容
716条注文者請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文または指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない
717条1項土地の工作物の占有者、所有者工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、占有者が被害者に対して賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない
717条2項竹木の栽植・支持に瑕疵がある場合1項の規定を準用する
717条3項占有者・所有者損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、その者に対して求償権を行使できる
718条動物の占有者、管理者動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類および性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。占有者に代わって動物を管理する者も同じ責任を負う

土地の工作物の例として、建物を考えます。当サイトの作例です。賃貸ビルの外壁のタイルが落下して通行人にけがをさせた場合、条文の順序は次のとおりです。

1. 工作物の設置または保存に瑕疵があるとき、まず、その工作物の占有者が被害者に対して責任を負う(717条1項本文)

2. 占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が賠償しなければならない(同項ただし書)

3. 損害の原因について他にその責任を負う者があるとき(たとえば、外壁の施工に原因があり、施工した業者がその責任を負う場合)は、占有者または所有者は、その者に対して求償権を行使できる(717条3項)

共同不法行為・正当防衛・賠償の範囲:719条〜722条

共同不法行為(719条)

数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負います(1項前段)。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様です(1項後段)。行為者を教唆した者と幇助した者は、共同行為者とみなされます(2項)。

正当防衛と緊急避難(720条)

他人の不法行為に対し、自己または第三者の権利または法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負いません(1項本文)。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げません(1項ただし書)。2項は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合に、1項を準用します。

賠償の方法と過失相殺(722条)

722条1項は、417条と417条の2の規定を、不法行為による損害賠償に準用します。

  • 417条:損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める
  • 417条の2:将来において取得すべき利益、または将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合に、その時までの利息相当額を控除するときは、損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率による

722条2項は、被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができると定めています(過失相殺)。

名誉を毀損された場合は、723条が、裁判所は被害者の請求により、損害賠償に代えて、または損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができると定めています。

請求できる期間:724条と724条の2

不法行為による損害賠償請求権は、次の場合に、時効によって消滅します(724条)。

号場合期間
1号被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時から行使しないとき3年間
2号不法行為の時から行使しないとき20年間

人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権では、724条の2により、1号の「3年間」が「5年間」とされます。

場合1号(知った時から)2号(不法行為の時から)
原則(724条)3年間20年間
人の生命または身体を害する不法行為(724条の2)5年間20年間(724条の2は2号を変えていない)

この論点の問題を解く

試験での出題の型と、間違えやすいポイント

出題の型を、問題文は載せずに、当サイトの言葉で整理します。

  • ① 事例が709条の4つの要件に当てはまるか、どの要件が欠けるかを確かめる型
  • ② 責任無能力者(712条・713条)の加害について、だれが責任を負うか(714条)を確かめる型
  • ③ 使用者責任で、使用者の免責(ただし書)と求償(3項)の扱いを確かめる型
  • ④ 工作物の瑕疵について、占有者と所有者のどちらが先に責任を負うか(717条1項)を確かめる型
  • ⑤ 請求権の期間(3年・5年・20年)の数字と、どの時から数えるかを確かめる型

間違えやすい点は次のとおりです。

  • 709条の「過失」と、使用者責任(715条)の使用者の免責は別の話です。715条は、選任・監督について相当の注意をしたときの免責が、条文のただし書にあります
  • 717条1項は、まず占有者です。占有者が必要な注意をしたときに、所有者が賠償します
  • 715条3項・717条3項の求償権は、条文が「妨げない」「行使することができる」と書いている権利です
  • 724条の「3年間」は、損害および加害者を知った時から数えます。不法行為の時から数える期間は20年間です
  • 生命または身体を害する不法行為で5年間になるのは、724条1号の「3年間」の部分だけです(724条の2)
  • 719条の共同不法行為は「各自が連帯して」責任を負います
  • 慰謝料は、710条(財産以外の損害)です。711条は、生命侵害の場合の近親者への賠償です

令和8年度試験の法令基準日と、改正への対応

宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構 宅建試験の概要)。令和8年度試験の基準日は2026年4月1日です。この記事で引用した民法の条文は、2026年4月1日現在の版と、2026年10月9日時点の現行の版とで、同じ内容です(2026年6月24日付の改正は、この記事で引用した条文の本文を変えていません)。次の年度の試験を受ける場合は、その年度の4月1日現在の条文を、e-Gov 法令検索の民法で確認してください。

当サイトの宅建の問題は、過去の出題論点をもとに作成した論点別問題です。各問に初級・標準・上級の3段階の解説がついています。

まとめ

  • 不法行為は、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害し、損害を賠償する責任を負う制度(709条)。慰謝料は710条、近親者への賠償は711条
  • 責任能力のない未成年者・精神上の障害のある者は責任を負わない(712条・713条)。その損害は監督義務者が賠償する(714条。義務を怠らなかったときなどは除く)
  • 使用者責任は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害について、使用者が負う(715条1項)。選任・監督に相当の注意をしたときなどは免責され、使用者から被用者への求償は妨げられない(715条1項ただし書・3項)
  • 土地の工作物の瑕疵は、まず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしたときは所有者が賠償する(717条1項)
  • 共同不法行為は各自が連帯して賠償する(719条)。被害者に過失があるときは裁判所が考慮して額を定める(722条2項)
  • 請求権は、損害および加害者を知った時から3年間、不法行為の時から20年間で時効消滅。人の生命・身体を害する場合は、3年間が5年間になる(724条・724条の2)
本サイトは一般財団法人 不動産適正取引推進機構とは関係ありません。掲載している問題は、機構が公表する出題範囲を参照して合格ナビが作成した論点別問題です。条文は e-Gov 法令検索の民法の現行の条文にもとづきます。日程などは、必ず機構の公式発表で確認してください。

よくある質問

Q不法行為による損害賠償は、いつまで請求できますか?

民法724条は、不法行為による損害賠償の請求権は、①被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき、②不法行為の時から20年間行使しないときは、時効によって消滅すると定めています。人の生命または身体を害する不法行為では、724条の2により、①の「3年間」が「5年間」になります。②の20年間は、724条の2の文言では変わりません。

Q従業員が他人に損害を与えたとき、会社が賠償したあとで従業員に請求できますか?

715条3項は、使用者責任の1項・2項の規定が、使用者または監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げないと定めています。つまり、条文の上では、使用者が賠償したあとに被用者へ求償することが妨げられていません。求償できる範囲の考え方は、民法715条(e-Gov 法令検索)には記載がなく、判例による論点です(2026-10-09 時点)。

Q子どもが他人にけがをさせたとき、だれが賠償しますか?

民法712条は、未成年者が他人に損害を加えた場合に、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、賠償の責任を負わないと定めています。この場合、714条1項により、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者が、第三者に加えた損害を賠償する責任を負います。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、またはその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでありません。民法712条(e-Gov 法令検索)には、年齢の数字の記載はありません(2026-10-09 時点)。

Q精神的な苦痛に対する慰謝料は、何条で請求できますか?

民法710条です。他人の身体、自由もしくは名誉を侵害した場合、または他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、709条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならないと定めています。他人の生命を侵害した者は、被害者の父母・配偶者・子に対して、その財産権が侵害されなかった場合でも、損害の賠償をしなければなりません(711条)。

Q被害者にも落ち度があったとき、賠償額は減りますか?

722条2項は、被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができると定めています。「考慮して、損害賠償の額を定めることができる」という書き方で、考慮するかどうかと額は、裁判所が定める形です。債務不履行の過失相殺を定める418条は「これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める」と書いており、条文の書き方が違います。

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法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月9日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

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