宅建の賃貸借と使用貸借の違いを、民法593条〜622条の2で整理します。借主の死亡による終了、賃借権の譲渡と転貸に必要な承諾、無断転貸の解除、転借人が賃貸人に負う直接の義務、合意解除と転借人、賃貸人たる地位の移転を、比較表と設例で確認できます。
目次
結論:宅建の賃貸借・使用貸借は、「使用貸借は無償・賃貸借は有償」という違いに、承諾が要る場面(594条2項・612条1項)、借主の死亡で終わるか(597条3項)、費用の負担者といった違いが連なります。転貸は、賃貸人・賃借人・転借人の三者の関係で整理します。賃借権の譲渡と転貸には賃貸人の承諾が必要で(612条1項)、無断なら賃貸人は解除できます(同条2項)。転借人は賃借人の債務の範囲で賃貸人に直接義務を負い(613条1項)、賃貸人は合意解除を転借人に対抗できません(同条3項)。
この記事は、民法593条〜622条の2と、借地借家法の関係条文(2条・10条・19条・31条・34条)(e-Gov 法令検索の現行の条文、2026年10月7日時点)にもとづいて整理したものです。借地借家法そのものの総覧(存続期間・更新・定期借地権・定期建物賃貸借・借賃増減請求・造作買取請求)は借地借家法をわかりやすくにあります。ここでは、民法の賃貸借・使用貸借と、転貸・賃借権の譲渡に絞ります。権利関係の全体像は宅建の権利関係の攻略です。
賃貸借と使用貸借の違い(比較表)
賃貸借は、賃料を支払う契約(601条)、使用貸借は、無償で使用・収益する契約(593条)です。どちらも、約束(合意)によって効力が生じます。
| 項目 | 使用貸借(593条〜600条) | 賃貸借(601条〜622条の2) |
|---|---|---|
| 対価 | 無償 | 賃料を支払う |
| 成立 | 物を引き渡すことを約し、相手方が受け取った物を無償で使用・収益して契約が終了したときに返還することを約することによって効力を生ずる(593条) | 物の使用・収益を相手方にさせることを約し、相手方が賃料を支払うことと、引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって効力を生ずる(601条) |
| 借主の用法 | 契約または目的物の性質によって定まった用法に従う(594条1項) | 同じ(616条が594条1項を準用) |
| 第三者に使用・収益させる | 貸主の承諾が必要(594条2項) | 賃貸人の承諾なしに賃借権の譲渡・転貸はできない(612条1項) |
| 無承諾・用法違反の効果 | 借主が用法または無承諾の禁止に違反して使用・収益をしたときは、貸主は契約を解除できる(594条3項) | 無承諾の譲渡・転貸で第三者に使用・収益をさせたときは、賃貸人は契約を解除できる(612条2項)。616条が準用するのは594条1項だけで、594条3項は準用していない |
| 費用 | 借主が通常の必要費を負担する(595条1項) | 賃貸人が修繕義務を負う(606条1項。賃借人の責めに帰すべき事由で修繕が必要となったときを除く)。賃借人が賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、直ちに償還請求できる(608条1項) |
| 存続期間の上限 | 593条〜600条に、上限を定める条文はない | 50年(604条1項) |
| 借主の死亡 | 使用貸借は終了する(597条3項) | 622条は597条3項を準用していない |
| 返還時の収去・原状回復 | 附属物の収去義務、損傷の原状回復義務(599条1項・3項。いずれもただし書の例外あり) | 622条が599条1項・2項を準用。損傷の原状回復義務は621条 |
| 損害賠償・費用償還の請求期間 | 貸主が返還を受けた時から1年以内(600条1項) | 622条が600条を準用 |
| 第三者への対抗力 | 593条〜600条に、対抗力を定める条文はない | 賃借権を登記したときは、物権を取得した者その他の第三者に対抗できる(605条) |
使用貸借には、借用物を受け取る前の解除の規定もあります。貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができます。ただし、書面による使用貸借については、この限りではありません(593条の2)。
借地借家法2条1号は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています。この定義に、使用貸借による権利は挙がっていません。
使用貸借の終わり方(597条・598条)
| 場合 | 終了・解除の仕方 | 条文 |
|---|---|---|
| 期間を定めたとき | その期間が満了することによって終了する | 597条1項 |
| 期間を定めず、使用・収益の目的を定めたとき | 借主がその目的に従い使用・収益を終えることによって終了する。貸主は、その目的に従い借主が使用・収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる | 597条2項・598条1項 |
| 期間も目的も定めなかったとき | 貸主は、いつでも契約の解除をすることができる | 598条2項 |
| 借主から | 借主は、いつでも契約の解除をすることができる | 598条3項 |
| 借主の死亡 | 使用貸借は終了する | 597条3項 |
使用貸借の損害賠償等の請求期間:契約の本旨に反する使用または収益によって生じた損害の賠償と、借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない(600条1項)。損害賠償の請求権は、返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効が完成しない(同条2項)。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 民法。
賃貸借の基本:期間・更新・解約・対抗力
存続期間・更新・解約の申入れ
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 存続期間 | 50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めても、50年とする。更新できるが、更新の時から50年を超えることはできない | 604条 |
| 期間の定めのない賃貸借 | 各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。賃貸借は、解約の申入れの日から、土地は1年、建物は3か月、動産と貸席は1日を経過することによって終了する | 617条1項 |
| 期間の定めがある場合の解約権の留保 | 一方または双方が期間内に解約をする権利を留保したときは、617条を準用する | 618条 |
| 黙示の更新 | 期間満了後、賃借人が使用・収益を継続する場合に、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合、各当事者は617条の解約申入れをすることができる | 619条1項 |
賃貸借の期間の数字:存続期間は50年が上限(604条1項)。期間の定めのない賃貸借の解約申入れの日から終了までの期間は、土地1年・建物3か月・動産及び貸席1日(617条1項)。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 民法。
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合は、期間に上限があります(602条)。
短期賃貸借の期間:処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合の期間の上限は、樹木の栽植または伐採を目的とする山林は10年、それ以外の土地は5年、建物は3年、動産は6か月。契約でこれより長い期間を定めても、その期間はこれらの期間とする(602条)。更新できるが、その期間満了前に、土地は1年以内、建物は3か月以内、動産は1か月以内に更新しなければならない(603条)。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 民法。
建物の賃貸借の更新・解約には、借地借家法に特別の定めがあります。更新・正当の事由・解約の申入れの詳細は、借地借家法の解説記事で扱っています。
対抗力と賃貸人たる地位の移転(605条〜605条の4)
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 不動産賃貸借の対抗力 | 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗できる | 605条 |
| 借地借家法の対抗力 | 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、第三者に対抗できる。建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、効力を生ずる | 借地借家法10条1項・31条 |
| 賃貸人たる地位の移転 | 605条、借地借家法10条または31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転する | 605条の2第1項 |
| 賃貸人たる地位の留保 | 不動産の譲渡人と譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨と、その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。譲渡人と譲受人またはその承継人との間の賃貸借が終了したときは、留保されていた地位は譲受人またはその承継人に移転する | 605条の2第2項 |
| 移転の対抗 | 賃貸人たる地位の移転は、所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗できない | 605条の2第3項 |
| 費用償還・敷金の承継 | 賃貸人たる地位が譲受人またはその承継人に移転したときは、608条の費用の償還に係る債務と、622条の2第1項の敷金の返還に係る債務は、譲受人またはその承継人が承継する | 605条の2第4項 |
| 合意による移転 | 不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合は605条の2第3項・4項を準用する | 605条の3 |
| 妨害停止・返還の請求 | 不動産の賃借人は、605条の2第1項の対抗要件を備えた場合において、その不動産の占有を第三者が妨害しているときは妨害の停止を、第三者が占有しているときは返還を請求できる | 605条の4 |
賃借人・賃貸人の権利義務の早見表(606条〜622条の2)
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 賃貸人の修繕義務 | 賃貸人は、賃貸物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない | 606条1項 |
| 賃借人による修繕 | 修繕が必要である場合に、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき、または急迫の事情があるときは、賃借人は修繕をすることができる | 607条の2 |
| 費用の償還 | 賃借人が賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、直ちにその償還を請求できる。有益費は、賃貸借の終了の時に、196条2項に従い償還しなければならない(裁判所は、賃貸人の請求により、相当の期限を許与できる) | 608条 |
| 一部滅失等による賃料の減額 | 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用・収益をすることができなくなった場合に、賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、使用・収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される | 611条1項 |
| 全部滅失等による終了 | 賃借物の全部が滅失その他の事由により使用・収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する | 616条の2 |
| 解除の効力 | 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみ効力を生ずる。損害賠償の請求を妨げない | 620条 |
| 原状回復義務 | 賃借人は、受け取った後に生じた損傷(通常の使用・収益によって生じた損耗と経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない | 621条 |
| 敷金の返還 | 賃貸人は、敷金を受け取っている場合に、賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたとき、または賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、受け取った敷金の額から、賃貸借に基づいて生じた賃借人の債務の額を控除した残額を返還しなければならない | 622条の2第1項 |
賃借権の譲渡と転貸:承諾と解除(612条)
賃借権の譲渡と転貸は、どちらも賃借人が賃借物を第三者に使わせる点では似ていますが、法律関係が違います。
| 項目 | 賃借権の譲渡 | 転貸 |
|---|---|---|
| 内容 | 賃借人が、賃借権を第三者に譲り渡す | 賃借人が、賃借物を第三者に貸す(転貸借) |
| 必要な承諾 | 賃貸人の承諾が必要(612条1項) | 賃貸人の承諾が必要(612条1項) |
| 無承諾の場合 | 賃借人が1項の規定に違反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は契約の解除をすることができる(612条2項) | 同じ(612条2項) |
| 敷金 | 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき、賃貸人は、敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を、賃借人に返還しなければならない(622条の2第1項2号) | 転貸だけでは、622条の2第1項2号の場合に当たらない(賃貸借は続く) |
| 転借人と賃貸人の関係 | — | 転借人は、賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して直接の義務を負う(613条1項) |
使用貸借でも、借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用・収益をさせることができず、違反すれば貸主は契約を解除できます(594条2項・3項)。
借地権の場合:裁判所の許可(借地借家法19条)
借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合に、その第三者が賃借権を取得し、または転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡または転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法19条1項前段)。この場合に、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡・転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、またはその許可を財産上の給付に係らしめることができます(同項後段)。
この許可の制度は、借地権のうち土地の賃借権(建物の所有を目的とする土地の賃借権)の譲渡・転貸についてのものです(19条1項。転借地権については同条7項で準用)。民法612条の賃貸借一般には、同じ仕組みは置かれていません。
転貸の三者関係(613条・借地借家法34条)
賃貸人をA、賃借人をB、転借人をCとします。
| 関係 | 内容 |
|---|---|
| AとBの間 | 賃貸借が続く。613条2項により、AがBに対して権利を行使することは、613条1項によっても妨げられない |
| BとCの間 | 転貸借。転貸料や転貸借の期間は、この契約で決まる |
| AとCの間 | 転貸借はBとCの契約で、AとCの間に契約はない。ただし、613条1項により、Cは、AとBの間の賃貸借に基づくBの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。Cは、賃料の前払をもってAに対抗できない |
合意解除と債務不履行による解除
| 場面 | 転借人Cへの影響 | 条文 |
|---|---|---|
| AとBが賃貸借を合意で解除した | Aは、合意解除をもってCに対抗できない。ただし、その解除の当時、AがBの債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない | 613条3項 |
| 建物の転貸借がされている場合に、AとBの建物の賃貸借が、期間の満了または解約の申入れによって終了する | Aは、Cにその旨を通知しなければ、終了をCに対抗できない。通知をしたときは、通知がされた日から6か月を経過することによって、転貸借は終了する | 借地借家法34条 |
建物の転貸借の終了の期間:建物の賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了する場合に、賃貸人が転借人に通知をしたときは、建物の転貸借は、通知がされた日から6か月を経過することによって終了する(借地借家法34条2項)。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 借地借家法。
計算で確認:転借人が賃貸人に負う直接の義務の範囲(当サイトの設例・当サイトの計算)
613条1項は、転借人が賃貸人に直接負う義務を、「賃借人の債務の範囲を限度として」「転貸借に基づく債務」を履行する義務としています。賃料でこの範囲を確かめます。
- 設例A:AとBの間の賃料は1か月あたり10万円、BとCの間の転貸料は1か月あたり12万円。CがAに直接負う賃料の義務は、Bの債務(1か月あたり10万円)の範囲が限度なので、1か月あたり10万円まで。Aは、これを超える2万円の差額を、Cに直接請求することはできない。
- 設例B:AとBの間の賃料は1か月あたり10万円、BとCの間の転貸料は1か月あたり8万円。Cが直接履行する義務を負うのは「転貸借に基づく債務」なので、1か月あたり8万円まで。
- 検算:設例Aは「転貸借の債務12万円」と「賃借人の債務の範囲10万円」を比べて、小さいほうの10万円が上限。設例Bは「転貸借の債務8万円」と「賃借人の債務の範囲10万円」を比べて、小さいほうの8万円が上限。どちらの設例でも、直接義務の上限は2つの金額のうち小さいほうと一致する。
賃借権を譲り渡す場合の敷金
賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃貸人は、敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を、賃借人に返還しなければなりません(622条の2第1項2号)。賃貸人たる地位が移転した場合は、敷金の返還に係る債務は譲受人が承継します(605条の2第4項)。賃借権の譲渡では、賃貸人から、譲渡した賃借人に敷金の残額を返還します。賃貸人たる地位の移転では、敷金の返還に係る債務が譲受人に承継されます。場面が違うので、取り違えないようにします。
試験での問われ方(出題の型)
問題文は載せず、出題の型を当サイトの言葉で整理します。
- ① 使用貸借と賃貸借を比べ、借主の死亡による終了、費用の負担、承諾の要否を問う型:597条3項・595条・606条・594条2項・612条1項が材料になります
- ② 賃借権の譲渡・転貸の承諾と、無断の場合の解除(612条)を問う型
- ③ 転貸の三者関係で、転借人が賃貸人に直接負う義務、賃料の前払、合意解除と転借人(613条)を問う型
- ④ 賃貸人たる地位の移転が、対抗要件(605条・借地借家法10条・31条)と所有権移転の登記(605条の2第3項)を前提にしているかを問う型
- ⑤ 建物の転貸借で、期間満了や解約の申入れによる賃貸借の終了と転借人への通知(借地借家法34条)を問う型
- ⑥ 借地権者が建物を譲渡する場合の、裁判所の許可(借地借家法19条)を民法612条と見分けさせる型
間違えやすいポイント
- 使用貸借は無償で、借主の死亡によって終了します(597条3項)。賃貸借は、622条が597条3項を準用していません
- 使用貸借の貸主は、借主が借用物を受け取るまで解除できますが、書面による使用貸借は除かれます(593条の2)。622条は、593条の2を賃貸借に準用していません
- 612条の承諾が必要なのは、賃借権の譲渡と転貸の両方です。承諾がなければ、賃貸人は契約を解除できます(同条2項)
- 転借人が賃貸人に直接負う義務は、賃借人の債務の範囲が限度です。転貸料が賃料より高くても、賃貸人が転借人に直接請求できる額は、賃借人の債務の範囲までです(613条1項)
- 合意解除は転借人に対抗できません。ただし、解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは別です(613条3項ただし書)
- 賃貸人たる地位の移転は、所有権の移転の登記をしなければ賃借人に対抗できません(605条の2第3項)
- 借地借家法19条の裁判所の許可は、借地権者が建物を譲渡する場合の、土地の賃借権の譲渡・転貸に関する制度です。建物の賃貸借の転貸には、借地借家法34条(転借人の保護)があります
- 借地借家法の借地権の定義(2条1号)は、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権です。使用貸借による権利は含まれません
令和8年度試験の法令基準日と、改正への対応
宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構 宅建試験の概要)。令和8年度試験の基準日は2026年4月1日です。この記事で扱った民法・借地借家法の条文は、基準日の版と現行の版で同じ内容です。次の年度の試験を受ける場合は、その年度の4月1日現在の条文を、e-Gov 法令検索の民法・借地借家法で確認してください。
当サイトの宅建の問題は、過去の出題論点をもとに作成した論点別問題です。各問に初級・標準・上級の3段階の解説がついています。
この論点の問題を解く
賃貸借・使用貸借の問題は、権利関係の科目にあります。
まとめ
- 使用貸借は無償、賃貸借は賃料を支払う契約。使用貸借は借主の死亡で終了し(597条3項)、賃貸借には準用されない。借主が負う費用は、使用貸借では通常の必要費(595条)、賃貸借では賃貸人が修繕義務を負う(606条)
- 賃借権の譲渡と転貸は、賃貸人の承諾が必要で、無断なら賃貸人は解除できる(612条)。使用貸借も、貸主の承諾が要る(594条2項)
- 転借人は、賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に直接義務を負い、賃料の前払を対抗できない(613条1項)。合意解除は原則として転借人に対抗できない(同条3項)
- 賃貸人たる地位は、対抗要件を備えた賃貸借で不動産が譲渡されたとき譲受人に移転し(605条の2第1項)、所有権移転の登記が賃借人への対抗要件になる(同条3項)
- 建物の転貸借は、賃貸借の期間満了・解約申入れによる終了を、通知後6か月で終了する形で転借人に対抗できる(借地借家法34条)。借地権者の建物譲渡では、裁判所の許可の制度がある(借地借家法19条)
本サイトは一般財団法人 不動産適正取引推進機構とは関係ありません。掲載している問題は、機構が公表する出題範囲を参照して合格ナビが作成した論点別問題です。条文は e-Gov 法令検索の民法・借地借家法の現行の条文(2026年10月7日時点)にもとづきます。設例は当サイトのもので、実在の契約ではありません。試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。
よくある質問
Q賃借人が賃貸人の承諾を得ずに転貸したら、賃貸人は契約を解除できますか?
民法612条2項は、賃借人が1項の規定に違反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は契約の解除をすることができると定めています。1項は、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができない、という規定です。条文は「解除をすることができる」と書くだけで、解除が認められない場合があるかどうかは、条文には書かれていない論点で、判例の考え方によります。
Q賃貸人と賃借人が賃貸借を合意で解除すると、転借人にも主張できますか?
原則として主張できません。民法613条3項は、賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができないと定めています。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りではありません。
Q使用貸借の借主が亡くなったら、契約はどうなりますか? 賃貸借はどうですか?
使用貸借は、借主の死亡によって終了します(民法597条3項)。賃貸借については、622条が使用貸借の規定のうち準用するのは597条1項(期間を定めたときの期間満了による終了)、599条1項・2項、600条だけで、借主の死亡による終了を定める597条3項は準用されていません。
Q転借人は、賃料を賃貸人に直接支払わなければなりませんか?
民法613条1項は、賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負うと定めています。この場合、転借人は、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができません。同条2項により、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することも妨げられません。
Q建物を転貸している場合に、賃貸借が期間満了で終わるとき、転借人はどうなりますか?
借地借家法34条1項は、建物の転貸借がされている場合に、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を転借人に対抗することができないと定めています。賃貸人が通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6か月を経過することによって終了します(同条2項)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

