宅建の不動産登記を、不動産登記法の条文で整理します。表題部と権利部、表示に関する登記と権利に関する登記の違い、共同申請の原則と単独申請できる場合、登記識別情報の通知・提供・事前通知、仮登記、分筆・合筆、敷地権、相続登記と住所変更登記の義務までを表で確認できます。
目次
結論:宅建の不動産登記は、登記記録を「表題部(表示に関する登記)」と「権利部(権利に関する登記)」に分けて覚えるのが出発点です。表示に関する登記は、表題登記や滅失の登記などに一月以内の申請義務があり、登記官が職権でもできます。権利に関する登記は、原則として登記権利者と登記義務者の共同申請で、登記義務者の登記識別情報を提供します。そこに、単独申請できる例外、仮登記、分筆・合筆、敷地権、相続登記と住所変更登記の義務が重なります。
この記事は、不動産登記法・不動産登記規則・民法・区分所有法の条文(e-Gov 法令検索の現行の条文、2026年10月7日時点)にもとづいて、不動産登記の仕組みを整理したものです。権利関係の全体像は宅建の権利関係の攻略、相続そのものの論点は相続を宅建向けに整理、抵当権の論点は宅建の抵当権にあります。ここでは、登記の仕組みと手続に絞ります。
登記記録の全体像:表題部と権利部(2条・12条・規則4条)
登記は、登記官が登記簿に登記事項を記録することによって行います(11条)。登記記録は、一筆の土地または一個の建物ごとに作成され(2条5号)、表題部と権利部に区分されます(12条)。
| 区分 | 記録される内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 表題部 | 表示に関する登記(不動産の表示に関する登記)が記録される部分 | 2条3号・7号 |
| 権利部 | 権利に関する登記が記録される部分 | 2条4号・8号 |
| 権利部の甲区 | 所有権に関する登記の登記事項 | 不動産登記規則4条4項 |
| 権利部の乙区 | 所有権以外の権利に関する登記の登記事項 | 不動産登記規則4条4項 |
権利に関する登記の対象になる権利は、3条が10種類を列挙しています。所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権、配偶者居住権、採石権です。これらの権利の保存、設定、移転、変更、処分の制限、消滅について、登記をします。使用貸借による借主の権利は、この10種類に含まれていません。
誰でも、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面(登記事項証明書)の交付を請求できます(119条1項)。この「何人も」という書き方が、登記が公示の制度であることを表しています。
表示に関する登記:土地・建物の表示と申請義務
表示に関する登記は、不動産の物理的な状況(どこにどんな土地・建物があるか)を記録する登記です。
| 項目 | 土地 | 建物 |
|---|---|---|
| 共通の登記事項(27条) | 登記原因とその日付、登記の年月日、所有権の登記がない不動産では所有者の氏名または名称・住所(共有なら持分)など | 同左 |
| 固有の登記事項 | 所在する市区郡町村・字、地番、地目、地積(34条1項) | 所在・地番、家屋番号、種類・構造・床面積、名称、附属建物、区分建物の場合は敷地権など(44条1項) |
| 番号 | 一筆の土地ごとに地番を付す(35条) | 一個の建物ごとに家屋番号を付す(45条) |
登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請または官庁・公署の嘱託がなければ、することができません(16条1項)。その別段の定めの1つが28条で、表示に関する登記は、登記官が職権ですることもできます。
表示に関する登記の申請義務と期限
表示に関する登記には、申請をしなければならない旨の条文が置かれています。
| 登記 | 申請する者 | 期限の起算点 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 土地の表題登記 | 新たに生じた土地、または表題登記がない土地の所有権を取得した者 | 所有権の取得の日 | 36条 |
| 地目・地積の変更の登記 | 表題部所有者または所有権の登記名義人 | 変更があった日 | 37条1項 |
| 土地の滅失の登記 | 表題部所有者または所有権の登記名義人 | 滅失の日 | 42条 |
| 建物の表題登記 | 新築した建物、または区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者 | 所有権の取得の日 | 47条1項 |
| 建物の表題部の変更の登記 | 表題部所有者または所有権の登記名義人(44条1項の登記事項のうち、家屋番号と、共用部分・団地共用部分である旨を除くものに変更があった場合。共用部分・団地共用部分である旨の登記がある建物は所有者) | 変更があった日 | 51条1項 |
| 建物の滅失の登記 | 表題部所有者または所有権の登記名義人 | 滅失の日 | 57条 |
表示に関する登記の申請期限:土地の表題登記(36条)、地目・地積の変更の登記(37条1項)、土地の滅失の登記(42条)、建物の表題登記(47条1項)、建物の表題部の変更の登記(51条1項)、建物の滅失の登記(57条)は、いずれも起算点から一月以内に申請しなければならない。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 不動産登記法。
申請を怠った場合の過料:これらの規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料(164条1項)。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 不動産登記法。
区分建物には、申請の方法に特則があります。区分建物が属する一棟の建物が新築された場合などは、その区分建物の表題登記は、同じ一棟の建物に属する他の区分建物の表題登記の申請と併せてしなければなりません(48条1項)。その場合、区分建物の所有者は、他の区分建物の所有者に代わって、その表題登記を申請できます(同条2項)。
分筆・合筆(39条〜41条)と建物の分割・区分・合併(54条・56条)
土地は、「一筆」を単位に数えます。一筆の土地を複数に分けるのが分筆、複数の土地を一筆にまとめるのが合筆です。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 申請できる者 | 分筆または合筆の登記は、表題部所有者または所有権の登記名義人以外の者は申請できない | 39条1項 |
| 職権による分筆 | 一筆の土地の一部が別の地目となり、または地番区域を異にするに至ったときは、申請がなくても、登記官が職権で分筆の登記をしなければならない | 39条2項 |
| 地図作成のための職権 | 地図を作成するため必要と認めるときは、表題部所有者または所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で分筆または合筆の登記をすることができる | 39条3項 |
| 合筆の制限 | 次の6つの合筆の登記は、することができない | 41条 |
41条が禁じる6つの合筆は、次のとおりです。
1. 相互に接続していない土地の合筆
2. 地目または地番区域が相互に異なる土地の合筆
3. 表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆
4. 表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地の合筆
5. 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆
6. 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地の合筆(合筆後の土地の登記記録に登記することができるものとして法務省令で定めるものがある土地を除く)
164条が過料の対象として挙げる条文の中に、分筆・合筆の39条は含まれていません。
建物にも、同じ型の登記があります。建物の分割の登記、区分の登記、合併の登記は、表題部所有者または所有権の登記名義人以外の者は申請できません(54条1項)。建物の合併の登記にも、合筆と同じように、できない場合の列挙があります(56条。共用部分である旨の登記がある建物、表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に異なる建物、相互に持分を異にする建物、所有権の登記がない建物と所有権の登記がある建物、所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物(合併後の建物の登記記録に登記できるものとして法務省令で定めるものがある建物を除く)の合併)。
#### 設例で確かめる:合筆できるか(当サイトの設例)
条文の6つの場合に当てはめる練習です。いずれも当サイトの設例で、実在の土地ではありません。
| 設例 | 合筆できるか | 理由 |
|---|---|---|
| A所有の甲地と乙地。2つの土地は道路をはさんで離れている | できない | 1号(相互に接続していない) |
| A所有の甲地(宅地)と乙地(畑)。接続している | できない | 2号(地目が相互に異なる) |
| 甲地はA所有、乙地はB所有。接続しており地目も同じ | できない | 3号(登記名義人が相互に異なる) |
| 甲地はAとBの共有、乙地もAとBの共有。持分は甲地が各2分の1、乙地がAは3分の1・Bは3分の2 | できない | 4号(持分を相互に異にする) |
| A所有の甲地と乙地。接続しており地目も同じだが、甲地だけに抵当権の設定の登記がある | できない(法務省令で定める例外に当たらない限り) | 6号 |
権利に関する登記:共同申請の原則と例外
共同申請の原則(60条)
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者と登記義務者が共同してしなければなりません(60条)。
| 用語 | 意味 | 条文 |
|---|---|---|
| 登記権利者 | 権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に利益を受ける者(間接に利益を受ける者を除く) | 2条12号 |
| 登記義務者 | 権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人(間接に不利益を受ける登記名義人を除く) | 2条13号 |
| 登記名義人 | 登記記録の権利部に、3条各号の権利について権利者として記録されている者 | 2条11号 |
たとえば、売買による所有権の移転の登記では、買主が登記権利者、売主(登記名義人)が登記義務者になります(当サイトの設例)。申請の際は、申請情報と併せて、登記原因を証する情報(登記原因証明情報)を提供しなければなりません(61条。法令に別段の定めがある場合を除く)。
単独で申請できる主な場合
共同申請の原則には、条文に書かれた例外があります。
| 場合 | 申請の方法 | 条文 |
|---|---|---|
| 登記手続を命ずる確定判決による登記 | 共同して申請しなければならない者の他方が単独で申請できる | 63条1項 |
| 相続または法人の合併による権利の移転の登記 | 登記権利者が単独で申請できる | 63条2項 |
| 遺贈(相続人に対する遺贈に限る)による所有権の移転の登記 | 登記権利者が単独で申請できる | 63条3項 |
| 登記名義人の氏名・名称・住所についての変更または更正の登記 | 登記名義人が単独で申請できる | 64条1項 |
| 仮登記 | 仮登記の登記義務者の承諾があるとき、または仮登記を命ずる処分があるときは、仮登記の登記権利者が単独で申請できる | 107条1項 |
| 仮登記の抹消 | 仮登記の登記名義人が単独で申請できる(仮登記の登記名義人の承諾がある場合の登記上の利害関係人も同様) | 110条 |
所有権の保存の登記は、申請できる者が74条1項で限られています。表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人、所有権を有することが確定判決によって確認された者、収用によって所有権を取得した者です。区分建物では、表題部所有者から所有権を取得した者も申請できます。その区分建物が敷地権付きのときは、敷地権の登記名義人の承諾を得なければなりません(74条2項)。
登記権利者、登記義務者または登記名義人が申請人になることができる場合に、これらの者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人が申請できます(62条)。登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡、本人である法人の合併による消滅などによっては消滅しません(17条)。
順位と受付番号
同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後によります(4条1項)。登記官は、同一の不動産に関し権利に関する登記の申請が二以上あったときは、受付番号の順序に従って登記をしなければなりません(20条)。付記登記(すでにされた権利に関する登記についてする登記で、その登記を変更・更正するもの、または所有権以外の権利ではその移転やその権利を目的とする権利の保存等をするもののうち、もとの登記と一体のものとして公示する必要があるもの)の順位は、主登記(付記登記の対象となる既にされた登記)の順位によります(4条2項)。
登記識別情報:通知・提供・事前通知(2条14号・21条〜23条)
登記識別情報は、登記名義人が自ら登記を申請していることを確認するために用いられる符号その他の情報で、登記名義人を識別できるものです(2条14号)。アラビア数字その他の符号の組合せで、不動産と、登記名義人となった申請人ごとに定められます(不動産登記規則61条)。
| 場面 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 通知 | 登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合に、登記を完了したとき、登記官が速やかに申請人へ通知する。申請人があらかじめ通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は通知しない | 21条 |
| 提供 | 登記権利者と登記義務者が共同して権利に関する登記を申請する場合などに、申請人は、申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供しなければならない。ただし、21条ただし書により通知されなかった場合その他、提供できないことに正当な理由がある場合は、この限りでない | 22条 |
| 事前通知 | 22条ただし書により提供できないときは、登記官は、登記義務者に、申請があった旨と、内容が真実であるときは法務省令で定める期間内に申し出るべき旨を通知する。その期間内は、申出がない限り、その登記をすることができない | 23条1項 |
事前通知は、登記識別情報を提供できない申請について、登記義務者本人に申請があったことを知らせ、申請の内容が真実であるときは申し出てもらう仕組みです。23条4項は、次のどちらかの場合には、23条1項の事前通知の規定を適用しないとしています。①申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされ、登記官がその代理人から、申請人が登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、内容を相当と認めるとき。②申請情報(委任による代理人によって申請する場合は権限を証する情報)を記載した書面などについて、公証人から、申請人が登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、登記官が内容を相当と認めるとき。
事前通知の期間内に申出がないとき、登記官は、理由を付した決定で申請を却下しなければなりません(25条10号)。
登記済証については、附則7条に定めがあります。法務大臣が登記手続を指定(附則6条1項)した後に、旧法の規定により還付または交付された登記済証などを提出して登記の申請がされたときは、登記識別情報が提供されたものとみなして22条本文を適用する、というものです。
なお、抹消の登記のように、その登記をしても申請人自らが登記名義人にならない登記では、21条の文言上、登記識別情報は通知されません。
仮登記:順位を保全する登記(105条〜110条)
仮登記は、本登記ができない場合などに、将来の本登記の順位を確保するための登記です。105条は、仮登記をすることができる場合を2つ挙げています。
| 場合 | 内容(条文の言葉) | 当サイトの呼び方 |
|---|---|---|
| 105条1号 | 3条各号に掲げる権利について保存等があった場合で、登記の申請のために提供しなければならない情報のうち、法務省令で定めるもの(25条9号の申請情報と併せて提供しなければならないとされているもの)を提供できないとき | 1号仮登記 |
| 105条2号 | 3条各号に掲げる権利の設定、移転、変更または消滅に関して請求権(始期付きまたは停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む)を保全しようとするとき | 2号仮登記 |
仮登記の主な規律をまとめます。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 順位 | 仮登記に基づいて本登記をした場合、本登記の順位は仮登記の順位による | 106条 |
| 申請 | 仮登記の登記義務者の承諾があるとき、または仮登記を命ずる処分があるときは、仮登記の登記権利者が単独で申請できる。共同で申請する場合は、22条本文(登記識別情報の提供)は適用しない | 107条 |
| 仮登記を命ずる処分 | 裁判所が、仮登記の登記権利者の申立てにより命ずることができる | 108条1項 |
| 本登記 | 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、その第三者の承諾があるときに限り申請できる。登記官は、その申請に基づいて登記をするとき、職権で、その第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない | 109条 |
| 抹消 | 仮登記の登記名義人が単独で申請できる | 110条 |
仮登記は、本登記とは別の登記です。106条が定めるのは、仮登記に基づいて本登記をしたときの順位が、仮登記の順位による、という点です。
区分建物と敷地権(44条1項9号・46条・73条)
区分所有建物では、専有部分と敷地利用権を分けて処分できないことが原則です。区分所有法22条1項は、敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができないと定めています。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りではありません。
登記の上では、このように専有部分と分離して処分できない敷地利用権のうち登記されたものを「敷地権」といい(不動産登記法44条1項9号)、区分建物の表題部の登記事項になります。登記官は、区分建物に関する敷地権について表題部に最初に登記をするときは、敷地権の目的である土地の登記記録に、職権で、その権利が敷地権である旨の登記をしなければなりません(46条)。
敷地権付き区分建物については、73条が次のように定めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効力(73条1項本文) | 敷地権付き区分建物についての所有権または担保権(一般の先取特権、質権または抵当権)に係る権利に関する登記は、敷地権についてされた登記としての効力を有する。ただし、敷地権の登記をする前に登記されたものなど、1号〜4号に掲げる登記は除かれる |
| 土地(73条2項) | 敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記または敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、その土地が敷地権の目的となった後に登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く)など、一定のものは除かれる |
| 建物(73条3項) | 敷地権付き区分建物には、その建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記、またはその建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、敷地権が生じた後に登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く)など、一定のものは除かれる |
区分建物の所有権の保存の登記を、表題部所有者から所有権を取得した者が申請するときは、その建物が敷地権付き区分建物であれば、敷地権の登記名義人の承諾を得なければなりません(74条2項)。
相続登記・住所変更登記の義務(76条の2・76条の3・76条の5・164条)
権利に関する登記は、原則として当事者の申請に任されていますが、次の登記は申請義務が条文に書かれています。
| 登記 | 義務の内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 相続等による所有権の移転の登記 | 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。相続人に対する遺贈により所有権を取得した者も同様 | 76条の2第1項 |
| 遺産分割後の登記 | 76条の2第1項前段の登記(民法900条・901条により算定した相続分に応じてされたものに限る)がされた後に遺産の分割があったときは、遺産の分割によって相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない | 76条の2第2項 |
| 相続人である旨の申出(相続人申告登記) | 申請義務を負う者は、登記官に、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と自らがその相続人である旨を申し出ることができる。76条の2第1項の期間内に申出をした者は、その義務を履行したものとみなされる(申出の前にされた遺産の分割によるものを除く)。その後の遺産分割で所有権を取得したとき(76条の2第1項前段の登記がされた後に取得したときを除く)は、遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない | 76条の3第1項・2項・4項 |
| 所有権の登記名義人の氏名・住所等の変更の登記 | 氏名・名称または住所について変更があったときは、その変更があった日から二年以内に、変更の登記を申請しなければならない | 76条の5 |
相続登記と住所変更登記の期限と過料:相続による所有権の取得は、相続の開始と所有権取得を知った日から三年以内(76条の2第1項)。氏名・住所の変更は変更の日から二年以内(76条の5)。正当な理由がないのに申請を怠ったときは、76条の2・76条の3第4項の義務について10万円以下、76条の5の義務について5万円以下の過料(164条)。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 不動産登記法。
76条の6は、登記官は、所有権の登記名義人の氏名・名称・住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、変更の登記をすることができるとしています。ただし、その登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限ります。
相続の承継の中身(相続人の範囲や遺産分割)は、相続を宅建向けに整理で扱っています。
登記と対抗:民法177条と不動産登記法5条
物権の設定および移転は、当事者の意思表示のみによって効力を生じます(民法176条)が、不動産の物権の得喪・変更を第三者に対抗するには登記が必要です。民法177条は、不動産に関する物権の得喪および変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができないと定めています。
不動産登記法5条は、登記がないことを主張できない第三者を2つ挙げています。
| 第三者 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 詐欺・強迫によって登記の申請を妨げた第三者 | その登記がないことを主張できない | 5条1項 |
| 他人のために登記を申請する義務を負う第三者 | その登記がないことを主張できない。ただし、その登記の登記原因が自己の登記の登記原因の後に生じたときは、この限りでない | 5条2項 |
どのような者が民法177条の「第三者」に当たるかは、条文には書かれていない論点で、判例の考え方によります。
この論点の問題を解く
登記の問題は、権利関係の科目にあります。
試験での問われ方(出題の型)
問題文は載せず、出題の型を当サイトの言葉で整理します。
- ① 表示に関する登記と権利に関する登記を比べ、申請義務・期限・職権でできるかを問う型:表示は一月以内、権利は共同申請が原則、という対比が材料になります
- ② 共同申請の原則と、単独で申請できる場合(判決、相続、相続人に対する遺贈、氏名・住所変更、仮登記など)を見分けさせる型
- ③ 登記識別情報の通知を受ける者、提供する者(登記義務者)、事前通知が必要になる場面を問う型
- ④ 仮登記の効力(順位)、仮登記に基づく本登記の要件(利害関係人の承諾)を問う型
- ⑤ 分筆・合筆の申請人と、合筆できない場合を問う型
- ⑥ 区分建物の敷地権の登記の効力を問う型
- ⑦ 相続登記・住所変更登記の期限(3年・2年)と、民法177条の対抗関係を組み合わせる型
間違えやすいポイント
- 表題登記や滅失の登記などの表示に関する登記には、所有権を取得した日などから一月以内の申請義務があり、表示に関する登記は登記官の職権でもできます(28条)。権利に関する登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、申請または嘱託がなければできません(16条1項)
- 登記識別情報を通知されるのは、その登記で自ら登記名義人になる申請人です。共同申請で提供するのは、登記義務者の登記識別情報です
- 事前通知は、登記義務者の登記識別情報を提供できないときの仕組みです。事前通知の期間内に申出がないと、申請は却下されます(25条10号)
- 「登記権利者」「登記義務者」は、登記上、直接に利益・不利益を受ける者です(2条12号・13号)。間接に利益や不利益を受ける者は含まれません
- 所有権の保存の登記を申請できる者は、74条(1項の者と、区分建物では2項の者)に限定されています。売主と買主の共同申請(60条)で行うものではありません
- 仮登記は、仮登記の登記名義人が単独で抹消を申請できます(110条)。仮登記に基づく本登記の順位は仮登記の順位による一方、所有権に関する仮登記に基づく本登記には、利害関係を有する第三者の承諾が必要です
- 相続による所有権取得の登記の期限は3年、所有権の登記名義人の住所・氏名の変更の登記の期限は2年です。表示に関する登記の「一月」と取り違えないようにします
- 敷地権付き区分建物の建物だけの所有権移転や、建物だけを目的とする担保権の登記は、原則としてできません。ただし73条3項にただし書の例外があります
令和8年度試験の法令基準日と、改正への対応
宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構 宅建試験の概要)。令和8年度試験の基準日は2026年4月1日です。この記事で扱った不動産登記法の条文は、基準日の版と現行の版で同じ内容です。次の年度の試験を受ける場合は、その年度の4月1日現在の条文を、e-Gov 法令検索の不動産登記法で確認してください。
当サイトの宅建の問題は、過去の出題論点をもとに作成した論点別問題です。各問に初級・標準・上級の3段階の解説がついています。
まとめ
- 登記記録は表題部(表示に関する登記)と権利部(権利に関する登記。甲区は所有権、乙区は所有権以外)に分かれる。権利の登記の対象は3条の10種類
- 表示に関する登記は、土地・建物の表題登記、変更、滅失などで申請義務があり、多くは一月以内。登記官の職権でもできる。申請を怠ると10万円以下の過料
- 権利に関する登記は、登記権利者と登記義務者の共同申請が原則(60条)。判決・相続・相続人に対する遺贈・氏名住所変更などは単独で申請できる。仮登記は、登記義務者の承諾があるときなどに単独で申請できる
- 登記識別情報は、自ら登記名義人になる申請人に通知され(21条)、共同申請では登記義務者のものを提供する(22条)。提供できないときは事前通知(23条)
- 仮登記の本登記の順位は仮登記の順位(106条)。分筆・合筆は表題部所有者または所有権の登記名義人が申請し、合筆には6つの制限がある。相続登記は3年以内、住所変更登記は2年以内
本サイトは一般財団法人 不動産適正取引推進機構とは関係ありません。掲載している問題は、機構が公表する出題範囲を参照して合格ナビが作成した論点別問題です。条文は e-Gov 法令検索の不動産登記法・不動産登記規則・民法・建物の区分所有等に関する法律の現行の条文(2026年10月7日時点)にもとづきます。設例は当サイトのもので、実在の土地・建物ではありません。試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。
よくある質問
Q登記識別情報は、誰に、いつ通知されますか?
登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合に、登記を完了したときは、速やかに、その申請人に対して登記識別情報を通知しなければなりません(不動産登記法21条本文)。たとえば売買による所有権の移転の登記では、新しく登記名義人になる買主が通知を受ける側です。ただし、申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、通知されません(21条ただし書)。
Q仮登記に基づいて本登記をすると、本登記の順位はいつの時点になりますか?
仮登記の順位になります。不動産登記法106条は、仮登記に基づいて本登記をした場合は、その本登記の順位は、その仮登記の順位による、と定めています。権利に関する登記の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後によるのが原則(4条1項)で、106条はその特則にあたります。なお、所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がいる場合には、その第三者の承諾があるときに限って申請できます(109条1項)。
Q分筆の登記と合筆の登記は、誰が申請できますか? 合筆できない土地はありますか?
分筆または合筆の登記は、表題部所有者または所有権の登記名義人以外の者は申請できません(不動産登記法39条1項)。合筆の登記は、41条が6つの場合に「することができない」としています。相互に接続していない土地、地目または地番区域が相互に異なる土地、表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に異なる土地、それらの者が相互に持分を異にする土地、所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地、所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(合筆後の登記記録に登記できるものとして法務省令で定めるものがある土地を除く)です。
Q建物を新築したら、表題登記はいつまでに申請しなければなりませんか?
新築した建物については、所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければなりません(不動産登記法47条1項)。正当な理由がないのに申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられます(164条1項)。表題登記は「表示に関する登記」で、権利部の登記ではありません。所有権の保存の登記(権利に関する登記)を申請できる者は、74条に定める者に限られます。
Q不動産の権利を取得しても、登記をしないとどうなりますか?
民法177条は、不動産に関する物権の得喪および変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができないと定めています。ただし、不動産登記法5条は、詐欺または強迫によって登記の申請を妨げた第三者、および他人のために登記を申請する義務を負う第三者(その登記の登記原因が自己の登記の登記原因の後に生じたときを除く)は、その登記がないことを主張できないとしています。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

