住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)を、宅地建物取引業者が売主の場合に絞って、e-Govの条文で整理します。保証金の供託と保険契約、基準日(3月31日)と3週間、届出、50日後の契約締結の制限、買主への説明、還付、建設業者との違い、試験での読み分けを表にしました。
目次
結論:住宅瑕疵担保履行法(正式名称は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」)は、新築住宅に瑕疵(契約の内容に適合しない状態)があったときの売主・請負人の責任が、実際に履行されるようにするための法律です。宅地建物取引業者(以下「宅建業者」)が自ら売主となる場合の骨格は、①毎年3月31日の基準日の前10年間に、自ら売主として宅建業者でない買主へ引き渡した新築住宅について、基準日から3週間を経過する日までの間に保証金を供託している(保険契約を締結し買主に保険証券等を交付した住宅は、供託額の計算の戸数から除く)、②基準日ごとに免許権者へ届け出る、③供託と届出をしなければ、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後は、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を結べない(基準日後に不足額を供託し、免許権者の確認を受けた日以後は除く)、④供託をしている業者は、契約を結ぶまでに供託所の所在地などを記載した書面を交付して説明する、の4点です。責任の中身(引渡しから10年・構造耐力上主要な部分等の瑕疵)は、この法律ではなく品確法94条・95条が定めています。
宅建 令和8年度の試験日と法令の基準日:試験日 令和8年10月18日(日)13時から15時まで(2時間)。出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているもの。最終確認日:2026-10-09。出典:不動産適正取引推進機構 宅建試験 試験日程・同 試験概要。
この記事の条文は、e-Gov法令検索の特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(以下「履行確保法」)と、その施行令・施行規則、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」)とその施行令、宅地建物取引業法とその施行規則です。試験の法令の基準日は4月1日で、この記事で引く条文は、2026年4月1日現在の版と現行の版で同じ文言です(e-Govの時点指定、2026-10-09 時点)。契約不適合責任の民法側の整理は契約不適合責任の記事、手付金等の保全措置や担保責任特約の制限は8種制限の記事、営業保証金の供託との比較は営業保証金と弁済業務保証金の記事にあります。この記事は、それらで扱っていない履行確保法そのものを扱います。個別の住宅の不具合や契約の相談は、この記事では扱いません。制度の案内は国土交通省の住宅瑕疵担保履行法のサイトにあります。
住宅瑕疵担保履行法とは:責任の中身は品確法、履行の裏付けがこの法律
履行確保法1条は、目的を次のように書いています。住宅の安全性などを確保するには、瑕疵の発生の防止が図られるとともに、「住宅に瑕疵があった場合においてはその瑕疵担保責任が履行されることが重要である」。そのために、建設業者による保証金の供託、宅建業者による保証金の供託、保険法人の指定、紛争の処理体制などを定める、という構成です。
| 法律 | 定めていること | 主な条文 |
|---|---|---|
| 品確法 | 新築住宅の売主・請負人が負う責任の中身(引渡しから10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵(構造耐力または雨水の浸入に影響のないものを除く)について。特約で注文者・買主に不利なものは無効) | 94条(請負人)・95条(売主) |
| 履行確保法 | その責任が履行されるようにする措置(供託・保険契約)、基準日、届出、契約締結の制限、買主への説明、還付 | 3条〜10条(建設業者)・11条〜16条(宅建業者) |
| 宅地建物取引業法 | 重要事項説明・契約書面への記載、監督処分(履行確保法の違反も指示・業務停止の理由に挙がる) | 35条1項13号・37条1項11号・65条 |
履行確保法2条5項は、「特定住宅瑕疵担保責任」を、品確法94条1項または95条1項の規定による担保の責任、と定義しています。品確法95条1項は、新築住宅の売買契約で、売主は、買主に引き渡した時(その新築住宅が請負人から売主に引き渡されたものであるときは、その引渡しの時)から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、民法415条、541条、542条、562条、563条に規定する担保の責任を負う、と書きます。
条文の言葉:新築住宅・瑕疵・構造耐力上主要な部分等・買主
| 用語 | 条文の言葉 | 出典 |
|---|---|---|
| 新築住宅 | 「新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)」 | 品確法2条2項 |
| 瑕疵 | 「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態」 | 品確法2条5項 |
| 構造耐力上主要な部分 | 住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版または横架材で、住宅の自重や積載荷重、積雪、風圧、土圧、水圧、地震その他の震動・衝撃を支えるもの | 品確法施行令5条1項 |
| 雨水の浸入を防止する部分 | 住宅の屋根もしくは外壁またはこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具、および、雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち屋根・外壁の内部または屋内にある部分 | 品確法施行令5条2項 |
| 買主 | 新築住宅の買主のうち、「宅地建物取引業者であるものを除く。」(19条2号を除き、以下同じ) | 履行確保法2条7項二号ロ |
品確法94条・95条の「住宅の構造耐力上主要な部分等」は、「構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの」のことで、政令(品確法施行令5条)が上の2つを定めています。したがって、保険や供託が守る瑕疵は「構造耐力上主要な部分」だけではなく、雨水の浸入を防止する部分も含みます。一方で、品確法94条1項のかっこ書は、ここでいう瑕疵から「構造耐力又は雨水の浸入に影響のないもの」を除いており、95条1項の売主の責任にも同じ扱いが及びます(94条1項「次条において同じ」)。
宅建業者の資力確保措置:保証金の供託と保険契約
供託(11条)
11条1項は、次のように書いています。
「宅地建物取引業者は、毎年、基準日から三週間を経過する日までの間において、当該基準日前十年間に自ら売主となる売買契約に基づき買主に引き渡した新築住宅について」、当該買主に対する特定住宅販売瑕疵担保責任の履行を確保するため、保証金の供託をしていなければならない。
| 項目 | 条文の内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 対象になる住宅 | 基準日前10年間に、自ら売主となる売買契約に基づき買主(宅建業者を除く)に引き渡した新築住宅 | 11条1項 |
| 基準日 | 毎年、3月31日(3条1項の「基準日(三月三十一日をいう。以下同じ。)」を用いる) | 3条1項 |
| 供託の期限 | 基準日から3週間を経過する日までの間 | 11条1項 |
| 供託先 | 主たる事務所の最寄りの供託所 | 11条6項 |
| 金銭以外 | 国債証券、地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券で充てることができる | 11条5項 |
| 額の決め方 | 基準日における販売新築住宅の合計戸数を基礎として、政令の算定による「基準額」以上の額 | 11条2項 |
| 戸数の数え方 | 床面積の合計が政令で定める面積以下のものは、2戸をもって1戸(政令の面積は55平方メートル) | 11条3項・施行令6条 |
11条2項のかっこ書が、供託と保険のつながりです。保証金の額を決める「販売新築住宅」は、宅建業者が保険法人と住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結し、買主に保険証券またはこれに代わるべき書面を交付し、またはこれらに記載すべき事項を記録した電磁的記録を提供した場合の、その保険契約に係る新築住宅を除いたものです。
保証金の基準額の算定:基準額は、販売新築住宅の合計戸数が1以下のとき2,000万円×戸数、1を超え10以下のとき200万円×戸数+1,800万円、10を超え50以下のとき80万円×戸数+3,000万円、50を超え100以下のとき60万円×戸数+4,000万円、100を超え500以下のとき10万円×戸数+9,000万円(以下、戸数が多い区分は施行令の別表による)。その額が120億円を超えるときは120億円。法の別表は、戸数の区分ごとに保証金の額の範囲を定めている(例:1を超え10以下は2,000万円を超え3,800万円以下)。最終確認日:2026-10-09。出典:e-Gov法令検索 履行確保法施行令・履行確保法。
当サイトの計算(作例)です。保険を付けていない販売新築住宅が、いずれも55平方メートルを超える20戸のとき、20は10を超え50以下の区分なので、80万円×20+3,000万円=4,600万円です。検算は2通りで行います。(1)法の別表では、この区分の範囲は3,800万円を超え7,000万円以下で、4,600万円はその中にあります。(2)区分の境目で連続するかを見ると、10戸のとき、2つ目の区分の式は200万円×10+1,800万円=3,800万円、3つ目の区分の式は80万円×10+3,000万円=3,800万円で一致します。別の作例として、販売新築住宅6戸がすべて55平方メートル以下なら、2戸を1戸と数えて3戸です。3は1を超え10以下の区分なので、200万円×3+1,800万円=2,400万円です。
保険契約(2条7項)
履行確保法2条7項は、「住宅販売瑕疵担保責任保険契約」を、次に掲げる要件に適合する保険契約と定めています。
| 要件 | 条文の内容 |
|---|---|
| 保険料 | 宅建業者が保険料を支払うことを約するもの(一号) |
| 塡補する損害 | 業者が責任を履行したときの損害(イ)と、業者が相当の期間を経過してもなお責任を履行しないときの買主の損害(ロ)(二号) |
| 保険金額 | 二千万円以上(三号) |
| 有効期間 | 買主が売主の宅建業者から新築住宅の引渡しを受けた時から十年以上(四号) |
| 変更・解除 | 国土交通大臣の承認を受けた場合を除き、変更・解除ができない(五号) |
保険契約の内容の基準:保険金額は2,000万円以上、引渡しから10年以上有効。国土交通省令(施行規則2条)は、業者が責任を履行したときの業者の損害(2条7項二号イ)の塡補について、損害の額から一戸建ての住宅は10万円、共同住宅等は50万円または保険契約に係る共同住宅等の合計戸数に10万円を乗じた額のいずれか低い額を控除した残額に80%を乗じた額以上(規則2条1号)、業者が履行しないときの買主の損害(同号ロ)の塡補について、同じ額を控除した残額以上(80%は乗じない。規則2条2号ロ)、と定める。最終確認日:2026-10-09。出典:e-Gov法令検索 履行確保法・履行確保法施行規則。
保険の引受けを行うのは、国土交通大臣が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人(17条)です。法19条は保険法人の業務の1つとして、住宅建設瑕疵担保責任保険契約と住宅販売瑕疵担保責任保険契約の引受けを挙げています。
基準日・届出・50日:時系列で整理する
| 時点 | すること | 条文 |
|---|---|---|
| 毎年3月31日(基準日) | 基準日前10年間に引き渡した新築住宅について、供託または保険の状況が決まる | 3条1項・11条1項 |
| 基準日から3週間(経過する日まで) | 保証金の供託(供託をする場合) | 11条1項 |
| 基準日から3週間以内 | 供託と保険契約の締結の状況を、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に届け出る | 12条1項・施行規則16条1項 |
| 基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後 | 供託をし、かつ届出をしていなければ、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならない | 13条本文 |
| 基準日後 | 基準額に不足する額を供託し、その供託について免許権者の確認を受けたときは、確認を受けた日以後は、締結できる | 13条ただし書・施行規則17条 |
12条1項の届出は、「前条第一項の新築住宅を引き渡した宅地建物取引業者」が、基準日ごとに行います。国土交通省の案内によると、基準日前1年間に引き渡した新築住宅が0戸でも、基準日前10年間に1戸以上引き渡している場合は、届出をする義務があります(国土交通省 基準日届出のページ、2026-10-09 時点)。
基準日届出の期間:基準日は3月31日、届出期間は4月1日〜4月21日(行政機関の休日に当たるときはその翌開庁日)。施行規則16条1項は、基準日から3週間以内に別記第7号様式の届出書で行うと定める。最終確認日:2026-10-09。出典:国土交通省 住宅瑕疵担保履行法 基準日届出。
届出は効力の条件か、義務か
条文を並べると、次のようになります。
- 12条1項は、届出を宅建業者の義務として定めます。届出をせず、または虚偽の届出をしたときは、42条により50万円以下の罰金です
- 13条は、供託と届出の両方をしていないと、50日を経過した日以後の「新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約」の締結を禁じます。違反して契約を締結したときは、40条2号により、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です
- 宅地建物取引業法65条は、国土交通大臣または都道府県知事が、履行確保法11条1項・13条などの違反について、指示(1項・3項)や、1年以内の期間を定めた業務の停止(2項2号)をすることができる、と定めます
- 違反して締結した売買契約の私法上の効力を定める旨は、履行確保法(e-Gov)に記載がありません(「無効」の語の記載なし、2026-10-09 時点)
つまり、届出そのものは売買契約の効力の条件としては書かれておらず、届出の義務と、未届出・未供託の場合の新規契約の締結禁止(罰則つき)が別々に定められています。
買主への説明と宅建業法の書面
15条1項は、供託をしている宅建業者(供託宅地建物取引業者)に、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、売買契約を締結するまでに、供託所の所在地その他国土交通省令で定める事項を記載した書面を交付して説明することを求めます。施行規則21条は、その事項として、供託をしている供託所の表示と、複数の宅建業者の負担割合がある場合の自らの割合(施行令7条1項の販売新築住宅)を定めています。15条2項は、書面の交付に代えて、買主の承諾を得て電磁的方法により提供できる場合を、10条2項の準用で定めます。
| 宅地建物取引業法35条1項13号 | 同37条1項11号 | 履行確保法15条1項 | |
|---|---|---|---|
| 書面 | 重要事項説明 | 契約成立後に交付する書面 | 供託所の所在地等を記載した書面 |
| 内容 | 契約不適合を担保すべき責任の履行に関し、保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか | 契約不適合を担保すべき責任、またはその履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるとき | 供託所の所在地その他国土交通省令で定める事項 |
| 時点 | 契約が成立するまでの間に | 契約を締結したとき(遅滞なく) | 売買契約を締結するまでに |
| 対象 | 宅建業者が買主等に | 宅建業者が相手方に | 供託をしている業者が、自ら売主となる新築住宅の買主に |
宅地建物取引業法施行規則16条の4の2は、35条1項13号の措置として、次の4つを挙げています。保証保険契約・責任保険契約の締結、保険を付保することを委託する契約の締結、銀行等が連帯して保証することを委託する契約の締結、そして4号の「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律第十一条第一項に規定する住宅販売瑕疵担保保証金の供託」です。35条・37条書面の比べ方は35条・37条書面の違いの記事にあります。
買主の保護:優先弁済と還付
14条1項は、供託をしている宅建業者が責任を負う期間内に、瑕疵によって損害を受けた買主は、その瑕疵を理由とする代金の返還請求権または損害賠償請求権に関し、供託されている保証金について、他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有する、と書いています。この権利の実行のために保証金の還付を請求できるのは、14条2項により、次の場合に限られます。
| 号 | 場合 |
|---|---|
| 一 | その請求権について債務名義を取得したとき |
| 二 | 請求権の存在・内容について業者と合意した旨を記載した公正証書を作成したときその他これに準ずる場合として国土交通省令で定めるとき(施行規則18条:合意した旨が記載された公証人の認証を受けた私署証書、またはその旨が記録された公証人の認証を受けた電磁的記録を作成した場合) |
| 三 | 業者が死亡した場合その他、返還や賠償の義務を履行できず、または著しく困難な場合として国土交通省令で定める場合で、国土交通大臣の確認を受けたとき(施行規則19条:合併以外の理由による解散、再生手続・更生手続開始の決定、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態が明らかな場合) |
保険を付けた住宅の紛争は、33条の特例があります。指定住宅紛争処理機関は、「住宅瑕疵担保責任保険契約に係る新築住宅」(品確法の評価住宅を除く)または19条2号の保険契約に係る住宅の、建設工事の請負契約または売買契約に関する紛争の当事者の双方または一方からの申請により、あっせん・調停・仲裁の業務を行うことができます。33条2項の読み替えの表は、この手続を「特別住宅紛争処理」と呼んでいます。33条1項が挙げるのはこの2種類の保険契約に係る住宅で、保険を付けずに供託だけをしている住宅は、33条1項(e-Gov)には記載がありません(2026-10-09 時点)。
建設業者との違い、附則の経過措置
| 比べる点 | 建設業者(請負) | 宅建業者(売買) |
|---|---|---|
| 責任の根拠 | 品確法94条(請負人、注文者に引き渡した時から10年) | 品確法95条(売主、買主に引き渡した時から10年) |
| 供託 | 3条 | 11条 |
| 届出 | 4条(建設業法の許可を受けた大臣・知事) | 12条(宅建業法の免許を受けた大臣・知事) |
| 契約の制限 | 5条(新たに住宅を新築する建設工事の請負契約) | 13条(新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約) |
| 説明 | 10条(請負契約を締結するまでに) | 15条(売買契約を締結するまでに) |
| 還付 | 6条 | 14条 |
| 不足額・保管替え・取戻し | 7条〜9条 | 16条が7条〜9条を準用(読み替えあり) |
| 発注者・買主から除かれる者 | 発注者のうち宅建業者であるもの(2条6項二号ロ) | 買主のうち宅建業者であるもの(2条7項二号ロ) |
履行確保法の附則4条は、制度の開始から10年間の特例で、11条1項の「当該基準日前十年間」を「附則第一条ただし書に規定する規定の施行の日から当該基準日までの間」に読み替えるものです。附則4条が読み替えをする期間は、「附則第一条ただし書に規定する規定の施行の日から起算して十年を経過する日までの間」です。施行規則の附則1条は、その施行の日を「法附則第一条ただし書に規定する規定の施行の日(平成二十一年十月一日)」と書いています。10年を経過する日は、当サイトの計算で令和元年(2019年)9月30日にあたるので、この読み替えはすでに終わっています。現在の試験で問われる「基準日前10年間」は、本則のとおりです。
試験での問われ方と、間違えやすいポイント
令和7年度の宅建試験の問題冊子(不動産適正取引推進機構が公開)の問45は、履行確保法に基づく保証金の供託または保険契約の締結を題材にしていました。選択肢が扱っていた論点は、基準日前に遡る期間、売主として引き渡す場合と媒介をする場合の違い、保険金を請求できる損害の範囲、指定住宅紛争処理機関の紛争処理の4つです。この記事が取り上げる年度の問題は、令和7年度の1冊です。
| 誤りになる書き方(当サイトの例) | 条文の言葉 |
|---|---|
| 基準日前5年間に引き渡した住宅だけが対象 | 11条1項は「基準日前十年間」 |
| 新築住宅の売買を媒介する場合にも供託か保険が必要 | 11条1項は「自ら売主となる売買契約」。「媒介」の語は履行確保法(e-Gov)に記載がない(2026-10-09 時点) |
| 保険が守る瑕疵は構造耐力上主要な部分に限られる | 品確法95条1項・施行令5条は、雨水の浸入を防止する部分も含む(住宅の構造耐力上主要な部分等) |
| 供託だけをすれば、届出をしなくても契約を結べる | 13条は「供託をし、かつ、…届出をしなければ」 |
| 基準日は4月1日 | 3条1項は「三月三十一日をいう」 |
| 買主が宅建業者でも、保証金の対象になる | 2条7項二号ロは「宅地建物取引業者であるものを除く」 |
| 保険契約は、引渡しから5年有効であればよい | 2条7項四号は「十年以上」 |
当サイトで作成した例題(自作問題で、実在の試験問題の写しではありません)です。
- 例題1:宅建業者が自ら売主として新築住宅を宅建業者でない買主に引き渡した場合、基準日前10年間に引き渡した新築住宅について、保険契約を付けたものを除き、保証金の供託が必要である。
- 例題2:基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後は、供託をしていれば、届出をしていなくても、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結できる。
- 例題3:供託をしている宅建業者は、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、売買契約を締結するまでに、供託所の所在地その他の事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
答えは、例題1が正(11条1項・2項)、例題2が誤り(13条は供託と届出の両方を条件とする)、例題3が正(15条1項)です。
まとめ
- 履行確保法は、新築住宅の売主・請負人の責任(品確法94条・95条、引渡しから10年)が履行されるよう、供託または保険契約を求める法律
- 宅建業者は、毎年3月31日の基準日の前10年間に、自ら売主として宅建業者でない買主に引き渡した新築住宅について、基準日から3週間を経過する日までに保証金を供託する(11条1項)。保険契約を付けた住宅は、供託額の計算の戸数から除かれる(11条2項かっこ書)
- 保険契約は、保険金額2,000万円以上、引渡しから10年以上有効など(2条7項)。国土交通大臣が指定する保険法人が引き受ける
- 届出は基準日から3週間以内(12条1項・施行規則16条1項)。供託と届出の両方がないと、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後は、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を結べない(13条)。ただし書で、不足額の供託と免許権者の確認を受ければ、その確認の日以後は結べる
- 供託をしている業者は、売買契約を締結するまでに、供託所の所在地などを書面で交付して説明する(15条1項)
- 業者が責任を負う期間内に瑕疵によって損害を受けた買主は、代金の返還請求権・損害賠償請求権に関し、供託された保証金から他の債権者に先立って弁済を受ける権利があり(14条1項)、還付を請求できるのは14条2項の3つの場合に限られる
- 建設業者の3条〜10条と、宅建業者の11条〜16条が対応している
参照した一次ソース
- e-Gov法令検索 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(1条・2条・3条・11条〜16条・17条・19条・33条・40条・42条、附則4条)/施行令(5条〜7条・別表)/施行規則(2条・16条〜19条・21条、附則1条・2条)
- e-Gov法令検索 住宅の品質確保の促進等に関する法律(2条・94条・95条)/施行令(5条)
- e-Gov法令検索 宅地建物取引業法(35条・37条・65条)/施行規則(16条の4の2)
- 国土交通省 住宅瑕疵担保履行法および住まいの安心総合支援サイト(基準日届出)
- 不動産適正取引推進機構 令和7年度宅建試験 問題冊子
よくある質問
Q供託と保険は、どちらか一方を選ぶのですか?両方必要ですか?
11条1項は、基準日前10年間に自ら売主として宅地建物取引業者でない買主に引き渡した新築住宅について、保証金の供託をしていなければならない、と書いています。そして11条2項のかっこ書は、保証金の額を決める住宅の戸数から、保険法人と住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結し、買主に保険証券等を交付した住宅を除く、としています。つまり、保険を付けた住宅は供託額の計算の対象から外れます。同じ住宅に供託と保険の両方を求める旨は、履行確保法(e-Gov)には記載がありません(2026-10-09 時点)。住宅ごとに保険を付け、残りを供託で賄う組合せになりうる点は、当サイトの条文の読み方です。
Q買主が宅地建物取引業者の場合も、供託や保険の対象になりますか?
履行確保法2条7項二号ロは、新築住宅の「買主」から宅地建物取引業者であるものを除き、この定めは履行確保法19条2号を除いて以下の条文にも及ぶ、としています。11条1項の供託は「買主に引き渡した新築住宅」について求められるので、宅地建物取引業者である買主に引き渡した分は、この法律の「買主」に引き渡した新築住宅には当たりません。国土交通省の届出の案内にも、基準日前10年間に新築住宅を引き渡したことがある者が届出を行う必要がある、という説明に「引渡先が宅建業者である場合を除く」という注記があります(国土交通省 基準日届出のページ、2026-10-09 時点)。
Q基準日の後、いつまでに供託と届出をしないと、新しい売買契約を結べなくなりますか?
13条は、供託をし、かつ、12条1項の届出をしなければ、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後は、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならない、と書いています。ただし書は、基準日後に基準額に不足する額の供託をし、その供託について免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)の確認を受けたときは、その確認を受けた日以後はこの限りでない、としています。供託だけ、または届出だけでは足りず、両方が条件です。違反して売買契約を締結したときは、40条2号の罰則があります。
Q新築住宅の売買の媒介だけをする宅地建物取引業者にも、供託や保険の義務がありますか?
11条1項が供託を求めているのは、「自ら売主となる売買契約」に基づいて引き渡した新築住宅についてです。「媒介」の語は、履行確保法(e-Gov)にも施行令にも記載がありません(2026-10-09 時点)。令和7年度の宅建試験の問題冊子には、この法律を題材にした問45があり、売主として引き渡す場合だけでなく媒介をする場合にも義務があるかどうかを問う選択肢が含まれています。条文は「自ら売主となる」場合を書いている、という読み分けが必要です。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月9日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

