宅建業法の営業保証金(本店1,000万円・支店500万円)と弁済業務保証金分担金(本店60万円・支店30万円)を、25条〜30条と64条の7〜64条の14の条文で比較します。供託先、還付を受けられる人、取戻しの公告の有無、手付金等の保全措置との違いも整理します。
目次
結論:営業保証金は、宅建業者が自分で供託所に供託する保証金で、主たる事務所1,000万円、その他の事務所ごとに500万円です(宅建業法25条、施行令2条の4)。弁済業務保証金分担金は、保証協会に加入する業者が協会に納める金額で、主たる事務所60万円、その他の事務所ごとに30万円です(同法64条の9、施行令7条)。保証協会の社員になると、営業保証金の供託は不要になります(64条の13)。どちらも、取引をした人(宅建業者を除く)が債権の弁済を受けるための制度です。
この記事は、e-Gov 法令検索で読んだ宅地建物取引業法・同法施行令・同法施行規則の条文だけをもとに、宅建(宅地建物取引士資格試験)の宅建業法で問われる保証金制度を整理したものです。宅建業法全体の数字は宅建業法の条文と論点にまとめてあり、ここでは「営業保証金」「弁済業務保証金」の検索意図に絞って、金額・供託先・還付・取戻しの違いを掘り下げます。
営業保証金と弁済業務保証金の違い(比較表)
| 項目 | 営業保証金 | 弁済業務保証金(分担金) |
|---|---|---|
| 誰が | 宅建業者が自分で | 保証協会の社員(宅建業者)が分担金を協会に納め、協会が供託する |
| 金額 | 主たる事務所1,000万円、その他の事務所ごとに500万円 | 分担金は主たる事務所60万円、その他の事務所ごとに30万円 |
| 供託先 | 主たる事務所のもよりの供託所(25条1項) | 協会が、法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所に供託(64条の7第2項) |
| 供託の時期 | 免許後、届出をして事業を開始する前(25条4項・5項) | 協会が分担金の納付を受けた日から1週間以内(64条の7第1項) |
| 弁済を受けられる人 | 取引をした者(宅建業者を除く) | 社員と取引をした者(宅建業者を除く) |
| 還付の手続 | 供託所から弁済を受ける(27条) | 協会の認証を受けて弁済を受ける(64条の8第2項) |
| 還付後の補充 | 不足額を、省令で定める日から2週間以内に供託(28条1項) | 業者は還付額の通知から2週間以内に還付充当金を納付(64条の10第2項) |
営業保証金と弁済業務保証金分担金の額:営業保証金は主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円の割合による金額の合計額。弁済業務保証金分担金は主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円の割合による金額の合計額。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 宅地建物取引業法施行令2条の4・7条。
金額の計算例(当サイトの計算)
- 主たる事務所と支店3か所(その他の事務所が3つ)の宅建業者の場合
- ① 営業保証金:1,000万円+500万円×3=2,500万円
- ② 検算:5つの事務所すべてを500万円として2,500万円(500万円×5)。主たる事務所の分に追加の500万円を足して、2,500万円で一致
- ③ 分担金:60万円+30万円×3=150万円。検算は 30万円×4+30万円=150万円
営業保証金:供託の額・供託先・届出(25条・26条)
営業保証金の供託は、次の流れです。
1. 宅建業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託します(25条1項)。額は主たる事務所とその他の事務所ごとに、政令で定める額です(同2項)
2. 供託したら、供託物受入れの記載のある供託書の写しを添付して、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に届け出ます(同4項)
3. 届出をした後でなければ、事業を開始してはなりません(同5項)
4. 免許をした日から3か月以内に届出がないときは、免許権者は届出をすべき旨を催告しなければなりません(同6項)。催告が到達した日から1か月以内に届出がなければ、免許を取り消すことができます(同7項)
事業の開始後に新たに事務所を設置したときは、その事務所について政令で定める額(500万円)の営業保証金を供託します(26条1項)。届出(25条4項)も、事業の開始の制限(同5項)も準用されます(26条2項)。
供託できる有価証券(25条3項、施行規則15条)
営業保証金は、金銭のほか、国債証券・地方債証券などの有価証券で充てることができます(25条3項)。有価証券の価額は、施行規則15条1項が次のように定めています。
| 有価証券 | 価額 |
|---|---|
| 国債証券 | 額面金額 |
| 地方債証券・政府が債務について保証契約をした債券 | 額面金額の100分の90 |
| 上記以外の債券 | 額面金額の100分の80 |
営業保証金に充てる有価証券の価額:国債証券は額面金額、地方債証券・政府保証債は額面金額の100分の90、その他の債券は額面金額の100分の80。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 宅地建物取引業法施行規則15条。
たとえば、額面1,000万円の地方債証券は900万円として扱われます(当サイトの計算:1,000万円×90%=900万円)。営業保証金1,000万円なら、これに現金100万円を足して1,000万円です(検算:1,000万円−900万円=100万円)。
この論点の問題を解く
営業保証金の還付と不足額の供託(27条・28条)
宅建業者と宅建業に関し取引をした者(宅建業者に該当する者を除く)は、その取引により生じた債権に関し、業者が供託した営業保証金について弁済を受ける権利を有します(27条1項)。
還付によって営業保証金が政令で定める額に不足することになったときは、次の2つが必要です(28条)。
- 法務省令・国土交通省令で定める日から2週間以内に、不足額を供託する(同1項)
- 供託したら、供託書の写しを添付して、2週間以内に、免許権者に届け出る(同2項)
主たる事務所を移転して、最寄りの供託所が変わったときは、金銭のみで供託しているなら、費用を予納して保管替えを請求し、そのほかのとき(有価証券を含む場合など)は、新たに供託します(29条1項)。
営業保証金の取戻し(30条)
宅建業者であった者や承継人は、次のときに、供託した営業保証金を取り戻すことができます(30条1項)。
| 取戻しができるとき | 条文 |
|---|---|
| 免許の有効期間が満了したとき | 30条1項、3条2項 |
| 免許が効力を失ったとき(11条)など | 30条1項 |
| 免許を取り消されたとき(25条7項・66条・67条1項) | 30条1項 |
| 一部の事務所を廃止して、営業保証金の額が政令の額を超えるとき | 超過額について(30条1項後段) |
| 主たる事務所の移転で、新たに供託したとき | 移転前の供託所の営業保証金(30条1項後段) |
取戻しには、原則として公告が必要です。営業保証金について還付を受ける権利を有する者に対し、6月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告し、その期間内に申出がなかった場合でなければ、取戻しはできません(30条2項)。ただし、取戻しができる事由が発生した時から10年を経過したときは、この限りではありません(同項ただし書)。主たる事務所の移転で新たに供託した場合の、移転前の主たる事務所のもよりの供託所に供託した営業保証金の取戻しは、この公告の対象から除かれています(同項かっこ書)。
保証協会と弁済業務保証金分担金(64条の2〜64条の9)
宅地建物取引業保証協会は、国土交通大臣が指定する法人です。指定の要件には、申請者が一般社団法人であること、宅建業者のみを社員とするものであることなどがあります(64条の2第1項)。協会の業務は、次の3つです(64条の3第1項)。
- 宅建業者の相手方等からの、社員が取り扱った取引に関する苦情の解決
- 宅地建物取引士等に対する研修
- 社員と取引をした者の、その取引により生じた債権の弁済(弁済業務)
社員は、次の時期までに、主たる事務所とその他の事務所ごとに政令で定める額の弁済業務保証金分担金を、協会に納付します(64条の9第1項)。
- 協会に加入しようとする宅建業者:加入しようとする日まで(1号)
- 協会の指定の日にすでに社員である者:国土交通大臣が指定する弁済業務開始日の1か月前の日まで(2号)
納付後に新たに事務所を設置したときは、その日から2週間以内に、政令で定める額の分担金を納付します(同2項)。2号の期日までに、または2項の2週間以内に納付しないと、社員は地位を失います(同3項)。
協会は、分担金の納付を受けた日から1週間以内に、受けた額に相当する額の弁済業務保証金を、法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所に供託します(64条の7第1項・2項)。
社員は、弁済業務開始日以後は、営業保証金を供託することを要しません(64条の13)。すでに供託した営業保証金は、取りもどすことができます(64条の14第1項)。
弁済業務保証金の還付・還付充当金・特別弁済業務保証金分担金(64条の8・64条の10・64条の12)
社員と宅建業に関し取引をした者(宅建業者に該当する者を除く。社員となる前に取引をした者を含む)は、その取引により生じた債権について、協会が供託した弁済業務保証金から、弁済を受ける権利を有します(64条の8第1項)。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 弁済を受けられる額の上限 | 社員が社員でないとしたら供託すべき営業保証金の額に相当する額の範囲内(すでに認証した額は控除し、還付充当金の納付額は加える) | 64条の8第1項 |
| 手続 | 権利を実行しようとする者は、弁済を受けられる額について、協会の認証を受ける | 64条の8第2項 |
| 協会の補充 | 還付があったら、省令で定める日から2週間以内に、還付額に相当する額の弁済業務保証金を供託する | 64条の8第3項 |
| 社員の負担(還付充当金) | 協会からの通知を受けた日から2週間以内に、還付額に相当する額の還付充当金を納付する。納付しないと社員の地位を失う | 64条の10第1項〜3項 |
| 準備金で足りないとき | 協会が、社員に特別弁済業務保証金分担金の納付を通知する。通知を受けた日から1か月以内に納付する。納付しないと社員の地位を失う | 64条の12第3項〜5項 |
弁済を受けられる額の計算例(当サイトの計算)
主たる事務所と支店1か所の社員の場合です。
- ① 弁済を受けられる額の上限(営業保証金に相当する額):1,000万円+500万円=1,500万円
- ② 納めている分担金:60万円+30万円=90万円
- ③ 検算:弁済を受けられる額の上限は、納めた分担金の90万円ではなく、営業保証金に相当する1,500万円です。別の見方として、主たる事務所を500万円の2口分と数えると、500万円×3口=1,500万円で一致します。分担金の90万円(60万円+30万円)とは別の数字です。すでに認証された額があれば、その額を差し引きます
協会は、還付充当金の納付がなかった場合の供託に充てるため、弁済業務保証金準備金を積み立てます(64条の12第1項)。弁済業務保証金から生ずる利息または配当金は、準備金に繰り入れます(同2項)。
弁済業務保証金の取戻しと分担金の返還(64条の11)
協会は、次のときに、弁済業務保証金を取り戻すことができます(64条の11第1項)。
- 社員が社員の地位を失ったとき:その者が納付した分担金の額に相当する額
- 社員が一部の事務所を廃止し、納付した分担金の額が政令で定める額を超えることになったとき:その超過額に相当する額
協会は、取りもどした額に相当する分担金を、その者に返還します(同2項)。社員が社員の地位を失った場合は、次の公告の期間が経過した後に返還します(同3項)。公告は、社員であった者に係る取引により生じた債権について還付を受ける権利を有する者に対し、6月を下らない一定期間内に、認証を受けるため申し出るべき旨を行います(同4項)。この期間内に申出のなかった債権は、認証できません(同5項)。
手付金等の保全措置は別の制度(41条・41条の2)
営業保証金・弁済業務保証金が、宅建業者の取引全般の相手方のための保証であるのに対し、手付金等の保全措置は、宅建業者が自ら売主となる売買で、買主が支払う手付金等を守る制度です。
| 物件 | 保全措置が不要となる額(受領しようとする額が、いずれも以下) | 保全の方法 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 工事の完了前の宅地・建物 | 代金の額の5%以下、かつ1,000万円以下 | 銀行等の連帯保証、保険事業者の保証保険 | 41条1項 |
| 上記以外(工事の完了後など) | 代金の額の10%以下、かつ1,000万円以下 | 上記のほか、指定保管機関との手付金等寄託契約と質権設定契約をいずれも講じる | 41条の2第1項 |
手付金等の保全措置が不要となる額:政令で定める額は1,000万円。工事完了前は代金の5%以下かつ1,000万円以下、工事完了後は代金の10%以下かつ1,000万円以下で、保全措置が不要。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 宅地建物取引業法41条・41条の2、同法施行令3条の5。
保全措置が必要なのに講じないときは、買主は手付金等を支払わないことができます(41条4項)。8種制限の全体は宅建の8種制限で扱っています。
宅建の保証金制度の覚え方:4つの質問で整理する
問題文を読んだら、次の4つを順に確かめます。
1. 誰が供託・納付するのか:宅建業者本人(営業保証金)か、保証協会の社員(分担金を協会へ)か
2. いくらか:1,000万円と500万円(営業保証金)、60万円と30万円(分担金)。「主たる事務所」と「その他の事務所ごと」で区別する
3. 誰が弁済を受けられるのか:取引をした者。宅建業者は除かれる
4. 期限はいつか:不足額の供託は省令の日から2週間以内(28条)、分担金の追加納付は事務所設置から2週間以内(64条の9第2項)、還付充当金は通知から2週間以内(64条の10第2項)、特別弁済業務保証金分担金は通知から1か月以内(64条の12第4項)
当サイトの宅建の問題は、過去の出題論点をもとに作成した論点別問題で、各問に初級・標準・上級の3段階の解説がついています。
まとめ
- 営業保証金は、主たる事務所1,000万円・その他の事務所ごとに500万円。主たる事務所のもよりの供託所に供託し、届出をした後でなければ事業を開始できない(25条)
- 弁済業務保証金分担金は、主たる事務所60万円・その他の事務所ごとに30万円。協会に加入しようとする日までに納め、協会が1週間以内に供託する(64条の7・64条の9)
- 保証協会の社員は営業保証金の供託が不要(64条の13)。弁済を受けられるのは、取引をした者のうち宅建業者を除く者(27条・64条の8)
- 営業保証金の取戻しは、原則として6月を下らない期間の公告が必要(30条2項)。64条の14は30条3項だけを準用している
- 手付金等の保全措置は別の制度。工事完了前は代金の5%以下かつ1,000万円以下、完了後は10%以下かつ1,000万円以下なら不要(41条・41条の2)
本サイトは一般財団法人 不動産適正取引推進機構とは関係ありません。掲載している問題は、機構が公表する出題範囲を参照して合格ナビが作成した論点別問題です。条文は e-Gov 法令検索の宅地建物取引業法・同法施行令・同法施行規則を2026年10月7日に読んだものです。試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。
よくある質問
Q宅建業者が保証協会に加入すれば、営業保証金は供託しなくてよいのですか?
そのとおりです。宅建業法64条の13は、宅地建物取引業保証協会の社員は、国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後は、宅建業者が供託すべき営業保証金を供託することを要しない、と定めています。そのかわりに、協会に加入しようとする日までに、主たる事務所60万円・その他の事務所ごとに30万円の弁済業務保証金分担金を協会に納付します(64条の9第1項1号、施行令7条)。
Q営業保証金から弁済を受けられるのは、誰ですか?
宅建業法27条1項は、宅建業者と宅建業に関し取引をした者(宅建業者に該当する者を除く)が、その取引により生じた債権について、供託された営業保証金から弁済を受ける権利を有する、と定めています。取引の相手方が宅建業者であるときは、この権利はありません。弁済業務保証金も、同様に宅建業者に該当する者は除かれています(64条の8第1項)。
Q保証協会に加入したことで営業保証金を取り戻すときは、公告が必要ですか?
64条の14第1項は、供託の免除によって供託が不要になった宅建業者は、供託した営業保証金を取りもどすことができる、と定めています。同条2項が準用しているのは30条3項だけで、通常の取戻しの30条2項にある「6月を下らない一定期間内に申し出るべき旨の公告」は準用されていません。免許の有効期間の満了などによる取戻しは、30条2項の公告が必要です(事由が発生した時から10年を経過したときを除く)。
Q保証協会の社員が、分担金を期限までに納めなかったらどうなりますか?
社員の地位を失います。64条の9第3項は、協会の指定の日にすでに社員である者が弁済業務開始日の1か月前の日(同条1項2号)までに、または新たに事務所を設置した日から2週間以内(同条2項)に、分担金を納付しないときは、その地位を失うと定めています。還付充当金(64条の10第3項)と特別弁済業務保証金分担金(64条の12第5項で準用)も、期限内に納めないと同じです。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

