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原状回復ガイドラインの負担割合の計算方法経過年数と耐用年数を計算例で

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この記事でわかること

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の負担割合を、クロス・カーペット・設備の経過年数と耐用年数から計算する方法を、検算つきの計算例で解説します。経過年数を考慮しないものや特約の扱いも、一次資料で確認します。

目次
  1. 負担割合の基本式:直線で1円まで下げる
  2. 計算例1:クロスの張替え(直線で2通りに検算)
  3. 計算例2:入居時に新品でなかった場合(グラフをずらす)
  4. 計算例3:設備の耐用年数(5年・6年・8年・15年)
  5. 経過年数を考慮しないもの
  6. 耐用年数を過ぎても負担になる場合
  7. ガイドラインの位置づけと特約
  8. まとめ
結論:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」では、借主に原状回復義務がある損傷でも、費用の全額は借主負担になりません。クロスやカーペットなどは「6年で残存価値が1円になる直線」を引き、入居年数が長いほど借主の負担割合を下げます。計算は 借主の負担割合 = 1 − 入居年数 ÷ 耐用年数 が基本で、たとえば耐用年数6年のクロスを4年使えば約33.3%です。フローリングの部分補修や襖紙・障子紙などは、そもそも経過年数を考慮しません。
部位・設備経過年数の扱い(ガイドライン別表2)耐用年数の目安(別表2)
壁(クロス)考慮する6年
カーペット・クッションフロア・畳床考慮する6年
フローリング部分補修は考慮しない/全体張替えは建物の耐用年数で考慮建物の耐用年数
畳表・襖紙・障子紙考慮しない(消耗品に近い)—
流し台考慮する(設備機器)5年
エアコン等の冷暖房機器・電気冷蔵庫・ガス機器・インターホン考慮する6年
主として金属製以外の家具考慮する8年
便器・洗面台等の給排水・衛生設備、主として金属製の器具・備品考慮する15年
鍵の紛失・クリーニング考慮しない—

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表2。表の分類は、原文のPDF(2026-10-04 時点)によります。

ガイドラインの版:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)は平成23年8月版。国土交通省は令和5年3月に、この再改訂版の算定方法を事例で補足する「参考資料」を公表しています。最終確認日:2026-10-04。出典:国土交通省 ガイドライン(再改訂版)のダウンロード、令和5年3月 参考資料。

合格ナビの賃貸不動産経営管理士(賃管士)の論点別問題347問(すべて当サイトのオリジナル問題)のうち、原状回復やガイドラインを論点に含む問題は20問です(2026-10-02 時点の問題データを集計。本試験の出題数ではなく、当サイトの問題数です)。

負担割合の基本式:直線で1円まで下げる

ガイドラインの考え方は、「借主に原状回復義務がある場合でも、経年変化・通常損耗の分まで負担させると二重取りになる」というものです。経年変化や通常損耗の分は、借主が賃料として支払ってきたからです。そこで、建物や設備の経過年数が多いほど借主の負担割合を減らします。

減らし方について、ガイドラインはカーペットを例に「6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を描いて経過年数により賃借人の負担を決定する」と書いています。平成19年の税制改正で残存価値(10%)が廃止され、耐用年数が過ぎたときに1円まで償却できるようになったことを踏まえた説明です。

直線で考えると、式は次のとおりです。

  • 借主の負担割合 = 1 − 入居年数 ÷ 耐用年数(入居年数が耐用年数以上なら、1円で実質0%)
  • 借主の負担額 = 修繕・張替えの費用 × 借主の負担割合

耐用年数6年と8年の負担割合の例です(入居時が新品の場合。小数第2位を四捨五入)。

入居年数1年2年3年4年5年6年8年
耐用年数6年83.3%66.7%50.0%33.3%16.7%0%(1円)0%(1円)
耐用年数8年87.5%75.0%62.5%50.0%37.5%25.0%0%(1円)

「1円」は計算上の下限で、費用に比べて小さいため、この記事の計算例では0%として扱います。端数の切り上げ・切り捨てなど具体的な精算の処理は、ガイドラインの本文には書かれていないため、契約や精算書の様式で確認してください。

なお、この割合を使うのは、すでに「借主に原状回復義務がある」と判断された損傷の費用に対してです。借主が通常の使い方をしていても生じる経年変化・通常損耗は、民法第621条のかっこ書きで原状回復義務の対象から除かれており、貸主負担です(e-Gov 法令検索 民法の現行条文で2026-10-04に確認)。ガイドラインは、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。

負担割合の考え方を問題で確認する(論点別問題):

計算例1:クロスの張替え(直線で2通りに検算)

次の例は、当サイトが作った仮の数字です(実際の金額や判断は個別の事情で変わります)。

例:借主が故意に壁をえぐり、壁一面分のクロス張替え(36,000円)が必要になった。入居時にクロスは新品で、4年住んで退去した。耐用年数は6年。

ガイドラインは、クロスの毀損では「毀損箇所を含む一面分の張替費用を、毀損等を発生させた賃借人の負担とすることが妥当」としています。経過年数を考慮するので、金銭的な負担が不当にはならない、という整理です。

  • ① 負担割合 = 1 − 4÷6 = 1/3(約33.3%)
  • ② 借主負担額 = 36,000円 × 1/3 = 12,000円
  • ③ 検算(貸主側から計算):貸主負担の割合は 4÷6 = 2/3。36,000円 × 2/3 = 24,000円。12,000円 + 24,000円 = 36,000円で、費用の総額に一致します。

月数で計算しても同じになります。国土交通省の参考資料は、新品クロスで入居して4年8か月後に退去する例を挙げ、負担割合を「約22%(1−(56/72))」としています。4年8か月は56か月、耐用年数6年は72か月なので、1 − 56÷72 = 2/9(約22.2%)です。年で数えても 1 − (4 + 8/12) ÷ 6 = 2/9で、同じ結果になります。

入居年数が耐用年数の6年を超えている場合、借主の負担割合は1円(≒0%)です。

計算例2:入居時に新品でなかった場合(グラフをずらす)

賃貸住宅は、入居時の設備がすべて新品とは限りません。ガイドラインは、設備の補修・交換の履歴を貸主側も完全には把握しにくく、借主は入居時に確認できないことから、「経過年数」ではなく「入居年数」でグラフを代用します。そのうえで、入居時の設備の状況に合わせてグラフを下方(図の注記では「左方」)にずらします。入居直前に交換や張替えをしたなら出発点は100%、そうでなければ建築後の経過年数や損耗の状況を考えて、1円を下限に決めます。出発点は、契約当事者が確認のうえ事前に協議して決めることが適当とされています。

例:入居時のクロスの価値を50%とみなして始める(当事者が協議して決めた前提)。借主の過失で壁一面の張替え(36,000円)が必要になり、2年住んで退去した。耐用年数6年。
  • ① 線の傾き:6年で100%分が減るので、1年あたり 100% ÷ 6 = 約16.7%。
  • ② 負担割合 = 50% − 2年 × (1/6) = 1/2 − 1/3 = 1/6(約16.7%)
  • ③ 借主負担額 = 36,000円 × 1/6 = 6,000円
  • ④ 検算(左方シフトで考える):入居時50%は、耐用年数6年のうち3年が経過した位置に当たります。2年住んだので経過は合計5年。1 − 5÷6 = 1/6で、①〜③と一致します。

「下方にずらす」と「左方にずらす」は、線が直線なら同じ結果になります。参考資料にある「入居時のクロスの価値を80%とした場合は、20%グラフを下方へシフトさせる」という例で確かめると、2年住んで退去した場合の負担割合は、下方シフトで 80% − 2/6 = 7/15(約46.7%)です。20%分は6年 × 0.2 = 1.2年にあたるので、左方シフトなら経過 1.2 + 2 = 3.2年で、1 − 3.2÷6 = 7/15。どちらで計算しても同じです。

ずらした出発点の決め方は一律の基準ではありません。ガイドラインが「契約当事者が事前に協議して決める」としているため、記事の「50%」「80%」は計算の練習用の仮定です。

クロスやカーペットの負担区分を問題で確認する(論点別問題):

計算例3:設備の耐用年数(5年・6年・8年・15年)

設備機器は、耐用年数が経過した時点で残存価値1円になる直線を使い、新品に交換する場合も同じ考え方です。ガイドラインが別表2に例示する主な耐用年数は次のとおりです。

耐用年数設備の例(ガイドライン別表2の記載)
5年流し台
6年冷房用・暖房用機器(エアコン、ルームクーラー、ストーブ等)、電気冷蔵庫、ガス機器(ガスレンジ)、インターホン
8年主として金属製以外の家具(書棚、たんす、戸棚、茶ダンス)
15年便器、洗面台等の給排水・衛生設備、主として金属製の器具・備品
建物の耐用年数ユニットバス、浴槽、下駄箱(建物に固着して一体不可分なもの)
例:借主の過失で便器(耐用年数15年に区分)が破損し、交換費用が90,000円かかった。入居は5年で、入居時は新品とする。
  • ① 負担割合 = 1 − 5÷15 = 2/3(約66.7%)
  • ② 借主負担額 = 90,000円 × 2/3 = 60,000円
  • ③ 検算:貸主負担は 90,000円 × 5/15 = 30,000円。60,000円 + 30,000円 = 90,000円で一致します。

同じ5年住んだ場合でも、耐用年数が6年のエアコンなら借主の負担割合は 1 − 5÷6 = 約16.7%、耐用年数15年の便器なら約66.7%と、設備ごとに大きく違います。

ガイドラインは、設備ごとの耐用年数を「主な設備の耐用年数」として例示しています。個別の物件で使う耐用年数は、この表と契約内容、設備の実際の状態を見て決めることになります。

経過年数を考慮しないもの

ガイドラインは、次のものは経過年数による減額をしないとしています(別表2・本文)。

  • フローリングの部分補修:長期の使用に耐える部位で、部分補修が可能なため、形式的に経過年数を考慮すると貸主に不合理になる。ただしフローリング全体にわたる毀損で床全体を張り替えた場合は、建物の耐用年数で残存価値1円となる直線を考えて負担割合を算定する
  • 畳表・襖紙・障子紙:消耗品に近く、減価償却資産になじまないため、経過年数は考慮しない
  • 鍵の紛失:経過年数は考慮せず、交換費用相当分を全額借主負担とする
  • クリーニング:経過年数は考慮せず、借主負担となるのは通常の清掃を実施していない場合で、部位または住戸全体の清掃費用相当分を全額借主負担とする

なお、国土交通省の参考資料は、ペット飼育可の物件でのひどいキズや汚れ、喫煙によるヤニの変色や臭いがひどい場合について、「経過年数を考慮せず賃借人負担とする」特約が設けられている場合があると紹介しています。そうした特約の有効性は、後述の特約の要件に照らして個別に判断が必要とされています。

耐用年数を過ぎても負担になる場合

耐用年数を過ぎると借主の負担割合は1円(≒0%)に近づきますが、「過ぎたら何も払わない」とは限りません。ガイドラインは、借主は善良な管理者として注意を払って使用する義務を負っているため、経過年数を超えた設備でも修繕の費用負担が必要になることがあるとしています。具体例は、継続して使えるはずのクロスに故意に落書きをして使用不能にした場合の、落書きを消す費用(工事費や人件費など)です。

民法第621条は、借主が賃借物を受け取った後に生じた損傷について、賃貸借が終了したときに原状に復する義務を負うとしつつ、通常の使用・収益による損耗と経年変化を除いています。ただし書で、借主の責めに帰することができない事由による損傷も除かれます。この条文の「通常損耗・経年変化は含まれない」が、ガイドラインの出発点です。国土交通省の参考資料は、令和2年4月1日施行の改正民法でこのルールが明文化されたと説明しています。敷金や原状回復を含む賃貸借の改正点は、民法R2改正 賃貸借の急所で条文ごとに整理しています。

ガイドラインの位置づけと特約

ガイドラインは法律ではありません。国土交通省は、「その使用を強制するものではなく、原状回復の内容、方法等については、最終的には契約内容、物件の使用の状況等によって、個別に判断、決定されるべきもの」と書いています。

契約に特約を入れる場合の注意も、ガイドラインにあります。経年変化・通常損耗の補修を借主に負担させる特約は、借主に新たな義務を課すことになるため、次の要件を満たさないと効力を争われるおそれがあるとされています。

  • ① 特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的・合理的理由があること
  • ② 借主が、通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことを認識していること
  • ③ 借主が、特約による義務負担の意思表示をしていること

「ガイドラインに反する特約は一律に無効」「ガイドラインは法的拘束力をもつ」という理解は、上の位置づけの説明と合いません。当サイトの問題には、この点を確認する問題を用意しています(本試験の出題の予想ではありません)。

特約と位置づけを問題で確認する(論点別問題):

まとめ

  • 借主に原状回復義務がある損傷でも、費用の全額は借主負担にならず、経過年数に応じて割合が下がる
  • 基本式は「借主の負担割合 = 1 − 入居年数 ÷ 耐用年数」。クロス・カーペット・クッションフロアは6年、設備は5年・6年・8年・15年など
  • 入居時が新品でないときは、グラフを下方(左方)にずらす。出発点は当事者が事前に協議して決める
  • フローリングの部分補修、畳表、襖紙・障子紙、鍵の紛失、クリーニングは経過年数を考慮しない
  • ガイドラインは法的拘束力のある基準ではなく、特約には3つの要件がある

よくある質問

Q耐用年数6年のクロスを5年住んで退去した場合、借主の負担割合はいくらですか?

直線で減っていく考え方なので、1 − 5÷6 = 約16.7%です。ただしこの割合が使えるのは、借主の故意・過失や善管注意義務違反などで原状回復義務がある損傷に限られます。通常の使用による日焼けや汚れは、そもそも貸主負担です。

Q入居した時点でクロスが新品でなかった場合は、どう計算しますか?

ガイドラインは、入居時の状態に合わせて負担割合のグラフを下方(左方)にずらして使うとしています。たとえば入居時の価値を50%とみなすなら、耐用年数6年の線は50%から始まり、3年後に1円(実質0%)になります。入居時の価値をどこから始めるかは、契約当事者が事前に協議して決めることが適当とされています。

Q耐用年数を過ぎたら、借主は何も負担しなくてよいのですか?

必ずしもそうではありません。ガイドラインは、経過年数を超えた設備でも借主には善良な管理者の注意義務があり、継続して使えるはずのものを故意・過失で使えなくした場合には、機能していた状態に戻す費用(クロスへの故意の落書きを消す費用など)が借主負担になることがあるとしています。

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