問題
Aさん(75 歳,女性)は,一人暮らしで,身体機能に問題はない。70 歳まで地域の子どもたちに大正琴を教えていた。認知症(dementia)の進行が疑われて,心配した友人が地域包括支援センターに相談した結果,Aさんは介護老人福祉施設に入所することになった。入所時のAさんの要介護度は3 であった。 入所後,短期目標を,「施設に慣れ,安心して生活する(3 か月)」と設定し,計画は順調に進んでいた。Aさんは施設の大正琴クラブに自ら進んで参加し,演奏したり,ほかの利用者に大正琴を笑顔で教えたりしていた。ある日,クラブの終了後に,Aさんは部屋に戻らずに,エレベーターの前で立ち止まっていた。介護職員が声をかけると,Aさんが,「あの子たちが待っているの」と強い口調で言った。 Aさんの状況から支援を見直すことになった。 次の記述のうち,新たな支援の方向性として,最も適切なものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第36回介護福祉士国家試験(令和5年度)」問題110
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
答えは5「大正琴を教える役割をもつ」です。
Aさんは、大正琴クラブで自ら進んで演奏し、ほかの利用者に笑顔で教えるという、生き生きとした姿を見せていました。「教える」という、Aさんが長年大切にしてきた役割を、施設の中で正式な形で持てるようにすることが、今のAさんに合った支援の方向性です。
たとえるなら、Aさんが得意で誇りを持っていた「先生」という役割を、施設の中でも活かせるようにしてあげるイメージです。
👉 覚え方:本人の生活歴・得意なことを活かした「役割」を支援に取り入れる。
ほかの選択肢:1介護職員との関係改善は今回の課題の本質的な部分ではない/2身体機能に問題はないと事例文に明記されており、機能改善は今回の支援の方向性としては的外れ/3演奏への自信はすでに自ら進んで演奏・指導する様子から十分に見て取れ、「自信を取り戻す」という表現は現状と合わない/4エレベーター前に座れる環境を整えることは、行動そのものへの対症療法にとどまり、根本的な支援の方向性とは言えない。
なぜこれが正解か
正解は5。Aさんが大正琴クラブに自ら進んで参加し、演奏したり他の利用者に笑顔で教えたりしていた様子や、長年地域の子どもたちに大正琴を教えていたという生活歴を踏まえると、「大正琴を教える」という役割を施設の中で正式に持てるよう支援することが、Aさんの強み・生きがいを活かした新たな支援の方向性として最も適切である。
各選択肢の解説
- 1 介護職員との関係改善は、事例からは特段の関係悪化が読み取れず、今回見直すべき支援の本質的な課題とは言えない。
- 2 事例文には「身体機能に問題はない」と明記されており、身体機能の改善を新たな支援の方向性とすることは的外れである。
- 3 Aさんはすでに自ら進んで演奏し、笑顔で他の利用者に教えている様子が見られており、「演奏できる自信を取り戻す」という表現は、既に自信を持って取り組んでいる現状と合致しない。
- 4 エレベーターの前に座れる環境を整えることは、行動そのものへの物理的な対応にとどまり、Aさんの内面(教え子を待っているという思い、役割意識)に応える根本的な支援の方向性とは言えない。
覚え方・ひっかけ注意
利用者の強み・生活歴を活かした支援の方向性を選ぶ設問では、事例文の中の「本人が生き生きとしている場面」(本問では大正琴クラブでの演奏・指導)に着目し、それを正式な役割として発展させる選択肢が正解になりやすいパターンを押さえる。
理論的背景
本事例は、前問(第36回 問109)で解釈した「あの子たちが待っているの」という発言の背景(元大正琴の先生としての役割意識)を踏まえ、その意味を単に問題行動として捉えるのではなく、Aさんの強み・生きがいとして積極的に支援に組み込む展開を示している。これは、ストレングス視点(本人の持つ力・資源に着目する視点、第37回 問50のエンパワメントとも関連)に基づく介護過程の展開例であり、「できないこと・問題行動」への対処ではなく、「できること・本人の強み」を核に据えた支援計画の再構築という、介護過程の理想的なプロセスを表している。大正琴を教える役割を施設内で正式に持つことは、Aさんの自己肯定感・生きがいを高めるとともに、エレベーター前で立ち止まるという行動(過去の役割への回帰願望の表れ)そのものの軽減にもつながる可能性がある。
試験での位置づけ
生活歴・強みを活かした支援の方向性の見直しは、介護過程領域の頻出パターン。第36回 問109とセットで、①事例文から行動の背景(本人の発言と生活歴の結びつき)を解釈する力、②その解釈を踏まえて具体的な支援の方向性を導き出す力、の両方が問われる連続した出題形式に慣れておくことが重要。
選択肢の発展補足
役割の再構築による支援は、単にAさん個人の満足度向上だけでなく、施設全体の活性化(他の利用者との交流の促進、大正琴クラブの活動の充実)にもつながる可能性があり、個別ケアと施設全体のケアの質向上が結びつく好例といえる。
上位資格・発展
介護過程の展開技法の中でも、ストレングスモデルに基づくアセスメント・計画立案は、社会福祉士・精神保健福祉士の実践理論としてより体系的に学ばれる。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第36回介護福祉士国家試験(令和5年度)」の問題110です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ)。図は同センターのPDFから切り出したものです。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。介護保険制度・障害者総合支援法などは改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報)・編集方針。

