問題
Bさん(50 歳,男性,障害支援区分3 )は,49 歳のときに脳梗塞(cerebral infarction)を発症し,左片麻痺で高次脳機能障害(higher brain dysfunction)と診断された。以前は大工で,手先が器用だったと言っている。 現在は就労継続支援B型事業所に通っている。短期目標を,「右手を使い,作業を自分ひとりで行える(3 か月)」と設定し,製品を箱に入れる単純作業を任されていた。 ほかの利用者との人間関係も良好で,左片麻痺に合わせた作業台で,毎日の作業目標を達成していた。生活支援員には,「将来は手先を使う仕事に就きたい」と希望を話していた。 将来に向けて,生活支援員が新たに製品の組立て作業を提案すると,Bさんも喜んで受け入れた。初日に,「ひとりで頑張る」と始めたが,途中で何度も手が止まり,完成品に不備が見られた。生活支援員が声をかけると,「こんなの,できない」と大声を出した。 Bさんに対するカンファレンス(conference)が開催され,短期目標を達成するための具体的な支援について見直すことになった。 次の記述のうち,見直した支援内容として,最も適切なものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第36回介護福祉士国家試験(令和5年度)」問題112
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
答えは3「完成までの手順を理解しやすいように示す」です。
Bさんは高次脳機能障害があり、新しい作業の手順を組み立てて覚えることが苦手になっている可能性があります。作業の手順を絵や図でわかりやすく示してあげることで、迷わずに一つひとつの工程を進められるようになります。
たとえるなら、レシピの手順を写真付きで示してあげるように、次に何をすればいいかが一目でわかるようにする工夫です。
👉 覚え方:高次脳機能障害への作業支援=手順を視覚的にわかりやすく示す。
ほかの選択肢:1不備への反省を促すことは、高次脳機能障害への理解を欠き自尊心を傷つける対応(第38回 問97とも一貫)/2左側に部品を置くことは、左片麻痺(左手が使いにくい)のBさんには不向き(右手を使いやすい配置が望ましい)/4生活支援員が横に座り続けて指示することは「自分ひとりで行える」という短期目標に反する過度な介入/5単純作業を同時に行わせることは、新しい組立て作業への集中を妨げ、かえって混乱を招く。
なぜこれが正解か
正解は3。高次脳機能障害(遂行機能障害を含む可能性)のあるBさんが、新しい組立て作業で何度も手が止まり不備が生じていた状況を踏まえると、完成までの一連の手順を視覚的にわかりやすく示す(工程表や写真、順序立てた見本の提示等)ことで、Bさんが自分のペースで作業を進めやすくする支援が、カンファレンスで見直すべき最も適切な内容である。
各選択肢の解説
- 1 完成品の不備に対する反省を促す対応は、作業の困難の背景にある障害特性(遂行機能障害等)への理解を欠いており、Bさんの自尊心を傷つけ、意欲をさらに低下させるおそれがある。
- 2 左側に部品を置いて作業するよう促すことは、左片麻痺のあるBさんにとって左手の使用が困難であることを踏まえると、かえって作業を難しくする不適切な配置である。
- 4 生活支援員が横に座り続けて逐一指示を出す対応は、「右手を使い、作業を自分ひとりで行える」という短期目標の達成を妨げる過度な介入であり、自立支援の観点から適切でない。
- 5 単純作業(製品を箱に入れる作業)と新しい組立て作業を同時に行わせることは、Bさんの負担・混乱をさらに増やすことになり、新しい作業の習得を妨げる可能性が高い。
覚え方・ひっかけ注意
高次脳機能障害のある人への作業支援の見直しでは、「反省を促す」「過干渉(横に座り続ける)」「複雑化する(同時作業)」「身体状況に合わない配置」といった選択肢は誤答になりやすい。「手順の視覚化による自立支援」という視点が正解の軸となる。
理論的背景
本事例のBさんは、高次脳機能障害(脳血管障害後遺症)により、複数の工程を計画的に組み立てて実行する遂行機能(第37回 問52)に困難を抱えていると考えられる。新しい組立て作業のように、複数の手順を順序立てて行う必要がある課題では、この遂行機能障害が顕著に影響し、途中で何をすべきかわからなくなる、手順を誤る等の困難が生じやすい。支援の工夫としては、工程を視覚的に示す(絵カード、写真付きの手順書、完成見本の提示等)ことで、外部からの手がかり(構造化)により遂行機能の弱さを補い、本人が自分のペースで、かつ自分の力で(自立して)作業を完了できるようにすることが重要である。これは、第38回 問97(高次脳機能障害の遂行機能障害への対応:具体的な指示の提供)とも一貫する支援原則である。
試験での位置づけ
高次脳機能障害のある人への作業支援の具体的な工夫は、介護過程領域・障害の理解領域(高次脳機能障害、第37回 問52、38-97)を横断する重要テーマ。第36回 問111とセットで、行動の背景を解釈した上で、その特性に応じた具体的な支援内容を導き出す一連の思考プロセスを身につけておくことが重要。
選択肢の発展補足
手順の視覚化に加え、作業を細分化して一つずつの工程での成功体験を積み重ねられるようにする(第38回 問38の成功体験の積み重ねとも共通する視点)ことも、意欲の維持・向上につながる重要な支援の工夫である。
上位資格・発展
作業療法・就労支援の専門領域では、高次脳機能障害のある人への認知リハビリテーション(代償手段の活用、構造化された環境の提供)や、就労継続支援における合理的配慮の設計がより専門的に扱われる。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第36回介護福祉士国家試験(令和5年度)」の問題112です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ)。図は同センターのPDFから切り出したものです。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。介護保険制度・障害者総合支援法などは改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報)・編集方針。

