問題
Cさん(59 歳,男性)は,妻(55 歳)と二人暮らしであり,専業農家である。Cさんはおとなしい性格であったが,最近怒りやすくなったと妻は感じていた。Cさんは毎日同じ時間に同じコースを散歩している。ある日,散歩コースの途中にあり,昔からよく行く八百屋から,「Cさんが代金を支払わずに商品を持っていった。今回で2 回目になる。お金を支払いにきてもらえないか」と妻に連絡があった。妻がCさんに確認したところ,悪いことをした認識がなかった。心配になった妻がCさんと病院に行くと,前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)と診断を受けた。妻は今後同じようなことが起きないように,Cさんの行動を常に見守り,外出を制限したが,疲労がたまり,今後の生活に不安を感じた。そこで,地域包括支援センターに相談し,要介護認定の申請を行い,訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することになった。 その後,妻に外出を制限されたCさんは不穏となった。困った妻が訪問介護員(ホームヘルパー)に相談したところ,「八百屋に事情を話して事前にお金を渡して,Cさんが品物を持ち去ったときは,渡したお金から商品代金を支払うようにお願いしてはどうか」とアドバイスを受けた。 訪問介護員(ホームヘルパー)が意図したCさんへの関わりをICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)に当てはめた記述として,最も適切なものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第36回介護福祉士国家試験(令和5年度)」問題116
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
答えは4「参加への影響を意図して,環境因子に働きかける」です。
訪問介護員は、Cさんが今まで通り八百屋に通い続けられるように(=社会とのつながり・参加を保つために)、お店側の対応の仕方(=環境因子)を調整する提案をしています。
たとえるなら、Cさん本人を変えようとするのではなく、周りの環境(お店の仕組み)を工夫することで、Cさんの社会参加を支えようとするイメージです。
👉 覚え方:環境側を調整することで社会参加を支える=参加への影響を意図した環境因子への働きかけ。
ほかの選択肢:1個人因子・健康状態への言及は今回の対応の意図とは異なる/2健康状態・心身機能への働きかけも今回の対応とは異なる/3活動・身体構造への働きかけも今回の対応(環境調整)とは異なる/5「環境因子への影響を意図して個人因子に働きかける」は、働きかける対象と意図する影響が今回の対応(環境因子=八百屋を調整し、参加=社会参加を支える)とは逆になっている。
なぜこれが正解か
正解は4。訪問介護員が提案した「八百屋に事前にお金を渡しておく」という対応は、Cさんが今まで通り散歩の途中で八百屋に立ち寄るという社会参加(ICFの「参加」レベル)を継続できるよう、お店側の受け入れ体制(ICFの「環境因子」)を調整する働きかけであり、ICFの枠組みでは「参加への影響を意図して、環境因子に働きかける」と整理できる。
各選択肢の解説
- 1 個人因子(性格、価値観等の個人に内在する特性)に働きかけたり、健康状態に影響を及ぼしたりすることを意図した対応ではない。
- 2 健康状態への影響を意図して心身機能に働きかけるという説明は、今回のような環境(お店の対応)を調整する対応とは異なる。
- 3 活動(本人が行う具体的な動作)への影響を意図して身体構造に働きかけるという説明も、今回の対応の性質とは合致しない。
- 5 「環境因子への影響を意図して個人因子に働きかける」という説明は、働きかける対象(個人因子)と意図する結果(環境因子への影響)の関係が、今回の実際の対応(環境因子=八百屋の体制を調整し、参加=社会参加の継続という結果を意図する)とは逆転している。
覚え方・ひっかけ注意
ICFの階層(心身機能・身体構造、活動、参加)と背景因子(環境因子、個人因子)を用いた事例解釈の設問では、「何を変えようとしているか(働きかける対象)」と「何を実現しようとしているか(意図する結果)」を正確に区別し、対応関係を整理することが重要。本問では「環境因子(八百屋の対応)を変えることで、参加(社会参加の継続)を実現する」という構造を正確に読み取る。
理論的背景
ICF(国際生活機能分類、第37回 問49)における環境因子は、物的環境(住環境、道具等)だけでなく、人的環境(家族、友人、地域社会の人々)や社会的環境(制度、サービス、地域の慣習等)を含む幅広い概念である。本事例では、八百屋という地域の人的・社会的環境に対して、あらかじめ金銭的なトラブルを回避する仕組み(事前にお金を渡しておく)を整えることで、Cさんが認知症を抱えながらも、これまで通り散歩の途中で立ち寄るという社会参加(生活の楽しみ、地域とのつながり)を継続できるよう支援している。これは、Cさん本人の症状(脱抑制)を直接的に治療・改善しようとするのではなく、周囲の環境を柔軟に調整することで、本人の生活の質を保つという、認知症ケアにおける環境調整アプローチの好例である。
試験での位置づけ
ICFの枠組みを用いた事例解釈は、障害の理解領域(第37回 問49)・総合問題を横断する応用的なテーマ。第37回 問67(認知症カフェの事例をICFで解釈)とあわせて、具体的な支援内容をICFの各階層・因子に対応づける練習を積んでおくことが、総合問題対策として重要である。
選択肢の発展補足
認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、地域全体で理解し支え合う仕組み(認知症サポーター、認知症にやさしい地域づくり、第37回 問39の認知症施策推進大綱)は、本事例のような個別の環境調整の積み重ねによって実現されていく。
上位資格・発展
リハビリテーション専門職の実践では、ICFに基づくアセスメントシートを用いて、心身機能・活動・参加・環境因子・個人因子の相互関係を体系的に評価し、支援目標の設定に活かす手法がより専門的に扱われる。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第36回介護福祉士国家試験(令和5年度)」の問題116です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ)。図は同センターのPDFから切り出したものです。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。介護保険制度・障害者総合支援法などは改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報)・編集方針。

