問題
Cさん(59 歳,男性)は,妻(55 歳)と二人暮らしであり,専業農家である。Cさんはおとなしい性格であったが,最近怒りやすくなったと妻は感じていた。Cさんは毎日同じ時間に同じコースを散歩している。ある日,散歩コースの途中にあり,昔からよく行く八百屋から,「Cさんが代金を支払わずに商品を持っていった。今回で2 回目になる。お金を支払いにきてもらえないか」と妻に連絡があった。妻がCさんに確認したところ,悪いことをした認識がなかった。心配になった妻がCさんと病院に行くと,前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)と診断を受けた。妻は今後同じようなことが起きないように,Cさんの行動を常に見守り,外出を制限したが,疲労がたまり,今後の生活に不安を感じた。そこで,地域包括支援センターに相談し,要介護認定の申請を行い,訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することになった。 Cさんが八百屋でとった行動から考えられる状態として,最も適切なものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第36回介護福祉士国家試験(令和5年度)」問題114
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
答えは1「脱抑制」です。
Cさんは八百屋で代金を払わずに商品を持ち去ってしまい、しかも「悪いことをした」という認識すらありませんでした。これは、社会のルールを守ろうとする心のブレーキが効かなくなる「脱抑制」という症状で、前頭側頭型認知症に特徴的にみられます。
たとえるなら、普段なら当たり前に働いている「やってはいけない」というブレーキが、うまくかからなくなってしまった状態です。
👉 覚え方:ルールを守れず悪いことという認識もない=脱抑制(前頭側頭型認知症の特徴)。
ほかの選択肢:2記憶障害は物事を忘れてしまう症状で、今回の「悪いことをした認識がない」という状態とは性質が異なる/3感情失禁はちょっとしたことで急に泣いたり笑ったりする症状/4見当識障害は時間・場所・人物がわからなくなる症状(Cさんは毎日同じコースを迷わず歩けている)/5遂行機能障害は物事を順序立てて計画的に進めることが難しくなる症状。
なぜこれが正解か
正解は1。Cさんが八百屋で代金を支払わずに商品を持ち去り、しかもそれを「悪いことをした」という認識すら持っていなかったという行動は、社会的な規範やルールに対する抑制が効かなくなる「脱抑制」の典型例であり、前頭側頭型認知症(第37回 問90)に特徴的な症状である。
各選択肢の解説
- 2 記憶障害は新しい出来事や情報を覚えられなくなる症状であり、今回のように「自分の行為が悪いことだという認識自体が欠如している」という状態とは性質が異なる。
- 3 感情失禁は、些細な刺激で泣いたり怒ったりと感情のコントロールが効きにくくなる症状で、血管性認知症等でみられやすいが、今回の行動(社会的ルールの逸脱)とは異なる症状カテゴリーである。
- 4 見当識障害は時間・場所・人物についての認識が低下する症状だが、Cさんは毎日同じ時間に同じコースを散歩できており、見当識が保たれていることがうかがえる。
- 5 遂行機能障害は複数の手順を計画的に組み立てて実行することが困難になる症状であり、今回の単純な行動(商品を持ち去る)の解釈としては適切でない。
覚え方・ひっかけ注意
前頭側頭型認知症の症状(脱抑制、常同行動、食行動異常、社会的行動障害)は、アルツハイマー型認知症の中核症状(記憶障害、見当識障害)とは異なる特徴を持つ。「ルール違反への無自覚」というキーワードから脱抑制を想起する。
理論的背景
前頭側頭型認知症は、前頭葉・側頭葉を中心に脳の萎縮が進行する認知症の一類型で、社会的行動の障害(脱抑制、反社会的行動、万引き等の軽犯罪的行為)、常同行動、食行動異常(第37回 問90)が、記憶障害よりも先に目立って現れることが特徴とされる。前頭葉(特に眼窩前頭皮質)は、社会的な規範や他者への配慮に基づいて自らの行動を抑制する機能を担っており、この部位の機能低下により、本来であれば「してはいけない」と判断できる行動を、罪悪感や違和感を伴わずに実行してしまう脱抑制が生じる。こうした症状は、周囲から「性格が変わった」「モラルが低下した」と誤解されやすく、本人・家族にとって大きな苦悩を伴う。認知症の早期発見・適切な診断(本人が「悪気なく」行った行動を疾患の症状として理解すること)が、周囲の対応や支援の質を左右する重要な鍵となる。
試験での位置づけ
前頭側頭型認知症の症状理解は、認知症の理解領域・総合問題を横断する重要テーマ。第37回 問90(前頭側頭型認知症の食行動異常)とあわせて、記憶障害中心のアルツハイマー型認知症とは異なる病型の理解を深めておくことが、総合問題での長文事例の読解にも直結する。
選択肢の発展補足
脱抑制による行為(万引き等)が生じた場合、警察や地域社会との関係調整も必要になることがあり、家族や介護支援者は、疾患による症状であることを地域の関係者(本事例の八百屋等)に丁寧に説明し、理解を求める役割を担うことがある。
上位資格・発展
神経心理学の専門領域では、前頭側頭型認知症の症状評価尺度(行動障害の評価)や、脱抑制のメカニズム(眼窩前頭皮質・腹内側前頭前皮質の機能低下)に関する研究知見がより専門的に扱われる。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第36回介護福祉士国家試験(令和5年度)」の問題114です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ)。図は同センターのPDFから切り出したものです。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。介護保険制度・障害者総合支援法などは改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報)・編集方針。

