問題
Aさん(80 歳,男性,要介護3 )は,介護老人福祉施設に入所している。 アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)が進行している。ある日の昼食時,介護福祉職がAさんに配膳すると,「お金はこれしかありません。 足りますか」と小さくたたまれたティッシュペーパーを渡してきた。 このときのAさんに対する介護福祉職の対応として,最も適切なものを1 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第37回介護福祉士国家試験(令和6年度)」問題76
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
答えは3「飲食店での会計の場面であると認識して対応する」です。
Aさんは食事の場面で「お金は足りますか」とティッシュペーパーを差し出しています。これは、Aさんの心の中では「飲食店でお会計をしている」場面として体験されているのかもしれません。その世界観を否定せず、その場面に合わせて対応することが大切です。
たとえるなら、Aさんが今、実際に感じている「その人なりの現実」に寄り添って、話を合わせてあげるイメージです。
👉 覚え方:本人が体験している世界(現実)を否定せず、その場面に合わせて対応する。
ほかの選択肢:1ティッシュペーパーの本来の用途を説明するのは、Aさんの世界観を否定してしまう対応/2ティッシュペーパーの在庫不足のサインと解釈するのは今回の状況とは無関係な見当違いの解釈/4食事に集中するよう促すのはAさんの訴えをそらすだけで気持ちに向き合っていない/5小遣いの増額を家族に相談するのは状況の誤解(実際のお金の不足ではない)に基づく的外れな対応。
なぜこれが正解か
正解は3。認知症が進行したAさんが、小さくたたんだティッシュペーパーを「お金」として差し出す行動は、Aさんの中では過去の記憶(飲食店等で会計をする場面)が現実として体験されていると考えられる。この世界観を否定せず、飲食店での会計の場面であると認識して合わせた対応をすることが、Aさんの尊厳を守りつつ安心感を提供する適切な関わりとなる。
各選択肢の解説
- 1 ティッシュペーパーの本来の用途を説明することは、Aさんが体験している現実(会計の場面)を否定し、混乱や不安を招く可能性がある。
- 2 ティッシュペーパーが不足しているサインとして受け止めるという解釈は、Aさんの発言(「お金はこれしかありません」)の文脈と無関係であり、的外れな対応である。
- 4 食事に集中するよう促す対応は、Aさんの訴え(会計をしようとしている気持ち)に向き合わず、話をそらすだけの対応であり、不安を解消することにつながらない。
- 5 小遣いの増額を家族に相談する対応は、実際にお金が不足しているという誤った前提に基づく的外れな対応であり、Aさんの体験している世界を正しく理解できていない。
覚え方・ひっかけ注意
認知症の人が示す一見不可解な言動(ティッシュを「お金」として渡す等)は、その人なりの意味・文脈(過去の記憶、その瞬間に体験している現実)を持っていることが多い。事実を訂正しようとするのではなく、その世界観に合わせて対応するというバリデーション的な視点が正解の軸となる。
理論的背景
本事例は、認知症の人が過去の記憶や経験(長年、飲食店等で支払いをしてきた経験)に基づき、目の前の状況(食事の配膳)を独自の文脈で解釈し、それに沿った行動(会計をしようとする)をとっている状態と理解できる。バリデーション(ナオミ・フェイル)の考え方では、こうした行動を「間違い」として訂正するのではなく、その人が今、体験している現実(リアリティ)を尊重し、その世界観の中で応答することが、不安の軽減と尊厳の保持につながるとされる。介護福祉職が「今は飲食店ですね、お会計は大丈夫ですよ」といった形で場面に合わせて応答することで、Aさんは自分の行動が受け入れられたと感じ、安心して食事を続けられる可能性が高まる。
試験での位置づけ
認知症の人の言動の背景を理解し、その世界観に合わせて対応する視点は、認知症の理解領域・コミュニケーション技術領域を横断する頻出テーマ。第37回 問40(人形を探すAさんへの対応)、38-81(妄想の理解)ともあわせて、「事実を訂正しようとせず、本人の体験している現実を尊重する」という一貫した対応原則を身につけておくことが重要。
選択肢の発展補足
こうした場面では、実際に「お預かりします」と受け取る形で対応する介護職員もいるが、金銭や物のやり取りに関しては施設のルール(実際の金銭管理上の誤解を招かないための工夫)にも配慮しながら、個別の状況に応じた柔軟な対応が求められる。
上位資格・発展
認知症ケアの専門領域では、こうした「行動の背景にある意味」を理解するためのアセスメント手法(DCM:認知症ケアマッピング等)がより体系的に扱われる。介護福祉士としては、一見不可解に見える行動の背後にある本人なりの文脈を推測し、それに寄り添う想像力を養うことが実践的に重要である。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第37回介護福祉士国家試験(令和6年度)」の問題76です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ)。図は同センターのPDFから切り出したものです。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。介護保険制度・障害者総合支援法などは改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報)・編集方針。

