問題
次の事例を読んで,問題30 から問題32 までについて答えなさい。
〔事 例〕
L精神保健福祉士は,精神障害者を主な利用者とする就労継続支援B型事業所で働いている。作業が終わると利用者数人が集まり,人付き合いや生活上の困りごと,夢や願いなど様々なことを互いに話し合っていた。その話し合いの場は徐々に広がりを見せ,他の事業所の利用者も加わるようになっていった。L精神保健福祉士は,その活動の代表となったMさんから話し合いの場所について相談を受け,公民館を紹介した。しばらくの間,L精神保健福祉士が会場予約を代わりにしていたが,Mさんたちは集まる時間や回数,ルールなどを決め,会場予約を含めて自分たちで運営するようになっていった。そして自分たちの活動に「α」と名前を付けた。(問題30)ある日,L精神保健福祉士は,市の社会福祉協議会のA社会福祉士から「精神障害への理解と関わり」をテーマに市民を対象とした研修会の講師を依頼された。研修会でL精神保健福祉士は,精神疾患の発症頻度や症状,リカバリーの考え方などについて講義した。受講者からは,「精神疾患について初めて学ぶ機会を得た」「町内に障害者の事業所があるが,ほとんど交流がない」などの感想が述べられた。そこでL精神保健福祉士とA社会福祉士は,精神障害についての理解が地域ではなかなか得られにくく,見えない壁があると考え,次は当事者にも講師を担当してもらい研修会を企画しようと話し合った。 L精神保健福祉士が「α」のメンバーに相談したところ,自分たちの経験を発信する機会にしたいと賛同が得られた。「α」のメンバーとL精神保健福祉士は,地域への発信の内容や方法をそれぞれの立場から学び合い,皆で考え準備を進めた。(問題31)半年後に「α」のメンバーが講師に加わった新たな研修会を開いた。研修会後,受講者から,「同じ地域社会の中で共に生活している人だと感じた」「一緒に町内のイベントなど何かをやれそうに思う,やってみたい」などの感想が寄せられた。(問題32)
次のうち,L精神保健福祉士の一連の関わりの背景にある理念として,適切なものを2 つ選びなさい。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第26回精神保健福祉士国家試験(令和5年度)」専門科目 問題32(精神保健福祉相談援助の基盤)
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
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自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
正解は 1 と 4
L精神保健福祉士は、精神障害への理解が地域で得られにくく「見えない壁」があると考え、当事者が講師を務める研修会を開きました。その結果、受講者から「同じ地域社会の中で共に生活している人だと感じた」という感想が出ています。
これは、心の壁(偏見)を取り除く「バリアフリーの推進」であり、精神障害のある人も地域社会の一員として共に生きる「ソーシャルインクルージョンの実現」を目指した関わりです。メインストリーミングやインテグレーションは主に教育の場での統合を、アクセシビリティは利用のしやすさを表す言葉です。
なぜ正解か
正解は 1 と 4。L精神保健福祉士は、地域にある精神障害への「見えない壁」に注目し、当事者が講師を務める研修会を通じて市民の理解を広げた。偏見や無理解という意識上の障壁(心のバリア)を取り除くことはバリアフリーの推進であり、その先に、精神障害のある人を地域社会の構成員として包み込むソーシャルインクルージョンの実現がある。
ほかの選択肢
- 2:メインストリーミングは、障害のある子どもを通常の学級で教育する考え方として使われる語。地域社会全体への働きかけを表すものではない。
- 3:インテグレーション(統合)は、分けられていたものを一つにまとめる考え方で、主に教育の場で用いられた。分離を前提にした「統合」より、もとから排除しない「包摂(インクルージョン)」の方が本事例に合う。
- 5:アクセシビリティは、建物・情報・サービスの利用しやすさを指す。本事例は利用のしやすさではなく、市民の意識への働きかけである。
正解の位置づけ
正解は 1 と 4。連続事例を通じたL精神保健福祉士の関わりは、①当事者のセルフヘルプグループの自主運営を支え(問題30)、②当事者とパートナーシップを結んで共に研修を準備し(問題31)、③当事者が講師に加わった研修で市民の意識を変えた(問題32)、という流れになっている。背景にある理念は二つに整理できる。
- バリアフリー:障壁には、物理的・制度的・文化情報面・意識上の4つの障壁があるとされる。本事例の「見えない壁」は、精神障害についての無理解や偏見という意識上の障壁であり、当事者との出会いを通じてそれを取り除こうとしている。
- ソーシャルインクルージョン:社会的排除の状態にある人々を、社会の構成員として包み込み、共に支え合う考え方。研修後の「同じ地域社会の中で共に生活している人だと感じた」「一緒に町内のイベントなど何かをやれそうに思う」という感想は、地域社会が当事者を仲間として受け入れ始めた姿である。
誤りの肢の論点
- 2(メインストリーミング):主にアメリカで、障害のある子どもを可能な限り通常の教育の流れ(主流)に置く考え方として使われた。教育制度の文脈が中心である。
- 3(インテグレーション):分離されていた障害のある人を通常の場に統合する考え方。前提に「分離」があり、場を同じくしても関係や意識が変わるとは限らないという批判から、インクルージョンへと発展した。
- 5(アクセシビリティ):情報や施設、サービスへの到達・利用のしやすさ。障害者権利条約でも重要な原則の一つとされるが、本事例は利用環境の改善ではない。
関連論点
- 障害者権利条約・障害者基本法:障害を個人の機能だけでなく社会的障壁との関係で捉える「社会モデル」に立つ。社会的障壁には、事物・制度・慣行・観念が含まれ、偏見という観念の障壁を取り除くことも合理的配慮・環境整備の延長線上にある。
- スティグマの軽減策:教育(知識の提供)、抗議、接触(当事者との直接の交流)の3つがよく挙げられ、当事者との接触が意識の変化に効果的とされる。本事例で一度目の研修(専門職による講義)では「交流がない」という感想にとどまり、当事者が加わった二度目で意識が変わった流れは、その違いをよく表している。
- 障害者基本法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第26回精神保健福祉士国家試験(令和5年度)」専門科目 問題32(精神保健福祉相談援助の基盤)です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ。原文にふりがなが付いている語は、ふりがなも付けています)。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。精神保健福祉に関する法令・制度は改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:合格ナビ運営事務局(運営者情報)・編集方針。

