問題
事例を読んで,Dさんについての後見開始の審判をEさんが申し立てた主な理由として,最も適切なものを1 つ選びなさい。 〔事 例〕 Dさん(80 歳)は,子のEさんが所有する建物に居住していたが,認知症のため,現在は指定介護老人福祉施設に入所している。Dさんの年金だけでは施設利用料の支払いが不足するので,不足分はEさんの預金口座から引き落とされている。施設で安定した生活を営んでいるものの医師からは白内障の手術を勧められている。近時,Dさんの弟であるFさんが多額の財産を遺して亡くなり,Dさんは,Dさんの他の兄弟とともにFさんの財産を相続することとなった。Eさんは,家庭裁判所に対しDさんについて後見を開始する旨の審判を申し立てた。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第36回社会福祉士国家試験(令和5年度)」問題80
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
正解は 3 です。
Dさんは認知症で判断能力が低下しています。Dさんの弟Fさんの遺産を、Dさんとほかの兄弟で分ける「遺産分割協議」には、Dさん自身が法律上の判断をして参加しなければなりません。判断能力が不十分なままでは協議ができないため、Dさんの代わりに参加する成年後見人が必要になります。これが申立ての主な理由です。
ほかの選択肢では、手術への同意は成年後見人の権限に含まれないとされています。入所契約の解約やEさん所有の建物の売却、Eさん自身の預金の払戻しは、そもそもDさんの財産の問題ではないか、今は必要のないことです。
👉 覚え方:遺産分割協議は、後見申立ての動機の代表例。
なぜこれが正解か
正解は 3。遺産分割協議は相続人全員で行う法律行為で、判断能力を欠く常況にある相続人がいると有効に協議できない。家庭裁判所が選任した成年後見人がDさんを代理して協議に参加する必要があり、これが申立ての主な理由となる。最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」でも、遺産分割協議は申立ての主な動機の一つとして挙げられている。
各選択肢の解説
- 1 誤り。手術などの医的侵襲への同意は一身専属的なもので、成年後見人の権限(財産管理と身上保護に関する法律行為の代理)には含まれないと解されている。
- 2 誤り。Dさんは施設で安定して生活しており、入所契約を解約する事情はない。
- 4 誤り。建物はEさんの所有物で、売却はEさん自身ができる。Dさんの後見は不要。
- 5 誤り。払い戻すのはEさん自身の預金であり、Dさんの成年後見人の権限は及ばない。
覚え方
「本人の財産に関する法律行為が必要になったとき」が後見申立てのきっかけ。代表は預貯金の管理・解約、遺産分割協議、不動産処分、介護保険契約。
正解と考え方
正解は 3。成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、財産に関する法律行為について本人を代表する(民法第859条第1項)。相続人の一人であるDさんが遺産分割協議に参加するには、協議の内容を理解して合意する判断能力が必要で、認知症により事理を弁識する能力を欠く常況にあれば、成年後見人が代理する。親族が申立てをする典型的な場面が、預貯金の解約・管理と遺産分割協議である。
事例の読み方としては、各選択肢について「Dさん本人の法律行為か」「今それが必要か」「成年後見人の権限に含まれるか」の3点で判定するとよい。
誤りの肢の掘り下げ
- 1 手術の同意:医療行為への同意は本人の身体への侵襲に関する一身専属的な判断であり、成年後見人には医療同意権がないとするのが一般的な理解。成年後見人が担えるのは、診療契約の締結など医療に関する契約面である。厚生労働省も、身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドラインを示しており、本人の意思の推定や関係者の話し合いで対応する。
- 2 入所契約の解約:介護老人福祉施設との契約は本人の法律行為で、後見人が代理できる事項ではある。しかし事例では施設で安定した生活を送っており、解約の必要性がない。
- 4 建物の売却:Eさん所有の建物の処分はEさん自身の行為で、Dさんの成年後見人を必要としない。なお、仮にDさん所有の居住用不動産を売却するなら、成年後見人は家庭裁判所の許可が必要(第859条の3)という論点がある。
- 5 Eさんの預金:払戻しはEさん本人が行えばよい。Dさんの年金で足りない利用料をEさんが負担している関係は、扶養や立替えの問題で、後見開始の理由にはならない。
関連論点
- 遺産分割協議で成年後見人自身も相続人である場合(例:本人と後見人がともに相続人)は利益相反となり、後見監督人がいればその監督人が、いなければ家庭裁判所が選任する特別代理人が本人を代理する(第860条による第826条の準用)。
- 後見開始の申立権者は本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官(第7条)。身寄りがない場合などは市町村長も申し立てられる(老人福祉法第32条等)。
- 民法第859条e-Govで原文を読む
- 老人福祉法第32条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第36回社会福祉士国家試験(令和5年度)」の問題80です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ)。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。社会福祉に関する法令・制度は改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報)・編集方針。

