問題
事例を読んで,A社会福祉士を中心に実施した一連の取組において重視した次の考え方のうち,適切なものを2 つ選びなさい。 〔事 例〕 B障害福祉施設では,中堅・ベテラン職員による「経験に基づく支援・業務」が最も重視され,若手職員が育成されないまま離職してしまうということが相次いだ。 そこでAは,会議を定期的に開催して,他の職員と一緒に特に定型的な業務にかかる時間を測定し,不適切な手順や無駄な動作のある業務を洗い出し,効率的な方法を検討した。また,利用者の特性に応じた支援マニュアルなどを作成した。会議は継続して行われ,支援方法の改善や不要な業務の廃止に取り組んだ。会議での議論の積み重ねから,法人理念の改訂について,理事会へ提案するなどの活動にも至った。これら一連の取組の中で,職員間のコミュニケーションも増え,職員の定着率も上がっていった。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第38回社会福祉士国家試験(令和7年度)」問題125
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
※この問題は2つ選ぶ形式です。2つとも選ぶと答え合わせになり、正答の全部を選んだときだけ正解として扱います。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
正解は 3 と 4
Aさんたちは、業務にかかる時間を測り、無駄な手順を洗い出して効率的なやり方を考え、マニュアルを作りました。これは、作業を測って標準化する科学的管理法(4)の考え方です。
さらに、会議を重ねる中で、支援方法の改善や業務の廃止にとどまらず、法人の理念そのものを見直す提案にまで進みました。今のやり方の誤りを直すだけでなく、前提となる考え方や目標そのものを問い直す学習をダブル・ループ学習(3)といいます。
1のエンゲージメントは職員の仕事への熱意や愛着を指し、定着率は上がっていますが、取組で重視した「考え方」とはされていません。2のリスキー・シフトは集団で話すと危険な結論に傾く現象、5のハインリッヒの法則は事故とヒヤリ・ハットの関係で、どちらも事例と関係ありません。
なぜこれが正解か
正解は 3 と 4。
- 4(正しい)科学的管理法 定型業務の時間を測定し、不適切な手順や無駄な動作を洗い出して効率的な方法を検討し、マニュアル化している。作業を観察・測定して最善の方法を標準化する科学的管理法の考え方そのもの。
- 3(正しい)ダブル・ループ学習 支援方法の改善や業務の廃止(既存の枠組みの中での修正=シングル・ループ)にとどまらず、議論の積み重ねから法人理念の改訂を理事会に提案している。行動の前提となる価値・目標そのものを問い直しており、ダブル・ループ学習にあたる。
誤りの選択肢
- 1 エンゲージメントは職員が仕事や組織に熱意を持ち主体的に関わる状態。取組の結果として定着率が上がったとは読めるが、一連の取組で重視した考え方そのものではない。
- 2 リスキー・シフトは、集団で意思決定すると個人で決めるときより危険な(大胆な)結論に傾く現象。集団浅慮などと並ぶ集団意思決定の問題で、本事例とは無関係。
- 5 ハインリッヒの法則は、1件の重大事故の背後に29件の軽微な事故、300件のヒヤリ・ハットがあるとするリスクマネジメントの経験則。本事例は事故防止の取組ではない。
問題の位置づけ
福祉サービスの組織と経営では、経営学・組織論の理論を、福祉現場の事例に当てはめる問題が定番である。本問は「業務改善(効率化)」と「組織学習」という二つの層が一つの事例に入っており、それぞれに対応する理論を選ぶ構成になっている。
正解の掘り下げ
科学的管理法(4)
20世紀初頭、テイラーが提唱した管理手法。作業を動作と時間に分解して測定し(時間研究・動作研究)、最も効率的な標準作業を定め、それに基づいて課業を管理する。本事例の「定型的な業務にかかる時間を測定」「無駄な動作を洗い出し」「マニュアルの作成」はすべて対応する。福祉現場では、記録・送迎・配膳などの定型業務の効率化で生まれた時間を、利用者との関わりに振り向けるという文脈で語られることが多い。
ダブル・ループ学習(3)
アージリスらが整理した組織学習の概念。
- シングル・ループ学習:既存の目標や前提を変えずに、行動のずれを修正する(例:手順を改善する)。
- ダブル・ループ学習:行動の前提となる価値観・目標・方針そのものを見直す。
本事例では、会議の継続で支援方法の改善や不要業務の廃止(シングル・ループ的)を重ねた結果、「経験に基づく支援が最も重視される」という組織の前提に向き合い、法人理念の改訂提案にまで至っている。この「前提の問い直し」がダブル・ループの決め手。
誤りの選択肢の論点
- エンゲージメント(1) 職員の熱意・没頭・活力を表し、定着や生産性と関連づけて語られる。事例の結果には近いが、問いは「取組において重視した考え方」であり、手段としての理論ではない。結果と手段を取り違えさせる選択肢。
- リスキー・シフト(2) 集団極性化の一つ。反対方向に慎重な結論に傾くのはコーシャス・シフト。集団浅慮(グループシンク)とともに、会議運営の弊害として出題される。
- ハインリッヒの法則(5) 1:29:300の比率で知られる。事故防止のため、ヒヤリ・ハットの段階で報告・分析することの重要性を示す。
関連論点
- 科学的管理法への批判から、人間関係論(ホーソン実験)が生まれた流れは頻出。
- 組織学習は「学習する組織」(センゲ)とも結びつき、自己マスタリー・メンタルモデル・共有ビジョン・チーム学習・システム思考の5つの規律が問われることがある。
- 事例中の「経験に基づく支援」から「マニュアル化(標準化)」への転換は、暗黙知を形式知に変えるナレッジマネジメントの観点でも説明できる。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第38回社会福祉士国家試験(令和7年度)」の問題125です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ)。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。社会福祉に関する法令・制度は改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
執筆・運営:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報)・編集方針。

